都市社会の貧困化の政策
個人消費が実所得の半分を超えた高度消費社会の先進国で、湾岸を構築し、都市博を推進することが、社会経済を悪化させることなどあり得ない。また不況をなかなか脱しきれない現状の社会で、消費活性化と少しばかりではあるが企業効果を促進しないこともありえない。青島幸男の声明は、ほとんど信じられない都市社会の貧困化の政策につながるとしか言いようのないものだ。こんなことは、黒古一夫のような無智な文士にしか言いようのないものだが、青島幸男はいったい何を考えているのだ。ゴミ捨場のゴミ処理を見学して、都民はゴミを少なく出すようにしないといまに東京はゴミに埋まってしまいますなどと語るのをみて、もしかしてこの人はとんでもないことを考えていて、都市博の中止もその一環ではないのかと、ふと危惧を感じた。高度の焼却技術装置を建設して、灰化したゴミで都市の陸地を増強するという方策こそ、構想すべきなのだ。それは都市博を鈴木前都知事よりももっとできるだけ大規模に実施するのが、都民大衆のためだというのとまったく同じことなのだ。馬鹿な清貧主義による社会の貧困化政策はじぶんたちの仲間だけのことにしてもらいたいものだ。
(「情況との対話第29回−都市博中止は是か非か」徳間書店「サンサーラ」1995年8月号に掲載)
隆明鈔--吉本隆明鈔集
(「情況との対話第29回−都市博中止は是か非か」徳間書店「サンサーラ」1995年8月号に掲載)
- まったく清貧の思想などというのは、勝手に自分たちだけで自分の家だけでやってほしいものだ。ゴミを的確にかたずけてくれるべき都知事は、それを淡々とやればいいわけなのであり、何か私たちの生活の姿勢や生き方がゴミの増大に一番問題なのだなどというのは、どうしても許し難いことである。それなら、もうそんな人は都知事としてはいらない存在でしかない。私はおそらく青島はまったくそうした思考の持主なのだろうと、今確信しつつある。
- でもそうした都知事がいるとしても、私たちはまた一人の吉本隆明を持っていることこそが、とにかく嬉しいことであることはいうまでもないわけだ。
隆明鈔--吉本隆明鈔集
2006年12月10日(日) 15:30:31 Modified by shomon