サイボーグ娘SSスレッドに保管されたSSの保管庫です。一応、18禁ということで。

 昨夜部下に命じて準備させた座学用の教材が揃っている事を確認すると格納室に向かう。格納室中央のカプセルの中には私が担当する少女が機能と同じ姿で眠っていた。
 カプセルを開くとほとんど透明なボディースーツしか着ていないため、まるで裸のような姿が露になる。覚醒機能を作動させヘッドセットを外すと、徐々に薄目を開くと、一気に絶望が表情に表れる。
「目が覚めたら全部夢でした。そんな事を期待していたんだろう」
 そう、声を掛けると小さく頷いた。
「残念だったな。早く起きろ」
 そんな彼女を起きるように促す。その声に反応して立ち上がろうとした時に、自分がどんな服装か思い出したらしく、丸まって前を隠そうとする。
「懲りない奴だな。早くしろ」
 と、再び促すと何とか立ち上がった。
 だが、次の瞬間彼女の下腹から
 クー
という、可愛らしい音が漏れた。
 さらに顔を赤くして恥ずかしそうにする。
「朝食のしたくは出来ている。早く来い」
 私は、そう告げると扉へと向かった。

 麻衣を連れて小会議室に入る。
 ホワイトボードと机・椅子のセットが幾つかあるだけの狭い部屋だが、私と彼女だけなので十分な広さだ。
 ホワイトボードのそばの机には何冊かの本が置かれ、少し離れた机には同じだけの本と1人前の食事が置かれていた。
「先に食事を済ませてしまえ」
 私の言葉に、彼女は席に付き小声で
「いただきます」
 と、言い食事を始めた。
 箸が食器に当たる音だけが部屋に響き、10分ほどで食事を終えた。
「それじゃあ、食器は後ろの机に置いておけ。座学を始めるぞ」
 ノートPCを開き、スライドの準備をしながら話し始める。
「さて、まずは昨日の復習だ。君の現在の立場を正確に言ってもらおう」
 私の言葉に、これが唯の勉強ではなく開発計画の一部である事を悟ったのだろう。声に緊張が伺える。
「き、機械化歩兵…、育成計画のそた、被験者です」
 理解していても、認めたくないようだ。特に開発や素体などの言葉を避け、育成、被験者といった言葉に置き換えるところから何を恐れているかは明らかだ。
「間違いだ」
 懲罰用の電気ショックを最低出力で与える。
「!」
 声も出さずに悶える。
「与えられた情報は正確に記憶しなければいけない。また、間違った情報を故意に上官に伝えるのは重罪だ」
 少し声に凄みをつけて脅すように言う。実際にこのような小さな誤情報が部隊全体を効きに陥れる…らしい。私は実際に戦場に出た事がないので伝聞でしか知らないが。
「もう一度聞くぞ」
「機械化歩兵…開発計画の試作機…素体です」
 躊躇いがあったが、今回は開発、素体と言うことが出来た。
「正確には『第三期機械化歩兵開発計画の試作機素体』だ。
 これは改造処理により人型兵器となる素材であると言うことを示す」
 改造、兵器などの言葉に露骨に反応するのが見て取れる。
「改造後の立場は兵器と言う言葉が示す通り、軍の管理下に置かれ命令には絶対服従を強いられる。戦車や小銃と同じ立場だ。もちろん、自由意志など認められない。将官や兵卒たちの命令を実行するために全力を尽くすんだ」
 脅すような言い方だが、このプロジェクトの成果品に求められているのはこの言葉の通りだった。生身の数倍の能力を持ち、絶対服従でありながら、高度な自律思考をおこない、量産が可能な、金属の身体の兵器。そんな夢物語がこの少女達の犠牲により成り立とうとしていたのだ。
「さて、一言で機械化歩兵と言うがどの様な物を指すか知る必要がある。将来自分がどんな姿になるか興味があるだろう」
 先程の言葉に萎縮していた少女に好奇心と恐怖が混ざり合ったような気配が生まれる。
「だが、先に君自身が将来どの様な姿になると思っているか教えてもらおう」
 急に振られて言葉に詰まっている様なので、助け舟を出す。
「一般に知られている機械化技術では代表的なものは義手がある」
 スライドに人工皮膚に覆われた義手が映し出される。
「はい、それなら知っています」
 私の言葉に頷き返すのをみて、スライドを進める。画面一杯に全裸の彼女の姿が映し出され、次の瞬間、手が外れ代わりに義手が接続される。よく見ると、接続部がうっすら見える程度でほとんど違和感が無い。だが、自分の手が機械のそれに替わってしまったのに、ショックを受けているようだ。それが例え、スライドに映された映像であっても…
「次によく知られているのが義足だ」
 先程と同様に人工皮膚で覆われた義足が現れ、彼女の足と置き換わる。やはり、ショックだったのだろうが先程よりはマシのようだ。
「大体、一般に広がっている機械化処理はこんなものだろう」
「わたし、手だけじゃなくて足も機械にされるんですか?」
 恐る恐る質問をしてくる。だが、現実はその程度では終わらない。あえて無視して話を続ける。
「あまり知られていないが、義手だけではなく腕全体を機械化して代替品とする技術も一般に広がっている」
 義腕が写され、同じように腕全体が入れ替わる。
「まさか、嘘ですよね」
 否定の言葉を求めているようだが、残念ながらまだ序の口だ。
「人工皮膚の技術も発達したが、人間に偽装する訳ではない兵器には不要な代物だ」
 PCのエンターキーを押すと、義肢の人工皮膚が剥がれ金属の外骨格が剥き出しになる。
