インテリ向きの大衆小説
ぼくのもっている印象でいえば、『邪宗門』というのは、たいへんによくできている作品だけれども、これは前にもそういうことをいったことがあるんですが、インテリ向きの大衆小説みたいな、そういうおもしろさっていうのがあって、そのおもしろさは、そんなに質の高いものじゃないというふうに思いました。むしろ初期の『悲の器』みたいなもののほうが、ずっと質が高いという感想をもったわけです。
(「日本的戦後のジレンマ」1971.5.14磯田光一との対談 「どこに思想の根拠をおくか」1972.5.25筑摩書房に収録された)
隆明鈔--吉本隆明鈔集
(「日本的戦後のジレンマ」1971.5.14磯田光一との対談 「どこに思想の根拠をおくか」1972.5.25筑摩書房に収録された)
- この対談を読んだとき、なんてうまくぴったりのことを言えるのかなと思ったものだ。ちょうど高橋和己は亡くなったばかりだったけれど、もう彼の死は必然的に訪れたように感じた。「わが解体」なんか無残だったな。私も彼の作品をほとんど持っていたが、もういまは本棚にはない。そういえばもう今は彼の作品の話なんかもすることなんかなくなりましたね。そうなってからもう何年たつのだろうか。
隆明鈔--吉本隆明鈔集
2006年12月09日(土) 06:28:31 Modified by shomon