カティテ
最終更新：ID:cCHzS6rUgA 2020年10月12日(月) 14:43:11履歴
ＳＨＯＲＴ ＥＰＩＳＯＤＥ 
「先輩、いっちゃうってホントっすか？」
「なーにをいまさら。あとのことは頼んだよ、後輩」
引継ぎ――自身の担当地区だった有力者との顔つなぎは既に終わっているのだ。
自分が守ってきた人々を託す相手に、カティテは微笑みかけた。
「ここでアンデットを狩り続けていても、これ以上のスキルアップは難しそうだからね。ぼくはもうちょっと物騒な土地にいくよ」
「そりゃあ、先輩がうちらとは行動理念が違うってことは前々から知ってたっすけど……」
権威はあっても権力は無く、使命を背負えど義務ではない。
不死殺し（エクソシスト）たちの大原則だ。
彼らは誰かに強制されてこの苛烈極まりない役割を担っているわけではなく、また誰かにやらされて出来るような生き方でもなかった。
ティダン神殿や地元の有力者から金銭的支援をはじめとした様々なバックアップを受けることはできるが、それを懐に入れる不死殺しは皆無に近い。
単純に余裕がないのだ。
家を用意しても自宅でくつろぐ時間があるのならアンデットを滅ぼしている。
酒や煙草の嗜好品を嗜まないとは言わないが、溺れると不死殺しに差支えがでるので自然と量は控えめになる。
ティダン信者の例に漏れず、仕事中以外なら陽気で快活な性分の者が多いのだが、いかんせん不死殺しはその大半が仕事人間であった。
「カローシしちゃうっすよ。自分は青っすよ青？ 黒の代わりをするには色が明るすぎますって」
「色付（ファルプトーン）にまでなっておいて役者不足ってことはないでしょ。ネームドが出ない限りただの作業じゃん」
「その作業量が膨大なんすよ！ 先輩、自分の殲滅力過小評価してるっしょ？」
青茨（ブラウ・ヴェインローゼ）は何かと縁があり、駆け出し時代からカティテが面倒を見た不死殺しだった。
五年で色付に認定されたのは、まあ記録でいえば平均的といったところ。
とはいえ、彼女に才能がないなどとは口が裂けても言えない。
普通は五年も続ける前に引退するか、死んで憎むべきアンデットの仲間入りしてしまうかのだいたい二択だ。
不死殺しはその職業でいられる寿命がとても短い。信仰心だけでは誤魔化しがたいダメージが心身共に積み重なっていく。
「死んだら化けて出てやるっす」
「そのときは特別に、二回目の死を与えにダグニアまで舞い戻ってあげるよ。お手紙ちょーだいな」
「むっきー！！」
それでも彼らが不死殺しを続けるのは、それ以外に生き方が無いからだ。
逃げられるのなら逃げてもいい。変えられるのなら変えてしまえばいい。
その上でどうしようもないやつらが集まって、信仰と信心で繋がって、一歩間違えば死ぬような戦場に生きることで、少しだけ呼吸がしやすくなる。
そういう意味では、カティテは色付まで上り詰めておきながら不死殺しの仲間には成れなかったのだろう。
ナイトメアは永遠に若者の姿のままなのだが、人族と言うのは少なからず外見に精神年齢が引っ張られる者が多い。
長命な種として生れつくエルフならともかく、周囲が外見相応の扱いをしてくる人間の中で生きているのなら尚更だ。
ともあれ、外見年齢相応にはしゃぐ後輩の少女の頭に手を乗せ、ぽんぽんと叩く。
余談だが、両者の身長差のせいでカティテは涼しい顔の裏で背伸びを強いられた。
「どうどう。ま、きみだから安心して後を託せるのさ。頑張りなよ？」
「……っす」
次に行く場所、石鶏亭では仲間と呼べるような関係性を築くことができるのだろうか。
少しだけ、期待とも呼べる感情に口の端がつり上がるのを感じた。
概要
【経歴】
ダグニア地方で高名な不死殺し（エクソシスト）。
戦局を左右しうる『色付（ファルプトーン）』と呼ばれる特殊ユニットの一角。彼らのコードネームは『色+花の名前』で構成されるのが通例であり、彼女に与えられた異名は『黒薔薇（シュヴァルツ・ローゼ）』。一般的にコードネームの方が有名だったりするし、場合によってはそれが本名だと思われていることもある。
過去に受けた疵のせいで体術が不得手であり、単独行動の多い不死殺しにしては珍しく集団行動を主としている。だが数多の銃を舞い踊るように行使し、烈火のごとく敵を殲滅するその戦いぶりは単独ユニットとしての性能不足を補って有り余るものである。
生れは上位蛮族のお抱え武器職人のダークドワーフ一族だったが、コミュニティそのものが人族の襲撃に遭い壊滅。
