綾戸智絵の声はアフリカ的な声だ
この綾戸さんの「アフリカ的」な声は、そういう意味での<言葉>じゃないんですよ。言語論で言えば、指示表出ではなく、自己表出ってことなんですね。何かを訴えてどうだというんじゃなくて、ワッと、自分の、内臓の言葉を、動きを言葉にしちゃったっていうか、これは結果として、彼女の声を聴いた人も、ワッとなっちゃいますよねえ。感嘆詞のようなものに近い言葉というか、それによく似ています。
これは、ちょっと日本列島では出しようがねえっていうか、アジアからは出ねえよっていうものですよ。彼女が日本人じゃなかったら、あり得ることかもしれないけれど、実際、こういう人があいる。
(「悪人正機」2001.06.15朝日出版社「声」ってなんだ?)
隆明鈔--吉本隆明鈔集
これは、ちょっと日本列島では出しようがねえっていうか、アジアからは出ねえよっていうものですよ。彼女が日本人じゃなかったら、あり得ることかもしれないけれど、実際、こういう人があいる。
(「悪人正機」2001.06.15朝日出版社「声」ってなんだ?)
- 私は吉本さんが評価しているという綾戸智絵という歌手をまったく知らなかったので、彼女のCDを必死になって探しました。そしてそれを初め聴いたときの驚きを忘れません。「どうして、こんな声が出るんだろう」
- なんて思ったものです。そして、この吉本さんの「アフリカ的な声だ」ということで、もうまったく同意してしまいます。「ああ、あれこそがアフリカ的なんだ」と納得してしまうのですね。私たち、この日本にも日本人にも根柢に「アフリカ的」なものが流れているのです。
隆明鈔--吉本隆明鈔集
2006年12月10日(日) 18:22:46 Modified by shomon