概要

エスデリアの戦いとは、蜉蝣時代の戦乱の中で、アルファ696年12月、ロードレア国軍とロッド国軍の間に起きた戦いである。

戦闘に至るまでの背景


▲696年10月における勢力図

グルファ城を奪還したロードレア国軍のバイアラスアレスは、そのまま勢いに乗ってロッド国領土へ侵攻した。
レイディック率いる後続部隊も合流し、ロードレア国軍は、戦史上稀に見る大進撃により、6つの城と13の砦を占領。
それに対してロッド国は、全軍をエスデリア平原に集結させ、国主リヴァイルシア自ら出陣。
便乗して領土に侵入してきたアル国軍を撃退したギザイアミルナスもこれに合流し、国家の命運をかけた最後の戦いを挑むこととなった。

季節は冬を迎え、元々雪深い地であったエスデリア平原は、決戦数日前から雪に覆われていた。

戦闘経緯



出陣前、リヴァイルシアは「俺はレイディックといつまでも親友としていたかった。だが、こうなった以上は俺の手で奴を討つ」と独り言を漏らしたという。
戦乱という時代は、かつて酒を飲み交わした二人を、敵同士としてこの地で対陣させることとなる。

ギザイアは、可能な限りの情報操作を行って、「ロードレア国軍が国内に侵入すれば、あらゆる街は焼かれ、略奪の憂き目にあう」と触れ回った。
その効果もあり、ロッド国軍は、兵力では負けていたが、国を守るという堅い意思の元、兵の士気は天を突く勢いであった。

ギザイアは、この士気を利用して先手を打ち、短期決戦で勝利を掴む作戦をたてる。



しかし、兵の士気の高さは、ラディアの敵討ちに燃えるバイアラス隊も同じであった。
ロッド国の猛将ボルドは、戦局を一気に有利にするため、戦端が開くと同時に早い段階でバイアラスに一騎打ちを挑み、これに勝利してその勢いに乗ろうとするが、武運拙く返り討ちとなる。

かつてアル国のザグルスとも渡り合ったロッド国一の猛将ボルドが真っ先に討たれたことで、ロッド国軍は早々に崩壊するかと思われたが、レアミルナスの冷静、というより二者の性格から、他の部隊のことなどまったく意に介さない指揮ぶりから、大崩れすることはなかった。



バイアラス隊が前進を進める一方で、他の戦線はロッド国が押しつつあった。
グロライドは、レアの猛攻におされ、アルヴァドスミルナスの巧みな用兵に苦戦を強いられ、レイバードロール押し戻される。
しかし、その間に密かに移動したヴェリア部隊が用意していた策に入る。
グルファ城ではアレスが岩石を使ったが、今度は雪玉であった。
既に決戦の数日前に密かに工作部隊に準備させていたヴェリアは、坂道を利用して次々とギザイアの陣に人の大きさくらいある雪玉を落としていくが、それが陣地に降り注いだ所で、一瞬混乱するにすぎない。
ギザイアは、この様な児戯で本気で軍勢を潰そうと思っているのかと一瞬ヴェリアを嘲笑するが、すぐさま冷徹な判断力を取り戻すと、雪玉を自らの剣で真っ二つに割った。
そこで彼が見たのは、雪玉の中に木箱で覆われた火薬であった。
彼がヴェリアの真に目的に気付き、撤退命令を出すよりも早く、雪玉は一斉に爆発し、雪原を溶かしながら、兵士達を炎に飲み込んでいった。



自分たちが優勢だと信じていた前線部隊は、突如として後方の軍師の陣に火柱があがり、煙が出たことに混乱する。
後方に相当な数の別動隊が現れたのではないか、既に本陣も軍師の陣も壊滅して、退路を断たれたのではないかと思ったロッド国軍は、それまでの前進だけを考えていた動きが乱れる。
その瞬間を狙い、ロードレア国軍はアレスの指示のもと、一気に攻勢に出た。

前線で押していた各部隊は、絶妙なタイミングで投入された後続部隊の前に、それぞれが同時に複数の部隊を相手にすることとなり、気勢をそがれて押し戻されていく。

士気の高さを利用して、一気に攻勢を仕掛けて押し切るという基本戦術であったロッド国軍は、ここが限界と悟り、ギザイアの進言により、リヴァイルシアは素早く軍勢を撤退させる。
ギザイアは、勝利の策を考えると同時に、既に敗北した時の事も考えており、撤退する街道に何段階も伏兵を用意して、追撃するロードレア国軍に奇襲を仕掛けることで足止めし、それほどの被害を出さずに主力部隊を撤退させた。
だが、前線に取り残されたレアと、ボルド部隊の敗残兵は、戦場から脱出できずにそのままロードレア国に降伏する。

狂い始める歯車

この時レイディックは、「ロッド国にかける情けはない、将兵共々皆殺しにしろ」とアルヴァドスに命じた。
これまでのレイディックからは想像も出来ないこの言葉に、アレスバイアラスアルヴァドスレイディックを諌めた。
中でもアレスは、恐怖で相手国を制する事は結果的に仲間を失うことになるとレイディックを強く説得するが、彼は我を忘れ、アレスを殴りつけて命令を徹底させた。
アルヴァドスは、その姿を見てこれ以上逆らうことをせず、速やかにロッド国の将兵を雪原に生き埋めするという形で処刑した。
ギザイアが戦いの前に振りまいた噂を、図らずもレイディック本人が本当に実行してしまうという皮肉な結果となった。

レアは、ヴェリアのとりなしにより、ロードレア国の将として働くことで唯一許されたが、レイディックと反り合いが合わず、翌年ベルザフィリス国へ亡命することになる。

なお、この突然の捕虜虐殺には一つの背景がある。
捕虜となった兵士の一人が、自分だけ助かろうと「実はあの時ラディアに毒矢を放った兵士が、この部隊にいる」と進言した。
これを聞いたレイディックは、実行犯を探そうとするが、最初から虚偽だったことから、当然犯人が見つかることはなく、多くの兵士が自分だけ助かろうと他人を売る発言を重ねた。
舞姫散華から2年がたっていたこともあり、ある程度冷静さを取り戻していたレイディックだが、アリガルの件と、兵士たちの二転三転する言動に再び怒りが沸き起こり、ついにアルヴァドスに捕虜を生き埋めにする様に命じることとなる。

アルヴァドスは、この後何度も、雪原から蘇る兵士に責められるという悪夢を見る様になったという。

戦いの結末

こうしてロードレア国軍は、ロッド国との決戦にも勝利し、更にその侵攻を進めようとしていた。
だが、それを遥か彼方から見つめるベルザフィリス国。
独眼竜ルーディアは、この時宿敵であるアル国との決着をつけるべく、開国以来最大規模となる北伐を計画していた。
アル国の先に存在するロッド国が、ここでロードレア国に併合されるのは、ベルザフィリス国にとっても好ましいことではなかった。
ロードレア国との決着をつける力はまだないと自覚しているルーディアは、間にロッド国という緩衝材を挟んでおきたかった。
そのため、軍師ディルセアは、ロッド国のためではなく、ベルザフィリス国のために密かに動き始めていた。

そして、ルバークの乱が勃発することとなる。


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