ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック
はじめに、わざと大きな提案をして、相手が考え出したら、すかさず譲歩して本来の申し入れで決定させる方法である。
アメリカの心理学者チャルディーニが行った実験で、次のようなものがある。最初の依頼「これから2年間、毎週2時間ずつ青年カウンセリングプログラムに参加してもらいたい」
第2の依頼「ボランティアとして、1日だけ、子供を動物園に連れて行ってもらいたい。」
最初の要請はほとんどの学生が断った。断った学生に第2の依頼をすると、約50%の学生が引き受けてくれた。ところが最初のステップを踏まず、いきなり第2の要請をすると、17%の学生しか承諾してくれなかったのである。
この方法は、外交交渉でよく使われる。以前の経済交渉で、アメリカが常套手段にした方法がこれである。最初に、とんでもない要求を突きつける。相手が断ると、要求を下げてくる。下げてきた要求の方がアメリカの狙いだったりする。
このテクニックは、最初の依頼を断った時の相手の罪悪感を利用している。
典型的なやり方の例として次のようなものがある。「明日どうしても顧客を接待しなきゃいけないんだけど手持ちが無いんだよ、3万貸してくれないかな。」「3万なんて無理だよ」「じゃー、1万円、9千円でもいいや」
この方法は1番目の依頼と2番目の依頼の間に時間を空けないことである。時間を空けると、相手の頭のなかで別件として処理されてしまう。
かつて友人に借金を申し込まれたことがあった。会社の資金繰りがうまくいかず、給料が遅延しているというのが理由であった。
「悪いけど、給料分の50万円、貸してくれると助かるんだけど」と友人は言った。そんな大金は、すぐに貸せる金額ではない。そこで車の車検に用意してあった20万円を、「少なくて悪いんだけど、家計の足しにでも使ってよ」と差し出した。それでも悪いことをしたなぁという気分が残った。
このように人間は、相手の申し入れを断ることに(あるいは申し入れを100%充たせないことに)罪悪感を持つものである。この心理を応用したのが、「ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック」。ドアを開けさせたら、いきなり顔を突っ込んでしまえという意味である。
2007年05月05日(土) 22:33:46 Modified by hanamaru0002