1.性被害の子という古い資料が存在しない

古い資料はどれもライダイハン=置き去りにされた混血児・生き別れたハーフ、という認識であり、「強姦により生まれた子ども」という内容の古い資料が存在しない。
例えば従軍慰安婦問題については、当時の資料・古い資料が存在する。
1944年米軍文書で朝鮮出身慰安婦について「このような偽りの説明を信じて、多くの女性が海外勤務に応募し、2、3百円の前渡金を受け取った。*1」(原文 On the basis of these false representations many girls enlisted for overseas duty and were rewarded with an advance of a few hundred yen.*2)とある。
こういう当時の資料、古い資料が「ライダイハン=強姦により生まれた子」については存在しない。
「強姦により生まれた子」という証言あるいは証言を元にしたメディア記事や有志団体の活動が出てくるのは、近年になってからである。

古い資料では普通のハーフ・恋愛の子

1996年の著書で野村進は、ベトナム現地のライダイハン向けの職業訓練校を取材している。*3
野村によると「この職業訓練学校の授業料や寮費は、すべて無料である。一九六五年から七五年のあいだに生まれた韓越混血児で、そのことの証明書がありさえすれば、誰でも入学できる」。*4
また同校運営者の韓国人牧師は野村に「父親探しをしたのは、これまでに五十人くらいですか。でも、実際に韓国で父親に会って見たら、すでに家族もあるし子供もあるしで、会わないほうがよかったとなる場合も結構ありまして」と語った。*5
さらに野村は四人姉妹がその訓練校で学んだ家庭の母親にも話を聞いている。その母親はサイゴン陥落で韓国企業駐在員の夫と生き別れたが、「主人は、やさしくて本当にいい人。あの頃が一番幸せだったねえ」と懐かしみ、新婚時代の思い出の品として東芝の扇風機を出してきたという。*6
母親は野村に「ぜひ書いてもらいたいことがあるんだけど」「韓国に帰ったきり、会いにも来なければ手紙もよこさない父親が、多すぎるんですよ。子どもたちに会いに来なさい。それができないなら、手紙ぐらい書きなさい……『元気だ」って知らせて。それだけでいいんです」と訴えたという。*7

ウィキペディアにおいてライダイハンの項目が立てられたのは2005年3月*8であるが、当時の記述は以下の通り普通のハーフという認識である。
ライダイハン2005年3月18日の版

韓越混血児(かんえつこんけつじ)とは、ベトナム戦争に赴いた韓国兵と、ベトナム人女性の間に生まれた子どもを指す。 戦争のあるところ、混血児問題は付きまとう。 韓国はベトナム戦争の参戦国であり、混血児が存在しても少しも不思議ではない。
しかし、韓越混血児問題には、退役軍人会を中心とした韓国右翼が、強い反発を示す。 韓国右翼には、「韓国は侵略されたことはあっても、侵略したことはない」との美学が存在するからである。
韓越混血児問題は、左翼ナショナリズムの立場のハンギョレ新聞がすっぱ抜いた。 自国の歴史の恥部を隠したがるのはどこの国の右翼でも同じである、と朝日新聞がハンギョレ新聞の報道を絶賛した。
韓越混血児のための養護施設がホーチミン市に存在し、韓越混血児が実在することは間違いない。

2.「ライダイハンは強姦で生まれた子」説は日本発

日本の一部では2000年代半ばから「ライダイハン=強姦により生まれた子」という認識が広まっていた。
例えばインターネット掲示板5chでは2007年7月の時点で既に当たり前のように「強姦の子ども」として語られている*9
しかし実はこの時点で「強姦により生まれた子」という資料は存在しない。
そうした証言が出てくるのはもっと後になってからである。

またウィキペディアおいて「強姦により生まれた子ども」という認識が初めて確認できるのは、ライダイハンの項目が立てられて半年以上過ぎてからの2005年11月である*10
ライダイハン2005年11月19日 時点の版

