ラテン文字などの拡張補助文字や人工文字、ユニコード絵文字など特殊文字に関するウィキです。

18〜20世紀前半の拡張英文字】のサブページです。
19世紀の英語改良文字の代表格であるピットマン文字或いはフォノタイプ系統の改造ラテン文字をまとめます。
※参考資料は【Gブック検索で見られるフォノタイプ系アーカイブ】と【ピットマンジャーナルにおけるフォノタイプ】を参照。

フォノタイピー

ピットマン文字 - Pitman's alphabet / Phonotypic alphabet / Phonotypy

エリス文字/フォノタイピー - English Phonetic Alphabet / Phonotype / Phonotypy

シンシナティ文字 - Cincinnati alphabet

  • 作成者: ベン・ピットマン
ピットマン文字の改造で、ピットマン文字に無かった二重母音字が作成された。
ペンツリン氏はこの文字を正式にピットマン文字の派生系として分類されている (分類形式では EPA 1855)。
アメリカではシンシナティ文字ができた後、これを公式フォノタイプとし、イギリスの公式フォノタイプであるピットマン文字と分化された。
  • “er[ɚ]”音を示す《E》のセリフ上部がハウサ語の《Ɗ》のようにフック状になっている独特の字母が特徴。但し、小文字は拡張文字ではなく、下ドット付きE《ẹ》である。

拡張シンシナティ文字 - Extended Alphabet

http://books.google.com/books?id=Kn_gAAAAMAAJ&hl=j...
シンシナティ文字で外来語を表記するための字母。
エリス文字と異なり、ダイアクリティカルマークのみで、フランス語の〈eu〉やドイツ語の〈ch〉などは連字で表記される。

コムストック文字 - Comstock's Alphabet

http://www.acsu.buffalo.edu/~duchan/new_history/hi...
http://thenonist.com/index.php/thenonist/permalink...
  • 作成者: アンドリュー・コムストック Andrew Comstock (発表年: 1846)
  • 出典:『A Treatise on Phonology: Comprising a Perfect Alphabet for the English Language』(1855)
38の基本字に6つの二重音字からなる改良ラテン文字で、ピットマン文字の改造。
字形は主にギリシャ文字から借用されていて、スウェーデン方言字母に似た字母もある。
右肩にスペース調整アクセント記号が付加。
パンフォネティコン Pamphoneticon と呼ばれる外来語表記用の拡張文字もあり、ギリシャ文字の小文字《χ》を大文字にしたり、NやMの左側に短い棒を付加してフランス語の鼻音を表現したり、ポーランド語のスラッシュ付きLを借用するなど工夫が施されている。
パーフェクトアルファベット(1846年式) - Perfect Alphabet
1846年に創刊された『Comstock’s phonetic magazine』で発表された初期コムストック文字。
《ɛ》[e]の大文字が上下逆の《F》(のちにピットマン系共通字形の《Ɛ》に変更)になっている他は、文字の形状は変更無しである。
・ギリシャ文字を借用した字母《χ》[x] (大文字のサイズに合わせた字母が大文字)や《Γ γ》[ɣ]、両側がフックになった《Υ》[y] (小文字はスモールキャピタル)や、フランス語表記用の《ɳ》に似た字母(小文字を大文字化したものが大文字)などが外来語表記用に取り入れられている。

フォノタイプの派生文字

パーカースト文字 - Parkhurst's Alphabet

http://books.google.com/books?id=4QkSAAAAIAAJ&hl=j...
  • 作成者: ヘンリー・マーチン・パーカースト Henry Martyn Parkhurst
雑誌『The Plowshaer』で発表されてきたフォノタイプの独自改良案。
様々な拡張文字が作られ、母音字だけでも長短の違いで12組24種も作成されたことがある。
ラテン文字活字の一部を削って新字母を生み出してきたのが特徴。
[k]音は基本的に《C c》で表記され、[z]音は主にリバースドS《Ƨ ƨ》を使用している。
The Plowshaer』は一貫してパーカースト文字で表記されているが、ペンツリン氏がUCSに申請した統合フォノタイプの対象外となっている。
  • 1870年から、小文字 e, c, s の3字が直立したイタリック体(《e》と《s》)とスモールキャピタルC《ᴄ》で表記されるようになった。
  • 1870年代後半にさらなる改革が行われ*1、SH[ʃ]を表記する字母がフック付きH《ɦ》となっていたり、英語Gの[ʤ]音に対応する字母がスクリプトG?《ɡ》、リガチャも見られるようになった。
ショートハンド・フォノタイピー - Short hand Phonotypy
http://books.google.com/books?id=b_0RAAAAIAAJ&hl=j...
母音は速記文字と拡張ラテン文字、子音はラテン文字とその拡張文字で表記されるフォノタイプ系文字の変種。
字形はアンケート調査などで緻密に研究を施している。
速記文字はピットマン式速記から借用されている。
子音の間の母音は省略されることがあるため、ラテン系人工文字としては異色のものとなっている。

