自分辞書によるアウトプット

目次
 1 捜査
 2 公訴・公判  
 3 証拠
 4 裁判

1 捜査の端緒

職務質問(有形力行使の限界)
職務質問の有形力の行使の限界が「停止させて」(警職法2条1項)の文言から明らかでなく問題となる。
確かに,職務質問は行政警察活動であり,その目的は秩序維持にあるから,目的達成のためには手段として強い有形力の行使が正当化される必要もある。
しかし,職務質問は,司法警察活動の重要な一端であり犯罪捜査に大きくかかわる。
とすると,職務質問に,任意捜査の原則(197条)を準用すべきである。
したがって,「停止させて」とは,相手方が個人の意思で止まる程度の有形力の行使を伴う行為であると解する。
具体的には,停止行為によって相手方の自由意思が制圧されない程度であることを原則としつつ,職務質問の目的達成のため,相手の自由意思を制圧しない程度の説得の限度で実力の行使は認められる解する。
道路交通法違反/公務執行妨害事件 最判昭和51年3月16日
公務執行妨害事件 最判昭和53年9月22日
覚せい剤取締法違反事件 最判平成6年9月16日

所持品検査
(1). 所持品検査の可否(法的根拠)
所持品検査は,口頭による質問と密接に関連し,かつ職務質問に付随する行為として,警職法2条1項で認められると解する。
(2). 所持品検査の限界
この点,所持品検査は,任意手段たる職務質問に付随するものとして認められる以上,相手方の承諾を得て行うのが原則である。
もっとも,捜索に至らない程度の行為は,所持品検査の必要性・緊急性,それによって害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡等を考慮し,具体的事情のもとで相当と認められる限度において許容されると解する。
爆発物取締罰則違反事件 最判昭和53年6月20日
覚せい剤取締法違反事件 最判昭和53年9月7日

2 任意捜査と強制捜査の区別

刑訴法197条1項は,捜査機関の捜査権限を定めているが,その但書では,強制処分は法定されている場合のみ実施しうることを定めている。
この「強制の処分」とは何をさすのか。
その意義が,任意捜査との区別を画することから問題となる。
この点,物理的強制力が伴うものに限定すると,無形的捜査方法からプライバシー権(憲法13条)を保護できず,人権保障(1条)に欠ける。他方,軽微な権利侵害ある場合まで含めると,迅速な捜査が行えず,真実発見(1条)を阻害する。
そこで,両者の調和の観点から,「強制の処分」とは,個人の意思を制圧し,身体,住居,財産等に制約を加えて,強制的に捜査目的を達成する行為など,特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段をいうと解する(写真撮影事件の判例同旨)。
したがって,任意捜査において,右の程度に至らない有形力の行使が許容される場合があるということになる。
もっとも,その場合でも無限定に許容されると解するのは相当でなく,必要性,緊急性なども考慮して具体的状況のもとで相当と認められる限度において許容される。