「こんな格好になるなんて…」
 裸同然の透け透けスーツだがそれが覆っているのは紛れもない生身の身体だ。それが金属で出来た手足になるのだ。恐怖よりも驚愕が勝っているようだ。
「さらに内臓を必要最小限の代替機械に置き換えることにより内臓火器や動力炉の収納スペースを確保する事ができる」
 腹からポンッポンッと小気味良い音を立てて内臓が飛び出し、生命維持のための最低限の機器と内臓火器が腹の中に消えていく。最後に心臓が飛び出し、代わりに同サイズの動力炉が胸の間に消えた。
「そんな、心臓まで… 死んじゃいます」
「不要な内臓などを削除したから最低限の生命維持装置で生きていられるよ。でも、内臓火器とかつけたからね。今のままじゃ立つのがやっとだ。このままじゃとてもじゃないが戦闘なんて無理だ」
 スライドを進めると、先程の義足とは比べ物にならない位ガッシリと力強い義足が映し出される。
「幸い出力が大きな動力炉を内蔵したことにより、こういう軍用義足を使用して長時間戦闘を行う事ができる」
 医療用の義足が取り外され、代わりに軍用の義足がはめ込まれる。
「ついでに腕の方も軍用のものと取り替えよう」
 決して太過ぎないがエッジなど内臓武器を持ちと耐弾性に優れ、生身の数十倍の筋力を持つ義腕が表示され、元の義腕と取り替えられる。その姿は先程までの弱弱しさを一切感じさせず、溢れるパワーを感じさせていた。
「軍用って…、こんな…」
「一般には一切出回らない代物だよ。片手で軽くゴリラを締め上げる事が出来る。パワーセーブをした所で日常生活はもはや不可能だと考えていいだろう」
 次に映し出されたのは、ふっくらとした女性の肉体に近い形に模られた金属製の胴体だった。
「攻撃能力を手に入れても、防御性能は全くダメだ。胸元などを打ち抜かれたら内臓機械が破壊される恐れがある。そこで金属製の身体を与える」
 首から上と、機械化された臓器及び手足のみをのこして胴体が消え去る。
「これが君の身体だ」
 そこに居るのは首から下が完全に機械化された少女だった。
「あ、あ、・・・」
 私の言葉に恐怖が限界に達したか、黄色いものが少女の透明なボディースーツの股辺りに広がる。
「ああ、構わないよ。それは小も大も着たまますると無害化して徐々に分解して行くナノマシンが内蔵してあるから。それにこの身体になれば君は今のようにお漏らしする事も不可能だ」
 だが、言葉は届いていないようだ。
 少女の口からは、しばらくの間意味を持つ言葉を聞き取る事ができなかった。
「最後はこれだ」
 映し出されたのは金属性の髑髏。
「これを君の顔に合わせると…」
 その髑髏に皮膚が貼られ、徐々に女性の顔に変化していく。耳の代わりにセンサーが設置されていたり、額に認識用プレートが埋め込まれていたりと今と異なる部分があるが、それでも彼女だと分かる。
「顔部に関しては出来る限り、改造前と同じ状況を再現する。これは現在の身体が自分の物だと認識させる為の処置だ。これに君の脳を収める」
 画面の少女のから脳をデフォルメした絵が飛び出し、、スリムにカットされる。
「一部の運動や代謝機能を司る部分は機械に置き換えられる。これは通常なら脳側で処理するのではなく義肢側で神経パルスを処理するが、2度と元に戻る事を考慮されない兵器の場合、不要部分のスペースを再利用した方が義肢側に余計なスペースや重量、処理遅延などが発生しないので効率的だ」
 それが先程の機械の頭部に収められた。そして最後に残された抜け殻の頭部は取り外され、最後のパーツが組み込まれた。
「これが、最終的な完成予想図だ」
 手足から始まり、内蔵や胴、最終的には頭部まで、脳以外全ての場所が機械化されている。人工皮膚が貼られているのは顔部のみだし、短く刈られた頭髪は放熱用の素材だ。あとの部分は金属製のフレームが露出して、まるで中世のスーツアーマーの類のようだ。
「これが私…」
 つぶやく声には感情が感じられない。ただ、私の言葉に反応しているだけのようだ。
「改造は徐々に段階を踏んで行われる。改造中の光景もしっかり観察してもらうぞ。それにより機械でできた身体が自分自身のものであるという認識をしっかり持ってもらう」
「せめて、人工皮膚を…」
「それは出来ない。まず人工皮膚は人間が義肢を使用する際、本来の四肢との違いを隠す為のものだ。だが、人型兵器は当初から機械であることが当然の事である。だからそれを隠す必要は無い。それにこの機械が露出した身体は自分が人間とは異質なものであると言う自己認識を強固にしてくれる。自分は兵器であって、人間ではない。最も基本的な認識だ。正しく自己認識が出来ていないと混乱の元になる。現在の君が良い例だ。君は何だね?、機械か?人間か?」
 私の問いに反射的に答えが返ってきた。
「私は、人間です」
 すぐさま、懲罰スイッチのボタンを押す。
「ほら、間違った。さっきも言ったとおり君は試作機の素体に過ぎない。人間ではなく生体部品だ。やれ、人権だ、最低限度の保護だのといった物とは無縁の存在だ。それを忘れてはならない。それじゃあ、最後に簡単な手術をして今日の授業を終わろう」
3.義足

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