冷戦時代の核実験や民間防衛をめぐるカルチャー

ロシア右翼, ロシア史教科書

ロシア史11§37.4 歴史改竄


2023年秋学期からロシアで使われている11学年用のロシア史(1945〜21世紀)教科書の、特別軍事作戦を取り上げた部分から、第4節「歴史改竄」

[橋本伸也:『記憶の政治』(岩波書店, 2016)]の「第3章 記憶の戦争」によれば、ソ連崩壊からバルト・東欧諸国のEU加盟の流れで、「ナチズムと共産主義を全体主義として一括し、体制の犯罪性における同等性」というバルト・東欧諸国の歴史観が、これまでの西側の「スターリン主義のテロルの記憶がホロコーストの記憶を相対化することは許されない」という歴史観を上書きしていった。これに対して、ロシアは対抗したが、この上書きをとどめられなかった。その流れはおおよそ以下のようなものだった(橋本 2016)。
1998/09「リトアニアにおけるナチ.・ソヴィエト占領体制犯罪評価のための国際委員会」設置
1998/11「ラトヴィア歴史家委員会」設置
1998/12「ポーランド国民記憶院」設置
1999/01「人道に対する犯調調査のためのエストニア国際委員会」設置
2004/03/24ライブツイヒ国際書籍見本市でラトヴィア選出次期欧州委員カルニエテのスピーチ
2004/05/01パルト中東欧諸国のEU加盟
2005/05/08ブッシュ・アメリカ大統領リーガ演説
2005/05/09モスクワで対独「勝利の日」60周年記念式典
2005/05/12欧州議会決議「ヨーロッパの未来 --- 第二次世界大戦後60周年」
2006/01欧州評議会議員会議決議「全体主義的共産主義体制の犯罪に対する国際的糾弾の必要性」
2008/09欧州議会決議「スターリニズムとナチズムの犠牲者を想起するヨーロッパの日」
2008/09この頃から,ロシア連邦「歴史・記憶関連法」をめぐる議員立法の動き開始
2009/05「ロシアの国益を損なう歴史歪曲の試みに対抗するロシア連邦大統領委員会(歴史歪曲対抗委員会)」設置
2009/07欧州安全保障協力機構議員会議ヴィリニュス宣言
2010/12欧州委員会「ヨーロッパにおいて全体主義によってなされた犯罪の記憶」報告書
2011/06欧州理事会「ヨーロッパにおいて全体主義によってなされた犯罪の記憶に関する理事会の結論」採択
2012/02ロシア連邦「歴史歪曲対抗委員会」廃止
2012/06「ロシア歴史学協会」発足
2014/02ウクライナ政変
2014/03ロシア連邦によるクリミア編入、ウクライナ紛争激化
2014/05ロシア連邦「歴史・記憶関連法」成立

このロシア側による対抗のための主張が、この「第4節 歴史改竄」の記述となっている。



なお、この流れは[マルレーヌ・ラリュエル (浜由樹子 訳): "ファシズムとロシア", 東京堂出版, 2022]にも、記載されている。おおよその流れはこちら参照





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