「ちょっと密林行ってくる」
485 :名無しさん@ピンキー:2008/11/21(金) 22:30:00 ID:LQSrVxtW
ところで世話好き無口姉ってどこに売ってるんですかね?
486 :名無しさん@ピンキー:2008/11/21(金) 23:36:54 ID:UKSP551W
>>485
amazon辺りで売ってなかった?w
487 :名無しさん@ピンキー:2008/11/22(土) 15:38:45 ID:ZUy9px/x
>>486
ちょっと密林行ってくる
ぶっきら棒な書き込みをスレ住人達に残し、>487は有り金を叩いて航空券を用意すると、
一度も振り返る事無くAmazonの密林へと飛び込んだ……。 そう、>486の言葉だけを胸に、
彼は究極の姉さんヨメ探しへと旅立ったのである。
しかしそこは、彼の想像を遥かに超える過酷な世界だった。
不安定な天候、道なき道、得体の知れない生物たちとの遭遇、そして何より、愛すべき
無口スレとの物理的断絶は、彼の精神と身体に、僅かずつながら確実にダメージを重ねてゆく。
ところが>487は諦めない。昼は小川のきらめきに、ジャングルの木漏れ日に。
夜は星月の瞬きに、見よう見まねでどうにか熾した焚き火の揺らめきに。
そう、彼は光あるところすべてに、まだ見ぬ「世話好き無口姉」との出会いの瞬間を重ねていた。
――どんな姿なんだろう? どんな世話を焼いてくれるんだろう? どんだけ無口なのかな?
――んで……どんな夜をすごせんのかな?
周囲の安全を気にかけながらの、短いまどろみの度に、>487は幸せな笑みを浮かべていた。
その儚い妄想が、孤独と未開の地が隠し持つ、甘美な毒牙である事にも気づかずに。
幾度太陽が昇り、沈んだだろうか。底なしの密林に夢を追い求めるばかりに、>487はついに、
天と地の間に己の場所を知る事が出来なくなってしまったのである。
常人であれば正気を保ってはいられなくなる、生命の危機、まさに極限状態だ。
だが、それが>487にとってどれだけの意味を持っているというのだろうか?
日本を離れてからというもの、彼はまだ、一度も自分の来た道を振り返ってはいないのだ。
この密林の位置口まで道案内をしてくれたコンダクターの静止も聞かず、この旅に挑んで
いるのだ。彼が見つめているのは、生い茂る原生林の向こうにあるはずの彼女の姿のみ。
無我夢中で道なき道を行く>487のヒゲと泥にまみれた顔には、まだ笑顔があった。
頬はこけ、目の下にはクマができていたが、瞳はらんらんと輝いている。
>487は思う。
――この奥に、きっと彼女は待っているんだ!
そう念じて倒木を飛び越えると、大粒の雨が降り始めた。恒例のスコールだ。
全身に打ち付ける水玉はライスシャワー。地面に轟くほどの雨音は祝福の歓声。
白く遮られる視界は、彼女の顔を包む絹のヴェールそのもの。
>487はヴェールへと手を伸ばす。誓いのキスをするために。
だが、突如として視界が地面へと傾き、彼女は急に>487の前から姿を消した。
ぬかるみに足を取られ、>487は泥に顔面から突っ伏してしまったのだ。
――なるほど、ウエディングケーキに突っ込むなんていうサプライズも悪くない……。
降りしきる雨が作り出した泥の川の中、>487は寝返りを打ち、渦巻く雨雲に向け
大の字になった。あまりの雨の勢いに、まぶたを開けていることさえ困難だ。
――その上、ビールかけのある結婚式なんて、前代未聞だぜ……? へへ。
気丈なまでの妄想力とは裏腹に、>487は寝返りを打ったが最後、指一本動かす事が出来ずにいた。
食料と水が尽きたまま、不眠不休で彷徨うこと早三日。どことなく思考が「食」に
傾くのも当然である。「世話好き無口姉」を追い求める情熱だけが支えていた>487の
肉体にも、ついに限界が訪れようとしていた。それでも費える事の無い妄想が生み出す
チャペルには、幼い頃の>487、学生だった頃の>487達まで参列している。
>487はもう悟っていた。恐れは無かった。あるはずも無い。
――これほどに幸せな走馬灯を見られるのは、後にも先にも俺だけだろうな……。
彼の胸を満たしていたのは、>486への感謝だけだった。
>487はもう足掻くことなく、甘い夢の終わりの続きを選ぶ事にした。
黒々とした雨雲が遠ざかる。フェードアウトしてゆく雨音の向こうで、けたたましい
鳥の鳴き声がこだまし、曇天の狭間から一筋の光が差し込んだ。眩しい。まるで、
迎えるべき新婦への道を照らすスポットライトのようだ。
――行き先は、あの雲の向こうに違いない……。そして今度こそ彼女に……!
