蕪村詩
ひとつは、興隆してゆく町人ブルジョワジイの新鮮な、秩序破壊的な写実的な、感性の一面であり、ひとつは、徂徠学派のイデオロギイに滲とうされ、封建支配に頭うちされて屈曲した心理的な衰弱の一面である。
明治革命は、せめて蕪村──一茶を流れるイデオロギイ線上で、主動されるべきであった、というのはこの小論のおわりに加えられるべき嘆きのひとつである。
(「蕪村詩のイデオロギイ」1955.10「三田文学」に掲載 「抒情の論理」1959.6未来社に収録された)
私はときどき、大正世代の人の本棚に、蕪村の関係の本があるのをみて、少しはホッとするのだ。
隆明鈔--吉本隆明鈔集
明治革命は、せめて蕪村──一茶を流れるイデオロギイ線上で、主動されるべきであった、というのはこの小論のおわりに加えられるべき嘆きのひとつである。
(「蕪村詩のイデオロギイ」1955.10「三田文学」に掲載 「抒情の論理」1959.6未来社に収録された)
- 大正世代の人たちに与謝野蕪村がよく読まれたときがあったようだ。子規によって絵画的、朔太郎によって浪漫的といわれたところなのだろうか。「月天心貧しき町を通りけり」。蕪村の現実意識を象徴させたのが蕪村の詩であった。これが芭蕉とは大きく違うところである。
私はときどき、大正世代の人の本棚に、蕪村の関係の本があるのをみて、少しはホッとするのだ。
隆明鈔--吉本隆明鈔集
2006年12月03日(日) 12:54:00 Modified by shomon