3 各種の捜査方法

任意同行・取調べ
(1).可否
捜査としての任意同行(被疑者の出頭・取調べ)が許されるか条文上明らかでなく問題となるが,逮捕に慎重を期すという合理性もあるので,被疑者が任意に応じていれば,198条1項にもとづく任意捜査として許されると解する。
(2).実質逮捕との区別
名目は任意同行でも,その実質が逮捕にあたるような場合は,令状主義(憲法33条,法199条1項)の潜脱であり,違法と解する。
そこで,適法な任意同行と違法な実質逮捕との区別が問題となる。
この点,適法な任意同行といえるには,それが被疑者の真に任意の意思にもとづくものであり,同行を拒否しようと思えば拒否できる状況であったことが必要である。
具体的には,1)同行を求めた時間・場所,2)同行の方法・態様,3)同行後の取調べ・監視状況等を考慮するとともに,任意の同行を拒否する意思決定の自由が抑圧されていたかを客観的に判断すべきと解する。
殺人事件 最判昭和59年2月29日
強盗致死事件 最判平成元年7月4日
任意取調べの限界
この点,事案の性質,被疑者に対する容疑の程度,被疑者の態度など諸般の事情を考慮して,社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度において許容されると解する。
おとり捜査
・(定義)おとり捜査とは,その身分や意図を秘した捜査機関等が,相手方に犯罪を実行するように働きかけ,相手方がこれに応じて犯罪の実行に出たところで現行犯逮捕等により検挙するものである。
・(問題点)国家が不法に犯罪を作出し,被誘発者の人格的自律権を侵害することになるから,憲法31条,13条の要請に反するおそれがある。
・(捜査の必要性)しかし,組織犯罪など密行性が高く,薬物事犯のように被害者がいない犯罪に対する数少ない捜査方法であるからおとり捜査を認める必要性がある。
・(手段の相当性)
この点,相手方に働きかけることによって範囲を発生させて犯罪を実行させる「犯意誘発型」のおとり捜査は,適正手続の要請に反するし,公権力により相手方の人格的自律権を侵害することにもなり許容されないと解する。
しかし,既に犯意を有している相手方に犯行の機会を提供する「機会提供型」のおとり捜査は,犯人が自分の意思で犯罪行動を起こしている以上,任意捜査として許容されると解する。
・(許容性)
機会提供型であっても,任意捜査として許容される限度についてはさらに具体的に検討を要する。
1)対象犯罪:被害者なき犯罪など捜査が困難な犯罪で,被侵害法益が重大
2)捜査手段:機会提供型とされるされるおとり捜査であっても,常軌を逸するような強い働きかけによる誘発が行われたような場合には違法(客観説)
※(犯意誘発型と機会提供型の区別)
通常の誘惑の程度を超えたか否かという働きかけの程度の応じて区別するべきとする考えもある。
しかし,実際には犯意を誘発したか否かの判断は微妙であるから,基準を明確にすべきである。
そこで,1)おとり捜査の時点で犯意があるとの客観的状況,つまり犯罪の嫌疑があり,2)被誘惑者に犯罪性向が認められる場合,には一見,機会提供型とされるおとり捜査であっても許容されない。
・(効果)違法なおとり捜査によって獲得された証拠については,違法収集証拠の排除法則を適用すべしとの見解もある。
しかし,証拠の許容性の問題を超えている場合なので,国家の刑罰権行使がそもそも許容していない程度に達している場合と考える。
したがって,一事不再理効もある免訴(337条)もって手続を打ち切ることが抑止効果の点からも妥当であると考える。

告訴がない親告罪の捜査の可否
捜査機関は,犯罪があると思料するときは捜査の権限を有する(189条)。
そして,公訴提起の可能性は捜査開始の条件とされていない。また告訴は訴訟条件に過ぎず,告訴を待って捜査を開始したのでは証拠が散逸する場合もある。
よって,原則として告訴のない捜査は許容される。
もっとも,これを無制限に許せば,親告罪とされた趣旨を没却する場合が生じる。
そこで,個別に検討する。
1)毀棄罪等の軽微な罪では,被害者の意思を尊重し,告訴のないままの捜査は許されない。
2)窃盗罪における親族間特例のような家族関係の尊重を趣旨としている場合には,告訴のないままの捜査は許されない。
3)強姦罪等,被害者の名誉を保護する趣旨の場合には,趣旨に反しない限り,告訴がなくても捜査は可能である。


4 逮捕・勾留の諸問題

現行犯逮捕の要件
準現行犯逮捕の要件
違法な逮捕に基づく勾留請求の可否
この点,法は逮捕について独立した不服申し立て方法を認めておらず(429条1項2号参照),逮捕における違法については,勾留段階で一括して司法審査を受けることを予定しているといえる。また,逮捕前置主義(203-207条)も,先行する逮捕が適法であることを前提としていると考えられる。
そこで,違法な逮捕に基づく勾留は原則として許されないと考える。
もっとも,逮捕にごく軽微な違法があったときにも常に勾留できないのでは,逃亡・罪証隠滅を防ぐことができず,真実発見(1条)を阻害する。
そこで,先行する逮捕に令状主義(憲法33条)の精神を没却する重大な違法がない限り例外的に違法な逮捕に基づく勾留も許されると考える。
再逮捕・再勾留の可否
別件逮捕・別件勾留の可否
逮捕前置主義
★趣旨
逮捕に際して司法的抑制をなし,また勾留にあたっても司法的抑制をなすという二重の司法審査により不当な身柄拘束を防止し,被疑者の人権を保障する

★逮捕の先行の有無の判断基準
この点,逮捕前置主義の趣旨は,二重の司法的審査により不当な身柄拘束を防止する点にあり,その審査は被疑事実ごとになされるものである(200条1項,207条1項,64条)。
そこで,逮捕の先行の有無は,勾留の被疑事実と同一の被疑事実による逮捕があるか否かを基準として判断すべきと解する(事件単位説)

