われら草葬のうちなるいのり
草ふかき祈り祖国の山や河よ
歴史のしづかなその悲しい石よいま決死のさかひにあつて
その土の上に生きてゐて
おほきみのおほけなき御光につつまれて
われらいまさらに語るべき言葉もなく
歴史のなかにひかりしづめ
われらの生命に涙おちる
行けよ祖国の山や河よ億劫の年を世は変わるとも
おほきみの御光のさかひに沿ふて
巨きなる天然のままに行けよ
われら瞬時の短き生きのまに
ここの国土の丘の辺に立ちアルタイの原野も
アルプの山やその東西南北の国も
おほらかな光もてつつまんとす
われら
みづからの小さき影をうちすてて
神ながらのゆめ行かんとす
まもらせよおほきみの千代のさかへ
われら草葬のうちなるいのり
まもらせよ祖国の土や風の美しさ
われらみおやの涙のあと
われはいのりて
ひたすらに道しるべたてまつる
(詩集「草葬」1944.5自家版詩集「初期ノート」1964.6.30試行出版部に収録された)
隆明鈔--吉本隆明鈔集
歴史のしづかなその悲しい石よいま決死のさかひにあつて
その土の上に生きてゐて
おほきみのおほけなき御光につつまれて
われらいまさらに語るべき言葉もなく
歴史のなかにひかりしづめ
われらの生命に涙おちる
行けよ祖国の山や河よ億劫の年を世は変わるとも
おほきみの御光のさかひに沿ふて
巨きなる天然のままに行けよ
われら瞬時の短き生きのまに
ここの国土の丘の辺に立ちアルタイの原野も
アルプの山やその東西南北の国も
おほらかな光もてつつまんとす
われら
みづからの小さき影をうちすてて
神ながらのゆめ行かんとす
まもらせよおほきみの千代のさかへ
われら草葬のうちなるいのり
まもらせよ祖国の土や風の美しさ
われらみおやの涙のあと
われはいのりて
ひたすらに道しるべたてまつる
(詩集「草葬」1944.5自家版詩集「初期ノート」1964.6.30試行出版部に収録された)
- やっぱりどうしてだか分からないのだが、この吉本さんの思いに涙が浮んできてしまう。こんな青春の瞬間はどうしてやってきてしまったのだろうか。こうした心はどこからきてしまったのだろうか。おそらくは大部分の青年たちはみな同じ思いにいたに違いない。こうした祈りの気持を深く考えていくことにより、吉本さんの戦後は始まったことだろう。
隆明鈔--吉本隆明鈔集
2006年12月01日(金) 21:41:15 Modified by kozymemory