外伝第１２回
最終更新：ID:ubrZ2mk6tg 2016年04月18日(月) 23:26:15履歴
外伝12回 それっぽいハンドアウト
二か月前、戦争があった。人族も蛮族も大勢傷ついて、多くの命が喪われた。
一か月前、せっかちな春が急激に雪を溶かし、あわや大洪水になるところだった。
それでもザルツ地方は変わりなく日が昇っては沈んでいく。
人々は生きている。その日、手を繋いで石鶏亭に訪れた幼い姉弟もまた。
差し出されたのは一握りの銀貨。告げられたのは無垢ゆえに愚かな願い。
顔のない慈善活動は、いったいどこに繋がるのか。
ＳＷ2.0シナリオ『1ガメルの依頼』
正義なんてありはしない。いるのは正義のミカタだけ。
外伝12回
依頼主：仕立て屋の幼い姉弟（と、それに合わせて冒険者の店）
依頼：『カオナシ様』にお礼を届けてほしい（建前上は『カオナシ様』の調査）
報酬：1Ｇ（+店から調査費用として前金1000Ｇ+成功報酬3000Ｇ）
幼い姉弟は親戚を頼ってフットランドに避難し、そこで仕立て屋の手伝いをしながら考える。なんとかお礼を伝えたいと。作られたのはお手製というにはあまりにもお粗末な、既製品の黒い帽子を黄色いリボンで飾り付けたもの。それでも想いがこもっていることは誰にも否定しようのないそれを抱え、一握りの依頼料を握りしめて彼らは蛮族が多く所属するという石鶏亭の噂をたどって店にたどり着く。もっともそれは最終的に、同じ噂をたどって石鶏亭を探していたアグナに導かれてのことであったが。
差し出されたのはその場にいる全員で分け合えば、一人当たり1Ｇにしかならないであろう額の銀貨。あるものは信念から、あるものは『カオナシ様』とやらの好奇心から、またあるものは別の報酬（血液）を求めてその依頼を受けようとしたところで、亭主のアンジュから提案が入る。『カオナシ様』の活動と噂はザルツ全土に広まりつつあり、その正体を調査すべきという声が上がっている。その調査依頼をうちの店から出すから、そのついでに本人を見つけてお礼を伝えればいいと。かくして彼らを動かすのに妥当な金額は支払われ、幼子の願いは聞き入れられた。
ワスラはバード仲間に、伝わってきてるカオナシ様の噂全般をききこみ、彼女が噂が出没し始めたのは二か月前の戦争が終わって以来だという話を聞く。しかしあの戦争以来各地の蛮族が活発し物騒になっているため偶然かもしれないが。
カレン?はマギテック協会でカナオシ様のことを聞き込み、彼女たちと同様に『カオナシ様』について調べていた冒険者がまとめた資料を見せてもらうことができた。それによれば彼女はどうもバジリスクのようだが、ただのバジリスクにしては合致しない点もいくつかあり、ただ周囲を凍結させる瞳と、魔物の毒に侵された村人を解毒させることができる瞳を持つらしいという範疇に留まる。
ミルフィ?は警備兵に街周辺の蛮族の動き等々、シン?はミルフィに同行した。そこで彼らは『カオナシ様』を仮想敵として調べていた警備兵から詳細な情報が聞ける。そこで『カオナシ様』の本名と思しきミノルラピスという名前と、彼女たちの軍隊然とした行動の数々を知ることができた。
ノエルは妖精からに風のうわさを聞きに郊外へ。妖精の言葉は漠然としていたものの、ノエルは自分の見識から今『カオナシ様』たちは補給のためにまどろむせっかちの森にいるのではないかと判断する。
