管理人さんが帰ってくるまでの仮まとめです

本スレ538のネタ投下のお言葉に甘えて続きを書かせてもらいました

0538 彼氏いない歴774年@無断転載は禁止 (スフッ Sdaa-a8tq) 2017/04/23 19:21:47
明日1講時からなのに渋滞\(^o^)/
人外ヤンに攫われてえ〜
寂れた町を散策中ふと気付くと人っ子ひとりいなくなっていて…
慌ててバスターミナルに戻るもやはり誰もいない。一体全体、何がこの町に起こったというのだろう。
待合室で静かな町を呆然と眺めていると不意に気配を感じた。ハッとして、振り向こうとしたけれど後ろから抱き止めらてそれは叶わなかった。
背中に硬い男の胸板を感じる。私の動きを封じている手もゴツゴツしていて大きい。
男は私を覆い隠すほどの長身で…
みたいな
バスで書いてたら酔ってきてヤンが喋るとこまでいけなかった(。-_-。)
誰か続きよろ




「離して!」
そう叫ぶと一目散に走り出していた。誰もいない町の中を。
誰もいないなんて、そんなことあるはずがない。こんな寂れた町だもん、きっとみんな何かに参加してるんだ、そうに違いない。
駅のすぐ向かいの交番に駆け込んだ。
「すみません!誰か、誰かいませんか!?」
入り口は空いていて、電気も付いているのに警官はいなかった。奥の休憩室を除いても誰もいない。
遠くから、上機嫌な鼻歌が聞こえる。この町には私とあの男しかいない。とっさに誰もいなかった休憩室に隠れた。さっきまで誰かがいたかのように、コーヒーが湯気を立てテレビからは平日昼の帯番組が流れてる。
「お巡りさん、早く帰ってきて…」
どれだけ待っても、警官は帰ってこなかった。

一晩交番で過ごし、恐る恐る外を覗く。
トイレに行けば水は流れたし、暖房だってつけれた。でも、誰一人いなかった。
駅に行って見ても、利用客どころか駅員もいなかった。昨日来た時は無人駅ではなかったのに。
駅のコンビニは、店員がいないだけで商品が並び、温かい物は温かく、冷たい物は冷たく保たれている。お腹が鳴り、レジにお金を置いてパンとペットボトルの水をもらった。
「窃盗になったらやだな…」
誰もいないホームには人はおろか鳥の声すら聞こえず、それでもアナウンスだけは何食わぬ顔で流れる。電車は来るんだろうか、来たところで乗っていいのか。

「喪子!」
改札の向こうから声がして振り向くと、見知らぬ男がいた。初めて見る顔だが昨日の男だと確信し、階段を駆け上がり反対のホームへと逃げ込んだ。
「喪子、昨日は眠れなかっただろ?お腹、空いたよな…こっちにおいで」
「来ないで!あんたなんか知らない!」
線路の向こうの男の声をかき消すように、電車が到着する。電車に飛び乗ると乗客は一人もないが、それでも降りることはできず早く閉まってと祈った。
男が階段を降り切ったところでドアが閉まり、電車は走り出した。
路線図を見ると、終点はこの県では大きな市だった。そこまでいけば何かわかるかもしれない。
男から逃げられた安堵感から、急に睡魔に襲われ眠りに落ちた。

ーー次は◯◯、◯◯に停まります
その声で飛び起きてもやっぱり人はいなかったが、窓に目をやると希望が見えた。外には車が走り人が行き交っている。きっと私は何か悪い夢を見ていたんだ。

電車を降りると、人がいるごく普通のホーム。
「すいません…」
駅員に話しかけても、反応がない。不思議に思っているとサラリーマンにぶつかられた。
「あ、ごめんなさい」
こっちを見すらせずに行ってしまった。
それから何人もの人に話しかけたのに、みんな気づかず、私なんて存在しないみたいに通り過ぎてしまう。
ーーまもなく、◯番線の電車が発車します。お乗りの方は…
私が乗って来た電車が折り返すようだ。この電車に乗ればあの町に戻る。戻れば今度は人がいるのか、もしここと同じなら、あの男につかまったら。
私を置いて走り去る電車を見送り、車掌すらいないことに気付いてしまった。私が乗った時も、そうだった?
ホームで泣き崩れる私に、不審な視線を送る人すらいない。
どうすれば帰れる?電車に乗らなきゃよかった?あそこにいればよかった?でも、あの町にはあいつが…

戻っても、今度はあいつすらいなかったら?

