タグ検索で流血133件見つかりました。

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2つの灯火

家族を失う悲しみ。2度と味わいたくなかったその悲劇が、再び私の身に降りかかろうとしていた。 真っ白なベッドの上で蒼白な顔に玉のような汗を浮かべ、母がチラリと私の方に視線を向ける。 「お母様・・・」 思わず私の口から漏れた言葉に返事をしようとして、母は枯れた喉から声を出すのも辛そうに目を細めた。 不治の病など、この世にあっていいはずがない。 ましてやその恐ろしい悪魔を、よりにもよって母が患うなんて・・・ 15年前、まだ私があどけなさの残る少女だった頃、この村を取り囲むようにして広がっている森の中に1匹のド…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/2%a4%c4%a4%ce%c5%... - 2008年08月12日更新

咲き誇る夜の薔薇

りですらはっきりそれとわかる程の、夥しい流血の跡。 妻の胸元に、黒土で覆われた湖畔の地面に、何者かの死を予感させる赤黒い染みが一杯に広がっているのだ。 それはやがて近付いてきた男達にも十分すぎる程に過酷な現実を伝えてしまったらしく、鉈や棍棒といった思い思いの武器を手にした彼らの怒りの炎に更なる油を注いでいた。 「ま、待てお主達・・・妻を・・・彼女を一体どうするつもりだ?」 「何だてめぇは?一緒に殺されてぇのか!?」 「ちょっと待て・・・あの坊主、年老いた龍に助けられたって言ってただろう?こいつじゃないの…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%ba%e9%a4%ad%b8%d... - 2010年01月22日更新

タイトル無し

Dragon-side [[Human-side>タイトル無し2]] ・・・退屈だ かれこれもう百数十年はこの暇を反芻していただろうか・・・ 全身を包む尻尾を眺めながら溜息をついた。 暇を噛み潰している屈強な龍の姿が どこか物寂しげに見える。 どこかの雄が我に求婚でもしてくれればいいのだが・・・ 昔は我も若さのあまり人間共を蹴散らしたこともあった。 しかし、それも人間への興味が薄れるにつれて くだらない、つまらない事だと気づいた。 短い生を足掻くが如く 蠢いている人間共を見ると虚しくなるのだ。 時…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%a5%bf%a5%a4%a5%c... - 2008年12月17日更新

Lunatic

月の光がもたらす狂気。 視界に伸ばしたその腕は、漆黒の鱗をまとう。 都会。 夜も深けて、車の音がまばらに聞こえる住宅街。 会社の残業で遅くなってしまい、こんな深けた時間になってしまった。 人間の息吹を感じない、いつもと全く違う公園の遊歩道を歩いていると、 突然後ろから大きな影に襲われた。 心臓が大きく痛むような感覚と息の詰まるような驚きを覚え、 体が動くままに飛びのいた。 その姿は他の人から見れば、実に滑稽だっただろう 襲われた影のほうをよくよく見てみれば、誰もいない。 街灯の周りを蛾が飛んでいる…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%a3%cc%a3%f5%a3%e... - 2009年11月30日更新

赤い花にも黒き影

切り立った断崖と荒涼な岩肌に覆われた険しい高山・・・ その一角にある深い岩窟で、我はもう長年に亘る退屈を噛み潰していた。 山の麓から程近い場所には人間達の国も幾つか散在しているし、昔は暇潰しに彼らを襲ってみたことだってある。 だがそんなことをしても悠久とすら言える我の永い生涯に張りを持たせる程の愉しみは終ぞ見出せず、再びこうしてある意味絶望的な孤独へと身を埋めてから早くも半世紀の時が流れようとしていた。 明るい日差しと涼しい風が入ってくる岩窟の中は暗い穴倉のような深い洞窟とはまた違った趣があるものの、そう…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%c0%d6%a4%a4%b2%d... - 2009年08月04日更新

忘れようとした記憶2

Hunter-side [[Lioleia-side>忘れようとした記憶]] 「なぁおっちゃん、これで弓を作ってもらえるかい?」 ようやく、憧れだった念願の武器が手に入る。 僕はそんな期待感に胸を膨らませながら真っ赤に溶けた金属の熱がこもる武器工房へと駆け込むと、いつものように腕を組んでふんぞり返っているおっちゃんにやっとの思いで集めてきた素材と金を差し出した。 「何だボウズ。お前はまだハンターになりたての青二才だろう?」 だがこれまたいつものようにというべきか、僕の依頼を聞いたおっちゃんが意地悪…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%cb%ba%a4%ec%a4%e... - 2008年08月12日更新

赤月の悪戯2

Human-side [[Dragon-side>赤月の悪戯]] 町での買い物に予想以上の時間を食ってしまい、俺は両手にいくつもの買い物袋を提げたまま暗くなった山道へと入っていった。 2ヶ月もあるという初めての大学の夏季休暇を退屈な家の中で食い潰すくらいならと、俺は数日前からこの山の中腹にある大きな山小屋で過ごしている。 まだ俺が産まれてもない頃に祖父が山の中で暮らすのに使っていたものだそうだが、祖父が亡くなった今では家族にとってのちょっとした別荘となっている。 流石に山に広がる広大な森からは多少…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%c0%d6%b7%ee%a4%c... - 2008年08月12日更新