しかしアグナだけは芳しい結果が得られなかった。彼が身に着けているラミアの首飾りを付けた犯罪者が近年出没しており、注意を呼び掛けていたそこに不運にも合致してしまったのだ。思えばそれがのちの展開に繋がる重要な伏線だったのかもしれない。
森に入るということで最寄りの都市エイラスで準備を整え、万全を期してたどり着いたまどろむせっかちの森。周囲を探索してみれば大人数の痕跡も見つかり、どうやら当たりらしいと彼らは足跡をたどって森の中を進む。
彼らは知る由もないが、決してミノルラピスは人望に薄い将というわけではない。ただ先の戦争で多くの兵が失われ、穴を埋めるために大規模な人事異動があったこと。本来ならその後、引き抜かれた熟練兵の代わりに補充された新兵の訓練に忙しむべき期間を、戦争直後で今が機であると見たミノルラピスが即座に諜報活動を開始したこと。それでも三か月もあれば彼女の色に染まるのだが、二か月目で我慢の限界に達した四人小隊が２つばかりあったこと。そして補充にかかりっきりになっている彼女の隙をついて脱走を行動に移した日と、冒険者たちが森にたどり着いた日が偶然にも合致したのは不運としか言いようがなかった。
溜まった鬱憤を爆発させんと襲い掛かってくるレイヴンアーチャーに率いられたレイヴンからなるフォーマンセル二小隊。とはいえ、先制を得た冒険者たちの敵ではなく、あっという間に半壊状態にされる。脱走した彼らも漠然と察していたのかもしれない。彼女から逃げきれはしないと。しかしせめて敵との戦いの中で果てんと逆襲に出た彼らは、その最後の贅沢でさえ許されなかった。
気が付けば、としか言いようがなく突如としてレイヴンたちを拘束し絶命せしめる雷の檻。かろうじて生き残ったアーチャーたちも冷徹の視線に砕かれ、かくして黒の軍の六魔将ミノルラピスはその姿を冒険者たちの前に現す。
彼女は隠すこともなく語る。自分たちの人助けは、人族に不和の種をまくためだと。自分たちの正体を知り裏切られたと感じた人族は、その痛みから生じた猜疑を石鶏亭に向けることになるであろうと。しかし、ならばなぜ助けた子供から届けられた帽子を受け取ってそんなに嬉しそうに笑うのか。どのような理由であれ救われた命は誰かのかけがえのないものであると、そう語る彼女の笑みはどんな感情に起因するのか。
怒り、猜疑、悲哀、困惑……冒険者の顔を彩った感情は、まさにミノルラピスの策が成就した縮図だったのかもしれない。
さらに彼女は人族と蛮族は共存しえないだろうが、蛮族が人族の真似事をするくらいは可能だろうと言い、蛮族が人族のような法と秩序に支えられたコミュニティを作れないか思考錯誤中だと明かす。もしもこちらに来るのであれば、幹部候補としての待遇を約束すると差し出された手を、石鶏亭の面々は跳ね除けた。しかし、アグナだけは違った。
彼は彼女の言葉に可能性を見出したのだ。彼女の手を取って消えるドレイクと、残された石鶏亭の冒険者たち。
かくして分かたれた二つの道。その道が再び交わるとき、演じられる演目は喜劇となるか、悲劇となるか。
それば万能足りえぬこの世界の神々ですら知りえないことだろう。
ミルフィ?
シン?
ワスラ
カレン?
