シャクティアナ領遠征は、一見すると六界連合軍の快進撃に見えたが、地盤を持たない六界連合軍にはそれほどの時間的余裕はなく、エルドバルン占領後、すぐにでも進軍を再開したかったが、帝王軍の包囲網により身動きがとれず、時間だけが過ぎていた。
しかし、帝王軍にしても、いつまでも睨みあいを続けるつもりはなく、自分達に最も有利な戦場に連合軍を誘い出すこととなった。
「南方の連合軍が周辺諸国を平定して北上をしてきたため、主力部隊が引き返した」という噂がながれ、これに乗じて連合軍は進軍。しかし、これは敵を決戦の地におびき出す罠であり、シャクティアナ帝国軍はすぐさま防衛の体勢をとり、両軍はエリス・ラゴン平原にて対陣した。
後世、一連のかけひきに関しての評価は両極端に別れている。
「連合軍は帝王軍の罠にかかり前進した」という説と、「連合軍はこの罠を看破していながら、決着をつけるため、自ら死地に赴いた」という説。
二つの説は互いに歩み寄りをみせることなく、後世の歴史家に決着のつかない論争を提供することとなる。
ただひとつ興味深いのは、シャクティアナ帝国で書かれた物語では罠は看破されていたと記され、アルファ各国で書かれた物語では、罠にかかり誘い出されたと描かれている。
それは、互いが互いを強敵として認め、尊敬すら感じていた表れであった。
攻撃側 | 守備側 | |||||||||
六界連合軍 | 軍勢 | シャクティアナ帝国軍 | ||||||||
参戦国 | ||||||||||
総兵力83600 | 兵力 | 総兵力87700 | ||||||||
サルファー | 総指揮 | ラスブロス | ||||||||
エリシア | 軍師 | ヘドゥラ | ||||||||
主要参戦者 | ||||||||||
本隊【六界連合軍本陣部隊】兵力9600 | 本隊【シャクティアナ帝国第1部隊】 兵力9500 | |||||||||
サルファー | ジャル | ガル | ロディ | ラスブロス | ヘドゥラ | ライプリッヒ | ||||
【ヴァン・フレイ国部隊】兵力7100 | 【シャクティアナ帝国第1部隊】 兵力8800 | |||||||||
アゼル | ティアナ | ザグリード | ||||||||
【アーズ国部隊】兵力8000 | 【シャクティアナ帝国第3部隊】 兵力8000 | |||||||||
アリン | トウマ | サウラ | グラスシード | |||||||
【サルディーシャ国部隊】兵力4900 | 【シャクティアナ帝国第4部隊】 兵力8500 | |||||||||
カルス | ガディア | クルス | バーナ | イルザ | ||||||
【サザン・アイ部隊】兵力6000 | 本隊【シャクティアナ帝国第5部隊】 兵力8800 | |||||||||
ルティエ | レイス | サンド | エリシア | ルーイン | ||||||
【フレイミスト・モルコア部隊】兵力5600 | 【シャクティアナ帝国第6部隊】 兵力7000 | |||||||||
レンゲ | スレイマン | ローラル | ||||||||
【クロスロード部隊】兵力5500 | 【シャクティアナ帝国第7部隊】 兵力5500 | |||||||||
グラーバル | ミッドガルツ | マルラ | シュバイン | |||||||
【シルティア部隊】兵力4500 | 【シャクティアナ帝国第9部隊】 兵力4800 | |||||||||
ジュディス | クリスアーノ | |||||||||
【竜騎兵団】兵力7300 | 【シャクティアナ帝国第10部隊】 兵力6200 | |||||||||
ロリスザード | シーナ | バルザック | エミリィ | |||||||
【獣王部隊】兵力7300 | 【シャクティアナ帝国第11部隊】 兵力5500 | |||||||||
霊虎 | ガイラス | 黒狼 | 龍牙 | |||||||
【ケイニー・モズト部隊】兵力7000 | 【シャクティアナ帝国第12部隊】 兵力5000 | |||||||||
マルキィ | ヴィル | サヌア | リーザス | レイア | ||||||