泥に半ばうずまりかけている身体が、溶かされてゆくような心地よさだった。
一体となりつつある地面を伝って、何かの足音が近付いてくる。密林での生活の中で
いつしか研ぎ澄まされていた野性が、最後の来客の到来を>487に知らせた。
ざっ、ざっ、ざっ……。
規則正しくまっすぐこちらに近付いてくる足音に、ぴくりと>487の頬が動く
。
――ありがてえ。人間だ。どうやら骸だけは……ニッポンに運んでもらえそうだ……。
この無人に近い密林の奥地で、俺は誰にも追い求められない夢を追い、誰にも
真似できない死に方をするのだ。そう思うと、>487は誇らしくさえあった。
あとは気を利かせた誰かが、誰の目にも触れぬままに、PCのHDDを物理的に破壊して
くれればそれで良かった。
足音が止まる。誰かが、>487のすぐ横で。
「……う……」
>487は聞こえないほど小さな声でうめきながら、まぶたを開いた。
そして、自分でも驚くべき強さで「ひゅうっ!」と息を吸っていた。
ずぶ濡れになったシャツの下で冷たく止まりかけていた心臓が、どくんと血液を全身へ
向けて放つ。走馬灯が、チャペルが、一気に思考の向こうへと押し流されてゆく。
「……あ……」
再び、小さなうめき。こびりつく妄想の続き。
――う、ウエディングドレス……?
その幻の正体は、南米の陽光を受けキラキラと輝きながら柔らかく降り注ぐ霧雨だった。
だが>487の目が釘付けになっていたのはそこではない。雨粒の向こうからじっとこちらを
見下ろしている、金色に輝く優しげな女性の瞳だった。
傘を差す事も無く――そもそも傘など知らないだろうが――雨粒に濡れそぼった褐色の肌を彩る、
まばゆい原色の髪留めと大きな首飾り。極端に面積の小さなビキニのような衣服からすらりと
伸びた肢体は>487よりも背が高い印象で、独特のタトゥーで飾られている。その長い脚を折り、
彼女は>487の横に跪くと、そっと彼の薄汚れた顔に指を伸ばし頬を撫ぜた。微笑んでいる。
彫り深く整った顔立ちは、見れば見るほどにびっくりするぐらいの美人だ。
「……ぅ……ひゅうぅ……うぅ」
優しい手を握ることさえできず、声帯を震わせる事も出来ず、か細い呼吸だけで>487は
精一杯彼女に返事をした。
――よもや、ここで自分が無口になってしまうとはッ!?
そんな事を思っていると、彼女は腰帯に挟んでいた木の筒の先を>487の口元に差し向け、
先端のフタをポンと抜いた。雨水と一緒に、木筒から流れ出した甘酸っぱくて少し苦い
果汁のような液体が少しずつ口の中を満たしてゆき――
「ゴボッ、ゴホ!」
>487は盛大にむせた。喉に力が入らず、飲み下せないのだ。赤ワインのような液体が、
口から垂れて情けない。鼻に入ってさらに痛苦しい。
彼女は申し訳無さそうに太めの眉を寄せて、ぐいっと>487の顔に自分の顔を寄せた。
急にクローズアップされた美貌に驚く間もなく、>487はその口に、ぽってりした唇を
重ねられた。赤い液体が、すーっと彼女の口へと吸い込まれてゆく。この液体はきっと
何か元気の出る物で、それを失っているにもかかわらず>487が逆にどんどん元気を貰って
いるのは言うまでも無い。
――な、何と言う世話焼き加減かッ――!?