ノエル
二か月前、戦争があった。人族も蛮族も大勢傷ついて、多くの命が喪われた。
一か月前、せっかちな春が急激に雪を溶かし、あわや大洪水になるところだった。
それでもザルツ地方は変わりなく日が昇っては沈んでいく。
人々は生きている。その日、手を繋いで石鶏亭に訪れた幼い姉弟もまた。
差し出されたのは一握りの銀貨。告げられたのは無垢ゆえに愚かな願い。
顔のない慈善活動は、いったいどこに繋がるのか。
ＳＷ2.0シナリオ『1ガメルの依頼』
正義なんてありはしない。いるのは正義のミカタだけ。
外伝12回
依頼主：仕立て屋の幼い姉弟（と、それに合わせて冒険者の店）
依頼：『カオナシ様』にお礼を届けてほしい（建前上は『カオナシ様』の調査）
報酬：1Ｇ（+店から調査費用として前金1000Ｇ+成功報酬3000Ｇ）
冒険内容すべての始まりはせっかちな春が雪を溶かし、水害が発生したことだった。とある店の冒険者の活躍により小春日和は終了し、大規模な洪水は免れたものの、それでもそれまでに溶けた水が無かったことになるわけではない。幼い姉弟が住んでいたヘンピ村もその被害を受けた村の一つ。しかし彼らの村は蛮族を公言しながらも人を助ける謎の覆面集団に助けられ、被害を最小限にとどめることができた。
幼い姉弟は親戚を頼ってフットランドに避難し、そこで仕立て屋の手伝いをしながら考える。なんとかお礼を伝えたいと。作られたのはお手製というにはあまりにもお粗末な、既製品の黒い帽子を黄色いリボンで飾り付けたもの。それでも想いがこもっていることは誰にも否定しようのないそれを抱え、一握りの依頼料を握りしめて彼らは蛮族が多く所属するという石鶏亭の噂をたどって店にたどり着く。もっともそれは最終的に、同じ噂をたどって石鶏亭を探していたアグナに導かれてのことであったが。
差し出されたのはその場にいる全員で分け合えば、一人当たり1Ｇにしかならないであろう額の銀貨。あるものは信念から、あるものは『カオナシ様』とやらの好奇心から、またあるものは別の報酬（血液）を求めてその依頼を受けようとしたところで、亭主のアンジュから提案が入る。『カオナシ様』の活動と噂はザルツ全土に広まりつつあり、その正体を調査すべきという声が上がっている。その調査依頼をうちの店から出すから、そのついでに本人を見つけてお礼を伝えればいいと。かくして彼らを動かすのに妥当な金額は支払われ、幼子の願いは聞き入れられた。
ワスラはバード仲間に、伝わってきてるカオナシ様の噂全般をききこみ、彼女が噂が出没し始めたのは二か月前の戦争が終わって以来だという話を聞く。しかしあの戦争以来各地の蛮族が活発し物騒になっているため偶然かもしれないが。
カレン?はマギテック協会でカナオシ様のことを聞き込み、彼女たちと同様に『カオナシ様』について調べていた冒険者がまとめた資料を見せてもらうことができた。それによれば彼女はどうもバジリスクのようだが、ただのバジリスクにしては合致しない点もいくつかあり、ただ周囲を凍結させる瞳と、魔物の毒に侵された村人を解毒させることができる瞳を持つらしいという範疇に留まる。
ミルフィ?は警備兵に街周辺の蛮族の動き等々、シン?はミルフィに同行した。そこで彼らは『カオナシ様』を仮想敵として調べていた警備兵から詳細な情報が聞ける。そこで『カオナシ様』の本名と思しきミノルラピスという名前と、彼女たちの軍隊然とした行動の数々を知ることができた。
ノエルは妖精からに風のうわさを聞きに郊外へ。妖精の言葉は漠然としていたものの、ノエルは自分の見識から今『カオナシ様』たちは補給のためにまどろむせっかちの森にいるのではないかと判断する。
しかしアグナだけは芳しい結果が得られなかった。彼が身に着けているラミアの首飾りを付けた犯罪者が近年出没しており、注意を呼び掛けていたそこに不運にも合致してしまったのだ。思えばそれがのちの展開に繋がる重要な伏線だったのかもしれない。
森に入るということで最寄りの都市エイラスで準備を整え、万全を期してたどり着いたまどろむせっかちの森。周囲を探索してみれば大人数の痕跡も見つかり、どうやら当たりらしいと彼らは足跡をたどって森の中を進む。
