「―という次第で、事の真偽と、失礼ですがウィニア議員の真意をお聞きしたいのです。」
中庭に面したテラスにある白木の円卓にて、
私にさし向かいで座っているこの家の主は、
紅茶に手をつけずにじっと私の話に耳を傾けていた。
主の名は、ウィニア＝ロス。
幾度も自由都市同盟議会に選抜されており、フットランドの現役議員の中ではベテラン中のベテランである。
その発言の間のとり方の絶妙さ故か、彼女の発言はさして大きくないにも拘わらず聞き逃されることがない。
そのため、『囁き声』という異名をとるほどだ。
私は、じっと相手の返答を待つ。
「まず一つ。スピカさんでしたか？
どの議員が彼女の応対をしたか存じませんが、その方と私は意見を同じくしておりません。
住民を盾に取って交渉を迫ったなど、どのような団体であろうとも放置できない事案です。
次に、石鶏亭に疑惑があり必要となった場合ですが。
その時は、法に則り正式な手順を踏んだ上で、参考人の召喚をいたします。
議会のサインのある召喚状を示せないのであれば―、それは議会の意志を騙った無法者とお考えください。」
『囁く声』ウィニア＝ロス。彼女がこうも滔々と言葉を紡ぐのは珍しい。
「スピカさんに会ったら、お伝えください。
我がフットランド議会は他都市の不当な干渉を良しとせず、またそれを黙認するうものではない、と。」
白組ではなく、他都市？
どうして、そうなるのだろう。
また、感情がそのまま顔に出る悪い癖が出ていたのだろう、彼女がこう続けた。
「ええ、数日前によく響く声で問答してらっしゃったドランバルの議員がいらっしゃいましてね。
そのあとすこしお話する機会があったのですけれど、弁解に必死の御様子でしたよ。」
「一神官が政に差し出がましい口をはさみましたこと、ご容赦ください。」
「成長しましたね。
失礼。小さい頃から見ているから、ついね。」
彼女はクスリと微笑むと、ティーカップに口をつけた。
私が生まれたときには、既に父も彼女もフットランドの議員であり、良き友人同士であった。
彼女には、赤子の頃からお世話になっている。
「ウィニア議員。私だって、いつまでも子供ではありません。」
憮然となりながら、私も紅茶を口にする。
ハープの爽やかさが心地いい。気分を自然と落ち着く。
「神官であろうとも、このフットランドの住民にはちがいないのですから、遠慮は無用です。
議員の肩書を持つ以上は、住民の声には真摯に向き合う事も大事な仕事の一つ・・・。
まぁ、違う見解の方も大勢いらっしゃいますが。」
「いえ、とんでもない。
素晴らしい信念だと思います。父もそういう議員でしたから。」
「えぇ。惜しい方を亡くしました。」
「すみません。つい・・・」
「いいんですよ。そういう想いを忘れずにいるのが、生きる者の務めですから。」
「・・・ありがとうございます。」
今日は、突然押し掛けて申し訳ありませんでした。
お時間を割いていただきありがとうございました。」
「本当に生真面目なところは変わりませんね。
次は、友人として、こちらから招待させていただきますね。」
私は、彼女の心遣いに感謝して、彼女の邸宅を辞した。
『囁き声』 ウィニア＝ロス （エルフ 女性 105歳 ザルツ博物誌 公式ＮＰＣ）
中庭に面したテラスにある白木の円卓にて、
私にさし向かいで座っているこの家の主は、
紅茶に手をつけずにじっと私の話に耳を傾けていた。
主の名は、ウィニア＝ロス。
幾度も自由都市同盟議会に選抜されており、フットランドの現役議員の中ではベテラン中のベテランである。
その発言の間のとり方の絶妙さ故か、彼女の発言はさして大きくないにも拘わらず聞き逃されることがない。
そのため、『囁き声』という異名をとるほどだ。
私は、じっと相手の返答を待つ。
「まず一つ。スピカさんでしたか？
どの議員が彼女の応対をしたか存じませんが、その方と私は意見を同じくしておりません。
住民を盾に取って交渉を迫ったなど、どのような団体であろうとも放置できない事案です。
次に、石鶏亭に疑惑があり必要となった場合ですが。
その時は、法に則り正式な手順を踏んだ上で、参考人の召喚をいたします。
議会のサインのある召喚状を示せないのであれば―、それは議会の意志を騙った無法者とお考えください。」
『囁く声』ウィニア＝ロス。彼女がこうも滔々と言葉を紡ぐのは珍しい。
「スピカさんに会ったら、お伝えください。
我がフットランド議会は他都市の不当な干渉を良しとせず、またそれを黙認するうものではない、と。」
白組ではなく、他都市？
どうして、そうなるのだろう。
また、感情がそのまま顔に出る悪い癖が出ていたのだろう、彼女がこう続けた。
「ええ、数日前によく響く声で問答してらっしゃったドランバルの議員がいらっしゃいましてね。
そのあとすこしお話する機会があったのですけれど、弁解に必死の御様子でしたよ。」
「一神官が政に差し出がましい口をはさみましたこと、ご容赦ください。」
「成長しましたね。
失礼。小さい頃から見ているから、ついね。」
彼女はクスリと微笑むと、ティーカップに口をつけた。
私が生まれたときには、既に父も彼女もフットランドの議員であり、良き友人同士であった。
彼女には、赤子の頃からお世話になっている。
「ウィニア議員。私だって、いつまでも子供ではありません。」
憮然となりながら、私も紅茶を口にする。
ハープの爽やかさが心地いい。気分を自然と落ち着く。
「神官であろうとも、このフットランドの住民にはちがいないのですから、遠慮は無用です。
議員の肩書を持つ以上は、住民の声には真摯に向き合う事も大事な仕事の一つ・・・。
まぁ、違う見解の方も大勢いらっしゃいますが。」
「いえ、とんでもない。
素晴らしい信念だと思います。父もそういう議員でしたから。」
「えぇ。惜しい方を亡くしました。」
「すみません。つい・・・」
「いいんですよ。そういう想いを忘れずにいるのが、生きる者の務めですから。」
「・・・ありがとうございます。」
今日は、突然押し掛けて申し訳ありませんでした。
お時間を割いていただきありがとうございました。」
「本当に生真面目なところは変わりませんね。
次は、友人として、こちらから招待させていただきますね。」
私は、彼女の心遣いに感謝して、彼女の邸宅を辞した。
『囁き声』 ウィニア＝ロス （エルフ 女性 105歳 ザルツ博物誌 公式ＮＰＣ）
コメントをかく