それから何時間経っただろうか。街中の人が私には気付かない。
電車にも怖くて乗れず、ホームに何時間も座る私に声を掛ける人がいた。
あの男だった。
「喪子、帰ろう。ここは時空が交差する場所だから、他の奴に見つかったら大変だ」
「あなた、誰なの…」
「俺達みたいな人からは、ヤンって呼ばれてる。喪子は何も知らないから、俺が守るよ。だから…」
私は男の手を取った。抱き締められると、昨日は恐怖しかなかったのに、この男だけが私を認識してくれるだけで安心感が込み上げた。泣き喚く私を、落ち着くまでずっと撫でてくれた。

朝と同じ電車がやってきて、私と男は二人で、車掌もいない、二人きりの空間へと乗り込む。
自然と私達は手を繋ぎ、いつの間にか彼に信頼を寄せていた。私を優しい目で見下ろす長身の彼の顔は、柔らかく上品に整っている。
「どうして、こんな事になったんだろう…」
「喪子、先週エレベーターで違う世界に行く方法を試したよね。あれのせいで、こっちに来ちゃったんだと思う」
飲み会の後うちに泊まった友達と、ネットで見た『異世界に行く方法』を試した。
「でもあれ、降りたら違う世界にいるんじゃ…それに、なんで私だけ…」
「それは俺にも分からない。ああいうの試す奴らが多いから、時空を移動しないように妨害したり、開いた裂け目を閉じたり、来たら返すのが俺の仕事。時空のおっさんって見たことある?あれの同業者」
ネットで見た異世界に行く方法が本物で、こんな時間差で現実になったこと、そして多数の時空をパトロールするような人が本当にいるなんて、まだ夢を見てるみたいだ。
「嘘みたい…」
「嘘じゃないよ、どこの時空から来たのかも本当の名前も思い出せない…喪子の感覚でいう何十年もこうやってる。初めて会ったおっさんと話した時はもう戻れなかったから、そのまま」
「そんなに…今は、今はそのおじさんとか、同じ仕事の人もいて一人じゃないんだよね!?」
誰もいない一人ぼっちの世界で、彼はどれだけ過ごしたんだろう。いたずらに試してやって来る人達を元の世界からはみ出さないよう守るのは、どれだけ苦しかったんだろうと考えるだけで涙が溢れた。
「ありがとう、喪子は優しいね…一晩経ったし、戻れるか分からないけど俺が守るから」
「うん…あ、待って、友達も一緒に試したの!あの子は、どこにいるかわかる?」
「喪子達が先週試してからずっと見てたけど、多分元の場所にいるよ。管轄外の時空に行ってたらわからないけど、喪子がこっち来た時点では大丈夫」
ほっと胸をなでおろした。きっと元の世界に戻れる。もし万が一戻れなくても、ヤンが、同じように時空を管理する人間がいる。私は一人じゃない。
「疲れたね、まだ時間がかかるから、ゆっくり寝てな」
「ありがとう、ヤンさん…」
会ったばかりなのに、ヤンさんの大きな手で撫でられると懐かしい気がした。
何の根拠もなく、彼に全ての委ねれば大丈夫と目を閉じた。



寂れた町の鄙びた温泉に、婚約者と旅行に来てたはずだった。町を散策している途中気がつくと誰もいなかった。
旅館に戻って隈なく探しても、婚約者はおろか誰一人として見つからない。
翌朝になっても町中誰もいない。今日の喪子と同じように電車に乗り遠くの町まで行ってやっと人を見つけて、同じく誰にも見えていなかった。

どれ位経ったか、幽霊のように人混みに紛れて生きた。誰にも見えなかったり、誰もいない街もあったのをいいことに、勝手に食事をとり、風呂と寝床を借り、服も着替えた。
自分は実は幽霊なんじゃないかと思うようになっていた。その頃には本当の名前も、婚約者の名前も忘れてしまった。
ある時初めて、人に声を掛けられた。
「兄ちゃん、こんなとこで何してんだ…」
「俺が見えるの?霊能力者?」
「お前死んでなんかねぇぞ、飯だって食ってるし眠くなるだろ?」
それから俺は、時空のおっさんの亜種として生きている。年は取らないし、俺が異世界に迷い込んだ2020年より未来の時空もあれば、過去の時空もあった。全ての時空はおっさん達も把握しきれてないらしいし、紛れたまま誰にも見つけられてない人もおそらく多いそうだ。
普通に俺が見えて話せる世界もあれば、その世界の俺と入れ替わったようになる時もあった。結局そこの住人ではないから、おっさん達に促されてふらふら移動する羽目にはなったが。

