管理人さんが帰ってくるまでの仮まとめです

殺人あり、ヤンデレがかなりクズ
大して接点もないのにずっと拗らせて愛されてた系








2017/8/20 02:15:36
7年前2010年の今日起こった事件覚えてる奴いる?

喪沢高原男女失踪事件
8/19朝、アルバイト先の同僚であった男女5人は◯◯県から同県△△市喪沢に2泊3日の旅行に出かけた。この日は県内最大のウォータースライダーを有するアミューズメント施設で過ごした後、麓からほど近い河川敷で打ち上げられた△△市大花火大会を、喪沢高原のペンションでバーベキューを楽しみながら観賞。
宿泊し、翌朝5人は名所である喪沢山の滝までハイキングに出掛けた。ペンションからは往復2時間半の距離でオーナーは昼食を用意していたが5人は予定の12時を過ぎても戻らない。
「若い人には良くあることですし、あまり気にしていなかった」と答えている。15時を過ぎても戻ってこない為、オーナーはガイドに連絡を試みたがこの日はキャンセル、ガイドの体調不良が重なり一人も出ていなかった。夜になっても5人は戻らず警察に捜索を依頼した。

その日の夜、出血し倒れてた吉田さん(22歳女性)が病院に運ばれたが回復後の事情聴取によると、グループからはぐれたところを突然後ろから撃たれ、何も分からなかったそうだ。
その後1週間に渡って捜索されたが、4人は発見されていない。早朝に滝に向かっていた別のグループは下山時に登りの5人とすれ違い、その後銃声を聞いたとコメントしている。別ルートから向かっていた大学生グループは銃声を聞いた他、悲鳴、女の泣き叫ぶ声と共にそれを笑いながら追いかける複数の男の声を聞いたと述べていた。しかし後に、注目を集めるための嘘であったと証言を取り下げた。
また、野草採取をしていた地元の夫婦、林業従事者の男性2人が銃声を聞いているが、喪沢山では猿が観光客に危害を加える事が稀にあり、追い払う為の発砲と思ったと皆コメントしている。尚、この日は猿対策の発砲は一度も行われていない。

翌年4月、平田さん(25歳男性)、喪木さん(23歳男性)、池澤さん(21歳男性)の遺体が見つかった。
検死によると、皆銃殺であり、山中を逃げ回った形跡が見られた。うち一人は急所を外して数カ所撃たれており、逃げるうちに出血多量により死亡。もう一人は腕を撃たれた後岩場に隠れていたが出血多量により死亡。どちらも死亡後とどめを刺す為に額を撃たれている。
残りの一人である喪山さん(20歳女性)の遺体は見つかっていない。
吉田さんはPTSDに陥ったが、翌年度無事に大学を卒業、就職を果たした。本人とご両親の意向もあり、親類や友人も一切事件に関するインタビューには答えていない。

3
吉田さんは無事なの?

4
犯人まだ捕まってないならこの子危ないよ

5
いや、あれだけ騒がれて今も未解決事件で有名だから手を出せないでしょ
もしかして吉田が…おや、こんな時間に誰か来たようだ

6
吉田さんって女子アナにいそうな可愛い子だったよな
喪山さんは地味でおとなしそう

7
どこが?髪染めてるじゃん

8
それだけで派手とかキモヲタかよw
でも実際不登校だったことあるらしいよ

9
リア充になった途端に殺されてカワイソス

10
吉田って◯◯県の旧帝だよね
詳しくは知らないけどあの後かなりいいとこ就職したらしいよ

11
友達殺されて得してんじゃんwwやっぱ怪しいなこの女

12
そういうこと言うなよ
元から旧帝入るくらい頭良くて、トラウマで引きこもってもおかしくないのに努力したんだろ


今朝電車で開いたまとめサイトでつい、あの事件の記事をクリックしてしまった。7年前のあの日、私は殺人事件に巻き込まれた。未解決事件として歴史に名を残し、私たちについては面白おかしく推測されている。
今ではこうして、社会人として働き結婚を控えている。
せっかく乗り越えたんだから気にしたって仕方ない。入りたかった会社で仕事も順調、理想の恋人、今日だって同期と後輩と人気のカフェで楽しくランチ。

「吉田さんって本当凄いですよね」
「え?何が?」
「だって、あんな事があったのに次の年度には就職して、実際仕事もできて、美沢さんみたいなイケメン医師の彼氏もいて、うちの御曹司のヤンさんとも友達とか凄過ぎですよ!?」
「あー…確かにリア子、かなり注目はされてたよね。就活の時から」
この話題に慣れた同期も、私と同じく苦笑い。
「注目されてると、やり辛かったですよね…やっぱり凄い!」
「うーん…確かにそうだったけど、親とか入院してた時の先生とか、大学の友達も先生もみんなサポートしてくれたから」
「でもインターンの時からできる方だったし、リア子ほんとメンタル強いよねー」