【ヴァルキリア部隊】兵力6500 | ||||||||||
ベチカ | ストライア | |||||||||
【アルビオス部隊】兵力4300 | ||||||||||
「余は随分と寛大な男だった様だ、わざわざ敵の決戦の希望に応えてやるとはな。だが、余と刃を交えるということが、奴らが想像していた絵空事とまったく異なる結末になる事を、思い知らせるのだ……奴らには、我が領土を騒がした報いとして、自らの血で敗北の戦記を綴らせよ」
長きに渡りシャクティアナ帝国皇帝の地位に君臨したラスブロスが、自ら兵を率いて出陣し、将兵の士気は最高潮に達し、両軍は真正面からの決戦へと突入した。
最前線となった中央戦線においては、サヌア傭兵団が早くもルーインと衝突。
南西戦線においては、包囲網を作ろうとするローラルを、ミッドガルツ、グラーバルが食い止める。
北東戦線は、ジュディス、クリスアーノがバーナ、イルザと対陣。
シャクティアナ国時間 10時40分
六界連合軍の善戦によって中央戦線の戦局は膠着、ロリスザードは、敵部隊を突破して、サヌアたちを援護する予定であったが、帝王親衛隊であるザグリードが自ら指揮をとるべく前線へ向かう。
これにより、サヌア傭兵団の援護に向かう筈だったロリスザード、バルザック、エミリィは、親衛隊の精鋭との戦いに集中せざるを得なくなり、それまで彼らが戦っていた部隊は、かわって前線に到着したカルスたちが引き受けることと成った。
シャクティアナ国時間 11時30分
各戦線で先に綻びを生じ始めたのは六界連合軍の方であった。
その穴を埋めるため、南西戦線ではレンゲ、スレイマンが援軍に向かう。
北東戦線においては、ジュディス、クリスアーノの伏兵により、一度はイルザを罠にかけたかと思われたが、それを先読みしていたイルザが二段階の布陣で攻め込み、伏兵を一瞬にして打ち破ったため、サヌアたちが援軍に向かった。
被害は戦場で戦う将兵だけではなく、戦場を走り回る伝令や、偵察のため各地に散っていた隠密にまで至り、敵本陣の情報を掴む為、深入りしていたシーナとクルスにも攻撃が及び、敵本陣の貴重な情報と引き換えに、驚異的な生還率を誇っていたクルスが戦死する。
シャクティアナ国時間 13時10分
シュバインが前線に入り、アルビオス部隊を壊滅にまで追い詰める、これに対してビーストバリア国部隊が出陣、またサヌア傭兵団から派遣されたレイア、リーザスも到着し、シュバインと交戦状態となる。
南西戦線においては、グラスシードが一気に戦局を決するべく前進を開始、六界連合軍は更なる苦戦を強いられていた。
シャクティアナ国時間 14時20分
サルファーの決断により、全軍に総攻撃の合図が下される。
いまだにシャクティアナ帝国前線を突破できず、むしろ押し返されつつあったこともあり、この突撃はサルファーにとって最大の賭けであった。
シャクティアナ国時間 14時50分
ローラルは、目の前の陣を突破すれば連合軍を包囲できる為、突撃を何度も仕掛けたが、グラーバルの勇戦により阻まれていた。
グラーバルの騎馬部隊を自由に動かし、マルラ、ミッドガルツが守備を固める布陣は敵の進撃を食い止めていたが、グラスシード軍の到着により再び南西戦線はおされ始める。
しかし、北東戦線においてはイルザが、サヌアとの戦いの末に戦死、ここにきてようやく連合軍が一つの戦局で優勢に動き始めた。
シャクティアナ国時間 15時20分
優勢とはいえ、いまだ膠着した戦局に、ラスブロスは、自ら本陣を前進させる。
シャクティアナ帝国将兵の士気は一気に上がり、あえて有利な守りを捨てて攻めに転じたこの前進に、主導権を握りかけた連合軍の一か八かの賭けは失敗に終わり、再び守勢に回ることとなる。
シャクティアナ国時間 15時40分
エリシアは、部隊を動かさず、両軍の動きをひたすら見つめ続け、決定的な働きができるチャンスを待ち続けた。
そして、ついにそのときが来たと、部隊を一気に北上させ、北東戦線へ移動中の敵を襲撃、北東部隊を孤立させることに成功した。
中央決戦においては、連合側から寝返ったシュバインがレイアとリーザスによって戦死、しかし、強敵を求め続けたバルザックが、かつての同胞だったザグリードに討ち取られる。