★被疑事実の同一性の判断基準
この点,捜査は公判の準備のためになされ,逮捕・勾留も結局は審判のための制度であるから,審判の及びうる範囲と逮捕・勾留の基礎となる事実の範囲は同一の基準で判断すべきである。
そこで,「公訴事実の同一性」(312条1項)が基準となると解する。

★A罪で逮捕した被疑者をB罪で勾留できるか。
B罪での逮捕が先行していない以上,B罪で勾留することはできない。

★A罪で逮捕した被疑者をA罪及びB罪で勾留できるか。
たしかに,B罪での逮捕が先行していない以上,逮捕前置主義の原則からは勾留は認められないかにみえる。
しかし,A罪で勾留される被疑者にとって,B罪で別途あらためて逮捕・勾留されるより期間が短縮されるので有利な場合もある。
よって,被疑者に有利な限度で,他の事実を付加した勾留請求は認められると解する。
ただし,被疑者に有利な限度であるから,勾留後逮捕の理由となった事実について勾留の要件が欠けたときは,直ちに被疑者を釈放しなければならないことになる。


★一罪一逮捕一勾留の原則
・明文の根拠はないが,逮捕・勾留についての厳格な期間制限(203-208条の2)の定めから,当然にこの原則が妥当すると考える。
・もっとも,逮捕・勾留が一回しかできない一罪の範囲はどのように決すべきかは明らかでない。
そもそも,刑事訴訟法は刑罰権の存否を確定する手続であるから,一個の刑罰権について一個の手続によるのが適切である。
とすれば,一罪の範囲は実体法上の罪数を基準として判断することになる。

★釈放後に同一犯罪の一部と見られる行為(例えば常習行為)がなされた場合
この点,一罪一逮捕一勾留の原則に従うと,釈放後になされた行為を理由とした逮捕・勾留は許されないことになる。
しかし,後の事実について


★不出頭を理由とする逮捕の可否
被疑者が数回の呼び出しにも応じない場合,逮捕が許されるか。
そもそも捜査機関による逮捕が認められるのは,逃亡・罪証隠滅の防止という必要性がある場合である(199条2項但書,刑事訴訟法規則143条の3)。
したがって,任意であるはずの出頭を拒んだというのみで,逮捕の必要性を認定し,逮捕することは現行法上許されないのが原則である。
もっとも,理由なき不出頭が重なれば,逃亡・罪障隠滅のおそれがあると推認される場合もあるので,これにより逮捕に必要性が満たされる場合はありうると解する。

5 供述証拠の収集


6 物的証拠の収集

令状による捜索・差押

★目的物の特定(捜索・差押令状の記載事項)
捜索差押許可状には,捜索する場所・押収する物を明記することが必要である(憲法35条1項,219条1項)。この趣旨は,被執行者に受忍範囲を明示すると同時に,捜索・差押における権力の濫用を防止する点にある。
・では場所の明示があるというには,どの程度に特定して場所を記載する必要があるか。
前述の通り,場所の特定を要求する趣旨は,被執行者への受忍限度を明示する点にある。
よって,場所の特定は,被執行者の権利が及ぶ範囲,すなわち人の住居権の個数を基準として明確にするべきである。
・これに対して,押収する物についても同程度に厳格な特定を必要とすべきか。
捜査の初期段階では,差押物が捜査機関にも具体的に判明しないことが多い。にもかかわらず,厳格に過ぎる特定を要求すると,捜査の困難性からかえって好ましくない捜査を誘発するおそれがある。
よって,押収する物については,ある程度包括的な表示も許されると考える。
具体的には,1)十分な例示が付されており,かつ,2)被疑事実の記載があり,これらの記載事項や罪名の記載があいまって令状の特定の趣旨を満たせばよいと考える。
最判昭和33年07月29日


★差押の必要性
捜索差押許可状を発付するにあたって,犯罪の捜査をするについての必要性(218条1項)を裁判官が判断できるか。
思うに,裁判官が判断できなければ違法捜査に対し,司法的コントロールを十分に及ぼすことができない。
したがって,逮捕についての199条2項但書の趣旨を及ぼし裁判官は捜索・差押えの必要性を判断できると考える。
最判 昭和44年03月18日


