ヴェイユの戦争の考え方
ヴェーユの考え方では、あらゆる戦争は、それが革命戦争であれ民族解放戦争であれ、国家権力あるいは国家を管理し、国家の機関を牛耳っているものと、大衆との闘いなんだということです。もっと具体的に云いますと、ある国が他の国と戦争するというばあいには、それがどんな国家権力であろうとと、つまり社会主義国であろうと資本主義国であろうと、その国家の権力を握っている勢力と、その国家のなかにいる大衆との闘いなんだ、その国家の機関がその国家の中にいる大衆を抑圧する手段が戦争なんだということです。もっと別の云い方をしますと、ある国家機関を占めているものが、社会主義勢力であれ資本主義勢力であれ、その国家が大衆を他の国から殺させることが戦争の本質なんだということです。そこにヴェーユの、管理機関と大衆労働者の分裂とが永久に解消しないんじゃないかという考え方が色濃く滲みでています。
(「シモーヌ・ヴェーユについて」1979.7.14梅光女学院大学での講演、「春秋」209号昭和54年11月号に掲載され、のちに「言葉という思想」1981.1.30弓立社に「シモーヌ・ヴェーユの意味」として収録された)
隆明鈔--吉本隆明鈔集
(「シモーヌ・ヴェーユについて」1979.7.14梅光女学院大学での講演、「春秋」209号昭和54年11月号に掲載され、のちに「言葉という思想」1981.1.30弓立社に「シモーヌ・ヴェーユの意味」として収録された)
- ヴェイユのこの戦争をの捉え方は、今も最先端の考え方であるかと思います。「労働者国家は無条件で防衛すべきだ」などというトロツキーの考え方をはるかに超えているかと思うのです。世界革命戦争なら正義の戦いであるなどとする考え方では、まったく駄目なのだということが、これほどまでに明確に言いきれていたヴェイユに対して、今の私もたいへんに敬意の思いを持ちます。
隆明鈔--吉本隆明鈔集
2006年12月10日(日) 13:38:31 Modified by shomon