まつ毛が触れ合いそうな距離から彼女は一度身体を起こすと、キュッと手の甲で唇を拭う。
どこと無く勇ましさと頼りがいを感じるその姿と、これから起こり得るであろう展開に、
>487はいよいよ胸の高鳴りを抑えられなかった。
彼女は>487の思惑通り、口の中に液体を溜めたまま、今度は>487の上体を抱きかかえるよう
にして起こした。そしてためらう事無く口移しを始める。
「んっ、んんッ……」
「こきゅ……んくッ……」
柔らかな唇の感触と、微かに触れ合う前歯の間から少量ずつ入ってくるそれを、487は今度こそ
飲み下してゆく。鼻息の感触が、彼女の真剣さを物語っているようだった。
――さっきより甘く感じるのは、ぜってー気のせいじゃない……!
>487はいつしか、生死の境をさ迷っていた事さえ忘れていた。早くも力を取り戻し始めた
右手で、彼女の頬に触れてみる。まだ震えてはいるが、感触ははっきり分かる。鮮やかな
赤のタトゥーが眩しい、雨さえ弾きそうなピチピチの肌。
彼女が何者かは知らない。この先どうなるのかも分からない。
でも、>487にとって彼女は間違いなく女神だった。
妄想ではないこの触れ合いだけが、彼にとっての全てだった。
つぅ……と赤い液体の糸を引き、唇と唇が離れる。彼女の腕の中に抱き寄せられたまま、
>487は右手の親指で、自分の命と希望をつなぎとめてくれた彼女の唇をやさしく労うように
拭い、そして笑顔を投げかけた。言葉の分からない自分の感謝が伝われば……と。
瞬間、金色の瞳をまん丸にした彼女の頬が、タトゥーとは違う朱に染まったような気がし――
口移しの用も無いのに、再び彼女は>487の唇を求めてくるのであった。
〜続かぬ〜
作者 6-496
ところで世話好き無口姉ってどこに売ってるんですかね?
486 :名無しさん@ピンキー:2008/11/21(金) 23:36:54 ID:UKSP551W
>>485
amazon辺りで売ってなかった?w
487 :名無しさん@ピンキー:2008/11/22(土) 15:38:45 ID:ZUy9px/x
>>486
ちょっと密林行ってくる
ぶっきら棒な書き込みをスレ住人達に残し、>487は有り金を叩いて航空券を用意すると、
一度も振り返る事無くAmazonの密林へと飛び込んだ……。 そう、>486の言葉だけを胸に、
彼は究極の姉さんヨメ探しへと旅立ったのである。
しかしそこは、彼の想像を遥かに超える過酷な世界だった。
不安定な天候、道なき道、得体の知れない生物たちとの遭遇、そして何より、愛すべき
無口スレとの物理的断絶は、彼の精神と身体に、僅かずつながら確実にダメージを重ねてゆく。
ところが>487は諦めない。昼は小川のきらめきに、ジャングルの木漏れ日に。
夜は星月の瞬きに、見よう見まねでどうにか熾した焚き火の揺らめきに。
そう、彼は光あるところすべてに、まだ見ぬ「世話好き無口姉」との出会いの瞬間を重ねていた。
――どんな姿なんだろう? どんな世話を焼いてくれるんだろう? どんだけ無口なのかな?
――んで……どんな夜をすごせんのかな?
周囲の安全を気にかけながらの、短いまどろみの度に、>487は幸せな笑みを浮かべていた。
その儚い妄想が、孤独と未開の地が隠し持つ、甘美な毒牙である事にも気づかずに。
幾度太陽が昇り、沈んだだろうか。底なしの密林に夢を追い求めるばかりに、>487はついに、
天と地の間に己の場所を知る事が出来なくなってしまったのである。
常人であれば正気を保ってはいられなくなる、生命の危機、まさに極限状態だ。
だが、それが>487にとってどれだけの意味を持っているというのだろうか?