自身も銃弾を膝に受け、命からがら逃げだすものの、逃亡中に足を滑らせ地下水脈に落ちてしまう。
『マギテックすげぇ』
そのカルチャーショックが彼女の人生最大の転機だったのだろう。
意識を取り戻した時、そこはアル・メナスから大破局を乗り越えたとあるシェルターだった。
シェルターの主であるエルフの男曰く、彼女は浄水場に引っかかっていたのだという。
「生き延びたというより、俺は大破局から取りこぼされた」
三百年というエルフにとっても短くはない時をただ恐怖に追いやられ、シェルターに逃げ込み二度と外に出ることができなかった男。
同胞を見捨て、ひとりだけ逃げた。共に戦うことが出来なかった。死なないことだけを選び、無為に長い時間だけを生きて、いま寿命が尽きようとしている。
奇跡に奇跡を重ねてシェルター内部に迷い込んだ、生殺与奪の権を自身が握っていると言っても過言ではないダークドワーフの少女の存在は、彼にとって天啓だった。
何も成し遂げられない、怯懦と罪悪感で塗り潰された人生だった。しかし、彼女に託すことができるのなら。
己の罪にも、ひとつは意味が生まれるはずだ。
かくして需要と供給は一致し、彼女はアル・メナス時代の平均的かつ、欠損の無い完全な魔動機術をそっくり継承することになる。
ただ、現代のマギテックが単純な弾丸から徐々に使用可能になるのに対し、彼女は【ジェノサイド・バレット】がスタートラインの技術体系として覚えたせいか、どうにも精密射撃の概念が無い。基本的に銃弾の嵐で薙ぎ払うのみである。
知識の伝承が終わり、エルフの男が寿命で息を引き取った後、何となく蛮族領域に戻る気になれず人族領域へ。
ダグニア地方にて、実績さえ積み上げれば些末なことは問われない不死殺しとして十年ほど活動し、知識を経験に基づいた技術として己に馴染ませる。
技術が高まると共に実績が積み重なり、富と名声を得たが。これ以上アンデットを相手にしても技術の向上は見込めないと見切りをつけ、移動することに。
ザルツ地方、特異点と名高い石鶏亭へと。
【性格】
コミュニケーション能力が高く、人当たりがいい。
不死殺しとして活動した十年間の経験のおかげで聖職者のような立ち振る舞いも可能。
しかしその実、人族の連帯感も、蛮族の自由や闘争に対する誇りも持ち合わせないハグレモノ。
常にどこか周囲を一歩引いた視点でとらえており、他者が苦しむさまを見て愉悦を覚える悪癖アリ。
【どうでもいい独自設定】
◆色付（ファルプトーン）
単騎で戦局を覆しうるとティダン大神殿に認められた不死殺し。
具体的には
・〈浄化の証〉（ダグニア博物誌ｐ.42）にて500点以上を記録
・ネームドの討伐
以上の二点をクリアした者が対象となり、認可は最高司祭が行っている。つまり現在はオーシア（ダグニア博物誌ｐ.63）の管理下にあると言える。
その常識的では達成不可能な条件の厳しさから、達成者は人格に難を抱えた者が多いとの噂。
権威はあっても権力は無く、認可されたからといって具体的な恩恵はほぼ無い。せいぜいパーソナルカラーが認められる程度。
だがその権威こそがダグニア地方においては重要であり、またパーソナルカラーが認められるというのも若い不死殺しには魅力的らしく、目標としている者は多い。
また、贈られる二つ名の配色は本人の希望よりも大神殿の意向が優先される傾向がある。
やけに白とか黒とかが人気で、当人たちの希望を認めると配色がかなりの確率で被ってしまうらしい。
ゆえに希望者に人気色を与えるとトラブルが発生するため、特に配色に興味がなく、また他者の嫉妬を跳ね除けられる実力者にそれらの色が与えられることが通例となっている。
つまり、特に意味もなく結果的に白と黒を配される者は実力者が多く、そのことを民衆も漠然と認識し、それに憧れてまた代替わりの際にはそれらの色に希望者が殺到するという謎の循環が生まれている。
ダグニア地方で高名な不死殺し（エクソシスト）。
戦局を左右しうる『色付（ファルプトーン）』と呼ばれる特殊ユニットの一角。彼らのコードネームは『色+花の名前』で構成されるのが通例であり、彼女に与えられた異名は『黒薔薇（シュヴァルツ・ローゼ）』。一般的にコードネームの方が有名だったりするし、場合によってはそれが本名だと思われていることもある。
