▲692年8月における勢力図
ロードレア国は、ロー・レアルス国との一大決戦となったレザベリアスの戦いに勝利をおさめ、そのままレイディックの東征へと向かった。
これに対してロー・レアルス国軍は、最初から旧アゾル領土を捨てることで国境の防衛をかろうじて固めることに成功した。
カルディス戦死の報を聞きつけた周辺諸国は、その話が真実かを試す意味も兼ねて、次々とロー・レアルス国へ威力偵察を行うが、ルディック国は既に決戦を挑むほどの戦力がなく、シャリアル国も半信半疑だったことから中途半端な派兵に留まり、国境の指揮官たちがかろうじて撃退する。
しかし、リューグ国軍はシリナを指揮官に、大軍勢をルーザロゥ城へ派遣する。
今回の出征には、自分の才能を見せて更なる指揮権の拡大を狙うキルレイツと、自分の才能を隠しつつ、将来の政変の為に存在感だけは見せたいベルザウスという、二人の野望が渦巻いていた。
ロー・レアルス国軍は、籠城戦の守勢に定評のあるグフスが指揮をとるが、この時ばかりは他方面の援軍に兵士を派遣した直後であり、絶望的な状況での戦いとなった。
だが、大軍をもってルーザロゥ城へ向かうリューグ国軍にも、内部にいくつかの問題点を抱えていた。
キルレイツは、新参者でありながら才能を見せ、大きな指揮権を持つが、ガザ、ノードゥといった古参の武断派はことごとく彼と対立。
また、既にこの時には心の中で簒奪の計算をしていたベルザウスも、この辺で自分の名前を売り込むべく、敵軍の伏兵の可能性を指摘する。
彼の進言を、「臆病な文官の世迷言」と聞き入れない前線の武官たちだが、ベルザウスにとっては今回はそれで充分であり、それ以上強くは口を出さなかった。
そして、彼の予期した通り、城に立てこもっていると見せかけて、密かに外に伏せていたニールス、ユスティア等が率いるロー・レアルス国軍がリューグ国軍に奇襲を仕掛ける。
この奇襲により、リューグ国軍は出鼻をくじかれるが、後方から駆け付けたキルレイツ、エルドスが伏兵部隊を撃退する。
結果的にベルザウスは、「彼のいう事も無視できない」という存在感を諸将に植え付けることに成功するが、この段階ではそれで十分であった。
伏兵部隊を撃破したリューグ国軍は、ルーザロゥ城を包囲すると、一気に攻め込み陥落させる。
グフスは降伏するが、彼の才気をいち早く見抜いたベルザウスが、以後はリューグ国の将軍になる様に促し、自らの派閥へと引き込む。
この時は敵味方に別れたエルドスも、敵ながら見事な指揮を見せたグフスに感嘆し、以後二人は「攻めのエルドス、守りのグフス」と呼ばれるほど息の合ったコンビとなる。
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