■1945年6月24日付第132海軍航空隊の戦闘詳報は、台湾から沖縄宮古基地に移動途中与那国島で不時着した特攻機(93式中間練習機=赤とんぼ)について「七機共同様なる故障生起せるとは思はれず…特攻精神に欠くる点あり」と記す。*1
四、戦果及被害
(二)被害
一、六月一日一七三〇石垣に向け宜蘭基地(※台湾)発宜蘭一〇五度五〇浬の洋上に於てスコールに突入発動機不調与那国島に不時着七機機体大破
二、六月五日一九〇〇宮古に向け石垣基地発離陸直後燃料ポンプ故障不時着機体大破

六、参考 今次中練七機共スコールにて発動機不調与那国島牧場に不時着せる事例は七機共同様なる故障生起せるとは思はれず小隊長又は一部の者の特攻精神に欠くる点ありと認めざるを得ざるは遺憾なり
(該搭乗員は二〇五空戦闘機隊より入隊せるものにして既に零戦特攻出撃四−八回のものなり)

※作戦は虎尾基地(台湾)→宜蘭基地(台湾)→石垣基地→宮古基地→特攻。使用機体は93式中間練習機(赤とんぼ)に250キロ爆弾搭載
特攻が志願ならこういうことは起こるはずがなく、強制的に特攻させられたと考えられる。

■1945年5月18日付の台湾海軍航空隊の戦闘詳報では戦訓の項で「特攻隊に関し」と題して「其の人物技倆の如何に拘らず機種により飛行隊員全員特攻隊員を任命せられ」「然るに特攻隊員を命名せられたる者の内には…一旦攻撃に出発するも何等かの理由を見付けて中途より引返せること再三に及べる者あり」と記す。*2
七、戦訓
特攻隊に関し
神風特別攻撃隊は昨年十月敵機動部隊菲島方面に来襲次いで敵攻略部隊レイテに上陸を開始せる当時菲島に於て作戦中の第二〇一海軍航空隊戦斗機搭乗員の間に適航空母艦群撃滅には爆装戦斗機を以て必死必殺の体当り攻撃を敢行する以外撃滅の途無しと云ふ烈々たる斗魂燃え上り第一航空艦隊司令部に於ても其の必要性を認められ敷島隊員を其の第一として生誕せるものにして当時の特攻隊員は特攻隊員を志願せる多数搭乗員中より人物識見技倆精神力等に於て真に優秀なるものを厳選の上任命せられ之等搭乗員は特攻隊員たることを最上の名誉とし心中更に雑念無く只一途に如何にせば敵艦を屠り得るやの一念に徹し生前既に神の如き心境にあり日常の態度動作は観る者をして自ら頭の下るを覚へしめ之が為其の攻撃は極めて猛烈果敢にして其の戦果又極めて大なるものありしと聞く、然るに其の後戦局の推移に応じ特攻隊員の任命も次第に変遷し来り其の人物技倆の如何に拘らず機種に依り飛行隊員全員特攻隊員を任命せられ或は夜間行動能力無き為特攻隊員を任命せらるるもの等多数生じ来れり 当部隊指揮下に編入せられたる特攻隊員は殆んど全部右の如き情況に依り特攻隊員を任命せられたるものにして一部に於ては真に特攻隊指揮官或は特攻隊員として相応しき搭乗員ある反面一部には其の人物技倆精神力等に於て極めて見劣りする者あり数度に亘る対機動部隊及対沖縄周辺敵艦船特攻々撃に於て克服し得べかりし発動機不調を理由として引返し或は途中基地に不時着し又機動部隊索敵攻撃に於て零戦特攻隊が畧々(?)指令攻撃地点にて敵を発見攻撃せる状況に於てすら尚且敵を発見し得ず或は所命以外の索敵を実施せる為敵を発見せずして引返せるもの極めて多数に及べり
以上の経過より見て特攻隊の取扱には特に左の諸項に留意するを要す

一、特攻隊指揮官には他の任務を与ふる事なく専心特攻隊の教育指導に当らしむるを要す
特攻隊は其の使用極めて機微なる点ある為指揮官たるものは各隊員個人個人に就き其の日常行動は勿論其の精神的方面に於ても深く内部迄観察研究の上之を指導教育するを要し之が為には特攻隊指揮官をして特攻隊教育に専念せしむるを要す
本務を持ちたる飛行機隊式官の指揮下に特攻隊を編入するは幹部不足の現状に於て止むを得ざる処置と雖も特攻隊の指導教育には十全を期し難し

二、特攻隊員と雖も一般搭乗員と特に差別的待遇を与ふることなく厳格に指導教育するを要し温情主義は禁物なり
特攻隊員は必死必殺の体当り攻撃を実施して始めて特攻隊員として其の崇高なる精神を称揚せらるるものにして特攻隊員として命名せられたりと雖も特攻々撃を実施する迄は一般搭乗員と何等異る所なし然るに特攻隊員を命名せられたる者の内には其の真意を解せず特攻隊員たることに単なる優越感を感じ日常の言語動作等に衒気あるも心中更に烈々たる斗魂なく一旦攻撃に出発するも何等かの理由を見付けて中途より引返せること再三に及べる者あり
一方特攻隊指揮官としては特攻隊の使用極めて機微なる点ある為日常彼等を取扱ふに当り必然的に温情主義に陥り優遇せんとするは人情の然らしむる処なりと雖も特攻隊員の素質に応じ其の指導教育に寛厳宜しきを得ざれば却て逆効果を生じ特攻隊員をして精神的に堕落せしめ遂には有事の際御役に立ち得ざるに至る懼あり
尚現下の如く昼夜を問はず絶対制空権を敵に委ねたる情勢に於ては特攻隊以外の攻撃隊と雖も其の実質に於て又精神に於て何ら特攻攻撃と差別なく換言すれば搭乗員たる者凡て之特攻隊員なり
而して現在の特攻隊員大部の如く其の機種に依り或は技倆に依り昼間敵制空権下に常道的に使用せんとするも到底成功の算無く或は夜間行動能力無く特攻々撃に於てのみ唯一の使用の途ある状態に於ては特攻々撃を実施し得ざる特攻隊員は搭乗員としての価値なしと云ひ得べく特攻隊員たることに殊更に誇を感じ或は優越感を感ずる理由なし 故に特攻隊指揮官たる者は此の点を各特攻隊員に充分認識せしめ誤れる観念を排除せしむると共に如何にせば特攻隊員として御役に立たしめ得るやを専心研究指導するを第一とし誤れる温情主義に依り特攻隊員を精神的に堕落せしめざるを肝要とす

■特攻機を送り出す立場だった中将は「某軍曹はまた帰って来た。エンジンの不調は完全に直ったがまた帰って来たと云ふような話が予の耳に入らぬでもなかった」と述べ、また別の少将は「故意に不時着して攻撃を回避したる者」の存在に言及している。*3

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