彼らは知る由もないが、決してミノルラピスは人望に薄い将というわけではない。ただ先の戦争で多くの兵が失われ、穴を埋めるために大規模な人事異動があったこと。本来ならその後、引き抜かれた熟練兵の代わりに補充された新兵の訓練に忙しむべき期間を、戦争直後で今が機であると見たミノルラピスが即座に諜報活動を開始したこと。それでも三か月もあれば彼女の色に染まるのだが、二か月目で我慢の限界に達した四人小隊が２つばかりあったこと。そして補充にかかりっきりになっている彼女の隙をついて脱走を行動に移した日と、冒険者たちが森にたどり着いた日が偶然にも合致したのは不運としか言いようがなかった。
溜まった鬱憤を爆発させんと襲い掛かってくるレイヴンアーチャーに率いられたレイヴンからなるフォーマンセル二小隊。とはいえ、先制を得た冒険者たちの敵ではなく、あっという間に半壊状態にされる。脱走した彼らも漠然と察していたのかもしれない。彼女から逃げきれはしないと。しかしせめて敵との戦いの中で果てんと逆襲に出た彼らは、その最後の贅沢でさえ許されなかった。
気が付けば、としか言いようがなく突如としてレイヴンたちを拘束し絶命せしめる雷の檻。かろうじて生き残ったアーチャーたちも冷徹の視線に砕かれ、かくして黒の軍の六魔将ミノルラピスはその姿を冒険者たちの前に現す。
彼女は隠すこともなく語る。自分たちの人助けは、人族に不和の種をまくためだと。自分たちの正体を知り裏切られたと感じた人族は、その痛みから生じた猜疑を石鶏亭に向けることになるであろうと。しかし、ならばなぜ助けた子供から届けられた帽子を受け取ってそんなに嬉しそうに笑うのか。どのような理由であれ救われた命は誰かのかけがえのないものであると、そう語る彼女の笑みはどんな感情に起因するのか。
怒り、猜疑、悲哀、困惑……冒険者の顔を彩った感情は、まさにミノルラピスの策が成就した縮図だったのかもしれない。
さらに彼女は人族と蛮族は共存しえないだろうが、蛮族が人族の真似事をするくらいは可能だろうと言い、蛮族が人族のような法と秩序に支えられたコミュニティを作れないか思考錯誤中だと明かす。もしもこちらに来るのであれば、幹部候補としての待遇を約束すると差し出された手を、石鶏亭の面々は跳ね除けた。しかし、アグナだけは違った。
彼は彼女の言葉に可能性を見出したのだ。彼女の手を取って消えるドレイクと、残された石鶏亭の冒険者たち。
かくして分かたれた二つの道。その道が再び交わるとき、演じられる演目は喜劇となるか、悲劇となるか。
それば万能足りえぬこの世界の神々ですら知りえないことだろう。
参加ＰＣアグナ
ミルフィ?
シン?
ワスラ
カレン?
ノエル
このページへのコメント
戦犯アグナくんの中の人です。自分が蛮族としてあるべきか、蛮族でありながら人族の中にいていいのか、アイデンティティーが確立できてない思春期くんだったが故にミノルラピスの言葉にほいほい乗っていきましたハイ。
彼女の作る世界の中なら、“人族と争わない蛮族”ならば蛮族社会に迷いなく身を置くことができる、ということと彼女の人助けの真意（恐らく語る言葉は矛盾していたとしても全て本心なんでしょうが）を自身の目で見て確かめ知りたかったという概ね二つの理由。彼がどういう結論を出しどういう行動を取るようになるのかは、アグナくんを使ってくれるっていう人がいたら好きに料理なさってください（とりあえずオレサマって言わせとけばそれっぽくなるよ多分）
ひゃっはー、編集完了！
ついついＴＲＰＧ特有の筋書きのないドラマに筆が乗って、無駄に膨大な量書いてしまいましたが、どないしようこれ・・・ｗ
ミノルラピスはやっていて楽しかったです。ああいう狂気寄りのキャラクターを自重せずにされるってＧＭの特権ですよねー
「蛮族と人族の共存は可能か否か？」
いきなりな真面目なお題に、
ワスラの口をかりて中の人の思うところをダダ漏らしましやしたｗ
そんな、大上段なお題目正解があるかどうかわからないし、確かめるにしても人生かけてでるかどうか・・？
結局、個々の集団―ひいてはそれを構成する一人一人 によるとしか言えないと思う。
ワスラは守る。ザイアへの信仰心・自らの義侠心に従って。