徹底的に闘わずしては敗北することすら許されていない
現在の情況の下では、徹底的に闘わずしては、敗北することすら、誰にも許されていない。かれは、おおくの進歩派がやっているように、闘わずして、つねに勝利するだろう。架空の勝利を。しかし、重要なことは、積み重ねによって着々と勝利したふりをすることではなく、敗北につぐ敗北を底までおし押して、そこから何ものかを体得することである。わたしたちの時代は、まだまだどのような意味でも、勝利について語る時代に這入っていない。それについて語っているものは、架空の存在か、よほどの馬鹿である。
(「過去についての自註」1964年2月 「初期ノート」1964.6.30試行出版部に収録された)
隆明鈔--吉本隆明鈔集
(「過去についての自註」1964年2月 「初期ノート」1964.6.30試行出版部に収録された)
- この架空の勝利をどのくらい多く聞いてきたことだろうか。勝利ばかり続けているはずなのに、何も現実が変っていないということがある。結局は徹底的に闘っていなかっただけなのだ。徹底的に最後まで闘うことにより、敗北を明確に認識できるはずだ。そこからが始まるのだ。たしかに辛い体験ではあるのだが、そうしない限り、何も始まらないのだ。
隆明鈔--吉本隆明鈔集
2006年12月06日(水) 23:20:28 Modified by shomon