日本を離れてからというもの、彼はまだ、一度も自分の来た道を振り返ってはいないのだ。
この密林の位置口まで道案内をしてくれたコンダクターの静止も聞かず、この旅に挑んで
いるのだ。彼が見つめているのは、生い茂る原生林の向こうにあるはずの彼女の姿のみ。
無我夢中で道なき道を行く>487のヒゲと泥にまみれた顔には、まだ笑顔があった。
頬はこけ、目の下にはクマができていたが、瞳はらんらんと輝いている。
>487は思う。
――この奥に、きっと彼女は待っているんだ!
そう念じて倒木を飛び越えると、大粒の雨が降り始めた。恒例のスコールだ。
全身に打ち付ける水玉はライスシャワー。地面に轟くほどの雨音は祝福の歓声。
白く遮られる視界は、彼女の顔を包む絹のヴェールそのもの。
>487はヴェールへと手を伸ばす。誓いのキスをするために。
だが、突如として視界が地面へと傾き、彼女は急に>487の前から姿を消した。
ぬかるみに足を取られ、>487は泥に顔面から突っ伏してしまったのだ。
――なるほど、ウエディングケーキに突っ込むなんていうサプライズも悪くない……。
降りしきる雨が作り出した泥の川の中、>487は寝返りを打ち、渦巻く雨雲に向け
大の字になった。あまりの雨の勢いに、まぶたを開けていることさえ困難だ。
――その上、ビールかけのある結婚式なんて、前代未聞だぜ……? へへ。
気丈なまでの妄想力とは裏腹に、>487は寝返りを打ったが最後、指一本動かす事が出来ずにいた。
食料と水が尽きたまま、不眠不休で彷徨うこと早三日。どことなく思考が「食」に
傾くのも当然である。「世話好き無口姉」を追い求める情熱だけが支えていた>487の
肉体にも、ついに限界が訪れようとしていた。それでも費える事の無い妄想が生み出す
チャペルには、幼い頃の>487、学生だった頃の>487達まで参列している。
>487はもう悟っていた。恐れは無かった。あるはずも無い。
――これほどに幸せな走馬灯を見られるのは、後にも先にも俺だけだろうな……。
彼の胸を満たしていたのは、>486への感謝だけだった。
>487はもう足掻くことなく、甘い夢の終わりの続きを選ぶ事にした。
黒々とした雨雲が遠ざかる。フェードアウトしてゆく雨音の向こうで、けたたましい
鳥の鳴き声がこだまし、曇天の狭間から一筋の光が差し込んだ。眩しい。まるで、
迎えるべき新婦への道を照らすスポットライトのようだ。
――行き先は、あの雲の向こうに違いない……。そして今度こそ彼女に……!
泥に半ばうずまりかけている身体が、溶かされてゆくような心地よさだった。
一体となりつつある地面を伝って、何かの足音が近付いてくる。密林での生活の中で
いつしか研ぎ澄まされていた野性が、最後の来客の到来を>487に知らせた。
ざっ、ざっ、ざっ……。
規則正しくまっすぐこちらに近付いてくる足音に、ぴくりと>487の頬が動く
。
――ありがてえ。人間だ。どうやら骸だけは……ニッポンに運んでもらえそうだ……。
この無人に近い密林の奥地で、俺は誰にも追い求められない夢を追い、誰にも
真似できない死に方をするのだ。そう思うと、>487は誇らしくさえあった。
あとは気を利かせた誰かが、誰の目にも触れぬままに、PCのHDDを物理的に破壊して
くれればそれで良かった。
足音が止まる。誰かが、>487のすぐ横で。
「……う……」
>487は聞こえないほど小さな声でうめきながら、まぶたを開いた。
そして、自分でも驚くべき強さで「ひゅうっ!」と息を吸っていた。
ずぶ濡れになったシャツの下で冷たく止まりかけていた心臓が、どくんと血液を全身へ
向けて放つ。走馬灯が、チャペルが、一気に思考の向こうへと押し流されてゆく。
「……あ……」
再び、小さなうめき。こびりつく妄想の続き。
――う、ウエディングドレス……?