★詐欺行為により扉をあけさせる場合
捜索・差押の際に,宅配便を装い,捜査官であることを秘して扉を開けさせるような詐欺的行為が「必要な処分」(111条)として適法とされる余地があるか。適正手続の要請(憲法31条)に反しないかが問題となる。
この点,捜査官であることを告知すれば,特に薬物事犯のような場合には即座に証拠が隠滅され,捜査が困難となってしまう。
また,かかる不都合を回避するため,錠前を破壊する行為も考えられるが,それならば詐欺行為によるほうが,被執行者にとっても不利益の度合いが小さい。
よって,詐欺的手段を用いることは,捜索・差押における「必要な処分」(111条)として,許容されることがあると解する。
大阪高判平成6年04月20日

★令状による捜索・差押と写真撮影
・捜索・差押の際に写真撮影をすることはできるか。
この点,写真撮影の法的性質は検証であるから,検証令状がないままの写真撮影は,令状主義の潜脱として認められないのが原則である。
しかし,捜索・差押の執行状況の記録や差押物の位置関係の記録など,写真撮影が捜査のために必要不可欠な場合がある。
この場合プライバシーの侵害は不可避的に伴うものであるから,記録のための撮影に関しては,受忍限度の範囲内にあると解される。
よって,上記の事情を満たす限りで,捜索・差押の際に写真撮影をすることが許されると考える。
・仮に違法な写真撮影が行われた場合,これに準抗告をすることは可能か。
上記のように,写真撮影の法的性質は検証であるから,「押収に関する処分」(430条2項)にあたらない。
よって,準抗告の提起は不可能である。このような違法は公判において争うほか無い。
最判平成2年06月27日
2 令状によらない捜索・差押
3.科学的捜査

7 接見交通権



1  一罪の一部起訴


当事者主義構造の下,審判対象を設定・変更する権限は検察官にある。
したがって,一罪の一部起訴も許される。
もっとも,親告罪の一部を非親告罪として起訴することは,被害者保護の趣旨に反し,許されないと解すべきである。

2 起訴状一本主義(256条6項)


起訴状一本主義(256条6項)の趣旨は,裁判官の予断排除にある。*
そのため,裁判に予断をあたえるおそれのある引用をすることは許されない。
もっとも,かかる記載が犯罪の構成要件要素となっている場合や犯罪事実の内容となっている場合は,審判対象の確定に必要であるから,その限りで詳細な引用も許されるとかいされる。

*実務では審判対象の確定が重視される傾向。

3 訴因

(1)審判対象論

当事者主義構造の下,裁判所の職責は,当事者の攻防を経て検察官が訴因の立証に成功したか否かを判断することにある。
そこで,審判対象は,検察官の主張する具体的な犯罪事実としての訴因であると解すべきである。
(2)訴因の特定

ア 特定の程度

そもそも,訴因の第一機能は審判対象を確定することにある。
また,あまりに詳細な記載を求めると,裁判官に予断を与えるおそれがある。
そこで,訴因は他の犯罪事実から識別しうる程度に特定されていれば足りると解すべきである(識別説)

イ 覚せい剤使用罪における訴因の特定

訴因は,他の犯罪事実から識別しうる程度に特定されていれば足りる(識別説)。
そして覚せい剤自己使用の日時・場所・方法を特定できない場合には,その期間内で複数の使用行為が考えられるため,他の犯罪事実と識別することができないとも思われる。
しかし,当該期間内での最終行為を起訴した旨の検察官の釈明がある場合は,他の犯罪と識別することができる(最終行為説)。
したがって,かかる釈明がある場合は,覚せい剤自己使用の日時・場所・方法を特定できない場合でも,訴因は特定されているといえる。

ウ 共謀の日時・場所・方法

訴因は,他の犯罪事実から識別しうる程度に特定されていれば足りると解される(識別説)。
そして,共謀の事実は,共謀共同正犯の構成要件事実であるから,日時・場所・方法の特定がなければ,他の犯罪と識別することができないとも思われる。
しかし,実行行為が特定されるのならば,その実行のもとになった共謀は,1つしかないといえ,他の犯罪と識別することができる。
したがって,実行行為が特定されていれば,共謀の日時・場所・方法が特定されていなくても,訴因は特定されているといえる。
(3)訴因の変更