寄居蟹

――あるところに、一頭の子竜がいました。 ――子竜は独りきりでしたが、とても幸せでした。 「うわ・・・、雨凄いな・・・。」 レイがそう言うと、サラが気の無い様子で「んー」と返事をした。 先刻から降りだした雨は止むこともなく、次第に窓を叩く力を強めていく。 レイは額と鼻の頭を窓から離し、後ろで足を組む竜人の方を向いた。 「・・・つらぬきとめぬ何とやら?」 「は?」 同居人の人間の言葉に、サラが本から顔を上げる。 「それ秋の歌でしょ?しかも露の話だし・・・。」 読んでいた本を栞も挟まずに閉じ、首を回しながら…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%b4%f3%b5%ef%b3%a... - 2009年03月16日更新

異国の姦計

「ま、待て、待ってくれ!た、頼む・・・うぅ・・・あ・・・」 初めてここへ来た時に比べると随分と力を失ったか弱い声が、地面に頭を押し付けられた男の口から細々と漏れてくる。 彼が身に付けていた重厚な剣や鎧は、巨大なドラゴンとの激しい戦いの末に既にボロボロの鉄屑の如き様相を呈して周囲の地面の上へと無残に転がっていた。 愚かな人間め・・・黙って町で幸せな人間生活を楽しんでいればいいものを、何を思ったのか私の命を狙おうなどという身の程知らずな考えを起こすからこうなるのだ。 大した苦もなく仕留めた腹下の獲物を見下ろし…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%b0%db%b9%f1%a4%c... - 2009年02月21日更新

忘れようとした記憶

Lioleia-side [[Hunter-side>忘れようとした記憶2]] また、茹だるような暑さの照り付ける季節がやってきた。 不思議な絆で結ばれた人間と愛娘を森に残してこの鬱蒼とした木々の茂る密林に移り住んでから早4週間。 毎晩のように降り頻る激しい雨や涼しい洞窟の中に巣食う不快な虫どもに幾度となく辟易しながらも、私は何とか新たな塒となりそうな美しい縦穴のある洞窟を見つけてほっと胸を撫で下ろしていた。 今頃はもう、あの娘も成体といって差し支えない程に大きく成長しているに違いない。 それにあ…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%cb%ba%a4%ec%a4%e... - 2008年08月12日更新

断罪

「うむむ、これは一体どうしたものか・・・」 俺は正直困っていた。 目の前には鎧に身を包んだ女剣士がいる・・・。 何故かと言うと、行き成り俺の塒に現れて 『邪悪な竜め!私が成敗してくれる!』 と、叫んだ後に、身の丈程の大剣を抱えながら石に躓き 壮大にこけた後、自らの大剣で頭を打ち気絶してしまったのだ。 「はぁ、面倒なんだけどなぁ」 俺は大剣を摘むと塒の外に放り投げ、 俺の寝ていた柔らかい藁の上にソイツを寝かせてやった。 すると、寝かせた瞬間にソイツは眼を覚まし 咄嗟に背中に手をかける・・・。 「!、…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%c3%c7%ba%e1... - 2008年12月17日更新

早苗

母は頭の良い人だった。 僕の気付かないような些細なことにもとてもよく気が付き、僕はよく怒られた。 父がよく母にそうしていたように僕のことをぶったし、爪で引っ掻いたりもした。 父は本当に母のことを愛していると言っていたから、きっとあれも母なりの愛情表現なのだろうと思う。 その証拠に、母は僕の顔をまず殴らなかった。 僕が誰かに傷を見られて、惨めな気持ちにならないようにと言っていた。 母の言うとおり僕の体に数多く出来た傷は、服を着ることで綺麗に隠れた。 僕は服を着るたびに、よくまあこんなに上手く傷が作れるものだ…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%c1%e1%c9%c4... - 2008年12月10日更新

森に走る閃光

煌煌と照りつける太陽の下でも不気味なまでの薄暗さを保つ深い森。 包帯や消毒薬の入った薬袋を抱えながら、俺はその森の中を家に向かって急いでいた。 俺自身は元来丈夫な体に慎重な性格もあいまって、怪我をしたり病気を患ったりしたことなどはほとんどない。 だが子と親は対を成すというのか、母親はおっちょこちょいな所が多分にあるせいでいつも怪我や生傷が絶えず、そのお陰で俺は月に1度程度の割合で森を抜けた先にある隣町まで薬や包帯を買出しに行くのが仕事になっていた。 「ふう・・・村まではまだ遠いな・・・」 流石に道の悪い中…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%bf%b9%a4%cb%c1%f... - 2008年08月12日更新