過去に受けた疵のせいで体術が不得手であり、単独行動の多い不死殺しにしては珍しく集団行動を主としている。だが数多の銃を舞い踊るように行使し、烈火のごとく敵を殲滅するその戦いぶりは単独ユニットとしての性能不足を補って有り余るものである。
生れは上位蛮族のお抱え武器職人のダークドワーフ一族だったが、コミュニティそのものが人族の襲撃に遭い壊滅。
自身も銃弾を膝に受け、命からがら逃げだすものの、逃亡中に足を滑らせ地下水脈に落ちてしまう。
『マギテックすげぇ』
そのカルチャーショックが彼女の人生最大の転機だったのだろう。
意識を取り戻した時、そこはアル・メナスから大破局を乗り越えたとあるシェルターだった。
シェルターの主であるエルフの男曰く、彼女は浄水場に引っかかっていたのだという。
「生き延びたというより、俺は大破局から取りこぼされた」
三百年というエルフにとっても短くはない時をただ恐怖に追いやられ、シェルターに逃げ込み二度と外に出ることができなかった男。
同胞を見捨て、ひとりだけ逃げた。共に戦うことが出来なかった。死なないことだけを選び、無為に長い時間だけを生きて、いま寿命が尽きようとしている。
奇跡に奇跡を重ねてシェルター内部に迷い込んだ、生殺与奪の権を自身が握っていると言っても過言ではないダークドワーフの少女の存在は、彼にとって天啓だった。
何も成し遂げられない、怯懦と罪悪感で塗り潰された人生だった。しかし、彼女に託すことができるのなら。
己の罪にも、ひとつは意味が生まれるはずだ。
かくして需要と供給は一致し、彼女はアル・メナス時代の平均的かつ、欠損の無い完全な魔動機術をそっくり継承することになる。
ただ、現代のマギテックが単純な弾丸から徐々に使用可能になるのに対し、彼女は【ジェノサイド・バレット】がスタートラインの技術体系として覚えたせいか、どうにも精密射撃の概念が無い。基本的に銃弾の嵐で薙ぎ払うのみである。
知識の伝承が終わり、エルフの男が寿命で息を引き取った後、何となく蛮族領域に戻る気になれず人族領域へ。
ダグニア地方にて、実績さえ積み上げれば些末なことは問われない不死殺しとして十年ほど活動し、知識を経験に基づいた技術として己に馴染ませる。
技術が高まると共に実績が積み重なり、富と名声を得たが。これ以上アンデットを相手にしても技術の向上は見込めないと見切りをつけ、移動することに。
ザルツ地方、特異点と名高い石鶏亭へと。
【性格】
コミュニケーション能力が高く、人当たりがいい。
不死殺しとして活動した十年間の経験のおかげで聖職者のような立ち振る舞いも可能。
しかしその実、人族の連帯感も、蛮族の自由や闘争に対する誇りも持ち合わせないハグレモノ。
常にどこか周囲を一歩引いた視点でとらえており、他者が苦しむさまを見て愉悦を覚える悪癖アリ。
- 一人称：ぼく
- 口調：気さく（〜だね 、〜かな？）
【どうでもいい独自設定】
◆色付（ファルプトーン）
単騎で戦局を覆しうるとティダン大神殿に認められた不死殺し。
具体的には
・〈浄化の証〉（ダグニア博物誌ｐ.42）にて500点以上を記録
・ネームドの討伐
以上の二点をクリアした者が対象となり、認可は最高司祭が行っている。つまり現在はオーシア（ダグニア博物誌ｐ.63）の管理下にあると言える。
その常識的では達成不可能な条件の厳しさから、達成者は人格に難を抱えた者が多いとの噂。
権威はあっても権力は無く、認可されたからといって具体的な恩恵はほぼ無い。せいぜいパーソナルカラーが認められる程度。
だがその権威こそがダグニア地方においては重要であり、またパーソナルカラーが認められるというのも若い不死殺しには魅力的らしく、目標としている者は多い。
また、贈られる二つ名の配色は本人の希望よりも大神殿の意向が優先される傾向がある。
やけに白とか黒とかが人気で、当人たちの希望を認めると配色がかなりの確率で被ってしまうらしい。
ゆえに希望者に人気色を与えるとトラブルが発生するため、特に配色に興味がなく、また他者の嫉妬を跳ね除けられる実力者にそれらの色が与えられることが通例となっている。
つまり、特に意味もなく結果的に白と黒を配される者は実力者が多く、そのことを民衆も漠然と認識し、それに憧れてまた代替わりの際にはそれらの色に希望者が殺到するという謎の循環が生まれている。
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