曹丕「於玄武陂作」
私は曹丕・曹植の兄弟で本日朝見ていた夢のことを書きました。その中に
と書きました。そして私には「兄弟」ということで、曹丕の次の詩が思い浮かびました。
於玄武陂作(註1) 玄武陂に於て作る 曹丕
兄弟共行遊 兄弟(けいてい)ともに 行遊(こういう)せんとし
驅車出西城 車を駆りて 西城に出ず
野田廣開闢 野田(やでん) 広く開闢(かいびゃく)し
川渠互相經 川渠(せんきょ) 互いに相い経(ふ)る
黍稷何鬱鬱 黍稷(註2) 何ぞ鬱鬱(うつうつ)たる
流波激悲聲 流波(りゅうは) 激して悲声あり
菱茨覆緑水 菱茨((註3) 緑水を覆い
芙蓉發丹榮 芙蓉(ふよう) 丹栄(たんえき)を発す
柳垂重蔭緑 柳は垂れて 重蔭(ちょういん)緑に
向我池邊生 我に向かいて池辺に生ず
乘渚望長州 渚に乗(じょう)じ 長州を望めば
羣鳥讙譁鳴 羣鳥(ぐうちょう) 讙譁(かんか)して鳴く
萍藻泛濫浮 萍藻(へいそう) 泛濫(はんらん)して浮かび
澹澹隨風傾 澹澹(たんたん)として 風に随いて傾く
忘憂共容與 憂いを忘れ 共に容与(ようよ)し
暢此千秋情 此の千秋の情を暢(の)ぶ
(註1)玄武陂(げんぶは) 陂は土地の傾斜したところ。玄武池の堤の
あたり。
(註2)黍稷(しょしょく) 黍はもちきび、稷はするしきび。
(註3)菱茨(りょうき) ひし草とかや
兄弟たちとともに行って遊ぼうとして
馬車を走らせて城の西に出た
原野は広く開墾され
川や溝が開かれ縦横に入り混じっている
もちきびやうるちきびは青々と茂っていて
流れゆく川の水は激しく悲しそうな声をあげている
ひし草やかやが緑色した水を覆うように繁茂し
はすは赤い色の花を咲かせている
柳の枝は垂れ下がり緑の木陰をつくり
池のほとりで私たちを迎える
渚に臨んで長い中州を望めば
多くの鳥が 群をなして鳴いている
うき草がみなぎるように波の上に浮かび
ゆったりと風に揺れて動く
憂いを忘れて共にゆったりした気持ちになり
この千年を越えるゆったりした気持ですごしていこう
やはり、私は曹丕の詩が好きです。これもまたいい詩ですね。
建安13年(208年)に曹操が、玄武池を開削して、ここで水軍の訓練をさせることにしました。この池の景色がこの詩に表れています。この詩を詠んでいますと、この池が実にいいところだったのだろうと思えます。
美しい池の光景と、それを見て、それをそのまま詩で表現している作者の心が、詠んでいる私たちの心にもそのまま伝わってきます。この池は軍事演習だけではなく、楽しい遊戯の場でもあったのでしょう。
ここで一緒に遊んだ兄弟たちが誰と誰であったのかは今は判りません。でもこうして、この池を見ている曹丕の姿、この池を語る曹丕に私は限りなく親しみを感じています。
曹丕はいい詩人ですね。弟曹植、父曹操にも負けていない偉大な詩人だったと思います。 (2005.09.10)
周の三曹の詩
曹操「苦寒行」
曹操「短歌行」
曹丕「燕歌行」
曹丕「於玄武陂作」
曹丕「短歌行」
曹丕「釣竿」
曹植「吁嗟篇」
曹植「七歩詩」
曹植「野田黄雀行」
>しかし、なんでこんな夢を見たのかな? > 曹丕も曹植も本当は仲のいい兄弟 >だと思っている私の心の中の何かが、あん >な夢を見させてくれたのかな?
と書きました。そして私には「兄弟」ということで、曹丕の次の詩が思い浮かびました。
於玄武陂作(註1) 玄武陂に於て作る 曹丕
兄弟共行遊 兄弟(けいてい)ともに 行遊(こういう)せんとし
驅車出西城 車を駆りて 西城に出ず
野田廣開闢 野田(やでん) 広く開闢(かいびゃく)し
川渠互相經 川渠(せんきょ) 互いに相い経(ふ)る
黍稷何鬱鬱 黍稷(註2) 何ぞ鬱鬱(うつうつ)たる
流波激悲聲 流波(りゅうは) 激して悲声あり
菱茨覆緑水 菱茨((註3) 緑水を覆い
芙蓉發丹榮 芙蓉(ふよう) 丹栄(たんえき)を発す
柳垂重蔭緑 柳は垂れて 重蔭(ちょういん)緑に
向我池邊生 我に向かいて池辺に生ず
乘渚望長州 渚に乗(じょう)じ 長州を望めば
羣鳥讙譁鳴 羣鳥(ぐうちょう) 讙譁(かんか)して鳴く
萍藻泛濫浮 萍藻(へいそう) 泛濫(はんらん)して浮かび
澹澹隨風傾 澹澹(たんたん)として 風に随いて傾く
忘憂共容與 憂いを忘れ 共に容与(ようよ)し
暢此千秋情 此の千秋の情を暢(の)ぶ
(註1)玄武陂(げんぶは) 陂は土地の傾斜したところ。玄武池の堤の
あたり。
(註2)黍稷(しょしょく) 黍はもちきび、稷はするしきび。
(註3)菱茨(りょうき) ひし草とかや
兄弟たちとともに行って遊ぼうとして
馬車を走らせて城の西に出た
原野は広く開墾され
川や溝が開かれ縦横に入り混じっている
もちきびやうるちきびは青々と茂っていて
流れゆく川の水は激しく悲しそうな声をあげている
ひし草やかやが緑色した水を覆うように繁茂し
はすは赤い色の花を咲かせている
柳の枝は垂れ下がり緑の木陰をつくり
池のほとりで私たちを迎える
渚に臨んで長い中州を望めば
多くの鳥が 群をなして鳴いている
うき草がみなぎるように波の上に浮かび
ゆったりと風に揺れて動く
憂いを忘れて共にゆったりした気持ちになり
この千年を越えるゆったりした気持ですごしていこう
やはり、私は曹丕の詩が好きです。これもまたいい詩ですね。
建安13年(208年)に曹操が、玄武池を開削して、ここで水軍の訓練をさせることにしました。この池の景色がこの詩に表れています。この詩を詠んでいますと、この池が実にいいところだったのだろうと思えます。
美しい池の光景と、それを見て、それをそのまま詩で表現している作者の心が、詠んでいる私たちの心にもそのまま伝わってきます。この池は軍事演習だけではなく、楽しい遊戯の場でもあったのでしょう。
ここで一緒に遊んだ兄弟たちが誰と誰であったのかは今は判りません。でもこうして、この池を見ている曹丕の姿、この池を語る曹丕に私は限りなく親しみを感じています。
曹丕はいい詩人ですね。弟曹植、父曹操にも負けていない偉大な詩人だったと思います。 (2005.09.10)
周の三曹の詩
曹操「苦寒行」
曹操「短歌行」
曹丕「燕歌行」
曹丕「於玄武陂作」
曹丕「短歌行」
曹丕「釣竿」
曹植「吁嗟篇」
曹植「七歩詩」
曹植「野田黄雀行」
2006年12月01日(金) 21:48:05 Modified by kozymemory