分かたれた者達

アルコールの匂いとベタつく光沢が染み込んだ、小さな樫の木のテーブル。 その前でグラスを片手に椅子に腰掛けながら、俺はカウンターの奥の壁にかけられた丸時計へと目をやった。 「あの・・・」 突如背後からかけられた、おどおどした小さな声。正に時間通りだ。 俺は顔色1つ変えずに後ろを振り向くと、そこに立っていた小柄な町長の姿に目を止めた。 「この度はありがとうございました。これが・・・謝礼の金貨50枚です」 そう言って、町長がズッシリと金貨の詰まった麻袋を俺の前に差し出す。 「ああ、悪いな。また何かあれば言ってく…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%ca%ac%a4%ab%a4%b... - 2008年08月12日更新

空からきた少年

興奮にときめく胸を押さえながら、僕は見上げるような巨大な飛行機に乗り込んだ。 生まれて初めての海外旅行。 チケットの半券を握り締めながら自分の席を探して、広い通路を早足で歩く。 「あった!」 23Aの席・・・その席のすぐ横には、遥かな世界を見渡すことのできる小さな四角い窓がついていた。 そして飛び乗るように自分の席に座り、慣れない手つきでシートベルトをはめる。 ペロンと伸びたベルトの片側を力一杯引っ張ると、体が座席にギュッと固定された。 ちょっときつく締めすぎた気もしたが、そんなことはどうでもいい。 だが…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%b6%f5%a4%ab%a4%e... - 2008年08月12日更新

隣町

謝罪の言葉を繰り返す。 殴られた唇が切れて、血が滲む。 地面に叩きつけられた後頭部が痛む。 目じりを痙攣させながら、飼い主の竜が人間であるスラグの体を踏みつける。 息が止まる。 炭鉱の入り口、崩落防止工事のための足場の上、冷たい金属の上に押し付けられ、中での労働で使い果たした体力と体温をさらに奪われる。 スラグには絶対に理解できない竜語で呪いの咆哮を上げ、竜がスラグの首を両手で締め上げる。 喉を鳴らしながら、スラグは必死で両手をバタつかせる。 首を振る。 右手の指先が、木枠組み立てに使用する工具に触れる。…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%ce%d9%c4%ae... - 2008年08月12日更新

裏窓

俺の部屋の窓の正面には、ボロアパートと廃墟になったオフィスビルが建っている。 俺はその隙間から見える雲が好きだった。 それはアパートのベランダの格子の隙間を縫うように現れて、向かいのオフィスビルまでゆるく蛇行しながら橋をかけている。 俺は毎日、昼夜問わずその雲を眺めて過ごした。 俺が俺のアパートの俺の部屋に入ったときから、雲の形は変わっていない。 変わる訳が無い。 俺は、本物の雲を見たことが無い。 俺が気に入っている雲は、この町を覆う壁に描かれた絵なのだ。 俺の住んでいる町には、空が無かった。 どこまでも…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%ce%a2%c1%eb... - 2008年08月12日更新

銃撃の代償

パァーン! 清々しく晴れ渡った青空の下、山々の間に大きな銃声が響き渡る。 「当たったか?」 「見てくるよ」 俺とともに猪狩りに参加していた彼はそう言って茂みの中に姿を消すと、中型の猪を重そうに引きずりながら草の間から顔を出していた。 「バッチリだ」 これで今日の収穫は3頭目になる。 荷物になるだろうと思って弾は初めから散弾銃の中に装填されていた7発しか持ってきてはいなかったが、たった4発で3頭仕留めたのだから上出来というものだろう。 近頃麓の町で猪が暴れて困っているという話を聞いて渋々出張ってきたものの、…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%bd%c6%b7%e2%a4%c... - 2008年08月12日更新

常世の寝室

「ハァ・・・ハァ・・・」 山裾に広がる小さな町の中を、輝くような黄色い毛を靡かせた小柄なドラゴンが懸命に走っていた。 「いたぞ!あっちだ!」 武器を持った数人の男達が、あちらこちらで怒号を上げる。 私はほんの少し、ほんの少しの家畜を奪って逃げるだけのつもりだったのだ。 ここ数年の異常気象のせいで、すでに私の住む山の食料は枯渇していた。 空腹に喘ぎながら人間の街へ忍び込み、放し飼いにされていた鶏を襲ったまではよかった。 そこを運悪く人間に見つからなければ、こんなことにはならなかったというのに・・・ 必死で…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%be%ef%c0%a4%a4%c... - 2008年08月12日更新

竜の呪い

「何?姫がいないじゃと?」 城下町が感謝祭で賑わう日曜日、ミリアン王国の王バルスは、姫のお目付け役の兵から報告を受けたときも、大して驚きはしなかった。 あの御転婆娘のこと、また勝手に城を抜け出しては町の人々と一緒にワルツでも踊っているのだろう。 「よいよい、いつものことじゃ」 王は手をひらひらさせながら兵士にそういうと、兵士は困惑した表情で玉座の前から退いた。 感謝祭の日くらいは好きにさせてやろう。叱るのは後でもできる。王は内心溜息をつきながらも、傍らの小さな台に乗っていたグラスワインを呷った。 盛大な…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%ce%b5%a4%ce%bc%f... - 2008年08月12日更新

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