スターリニズム
わたしがここでスターリニズムとよぶものは、スターリン固有の政治理念をさすものではなく、ソ連共産党を支配した官僚主義的な反対派圧殺や粛正をさすものでもない。そのレーニン主義的な「前衛」論が必然的なダイナミズムによって「前衛」主義にまで抽出される過程で、人民的な志向の核と必然的に矛盾するまで閉じられてゆく政治的な実体をさしている。はじめに、労働者階級の抽出された利害共同性を理念として成立した「前衛」論は、「前衛」主義にまで昇華する過程で、必然的な質的転換がおこり、ついに人民的利害と前衛的利害とのあいだに、あるいは人民的生活史と前衛的生活史のあいだに価値的な転倒がおこる。
(「丸山真男論」1962.1.15号から1963.2.15号まで「一橋大学新聞」に掲載され、「丸山真男論」1963.3一橋新聞部に収録された)
隆明鈔--吉本隆明鈔集
(「丸山真男論」1962.1.15号から1963.2.15号まで「一橋大学新聞」に掲載され、「丸山真男論」1963.3一橋新聞部に収録された)
- このことは、レーニン主義をいくら追及していっても、スターリニズムの出現は不可避のことに思えてくる。マルクス・レーニン主義にて、「スターリニズム打倒」をとなえた新左翼は、結果としてスターリニズムを超えられなかったのだ。レーニン主義そのものに、スターリニズムに至る道が用意されているのだから。
隆明鈔--吉本隆明鈔集
2006年12月06日(水) 09:21:54 Modified by shomon