グレアム文字 - Andrew J. Graham's Phonetic alphabet

シンシナティ文字をベースにコムストック文字や後期ピットマン文字を取り入れている。
遷移フォノタイピー - Transition Phonotypy
http://books.google.com/books?id=83lIAAAAYAAJ&hl=j...
グレアム文字の代替字形で、ラテン文字の逆字や連字を代用とする許容字形。

ロングリー文字 - American Phonetic Alphabet

http://books.google.com/books?id=ripSAAAAYAAJ&hl=j... フォノタイプ系の派生文字で、シンシナティ文字の派生種。
1895年8月18日号の『ニューヨークタイムズ』(記事アーカイブ)で記事として取り上げられたこともある。
字母もESH大文字はシグマから逆さにしたJの字形になったり、EZH大文字が逆向きのシグマからユニコードの標準字形とされる《Ʒ》に変更されている。
ちなみに考案者のロングリー博士は『Furst Fonetic Redur』でフォノタイピーを、『American Manual of Phonography』でシンシナティ文字を使用していた。

科学的英文字 - Scientific English Alphabet

http://archive.org/stream/pleaforalphabeti00pitm#p... フォノタイプの生みの親であるアイザック卿の末っ子・ベンが生み出したピットマン文字の末裔ともいうべき文字だが、筆記体のみ存在する。活字体はラテン文字に《ı》と《ᵺ》(の異体字)のみ追加され、ダイアクリティカルや連字で表現している。
フォノタイプ準拠の筆記体は原則的に小文字のみがあり、一部文字のみ大文字がある。[k]音は1847年式と同じ《c》になっている。

統合フォノタイプ/EPA - English Phonotypic Alphabet

http://std.dkuug.dk/JTC1/SC2/WG2/docs/n3981.pdf
2011年1月18日にN3981でUCSに提案されたフォノタイプ系文字を統合したアルファベット体系。
1847年式(ヌエボ・システマ含む)、1855年式(=シンシナティ文字)、1856年式、1868年式の4種類のバージョンから字母を選んでいる。コムストック文字のものは一部のみで、それ以前のものの大文字などは申請されない予定。
ラテン大文字Aの小文字をアルファとするなどバージョンによって大小文字が異なるため、トルコ語におけるIの大小文字のような特殊ケーシング special casing が導入する案もある。
N4059でのアメリカのコメントで、却下され、N4079で再申請されたとき、“I WITH SERIFED CROSSBAR”小文字など実際に使用されなかった字母は没となった。
2度のUCS登録申請があったにもかかわらず、N4107のISO/IEC 10646:2012ドラフト第3版では採用されなかった*2
  • アルファベット表示形 Alphabetic Presentation Forms に、ENG?の異体字“PHONOTYPIC ENG”やEZH?の異体字且つフォノタイプ本来の字形“REVERSED SIGMA”の追加提案もされている。
  • “E WITH BENDED TOPBAR”の小文字は、下ドット付きE小文字《ẹ》と統合。
  • “I WITH SERIFED CROSSBAR”の名称がN3981の時点で“I WITH LONG STROKE OVERLAY”だったとき、互換用小文字として長いストローク付き《i》が提案されたが、フォノタイプにそのような字母が存在していなかったこととストローク付きI小文字?《ɨ》と統合されているという2つの理由のため、没になった。

ドラフト案

UCS申請前には様々な変遷があった。
Ver.1
http://www.pentzlin.com/EPA_Proposal_V1.pdf
  • フォノタイプに存在しない“E WITH TOP RIGHT HOOK”(UCS提案の名称は“E WITH BENDED TOPBAR”)小文字が見られる。
  • “U WITH INSIDE BAR”は、最初のドラフトでは U BAR?大文字《Ʉ》と統合する予定だった。
Ver.3
http://www.pentzlin.com/EPA_Proposal_V3.pdf
フォノタイプに存在しない“E WITH TOP RIGHT HOOK”小文字や“REVERSED ESH”小文字(ESH《ʃ》の左右逆で表示)が見られたが、UCS追加申請されなかった。

フォノタイプの影響を受けた英語の人工文字

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記号説明

  • [ ]…IPA発音表記及びフリガナ/意味
  • 【 】…特殊文字見出し
  • 《 》…特殊文字
  • 〈 〉…連字
  • 『 』…作品名
  • 〓…ユニコード未登録の字母
  • †…廃字, 携帯電話絵文字の代替テキスト
    • ‡…特殊な字母, 代用表記, 異体字


【略称】
  • IPA…国際音声記号
  • キルシェン…キルシェンバウム音声記号
  • i.t.a.…イニシャル・ティーチング・アルファベット
  • 大…大文字/小…小文字
  • 半…半角形/全…全角形

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