その幻の正体は、南米の陽光を受けキラキラと輝きながら柔らかく降り注ぐ霧雨だった。
だが>487の目が釘付けになっていたのはそこではない。雨粒の向こうからじっとこちらを
見下ろしている、金色に輝く優しげな女性の瞳だった。
傘を差す事も無く――そもそも傘など知らないだろうが――雨粒に濡れそぼった褐色の肌を彩る、
まばゆい原色の髪留めと大きな首飾り。極端に面積の小さなビキニのような衣服からすらりと
伸びた肢体は>487よりも背が高い印象で、独特のタトゥーで飾られている。その長い脚を折り、
彼女は>487の横に跪くと、そっと彼の薄汚れた顔に指を伸ばし頬を撫ぜた。微笑んでいる。
彫り深く整った顔立ちは、見れば見るほどにびっくりするぐらいの美人だ。
「……ぅ……ひゅうぅ……うぅ」
優しい手を握ることさえできず、声帯を震わせる事も出来ず、か細い呼吸だけで>487は
精一杯彼女に返事をした。
――よもや、ここで自分が無口になってしまうとはッ!?
そんな事を思っていると、彼女は腰帯に挟んでいた木の筒の先を>487の口元に差し向け、
先端のフタをポンと抜いた。雨水と一緒に、木筒から流れ出した甘酸っぱくて少し苦い
果汁のような液体が少しずつ口の中を満たしてゆき――
「ゴボッ、ゴホ!」
>487は盛大にむせた。喉に力が入らず、飲み下せないのだ。赤ワインのような液体が、
口から垂れて情けない。鼻に入ってさらに痛苦しい。
彼女は申し訳無さそうに太めの眉を寄せて、ぐいっと>487の顔に自分の顔を寄せた。
急にクローズアップされた美貌に驚く間もなく、>487はその口に、ぽってりした唇を
重ねられた。赤い液体が、すーっと彼女の口へと吸い込まれてゆく。この液体はきっと
何か元気の出る物で、それを失っているにもかかわらず>487が逆にどんどん元気を貰って
いるのは言うまでも無い。
――な、何と言う世話焼き加減かッ――!?
まつ毛が触れ合いそうな距離から彼女は一度身体を起こすと、キュッと手の甲で唇を拭う。
どこと無く勇ましさと頼りがいを感じるその姿と、これから起こり得るであろう展開に、
>487はいよいよ胸の高鳴りを抑えられなかった。
彼女は>487の思惑通り、口の中に液体を溜めたまま、今度は>487の上体を抱きかかえるよう
にして起こした。そしてためらう事無く口移しを始める。
「んっ、んんッ……」
「こきゅ……んくッ……」
柔らかな唇の感触と、微かに触れ合う前歯の間から少量ずつ入ってくるそれを、487は今度こそ
飲み下してゆく。鼻息の感触が、彼女の真剣さを物語っているようだった。
――さっきより甘く感じるのは、ぜってー気のせいじゃない……!
>487はいつしか、生死の境をさ迷っていた事さえ忘れていた。早くも力を取り戻し始めた
右手で、彼女の頬に触れてみる。まだ震えてはいるが、感触ははっきり分かる。鮮やかな
赤のタトゥーが眩しい、雨さえ弾きそうなピチピチの肌。
彼女が何者かは知らない。この先どうなるのかも分からない。
でも、>487にとって彼女は間違いなく女神だった。
妄想ではないこの触れ合いだけが、彼にとっての全てだった。
つぅ……と赤い液体の糸を引き、唇と唇が離れる。彼女の腕の中に抱き寄せられたまま、
>487は右手の親指で、自分の命と希望をつなぎとめてくれた彼女の唇をやさしく労うように
拭い、そして笑顔を投げかけた。言葉の分からない自分の感謝が伝われば……と。
瞬間、金色の瞳をまん丸にした彼女の頬が、タトゥーとは違う朱に染まったような気がし――
口移しの用も無いのに、再び彼女は>487の唇を求めてくるのであった。
〜続かぬ〜
作者 6-496
2009年01月06日(火) 00:09:39 Modified by ID:z0ZlJTbkWw