そう、私は優秀な人間だ。容姿に恵まれてるのも、いつだって人間関係がうまくいったのも自覚してる。
だからこそ、あの人のお陰、あの男があの人を拘束するための道具として今が与えられている事が不服なのだ。
いっそ逃れられないなら私はあの人を利用させてもらう。私の理想の人生を歩む。その位許されたっていいじゃないか。私も被害者なんだから。

「リア子ちゃん?あ、やっぱり」
「え?ねえあの人もしかして…」
初めて彼を見る後輩の黄色い声。
「こんにちは…」
「喪江が昨日ちょうど、遊びたいって言ってたんだー。またそのうち4人で飲もうよ」
ニ、三言交わした後、彼は去っていった。「本当に芸能人並みのルックスなんですねー」「背も高いし、マンガのキャラみたいな人実在したんだって思ったよ」なんて、話す二人は彼の本性を知らない。

私は7年前のあの日まで「喪山喪子」だった、病崎ヤンの妻で遠縁の金城家の娘「病崎喪江」をこの世に留める留める人質として生かされてる。


頭が痛い。そっと目を開ける。覚えのない部屋。
頭痛を堪えてのろのろと起き上がる。腕が上がらない。目を向けると、手首は柵から伸びる太いベルトで拘束されていた。両手を合わせることもできない。
周りを見渡すと、ホテルのような部屋。後ろを見ると、ナースコールのようなもの、「喪山喪子」の名と主治医の名前。ここは病院のようだ。
「なんで…どうして…」
思い出そうとするが、激しい痛みに襲われる。いつの間にか意識を手放したことは、次に意識を取り戻して知った。
またきょろきょろと見回すが、さっきと同じ知らない部屋。
そうだ、私は…バイト先のグループで旅行に行って、銃声がして、リア子ちゃんが倒れてて、私達は追いかけられて、平田さんが撃たれて、池澤君と喪木さんとはぐれて…。最後に覚えてるのは、茂みに隠れていた時に男の野太い掛け声。その時、私は口を塞がれて、後は覚えていない。
みんなはどうしてるんだろうか。

それから、看護師や医者に何を聞いてもちゃんと答えてくれない。拘束も解いてくれない。両親にも会えない。
数日後にベルトが長くなって自由に見れるようになったテレビで、大事件として報道されている事を知った。どんなに聞いても、誰も答えてくれなかった。


数日後、面会の人が来た。両親ならよかったが、そう言わないなら警察だと思っていたが思いもよらぬ人だった。
「ヤン、君…」
「大変だったね、喪子」
両親にすら会えないのに、どうして彼がここにいるのか。問いただしてもにこにこと微笑んでいるだけだ。
ただの幼なじみ、中学に上がる前に転校した彼が会えて、どうして親は会いに来てくれないの。
「喪子が悪いんだよ」
あり得ない言葉に息を飲む。次に湧いてきたのは怒りだった。
「何言ってるの!?私、こんな目に遭ったんだよ!いきなり銃持った男達に襲われて、追いかけられて、もう一人以外まだ行方不明!ニュースじゃ私も行方不明にされてる!
被害者にお前が悪いとか、意味わかんないよ!」
それでも返ってくるのは「喪子が悪いんだよ」だった。
「僕は引っ越してからも、ずっと喪子とメールで繋がってた。喪子が携帯を持ってなかった小学生の頃は文通、中学の頃はパソコンでメールしてた。
学校に行けなくなった高校の頃だって、一言僕を頼ってくれれば東京で僕の近くに居てもらえたのにしなかったのは喪子だ」
意味がわからない。頭がおかしい。
咄嗟にナースコールを押すが、ヤン君は気にも留めない。
「僕は高校の頃も、僕の父さんに会う時は必ず喪子と会おうとした。喪子は会ってくれた。
僕が大学に入ってからはニートなのに忙しいとか、奢るって言っても悪いと言って会ってくれなくなった。
山田と喪子ちゃんのバイト先に食べに行ったの、わざとだよ。全部探偵に調べさせた。」
ヤン君は幼くして母を亡くした父子家庭で、母方の祖父母と暮らす為に引っ越した。私を含む幼なじみ達は、その後も彼と連絡を取り合っていた。ヤン君は都会の子になり頭も良くいい学校に行ってて、接点なんてそれほどない。
ナースコールで看護師がやってきたが、彼の「大丈夫」の一言で扉を閉めてしまう。
「喪子、池澤君が好きなんだっけ?あいつ彼女コロコロ変えるし、吉田さん狙いだからね。喪木は喪子狙いだったみたいだけど、あいつ彼女いた事ないみたいだし軽く見られて利用されるとこだったね」
「なんなの…ヤン…君…何言ってるの
なんでここに来てるの…私のこと、調べてるの、なんで…」

