ロー・ボール・テクニック
相手が認めやすい提案をして、それに承諾したら次々とオプションを要求していく方法である。
欲しいと思っていた珍品のアンティーク時計が格安で売られている。「すみません。こんにいい時計がどうしてこんなに安いのですか?」
「これは企業努力で安くしているんですよ」
"こりゃ、ラッキー!"と思って、くださいと言ったとたん、
「実はオーバーホールはしていません」
「保証書はありません」
「表面にキズが多いから磨いた方がいいですよ」
と次々にオプションが提案された。こう言われると、
"やっぱりそうした方がいいよなー"
と思って受け入れてしまう。結果的にはとんでもない金額になってしまった。
人間は自分が決めたことには責任をとらなければいけないと考える傾向が強い。それが最初に提示された条件に予想外の変更が加えられたとしてもそう考える。こうした心理を応用したのが、「ロー・ボール・テクニック」である。ロー・ボール、つまり、受け取りやすい球をまず捕らせてしまえば、次の要求も受け入れざるを得ないという意味である。
心理学者のホーニックたちは、このテクニックを調査のリクルーティング(被験者を集めること)に応用できないかと考え、次のような実験をした。
まず18歳以上の男女を無作為に選び、彼らに自分は調査の専門家であることを伝え、アンケートへの協力を依頼する。ただし今ではなく、被験者が望む時間に改めて電話するという手はずにする。これでOKと言った人に、すぐさま電話をかけ直して、実は個人のプライベートな情報をお聞きしたいという趣旨を言い忘れたと付け加える。
驚くべきことに、最初にOKと言った人の70%がプライベートな情報提供にも承諾し、所得やセックスなどについての質問にも答えたと言う。
人というのは安く買い物をするのが大好きである。だから売り手は、あの手この手を使って、消費者を誘惑する。ここではロー・ボール・テクニックを使った誘惑のテクニックを紹介しよう。
まずはバーゲンセール。掘り出し物、特価品、大安売りという意味である。
チラシが新聞に入っていたり、POPが店内に貼られていたりすると、なぜか、"今買わないと損かも"という気持ちになる。特に、季節の終わりとか、閉店在庫処分などと書かれているとなおさらである。しかし実はこれ、店側の都合で、在庫処分のために行われていることが多いのだ。
次は値引き。最近は消費税還元というフレーズをよく目にする。時計などの高額商材を買う時には、消費税は意外に高くついてしまう。こういう時、消費税還元はとても重要な購買のトリガーとなる。
またユニクロがやって成功したのが「おまけ」。何枚か商品を買うと一枚おまけがついてくる。もう一枚欲しいために、つい必要のないものまで買ってしまったりする。これは完全に店側の戦略にはまってしまっているのだ。実はユニクロは、返品費用をかけないために、在庫を処分する必要がある。また単品のロットが多いため、売れ残るくらいなら、本当はタダでも持っていって欲しいのだ。
最後に「2000円より」という表現。これにもよくひっかかってしまう。受け手はこの2000円を提示価格だと思ってしまうからだ。実際勘定書きを見てみたら、これよりも高い値がついていたということがよくある。
2007年05月05日(土) 22:36:38 Modified by hanamaru0002