概要

レザベリアスの戦いとは、蜉蝣時代の戦乱の中で、アルファ692年8月、ロードレア国軍とロー・レアルス国軍の間に起きた戦いである。
レイディックカルディスの決着をつけた最後の決戦として知られている。

戦闘に至るまでの背景


▲692年8月における勢力図

戦闘に至るまでの背景

ヴェリアという無名の男がレイディックの軍師になったという報告を聞いた時、ロー・レアルス国最前線に駐屯していた軍師メファイザスは、本国で不穏な動きを見せる一派の掃討を口実に、ロードレア国との決戦に向けて続々と軍勢が集結する中、一人最前線から後方へ移動する。
実は、メファイザスエザリアン私塾で育った一人で、ヴェリアの才能を知り尽くしていた。
その男が今度の戦いでロードレア国の軍師として出陣すると聞き、それが意味する結末を予期したメファイザスは、「次の手」をうつべく動き出していた。

ロードレア国においてもロー・レアルス国との決着に向けて着々と準備が進んでいたが、そんな中、7月23日にロッド国からギザイアが使者としてロードレア国に赴いた。
同盟を更に強固にするため、ロッド国国主リヴァイルシアレイディックの妹シルフィーナの婚約話をまとめるためである。
この時点ではギザイアは単なる使者であるが、後にこの男こそロードレア国を傾ける存在になるとは、この時点では誰も知る由はなかった。
こうして8月3日に両国をあげた壮大な華燭の宴が行われるが、その一方でロー・レアルス国がついに動き始め、レイディックも自ら軍勢を率いて、決戦の地へと向かった。

前哨戦

レイディックが到着すると、ラディアは自分の権限で副将に任命していたバイアラスを将軍に昇格する様に進言する。
これまで無名だったバイアラスがいかなる将か興味をもったレイディックに、ラディアは2ヶ月前に行われた小競り合いの話を聞かせた。

6月20日、ロー・レアルス国軍は、ガイアスゼノスが2万5千の兵を率いてエルザイア城へ迫っていた。
僅か3千しか守備兵がいなかったザルスは、ラディアに2万という援軍を要求する。
ガルヴァウド城のほぼ全軍というこの法外な援軍要請に他の将軍は反対するが、ラディアは自ら軍勢を率いてエルザイア城へ出陣。
ゼノスの部下が率いる別働部隊に奇襲を仕掛けて撃退すると、エルザイア城付近に布陣し、城を取り囲むロー・レアルス国軍を撃退するべく、自ら最前線に立ち指揮を振るった。
この戦いで流れ矢を受けて負傷したラディアを守って城内まで運んだのが、一兵卒だったバイアラスであった。
この働きでラディアは彼を副将に抜擢、翌日には1千の兵を率いて城外に討って出て敵を翻弄させ、ついにガイアスは進軍をあきらめて撤退、バイアラスは援軍をほぼ無傷のままガルヴァウド城へと帰還させた。
決戦を前にそれほどの将を手に入れたレイディックは幸運であった。

謀略戦



レザベリアス平原を中心に、北にエルザイア山脈、南にローザメス山地、ムゥルの森を挟んで、ラディアが駐屯するガルヴァウド城、そして国境最前線にエルザイア城
これがレザベリアスの戦い前哨戦の舞台となる。

8月9日、カルディスが13万の軍勢を率いてエルザイア城に接近すると、この城を任されていたザルスと副将ロゥズは、戦わずして降伏を決意。
2ヶ月前の戦いでラディアに法外な援軍を要求した挙句、敵を撃退した途端用済みとばかりに追い返した彼らにとって、何ら恥じることのない裏切りであった。
エルザイア城を拠点とするはずだったロードレア国軍は、急遽ガルヴァウド城を拠点に変更、この城に駐屯するラディアと合流した。