ア 要否

訴因は,犯罪事実そのものであるから,審理の過程で犯罪事実に変化が生じた場合には,審判対象である訴因も変更しなければならない。
もっとも,些細な事実についてまで,訴因変更を要求することはできない。
そこで,いかなる事実の変動があれば,訴因変更を要するのが問題となる。
そもそも,訴因の機能は,審判対象の特定と被告人の防御の範囲を示すことにある。
そこで,
1)審判対象の特定に必要な事項について変動があった場合には訴因変更を要する。
2)一般的に,被告人の防御にとって重要な事項で,かつ,検察官が訴因において明示した事項については,訴因変更を要すると解すべきである。
ただし,
3)具体的な審理の経過に照らし,被告人に不意打ちを与えるものではないと認められ,かつ,判決で認定される事実が訴因と比べて被告人にとってより不利益であるとはいえない場合には,例外的に訴因変更を要しないと解される。

イ 可否

(ア)公訴事実の単一性
 実体法上一罪であれば,1つの手続で処理されるべきである。
 また,かかる場合に訴因変更を認めても,被告人の防御に不利益とならない。
 そこで,公訴事実の単一性は,実体法上の罪数を基準に,犯人と犯罪が単一のときに認められると解すべきである。

(イ)公訴事実の同一性

 312条が「公訴事実の同一性」とは,被告人の防御の利益を害しない範囲,すなわち,新旧両訴因における日時・場所・罪質等の基本的事実が社会通念上同一である場合をいうと解すべきである。
 そして,基本事実が社会通念上同一かは,1)事実的共通性(日時・場所・被害者などの基本的事実の共通性),及び,2)非両立性(一方の事実が認められると他方の事実が認められない関係にあること)によって判断すべきである。

(ウ)訴因の順次的変更の可否

 たしかに,中間訴因を介在させることで訴因変更の範囲が広がると,被告人の防御の支障が生じるうるとも思える。
 しかし,当事者主義構造のもと,審判対象の設定・変更は検察官の権限であるから,訴因の同一性の判断は新旧両訴因を基準とすべきである。
 また,「公訴事実の同一性」とは基本的事実が社会通念上同意津であることをいうから,新旧訴因で防御の範囲は重なるところが多いし,訴因変更の範囲には限界があるといえる。
 したがって,第1訴因と第2訴因および第2訴因と第3訴因の間にそれぞれ同一性があるならば,順次,変更することができると解される。

(エ)時期的限界

【基本的論証】
 結審直前や長期審理後の訴因変更は,被告人の防御活動に著しい不利益を及ぼす。
 とすると,検察官が突如として不意打ち的に訴因を変更請求することは,権利濫用的な訴訟活動として,訴因変更に時的限界が認められるべきである。
 そして,権利濫用にあたるか否かは,審理の期間と成熟度,被告人の受ける不利益,訴因変更の機会の有無などを総合考慮して,事案に即して実質的に判断すべきものと解する。
【短文論証】
 訴因変更の権限も濫用は許されない(規則1条2項)。
 そこで,訴因変更に時間的限界を認め,変更の機会の有無や被告人の負担を考慮しつつ,権利濫用と評価できる場合には,訴因変更を否定すべきである。

ウ 訴因変更命令

(ア)形成力の有無 

 当事者主義構造のもと,審判対象を設定し,変更する権限は,あくまで検察官にある。
 したがって,裁判所の訴訟指揮である訴因変更命令に従う義務はあるが,仮に従わないとしても,訴因を変更する効果(形成力)はないと解される。

(イ)訴因変更命令の義務性

 312条2項は,裁判所に訴因変更命令の権限を与えたにとどまり,訴因変更を命じる義務まで課したものではない。
 ただし,1)犯罪の重大性,2)証拠の明白性がある場合は,真実発見(1条)の見地から,当事者主義を補完するため,例外的に訴因変更命令をする義務を認めるべきである。

1 厳格な証明と自由な証明

(1) 証拠裁判主義
(2) 厳格な証明の対象

2 挙証責任の分配

3 悪性格の立証

4 違法収集証拠排除法則

5 自白法則

(1)自白法則

ア 意義
自白とは,自己の犯罪事実の全部または主要部分を認める被告人の供述をいう

イ 趣旨
319.1は,文言上,任意にされたかを問題としている。
そして,任意性に疑いがある自白は虚偽のおそれがあり,誤判のおそれを生じる。
また,不任意の自白は供述の自由を侵害するため,これを証拠として許容することは,適正手続(憲法31)に反し許されない。
そこで,
1)虚偽の自白を誘発する状況の有無(虚偽誘発状況)
2)被告人の供述の自由を侵害する状況の有無から,任意性に疑いがある場合(自由侵害状況)
は,かかる自白の証拠能力を否定すべきである(任意性説)。

