芸術の内容と形式
人間が生きているのは、社会的、階級的必要以前に、人間的必要からである。人間が生活するのは、社会的、階級的必要以前に、人間的内容と形式の上に立ってである。人間的内容と形式の全き確立のためにのみ、階級的、社会的必要が生まれるのである。ダンテの芸術の内容を為すものは、ダンテによって代表される階級の必要ではなく、ダンテによって代表される人間的必要である。
(「『戦旗』派の理論的動向」1958.1「解釈と鑑賞」に掲載 「芸術的抵抗と挫折」1959.2未来社に収録された)
隆明鈔--吉本隆明鈔集
(「『戦旗』派の理論的動向」1958.1「解釈と鑑賞」に掲載 「芸術的抵抗と挫折」1959.2未来社に収録された)
- 昭和3年結成の全日本芸術連盟(ナップ)の機関紙「戦旗」で展開されているマルクス主義文芸理論の蔵原惟人の見解に対して述べられている文である。こうした一見当り前に思えることが、実に戦後の吉本さんでなければ展開できなかったわけだ。いやいまだってなんと芸術に対して、「反動的」「ブルジョワ的」などというレッテル貼りが蔓延していることだろうか。
隆明鈔--吉本隆明鈔集
2006年12月03日(日) 13:45:04 Modified by shomon