キリスト教
キリスト教は、ユダヤ教にくらべてより普遍性をもっています。なぜ普遍性があるかというと、キリスト教が教理自体を──地域的特殊性ありは空間的特殊性というものから──切り離したからです。つまり内面というもの、人間の精神性、観念性というものの内部に、一つの王国、一つの帝国を築いたということ、そのことが、キリスト教自体を、世界宗教たらしめた要素であるからです。一般的に、ある観念的な志向が、世界宗教あるいは世界観念であるべき第一条件は、必ずそれが発生した基盤である地域的特殊性から、理論あるいは教義自体を切り離して普遍化するということです。キリスト教はある程度、土俗的民族的であるわけですが、普遍的な精神の王国といいますか、観念の王国というものを教義として打ち出したということによって世界宗教たりえてきたわけです。
(「国家と宗教のあいだ」原題・緊急の思想的課題1970.4.29西荻南教会主催講演於杉並公会堂「海」中央公論社1970.7月号に掲載「知の岸辺へ」1976.9.30弓立社に収録された。「信の構造Part3全天皇制・宗教論集成」1989.1.30春秋社に再録。「語りの海吉本隆明1幻想としての国家」1995.3.18中公文庫に再録)
隆明鈔--吉本隆明鈔集
(「国家と宗教のあいだ」原題・緊急の思想的課題1970.4.29西荻南教会主催講演於杉並公会堂「海」中央公論社1970.7月号に掲載「知の岸辺へ」1976.9.30弓立社に収録された。「信の構造Part3全天皇制・宗教論集成」1989.1.30春秋社に再録。「語りの海吉本隆明1幻想としての国家」1995.3.18中公文庫に再録)
- キリスト教が世界宗教になれたのは、当時ローマ帝国が存在したからだと思う。ユダヤ教という一民族の宗教から教義自体を切り離していけたのも、そうした時代だったのだ。だがそのときイエス・キリストの死ももたらされたように思えてくる。
隆明鈔--吉本隆明鈔集
2006年12月08日(金) 22:09:53 Modified by shomon