母の型式は子どもの運命を決めてしまう
母の型式は子どもの運命を決めてしまう。この概念は存在するときは不在というもの、たぶん死にとても似たものだ。母親の型式は種族、民族、文明の形式にまでひろげることができる。また子どもの運命は、生と死、生活の様式、地位、性格にまでひろげられ、また形式的な偶然、運命的な偶然の連関とも不憫ともみなせる。この決めにくい主題が成り立つ場所があるとすれば、ただひとつ、出生に前後する時期の母親と胎乳児とのかかわる場だとみなされる。もっとこまかくいえば、それは受胎八か月から出生後一年くらいのあいだといえよう。
(「母型論」 中央公論社「マリクレール」1991年5月号)
隆明鈔--吉本隆明鈔集
(「母型論」 中央公論社「マリクレール」1991年5月号)
- だから、この時期がその子どもにとってその人生を決定する大切な時期なのだ。そしてそれを決めてしまう母親の存在が実に大事である。だからこそ、この時期の母親とその相手、子どもにとっての父親との関係が大事なことになってくるのだ。
- 私の二人の子どもが生まれ育てる時に、私は二人のことはその母親との関係が一番大切なものだと思い込んできた。そして父親である私ができることは、その母親との関係を大事にすることだと思ってきた。それが二人の子どもにもいい父親といえることになるのだろうと思っていた。実は私はこの思いだけで、実際にそれをまともにやり抜けたのか否かははなはだ自信のないことではあるのです。
隆明鈔--吉本隆明鈔集
2006年12月10日(日) 14:26:15 Modified by shomon