両軍はレザベリアス平原を挟んでにらみ合い、ここに謀略においての前哨戦が始まった。
まず仕掛けたのはヴェリアであった。
ロードレア国から寝返ったザルスは、実は密命をうけていて、決戦時にはロー・レアルス国軍を挟み撃ちする策だという噂がロー・レアルス国軍の陣中に流れた。
その様な重要な策があっさりと洩れるのも不思議な話であり、カルディスは即座にこれが敵の謀略と看破。
この時点でヴェリアの名前すら知らないカルディスは、これをレイディックの策と信じ込み、「ソフィスを失ったから、策の質が落ちた」と呟き、これを逆手にとって罠を仕掛けた。
今度はロードレア国軍陣地に、「ザルスは挟み撃ちの策が発覚してカルディスに処刑され、副将ロゥズは命からがら脱出、レイディックの元に帰参する」という噂が流れることとなるが、ザルスは処刑などされておらず、ロゥズの帰参もカルディスからの埋伏の毒であった。
それを看破しているヴェリアは、更に次の段階へと赴き、お互いが相手の策を見破った上で、だまされたふりをして相手を策に落とそうとする心理戦が続いた。

ヴェリアは次に、弁舌に優れたレイアス将軍を呼ぶと、書状を持たせてカルディスの元へ派遣する。
その書状はロゥズからの書状という形で、決戦時における反乱の打ち合わせについてだった。
一度はこれを偽書状と見破ったカルディスだが、レイアスの命を賭けた説得によって心が傾き始め、更にその瞬間を狙った絶妙なタイミングで、もう1通の書状がカルディスの元に届く。
それは、レイディックから降伏を促した書状であり、これに怒り狂ったカルディスは、レイアスの説得を鵜呑みにする。

こうして虚虚実実の謀略戦が続く8月21日、もはや用済みとなったロゥズに、ヴェリアは最後の仕上げを仕掛ける。
帰参を証明するため、最前線を偵察する様にヴェリアに伝えられたロゥズは、ロー・レアルス国から共につれて来た兵を率いて最前線へ送られる。
しかし、ヴェリアに命じられた場所に哨戒中の猛将ゼノスが現れ、彼に見つかったロゥズは、瞬く間に討たれる。
ロー・レアルス国からつれて来た兵を同士討ちさせ、裏切り者ロゥズを処断し、またカルディスに、ロードレア国軍はうかつな行動をしているという印象を与えるヴェリアの策であった。
こうして水面下の謀略戦から、決戦の8月22日を迎えようとしていた。

戦闘経緯 1日目



レザベリアス平原を舞台に、配置された両軍。
ヴェリアは、アレスにムゥルの森に火を付ける様に指示する。
ロー・レアルス国軍が火を避けてレザベリアス平原に移動したところを待ち伏せする為であるが、それは見せかけであり、カルディスがこちらの意図を読むことを見据え、真の目的は更に次の段階にあった。
ヴェリアは、謀略による前哨戦の段階から、とにかくカルディスに「自分は相手の策をことごとく見破っている」と思わせ、カルディスが自分こそ戦場の主導権を握っていると思わせた形で戦いを進めていく様に仕向けていた。
見破られることを前提にしながら、その罠が簡単すぎても疑念を招くため、カルディスの器を測った上で絶妙のさじ加減の策をヴェリアは見事にやり遂げていた。



8月22日、アレスが望む風がなかなか吹かず、予定より遅れながらも、火攻め部隊がムゥルの森に火をつける。
この炎がロー・レアルス国軍の後方を襲うが、カルディスは瞬時にして待ち伏せを見抜き、ゼノス部隊に逆に突撃を命じた。
この突撃で、待ち伏せ部隊を「演じていた」アリガル部隊が予定通り演技の後退、これに呼応してロードレア国軍が全軍守備を固める。
必要以上の深追いを避けたゼノスだが、初戦の戦果としては十分であり、カルディスも全軍を押し上げ、ロードレア国軍は逆に徐々に後退し、ローザメナス山地へと布陣していく。

戦闘経緯 2日目



互いの布陣は大きくその配置を変えていた。
一言で言うならばロードレア国軍はローザメナス山地まで押し込まれ、ロー・レアルス国軍は追い詰めたという形となる。
しかし、地形はロードレア国軍がはるかに優勢な上、全てはヴェリアの仕掛けた罠であったことに、勝ちに乗っていたロー・レアルス国軍はまだ気づいていない。