ウ 反復自白(任意性説)
違法な取調により得られた自白(第一自白)に引き続き得られた同一内容の自白(第二自白),すなわち反復自白に証拠能力は認められるか。
たしかに,第二自白を得た取調では,黙秘権告知がなされ,取調べそのものに任意性に疑いを生じさせるような事情が見当たらない場合には,第二自白に証拠能力が認められるとも思える。
しかし,第一自白における任意性を否定する状況が継続している場合に,かかる状況で得られた第二自白に証拠能力を認めることは,319条1項の趣旨を没却する。
そこで,第二自白を得た取調において,捜査官が遮断義務を果たし,第一自白と第二自白との関連性が積極的に遮断されたといえる場合に,
1)虚偽の自白を誘発する状況,
及び
2)被告人の供述の自由を侵害する状況
が認められなければ,第二自白の証拠能力は肯定されると解する(任意性説)。
(2)補強法則

ア 意義

補強法則(憲法38条3項,319条2項)の趣旨は,自白偏重による誤判を防止することにある。

#いかなる事実に補強証拠が必要か。
【実質説】
補強法則(憲法38条3項,319条2項)の趣旨は,自白偏重による誤判を防止することにある。
そうだとすれば,自白の補強は自白の真実性を担保する範囲でなされれば足りると解すべきである(実質説)。
そして,自白偏重による誤判を防止できればよいのだから,自白の真実性は,補強証拠と相まって証明できればよいと解すべきである。

【罪体説】
思うに,自白偏重による誤判防止という補強法則の趣旨からすれば,あらかじめ定まった客観的な基準によるべきである。
そこで,犯罪事実の客観的側面の主要な部分(罪体)について補強証拠を要すると考える(罪体説)。
具体的には,何人かの犯罪行為による被害が発生したことまで補強証拠を要すると考える。


イ 補強証拠適格
補強法則(憲法38条3項,319条2項)の趣旨は,自白偏重による誤判を防止することにある。
したがって,補強証拠になるには,自白から独立性を有していることが必要である。
また,犯罪事実を立証する証拠であるから,証拠能力のある証拠でなければならない。

★被害届が補強証拠たりうるか

証拠能力:321.1-3で証拠能力あり
独立性:通常は認められる
 #捜査官に被害状況を聞いているなどの特殊事情がある場合は問題

★被告人の日記が補強証拠たりうるか

証拠能力:322.1で証拠能力あり
独立性:捜査とは無関係に記載されているならば独立性あり
(3)共犯者の自白

共犯者の自白が「本人の自白」(憲法38.3)にあたるか(#補強証拠が必要か)問題となる。

【補強証拠不要説】←判例(「練馬事件」S.33.5.28.[百A39])
補強法則(憲法38条3項,319条2項)は,自由心証主義の例外であるから,その適用範囲は厳格に解すべきである。
また,共犯者も被告人以外の第三者であることには変わりはない。
そこで,共犯者の供述は,「自白」にはあたらないと解すべきである。
したがって,共犯者の供述には,補強証拠は不要である。

【補強証拠必要説】
たしかに,共犯者は被告人以外の者であるから,共犯者の自白は「本人の自白」にはあたらない。
しかし,被告人が否認している場合には自白した共犯者による引っ張り込みの危険があるから,共犯者の自白に補強証拠を不要とすると誤判防止という補強法則の趣旨を没却するおそれがある。
そこで,共犯者の自白を「本人の自白」と同視し,共犯者の自白にも補強証拠が必要と考える。

6 伝聞法則

(1)意義
(2)非伝聞
ア 言葉が要証事実となっている場合
イ 行為の言語的部分
ウ 情況証拠である場合
エ 現在の精神状態の供述
(3)伝聞例外
ア 検面調書(321.1-2)
★前段列挙事由の解釈
★特信情況(後段)の判断方法
イ 特信文書(323-3)
ウ 「真正に作成された」旨の供述(321.3,4)
エ 実況見分調書
(4)再伝聞
(5)同意書面(326条)
(6)弾劾証拠
(7)写実的証拠
ア 写真
イ 録音テープ

1 択一的認定

2 一事不再理効

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

【PR】



管理人/副管理人のみ編集できます