人間の心なり精神を決定している要素
ぼくはいま、人間の心なり精神を決定している要素をおおざっぱに三つの分けてかんがえています。ひとつは、人間の心の「核」にあるのは、胎児の時と一歳未満の時のあいだでの母親との関係、その時の母親との関係の障害が無意識のいちばん底のところに収まっているだろうとおもわれます。そのつぎは、乳児の時から幼児期までに、これも主として母親ですが、それと家族とか、もうすこしひろげれば親戚とか、近親者との対人関係のなかで形成されるものがかんがえられます。それは無意識に入っていたり、意識の方に出てきたりという出方をする心の「中間層」にあたります。そして三つめの「表面層」のところの大部分は、その手前の無意識のところから規制されていく面があって、だいたい意識的な振る舞いとか、意識的なそのひとの性格を形成しています。カウンセリングにひっかかってくるのは、つまり矯正も正常化も可能であろうとおもえるのは、「表層面」の部分と「中間層」の部分と、そのくらいだろうとおもいます。ひじょうに深刻になってきた問題は、一歳未満か胎児の時の対母親関係に限定され、決定されちゃうだろうとおもいます。だからそこまで入っていかなければどうすることもできないでしょう。
(1992.9、10田原克拓によるインタビュー 「時代の病理」1993.5春秋社に収録)
隆明鈔--吉本隆明鈔集
(1992.9、10田原克拓によるインタビュー 「時代の病理」1993.5春秋社に収録)
- だから母親と家族の存在は大事であるわけだと思う。胎児であるときには、父親である存在との関係が大きな割合であるわけなのだから、これまた大事なことなのだ。青少年期におけるさまざまな精神的な問題はこのことを深く認識して対処していくべきなのだと思っている。
隆明鈔--吉本隆明鈔集
2006年12月10日(日) 14:33:15 Modified by shomon