南西戦線では、グラスシード、ローラルの攻撃によりマルラ、ミッドガルツが戦死、かろうじて持ちこたえていた陣が突破されつつあったが、グラーバルの奮戦、ティアナ、アゼルの支援により最後の一枚の壁で戦線を支えた。
シャクティアナ国時間 16時20分
シュバインの穴を埋めるべく、ライプリッヒが前線に向かい、ラスブロスはさらに本陣を前進させる。
北東戦線では、孤立しながらも奮戦したバーナもついに力尽きて戦死。
そして、サウラは騎馬を奪うと、ただ一騎で戦場を駆け抜け、ラスブロス本陣へと突入、ラスブロスに剣を振り下ろす。
混戦の中、単騎だからこそ見逃された奇跡の突撃であったが、二人の一騎打ちは、ラスブロスの静止を聞かず横槍を入れた部下たちによって遮断され、サウラは脱出、生還を果たす。
ザグリード、ルーインといった、指揮官としてより、一人の戦士として名を馳せた将達が、一気に攻勢を仕掛け、ルーインによってヴィルが討ち取られるが、そのルーインもラスブロスとの戦いから舞い戻ってきたサヌアによって討ち取られた。
しかし、南西戦線がほぼ壊滅し、そこから殺到する軍勢に連合軍が包囲されるのはもはや時間の問題となっていた。
そのとき、エリシアより各部隊に伝令が到着する。その伝令を聞いた各部隊は、一斉に四散して撤退をはじめた。
それは、後退とはとても呼べない蜘蛛の子を散らすかの様な無秩序な壊走であったが、それらは全て計算の上のことであり、逆に四散されることで、追撃も散開してしまい、連合軍は比較的損害を出さずにそれぞれの潜伏場所へと向かった。
一見無秩序に撤退したかに思われた六界連合軍だが、エリシアの徹底した下調べにより、それぞれの部隊は指定された土地に潜伏していた。そして、撤退したと見せかけて、凱旋する部隊に紛れていたサヌア傭兵団が、帝都に潜入、ラスブロスに勝利の祝い酒を持ってきた町民を買収してその酒樽に潜り込み、ラスブロスへの強襲を仕掛けた。
これはもはや、戦術というより、おとぎ話か伝説の範疇であったが、もはやそれに賭けるしかエリシアには選択肢が残されていなかった。
サヌア、ロリスザード、レイア、リーザス、シーナ、そして僅かな傭兵がラスブロスただ一人を狙って一気に襲撃を仕掛ける。
そして、それに呼応して、帝都を取り囲む様に、四方から同時に潜伏していた全部隊が殺到、それぞれが同時に「自分達こそ六界連合軍本陣部隊」と宣言しながら攻撃を仕掛けた。これもエリシアの指示通りだが、既に兵力の差は歴然としていた為、サヌア達の強襲を成功させる為の陽動と時間稼ぎであり、サヌア達が失敗すれば自分達もここで全滅するという運命を共有した最後の賭けであり、実際この無謀な突撃により、ガディア、レイスが戦死している。
サヌアをラスブロスの元へ向かわせる為、ロリスザード、レイア、リーザスが次々と落命、しかしグラスシード、ザグリードも討たれ、ついにラスブロスの元にサヌア一人がたどり着き、激しい戦いの末、帝王を討ち取る。
これはもはや、戦術というより、おとぎ話か伝説の範疇であったが、もはやそれに賭けるしかエリシアには選択肢が残されていなかった。
サヌア、ロリスザード、レイア、リーザス、シーナ、そして僅かな傭兵がラスブロスただ一人を狙って一気に襲撃を仕掛ける。
そして、それに呼応して、帝都を取り囲む様に、四方から同時に潜伏していた全部隊が殺到、それぞれが同時に「自分達こそ六界連合軍本陣部隊」と宣言しながら攻撃を仕掛けた。これもエリシアの指示通りだが、既に兵力の差は歴然としていた為、サヌア達の強襲を成功させる為の陽動と時間稼ぎであり、サヌア達が失敗すれば自分達もここで全滅するという運命を共有した最後の賭けであり、実際この無謀な突撃により、ガディア、レイスが戦死している。
サヌアをラスブロスの元へ向かわせる為、ロリスザード、レイア、リーザスが次々と落命、しかしグラスシード、ザグリードも討たれ、ついにラスブロスの元にサヌア一人がたどり着き、激しい戦いの末、帝王を討ち取る。
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