「だって喪子達襲わせたの僕だもん。3人殺せって言ったのも。
絶対犯人は捕まらないよ。警察も探してるのはポーズだし」

それから半年、私は病室に閉じ込められ、遺体も発見されず犯人も捕まらないまま時間が過ぎた。
その間話し相手と言えば毎週やって来るヤン君だけで、どうやら彼の亡き母は某財閥総帥の一人娘でお父さんと駆け落ちしたらしい。祖父からは溺愛され、この事件を揉み消す事ができ、私のような一般人との結婚の許しも出たそうだ。


年が明け春が近づき、唯一の生存者とされた吉田さんは本当なら大学を卒業していた頃だった。
「あ、吉田さんうちの会社第一志望でほぼ決まってたのに留年しちゃったんだってね」
誰のせいでそうなったと、睨み付けお茶を投げつける私にヤン君はそっと囁いた。
「吉田さん、休学してたけど4月から戻って就活やり直すんだって。あんな形で世間の目に晒されたのに偉いよねー…学業もすごく優秀らしいし、ぜひ採用されてほしいな」

それから私は、彼のでっち上げたシナリオに従い、両親と再会した。
今回の事件は警察が手を出せない有力者の息子の仕業である。私は警察に保護されたが、吉田さんと違い顔を見ている為身の危険があり、ヤン君の母方の家柄と今の立場を明かし、彼の家の力で守られている。
遠縁にあたる金城家には中学の頃から外出せず、事件のあった昨年に自殺した娘がおり、体面のため留学中になったままの彼女の戸籍で生きていく。それがヤン君の用意した筋書きだった。
両親はにわかには信じられないようだったが、ヤン君の家を知るに従い信じざるを得なかった。

長年仕える人達に監視される家に住まい、私は数度整形手術を受けた。新しい私の両親となる金城夫妻は「どうせ喪江は何年も家族以外に会っていませんし、私達からは生まれるはずがない外国人みたいな顔じゃなければお好きにどうぞ」としか言わなかった。
私の顔が変わることを悲しんた彼は家でも、毎週末旅行に連れ出してはその度何枚も写真を撮った。病室で嫌がる私の写真をしつこく撮り続けたのはそのせいだったようだ。
小学生時代に好きだったアイドル、中高生の頃にファンだった歌手にモデル、病室でよく出演作を観ていた女優、彼は詳細に覚えていて、「喪子はどんな顔になりたい?どんな顔でも好きだけど、この顔ならそんなに弄らなくてもなれて面影が残るかなぁ…」なんて私よりも真剣だった。
「人のお金で腕のいい整形外科医に、ブスから美人にしてもらえるならそれでいいよ」と言った時、今の顔が大好きで可愛い、どんなに醜くなっても愛してると言われた時は不覚にもぐらついた。

その間良家の子女になりきるための教育を受け、受験勉強をして大学に入る頃、事件から2年が経ち22歳になっていた。
金城喪江さんは生きていれば20歳で、喪江として、不登校の高校生だった私にはあり得ない大学に入った。4年後卒業し、就職はせずに昨年彼と結婚した。
上流階級の奥様付き合いも、親戚づきあいも殆どしていない。広大な屋敷から出る事も、同じ家に住むおじい様にお会いする事もほとんどない。

私と結婚するだけならあんな事件を起こす必要はなかったのに…そう思うっていたが、ヤン君と先日本当の両親に会いに行った時疑っている事がある。
高校で私をいじめた、小中も同じだった水津さんに会った。彼女は私が喪子だとは当然気付かないが、少し離れたところであの事件のこと、自分達のせいで私が大学進学できなかったことを口にして「あなたがあんなこと言うから!私のお父さん失業してて私仕方なく…」と言うと逃げ出すようにいなくなった。彼は何と言ったのかはわからない。
もしかしたら、事件の当時私だけが池澤君と付き合っていると思ったまま処女をあげた事も、彼は知っていたのかもしれない。
今はもうそんな事はどうでもいい。両親を、亡き後は親類と吉田さんを守る為に、金城喪江として生きていくしかないのだ。夫だけに本当の名を呼ばれながら。



以上です

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