言葉で表現する立場
文芸あるいは文学の立場というのは、ひとことで云いますと、言葉で表現する立場ということになるわけです。しかし文学者の根底には、話をする言葉というものは本当のことが云えないとか、なかなか通じないもんだという一種の絶望感みたいなものがありまして、そして書くというところにはいった人が多いとおもいます。ぼくなんかもそうで、話してわかることはあえて書く必要はない、そういう考え方を持っておりまして、幸か不幸か、書くほうへはいっていったわけです。
(「文芸批評の立場から人間理解の仕方」1973.11.17東京都立精神医学総合研究所主催・開所記念シンポジウム・現代における精神医学研究の課題於松沢病院「知の岸辺へ」1976.9.30弓立社に収録された)
隆明鈔--吉本隆明鈔集
(「文芸批評の立場から人間理解の仕方」1973.11.17東京都立精神医学総合研究所主催・開所記念シンポジウム・現代における精神医学研究の課題於松沢病院「知の岸辺へ」1976.9.30弓立社に収録された)
- たしかに話して判ることなら、もうそのままでいいだろうという気になってしまう。あるいはいくら話しても、相手に通じないから何かを書いていくのかもしれない。そこが書くという立場での出発点のように思える。
隆明鈔--吉本隆明鈔集
2006年12月10日(日) 11:42:03 Modified by shomon