合同卓26
最終更新：ID:gYYnwZFGVA 2019年03月18日(月) 02:13:15履歴
伝説第28回＆本編第117回 合同卓 蛮王復活編第八話『慈雨の歌声』 
◆依頼主
三国同盟 ルキスラ帝国皇帝 ユリウス・クラウゼ
◆依頼
ルーチェ・ソーレ討伐
◆報酬
３万G
◆冒険内容
前回から一週間後、ザルツ連合軍はダンケルハイト城、地下侵攻を開始。
石鶏亭は少数で地上戦力の掃討を担当。
地下からあふれてくるアンデットの掃討、上空からの魔神の脅威を殲滅するのに、さらに一週間を要した。
こうしてあらかたの戦力を討伐。作戦は次のフェーズに移行する。
地上の支配を盤石なものとするため、広域支配の能力を有するルーチェの排除は急務。
ゆえに、冒険者たちはルーチェ討伐のためにダンケルハイト城上層部に乗り込む。
意外なほどに罠も敵兵力の妨害も無く、戦闘の痕跡が色濃く残る城内を進む一行。
かすかに聞こえる歌声に導かれるまま地上三階まで上り詰め、目標を発見する。
裏切った今もなお、彼の帰りを待つ者がいる。
モミジは説得を試み、スピカは彼を想う者たちからの手紙をルーチェへと届けるが、それでも彼のケツイは覆らず。
目的を違えたかつての仲間は短くも激しくぶつかり合い、順当な数の暴力の結果としてルーチェは討ち取られるのであった。
相手は超越者ということで、確実に敵戦力を削るために遺体を慎重に回収。撤退する一同。
まだカリギュラが残っている。蛮王だっている。
さあ、戦いを続けよう。帰ればまた来なければならないのだから。
◇Boss
・ルーチェ・ソーレ
・取り巻き1 フロスト
・取り巻き2 オクタヴィア
参加PCモミジ 大火力の求道者アタッカーその1。説得では中心を担い、戦闘ではラストアタックを決めた。
ダナン 言葉少なに全体を支えた石鶏亭の顔役。死したルーチェに二つ名を与えて供養するロマンチストな一面も。
スピカ みんなの頼れるお姉さん。始終おちついた態度でみんなをサポート。なお、やるときはやる。
ペプシマン? ペプシコーラの使徒。強炭酸コーラはアルコールに依らずしてひとを酔わせる力をもつ。
ライラ 大火力の求道者アタッカーその2。中二病グラランだって名脇役はできるのだ。
目次第一話 第二話 第三話 第四話 第五話
第六話?（黄色くなっていますがクリックで飛べます） 第七話
インタールード
ずるり、ずるりと戦場から返り血にまみれた姿で、生首を片手に歩く彼女を、一兵卒程度では止めることなどできるはずもなかった。
「はい、どうぞ御検めくださいな」
暫定拠点首脳部。ザルツを代表する三国のトップの前にして。
右頬に紅の染みをつけて、衣服を赤茶けた色合いに染めて、スピカはにっこりと笑みを浮かべ『それ』を机の上に置く。
「石鶏亭のトップランカーだったことのある彼です。顔は知っているでしょう」
「ふむ……身体のほうはどうした？」
「かさ張るのでその場でバラバラにして焼却しました。映像記録はこちらのマギスフィアに」
「なるほど。徹底的だな」
人族の蘇生には脳と脊髄が最低限、無事な状態でなければ不可能といわれている。
脳はここにあり、脊髄は焼却済み。
ルーチェ・ソーレの死はここに完全に決定づけられた。
「しかし、彼は超越者です」
超越者の逸話に、致命傷から即座に完全復活を遂げた者、完全に死亡が確認されたのにも関わらず自力で蘇生した者のエピソードは枚挙にいとまがない。
「なので、こうします」
スピカの手の中に高温のマナが凝縮され、ひといきに解放される。
ゴウッと炎が渦巻き、灰すら残さず焼き尽くされた。
【インシネレイション】。一定範囲内の可燃物を瞬時に燃やし尽くす炎の妖精魔法だ。
