管理人さんが帰ってくるまでの仮まとめです

露骨表現あり、逃げれるのに逃げない喪子



昨年私は結婚した。
大学進学で上京して七年、私はヤンと知り合い退職し、専業主婦になったはずだった。

目覚ましが鳴る。普通専業主婦なら、この音で目が覚めて夫の為に朝食やお弁当を作るが、ベッドから降りる事はできない。
寝起きの悪いヤンが瞼を開け、私の額に、頬に、唇に口付ける。差し込まれる舌を噛みつける抵抗すら、もう随分前からしなくなった。
「おはよう、喪子。ねえ、朝飯作らなきゃいけないんだけど、してよ」
毎晩交わるにも関わらず、毎朝要求される彼の処理も、もう顔を洗うのと同じような作業になってしまった。機嫌を損ねて「お仕置き」をされたり、下手に機嫌を取って長引かないよう手短に済ませる術を身につけた自分が汚らわしい。まるで風俗嬢みたい。

ヤンと寝室を出て、先に洗面台を使う。手を顔よりも丁寧に洗い、アルコールで消毒する。この手をかざすだけでアルコールが噴霧される器具を注文する時は、彼の体液がついた手を消毒したいと悟られないか心臓がドキドキして冷や汗をかいたものだ。
毎朝のことだからぴったりのタイミングでヤンが顔を洗いに来て、その隣で化粧水をつける。顔の後は香りが気に入っているハンドクリーム。このハンドクリームも通販で買った。同じ物でも、外に買いに行って、服を買ったりお茶をしたい。できれば一人か、友達か、実家の母と。
「ねえヤン…このハンドクリームのブランド、限定の香りが出たんだって。化粧水と乳液もね、春限定のパッケージが出たの。」
「わかった、注文しとく。」
「そうじゃなくって、その…土日、外に買いに行きたいから、連れてって欲しい」
数秒の間が、怒らせてしまったんじゃないかと怯えさせる。
「あ、あの…来月母の日だからプレゼント、ネットじゃなくて自分で見て選びたくって…」
「別にいいよ。お義母さん、心配すると困るし。連休はこっちに遊びに来たいって昨日メール来てたし、喪子の化粧品も去年買ったから古くなったでしょ。」
外出は基本的に許されてないから、普段使う化粧品は日焼け止めとリップクリームしか持ってない。ファンデーションやチークも、親戚や友人と会う時だけ、不自然に思われないように使うだけだ。私が他の男の気を引こうとしているように見えるらしく、ヤンと外出する時も、日焼け止めの上からフェイスパウダー、眉を描く位しかできない。

顔を洗った後、「同じ時刻に眠り私は仕事をしていなくても、男女の体力の差があるから」と私を寝室に戻し、また足を鎖で繋ぐ。
朝食ができるまではまたこうして横になり、日によっては二度寝を貪るのは世の大人にとって贅沢の極みだろうが、私はみんなが羨ましい。
大学から一人暮らしをしていたヤンは、私より要領がよくて完璧な朝食を作ってくれる。お弁当は週に2,3回、私が作った事にして持って行っている。
「朝ごはんできたよ、お弁当も作ったから」

今日の朝食は和食だった。炊きたてのご飯においしいお味噌汁、目玉焼きの他に副菜、デザートのフルーツもある。
「いただきます。今日、お弁当作る日だっけ?」
「気が向いたから。昨日帰りに、喪子がおいしいって言ったパン屋に寄ったんだ。」
今日もごく普通に、一見仲のいい新婚に見えるような会話をする。私はこんな目に遭ってもヤンが憎めない。
女手一つで育ててくれた母を心配させたくないのもあるが、私が離れていかないか不安だと泣いて縋り付く彼を振り切る事ができない。友達と会う時なら、相手にわからないようについて来てGPSでも私を監視しているとはいえ、逃げることも助けも求める事もできる。それが私にはできなかった。

朝食の片付けを終え、歯を磨き着替えようとする私の腕を掴んだ。
「今日は部屋でお留守番しててよ」
抵抗するが引きずられ、ベッドに繋がれる。泣き喚く私に、ヤンが子供を黙らせるように問いかける。
「この前みたいにあそこに突っ込んで夜まで待ってたい?嫌だよね?」
いつもだって電話もパソコンも届かないよう鎖に繋がれて、帰るまでリビングで過ごしてる。今日のも嫌だけど、ヤンがチラつかせた留守番が一番嫌で、その後何日も口を聞かない程だ。
大人しくなった私の頭をあやすように優しく撫でる。

「じゃあこれ、今日のお昼と、暇つぶしの本とラジオ」
お昼ご飯はサンドイッチと、保温ジャーに入ったスープ。昨日パンを買って帰ったのも、スープを作ってたのもこの為だったんだ。
「ごめんね、愛してるから不安なんだ。喪子ならわかってくれるよね。」
毎朝の出掛ける前の日課のキスをして、彼が帰るまで今日も、待ち続けるしかできない。




以上です
ヤンデレに監禁されて、ヤンデレのことだけ考えて快適空間で飼われたい
仕事行きたくない

Menu

メニュー

【メニュー編集】

どなたでも編集できます