ある時、2010年頃の時空の地方の駅にいた。仕事を終え観光して名物を食べた。少しの時間なら周りの人間に認識される術をおっさん達に教わった。
どこかで見た事のある子がいた。
その子の押す自転車の後輪カバーには「1年3組 喪山喪子」
思い出した。自分の名前すら思い出せないのに、この子はあの時から10年前の、俺の婚約者だと。今この子に話し掛けても怖がられるだけだ、いっそこの子をこのまま連れ去ってしまおうか…そう考えていると、おっさんが隣にいた。
「おい、何やってんだ」
「…別に」
「…気持ちはわかる、でもやめとけ」
「そんな法律、俺たちにはないですよね」
次の瞬間、おっさんに顔を叩かれ頬がじんじんと痛む。道行く人は俺達を見てすらいない。ああ、この時空から離されてしまったんだと肩を落とした。
「こうなったのをいい事に好き勝手する奴はいる。でもな、モラルを捨てちゃあダメだ。干渉はするなってのが守れないなら、お前を殺してどっかの時空に捨てる。」
喪子の名前なんて思い出さなければ良かった。喪子になんか会わなければ良かった。

それから時空を移動しては、おっさん達のコミュニティに属さない人間とも関わった。教わっていない方法、抜け道、目が届かない時空についても知った。
その間もずっと、喪子の成長は見守ってた。干渉しようにも時空が歪むか、人間側から移動しようと行動を起こさない限りはそう簡単に接触できない。
喪子は大学生になっても彼氏は一度もできず20歳を迎えた。俺と知り合ったのは大学一年で、このまま誰とも付き合って欲しくなかった。
チャンスは案外簡単に訪れた。喪子自ら、時空を歪める術をやってくれた。
どうせすぐに他の奴に見付かる、干渉はせず喪子をただ見ていた。
「…誰かいると思ったらヤンか。あの子こっちに引っ張るなよ」
「わかってますって。だから気付いて来てみたけど、放置してるんですから。10階、着いちゃいますよ?」
おっさんが異世界と繋がりかけた点、エレベーターのドアを修正する。
『やっぱり嘘だったね』
『異世界とかあるわけないかー』
笑い合う喪子を歯痒い気持ちで見つめる俺を、おっさんが急かした。
「見るだけならいつもやってんの、知ってるぞ。今日は奢ってやるから来い。もちろん、あの子のいない次元でな」

それから、朝から晩まで、喪子を監視する日が続いた。一度時空を移動し掛けた喪子は、こっちに引っ張りやすくなってる。なんとか連れ込んで、他の奴が知らない俺の縄張りに隠して戻れなくすればこっちのもの。
あのおっさんは情に脆い。帰れなくなった喪子から恋人を奪うなんてできない。婚約者を見つけて魔が差した哀れな男には情けをかけてくれる。
喪子が時空の歪む地にやってきた。そこは俺が異世界に飛ばされて、喪子と最後に過ごした小さな町。俺が迷い込んだ無人のこの町は、おっさん達が把握していない俺だけの縄張り。


やっとこの腕の中に取り戻した喪子を、二人だけの世界へ列車が誘う。俺の膝で浅く眠っていた喪子が目を開く。
「……ヤンさん、さっきの駅が危ないって、また違う世界に行くかもって事?」
「ん?それもあるけど…俺達みたいのは、時空のおっさんみたいないい人ばかりじゃないからね」
このままどこか、俺しか頼る人のいない世界に紛れ込もうか、それとも俺達しか存在しない世界でどちらかが死ぬまで暮らそうか。
「…大丈夫、ずっと喪子と一緒にいるから」




以上です
エレベーターを使った異世界に行く方法は、特定の順番で特定の階で停まり、最後に10階に降りると異世界というものです。
お目汚し失礼しました。

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