「……そこまでするのか？」
「うふふ。さすがに罪人と言え、首をさらされるようなことになれば、うちの店から反発も出そうなので」
「このような場で、突如として魔法を使うのはご遠慮願いたいものだな。兵を刺激する」
「それは申し訳ございませんでした」
◇
やるべきことは、やった。
死体を解体して一定の大きさに区切り、【コピー】で複製した。
映像記録含め、焼却したのはコピーの方だ。あれは１日という時間制限こそあれども完全な複製品となるので、画像越しにその正体を看破することは不可能だろう。
バラバラにした遺体の方は、首の部分のみ【フィジカル・ギミック】で繋げなおした。四肢の方は賢者の知識を最大限に生かして縫い付けた。
表面上は完璧だろう。損壊が激しい死体はその蘇生難易度が飛躍的に跳ね上がるらしいが、そこは腕が良くて口の堅い操霊術師を探してくれとしか言いようがない。
蘇生してから一定時間、意識さえあればそこは超越者。自力で縫合しているだけの四肢を繋ぎなおすことだって可能かもしれない。医学に喧嘩を売っている。
そもそも、スピカがリスクを冒してまで死体の偽造を担ったのは、せめて死体だけでも安らかに眠ってほしいと思ったからだ。
蘇生までは含まれていない。むしろ、スピカ個人の意見としてはそのまま眠っていてほしい。
（仲間としての義理は、果たしましたからね）
さようなら。できればもう二度と顔をあわせませぬように。
◇
むかし、まだ貴族のお嬢様として生きていた幼い日のころ。
魔動機文明時代に書かれたという絵本を読んだことがあったのを、ふと思い出した。
氷の大陸のうえで暮らす、飛べない鳥たちのおはなし。
今でこそ作り話に等しいおとぎ話だが、実は賢者の研究によると、当時の学術的見地をベースに創作された可能性が高いらしい。
もしも、誰も許してくれないのであれば。
一緒に逃げようと、手を引いて二人で逃げ出す勇気が自分にあれば。
この結末は変えられたのだろうかと、ヴィオラは自問する。
誰も来ない、氷に閉ざされた大地で飛べない鳥に囲まれて暮らす。
一般人よりずっと頑丈な冒険者の自分たちなら、悪くない世界に違いない。
詮無き事だ。
夢を見るより前に結論が出た。
ルーチェは自分にとって特別な仲間だった。
一緒に冒険者の店の扉を叩き、共に冒険をして、気が付けば大きく引き離され、追い付きたい目標だった。
そして今日、永遠に消えてしまった。
惚れていたわけではない。から、彼のためにすべてを捨てることはできない。
ヴィオラには家出したとはいえ家族がいて、冒険者になるきっかけになった妹がいて、冒険者として積み上げ、創り上げた彼女の世界がある。
ルーチェのように目の前のやさしさだけで、それらを投げうつことなどできやしない。
「……ああ」
ぐつぐつと感情が煮え立つ。
怒っているのか、悲しんでいるのか、自分ですらわからない。
そのどちらでもあるような気がするし、言語化した時点で本質からズレてぼやけるような気もする。
「ああああああ」
ただひとつ、確信できるとすれば。
激情を想定して、人気のない山奥に移動できたちょっと前の自分は英断だったということだけだ。
「ああああああああああああ！」
全力で岩に拳を叩きつける。拳が割れ、血が滲む。
罪のない大地の一部が、全身鎧を軽々と身に着ける身体能力の暴威にさらされひび割れる。
「ああああっ、ああああああ！！」
吐き出す、血も涙も感情もぜんぶまとめて。
だってヴィオラには明日があるのだから。そっちを選んだのだから。
今日で蹲ってしまうわけにはいかない。
ダンッ、ダンッと響く鈍い音。
ごめんなさいと、誰かに言えばそれでよかった。
あの頃には、もう戻れない。
コメントをかく