決戦2日目の朝、カルディスゾイに先陣を任せると、彼をロードレア本陣に、ゼノス部隊をラディア部隊へと出陣させた。
この戦いでは、ゼノスが自ら名乗り出て、ラディアに一騎討ちを要求する。
2ヶ月前の戦いで敗れた遺恨を晴らすための独断行動だが、この時代、名乗りを上げての一騎討ちは合戦の華だったこともあり、特に珍しい光景ではなかった。
ゼノスの猛攻には、さすがのラディアも支えきれず、勝負はあったかと思われたが、これをバイアラスが救出。
ゼノスは自らの武勇に絶対の自信を持ち、二人同時に相手をすると宣言し、実際に互角に戦ってみせた。
この壮絶な戦いを合図に各地で交戦が開始され、一騎討ちを終えそれぞれの軍勢指揮に戻ったラディアバイアラスは、今度は軍勢をもってゼノスと正面から激突する。
しばらく戦った後、ヴェリアの策により、ラディアバイアラス部隊は後退し、追撃してきたゼノスを山道に誘い込み、仕掛けておいた石の下敷きにして打ち破る。
ラディアは、一騎打ちを繰り広げた相手に対して「軍師の策でなければこんな戦いは絶対したくなかった」とつぶやいたという。
しかし、ゼノス本人は不死身とも見紛う生命力でこの罠を掻い潜り、バイアラスがこれを食い止める為踏みとどまり、両軍は泥沼の戦いへともつれ込む。
ゼノスはこの戦いで一時生死不明となり、メファイザスの政変後に再び姿を現すこととなる)

一方で、ゾイを中心とした主力部隊は、アリガル部隊を突破して、ロードレア国軍を追い詰めていく。
更にリヴァドル部隊から「ロードレア国軍本陣で混乱発生」という報告を受けたカルディスは、これこそ内通の約束をしていたロゥズの働きだと確信。ゾイリヴァドル部隊に総攻撃を命じつつ、これが罠だったとしても対処できる様に、レザリア部隊、ドルトン部隊の進軍速度を落とさせる周到さも見せる。
ロードレア国軍本陣に一気に迫るゾイだが、ここまで守りに徹していたロードレア国軍が突如として反撃、ゾイ部隊を完全に包囲して壊滅させる。
この戦いで、建国時代から苦楽を共にしたゾイを失ったカルディスは、彼にしては珍しく取り乱し、戦死の報告を信じようとしなかった。
しかし、ロードレア国軍が更に後退したと聞かされると、今度は復讐の表情を見せ、ゾイの弔いも兼ねた追撃を命じる。

この時、ゾイ部隊所属の副将の一人だったドゥバが部隊を引き継ぐこととなるが、それまで無名だった彼は、この後ゾイを凌ぐ名将として名をあげていくこととなる。

ロードレア国軍は徐々に押し込まれていくが、それらはすべて敵軍をローザメナス山に誘い込む芝居でもあった。
ただし、ロー・レアルス国軍の猛攻は凄まじく、芝居といえないほど追い詰められ、エルジレアボゥルは戦死を遂げている。

戦闘経緯 6日目



これまでの動から、一転して静の戦いが始まる。
山頂に陣を構えたロードレア国軍は、完全に守りの体勢をとり、カルディスも容易に手が出せなくなった。
そんな中、山頂から出陣の合図である鬨の声が上がり、これに対してロー・レアルス国軍はすぐさま迎撃の準備をとる。
しかし、一向にロードレア国軍は動かず、鬨の声の発生位置を探ろうにも、山々に木霊した声はどこから発せられているのか見当もつかず、結局ロー・レアルス国軍は姿の見えない敵を警戒したまま時間だけが過ぎる。
こんなことが三日三晩続き、山頂から見下ろされたロー・レアルス国軍は徐々に疲労を蓄積していった。
将兵の疲れに決戦を焦ったカルディスは、自ら敵陣を視察するが、山の地形を見事に利用した布陣から、正面からの攻撃を断念すると、ローザメナス山脈の名前の由来ともなっているローザメナス山に目をつけた。