ベトナム戦争の混血児問題とは、ベトナム戦争に赴いた参戦国の兵と、ベトナム人女性の間に生まれた子供についての諸問題のことである。
戦争が起きると、必ずと言える程この混血児問題が付きまといベトナムだけの問題ではない。
韓越混血児
韓国はベトナム戦争の参戦した際、韓国軍兵士による、現地ベトナム人女性への買春やレイプなどの暴力行為を適正に統制しなかったため、数多くの混血児か生まれた。
その人数は現在1万人以上存在しているが、韓国より、謝罪や保障が全くされていない。
しかし、韓越混血児問題には、退役軍人会を中心とした韓国右翼が強い反発を示す。彼らには、「韓国は侵略されたことはあっても、侵略したことはない」との、歪んだ美学が存在するからとされる。
韓越混血児問題は、左翼ナショナリズムの立場とされるハンギョレ新聞がすっぱ抜いた。その報道について日本の主要新聞社の一つである朝日新聞がハンギョレ新聞の報道を絶賛した。
ホーチミン市には韓越混血児のための養護施設が存在する。

しかしこの時点でもやはり、「強姦により生まれた子」という資料は、存在しないのである。
証言が出てくるのはこの何年も後、2010年代になってからである。

堕胎・間引きの可能性

また強姦で仮に妊娠したとしても、堕胎等も考えられる(例 第二次大戦後の二日市保養所で引揚者の日本女性が堕胎)。堕胎は場合によってはそれほど高額・高等な技術ではなく、例えば日本では「大正から昭和初期にかけての堕胎罪対象となった年平均228人女性の堕胎原因の大半が私通か貧困が原因の堕胎であり,しかも堕胎施術者の大半が所謂取上婆によるものであった」。*11

3.ライダイハン問題の時系列

以上の時系列をまとめると次のようになる。
1996年野村進「コリアン世界の旅」 ベトナムのライダイハン職業訓練校を取材
2002年1月26日韓国東亜日報記事*12 生き別れたライダイハンが韓国で認知訴訟をして認められたという内容
2002年9月17日韓国京郷新聞記事*13 生き別れたライダイハンが写真などを頼りに韓国で父を探す
2005年3月18日ウィキペディア日本語版で「ライダイハン」の項目が登場。強姦という記述は無し。
2005年11月19日ウィキペディア「ライダイハン」項目で強姦による子どもという認識が書かれた最初
2007年7月9日インターネット掲示板5chで強姦の子どもという認識が当たり前のように語られている
それ以降強姦により生まれた子どもという証言、メディア記事、有志団体の運動が登場

4.参考−日本の類似例

衆議院予算委員会第二分科会 1957年3月29日*14

○海野三朗 私が一昨年ビルマに参りまして、向うのミョウマ・スクールの校長に会っていろいろ話を聞いたんですが、日本の軍人の落し種が約三万人ビルマにおるんです。○政府委員(中川融君)日本軍が戦争中に滞在しておりました各国におきまして、いわゆる落し種と申しますか、現地人との間に混血児が相当におるいうことは想像にかたくないのでありまして、御指摘のビルマの例も三万人という数が果して正確であるかどうか、これはわかりませんが、相当の数の混血児がおるのではないかと思います。カンボジア等におきましても、混血児がおることは現地調査に行った人が現に見てきておるのであります。インドネシアにおきましてもこれは相当数の混血児がおる、フィリピンまたしかりであります。これらの混血児の現在の待遇と申しますか、あるいは環境はどうかということになりますと、父親はほとんど皆あるいは戦死、あるいは内地に帰って来ておるということで、母親だけで育てられている。あるいは母親もいなくてみなしごになっているというケースが相当あるのでありまして、いかにも気の毒な状況であります。

衆議院・海外同胞引揚に関する特別委員会 1951年3月20日*15

○菊池委員 たとえばヤツプの離れ島、パラオの離れ島というようなところにはたくさんの同胞があるはずです。そして日本人の残した混血児が大分あるわけですが、

衆議院決算委員会 1965年4月13日*16

○吉野説明員(吉野文六) 東南アジアの文化友好協会は、なるほど設立以来日も浅い協会ではありますが、従来相当実績がありまして…戦争混血児の日本留学生優先受け入れの寄宿舎建設運動として、今度約二億円目標の運動を起こしており

参議院・本会議 1992年1月30日*17

○千葉景子 諸外国の人々との信頼関係は、単にアジアだけではありません。例えば、日本占領下のインドネシアで日本兵とオランダ国籍の現地女性との間に生まれた推定八百人もの混血児が今オランダで生活しています。○国務大臣(宮澤喜一総理大臣) オランダ国籍のインドネシア女性と日本兵の子供たちの父親捜しというお話がございまして、オランダ政府からの要請がございまして、従来から誠意を持って対応してまいったところでございますけれども

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