8月27日、篝火、キャンプ、旗を残したまま、全軍を3ルートにわけ、闇夜に乗じて密かに移動したカルディスだが、見渡しのいい高地に到着したカルディスは、そこで信じられないものを見せられる事となる。
大木を使って作られた「墓」であり、そこにはカルディスの名が刻まれていた。

この時、すべては自分をここにおびき寄せる策だったとカルディスは悟ったが、次の瞬間には草むらから次々と姿を現す伏兵が、一斉に火矢を放った。
8月27日深夜、カルディスはこの地で完全包囲され、炎の中で壮絶な戦死を遂げる。
カルディスの戦死によって全軍崩壊したロー・レアルス国軍。
ロードレア本陣を目指していたザウグも討たれ、殿軍となったワイヴァバイアラスによって討たれた。
後方の予備部隊として控えていたレザリアは、敗残部隊と合流すると、本国には敗戦の姿を見せないように、無傷の自軍を全軍の周囲に配置して堂々と帰国した。

レザベリアスの戦いの特徴は、両軍あわせて数十万という大合戦だったにも関わらず、ヴェリアは袋の中の石からたった一つの玉を掴むかの様に、カルディス本隊だけを最初からターゲットとしていた。
ロー・レアルス国はカルディス個人の強烈な個性によって保たれた部分がある。
彼さえ討てば、あとはロー・レアルス国は内紛を起こし弱体するというのがヴェリアの狙いであった。
巨大な国を正面から討つより、分裂させて各個撃破するという、次の段階を見据えたヴェリアの策であったが、この策だけは、もう一人の「先を見据えた男」メファイザスによって実現を妨げられる事となる。

戦いの結末

この後、レイディックの東征により、ロー・レアルス国の北東部は完全に切り取られた。
カルディス戦死により混乱が続いていたロー・レアルス国だが、北東部を切り捨てる事により、新たな国境最前線を建て直し、ロードレア国軍をそれ以上は侵入させず、ようやく落ち着きを取り戻した。
次にロー・レアルス国の新たなる国主探しが始まる。
カルディスの叔父ブウゲイドが候補として上がるが、叔父とはいっても、養子に出されていた彼はカルディスと直接の面識もなく、最近ではカルディスの叔父という立場すら、捏造だったのではないかと言われている。
ともかく、彼を国主として担ぎ出した一派がいた事は確かであり、その中心人物がゾルドリィドであったが、ブウゲイドを招いたまさにその日、突如城に潜入した兵士達によって彼らは討ち取られる。
そこに姿を現したのは、カルディスの軍師を務めたメファイザスであった。
彼は色めき立つ他の将を制して、自らがロー・レアルス国を継ぐと宣言する。
ブウゲイドを平民として一応の礼節をもって軟禁、既に多くの将に根回しがされていたメファイザスのクーデターは思いのほか簡単に成功することとなる。

翌年の1月3日には、レザベリアスの戦いで戦死したと思われていたゼノスが奇跡の生還を果たし、メファイザスの元へ姿を現す。
カルディス信望者でもあった彼は、メファイザスの裏切りともとれるこの行為を許せるはずもなく、早速彼に面談する。
だが、その問いを待つより早くメファイザスは、彼に逆に問いかけた。
カルディスの望みは一族の繁栄か、それとも乱世の終結か、一族の繁栄を目指すなら血族であるブウゲイドを立てて私を討つがよい。乱世の終結ならば私と共にカルディスの遺志を継ぐがよい……」と。
そう言われると、ゼノスは熟慮の末、メファイザスの旗下に入るしかなかった。
まさにゼノスの直情的かつ人情家な性格を熟慮した上でのメファイザスの説得術であった。
そもそも乱世では血統より実力が重視されているため、メファイザスが国主となることを望む将が多かった事も事実であった。


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