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知識だけじゃダメだから


 チャイムが鳴り、小泉宏樹は食器を洗っていた手を止めた。
 玄関扉につけられた小窓を覗くと、少女の姿が歪んで映っていた。
「おはよう。さ、入って」
 ドアを開けて少女を招き入れた。黒髪が一歩ごとに揺れて、彼女を特徴づける。
 手には大きめの鞄。ちょっぴり重そうな荷物を置いて靴を脱ぎ終わると、そこに二人
だけの空間がうまれた。
「ナル、つかまえたっ」
 手ぶらになったところで、宏樹は少女を捕獲した――ぎゅっと抱いた。
 柔らかい体の感触がいっぱいに広がり、ほんのり良い香りがする。
 少しして密着の姿勢を解くが、その三澄成佳からはいきなり何をするんだ、と言いた
げな目を向けられた。
 ここは玄関。まだ入ってきたばかりだから無理もないなと納得する。
「嬉しいんだ、来てくれたから」
 言って、その頭に軽く触れる。反射で瞼を閉じる様子が可愛らしい。
 本当はキスもしたいところだったが、そっと奥にしまう。宏樹が階段を示すと、少女
は静かに上っていった。

 グラスの水を喉に通すと、成佳は額をタオルで拭った。
「もう一杯飲む?」
 問いに、彼女は首を横に振る。残った氷をひとつ口に入れると、噛まずに口腔でとど
まらせているようだ。ガラス容器はその手でも収まるくらいしかなかったが、両手で支
えてリスの様。
 膨れたほっぺを指先でつつくと、氷を反対側に移動させた。
 面白くなって交互に繰り返していたが、やがてその手を止められた。成佳は喉を鳴ら
して、お返しに平手を一発くれた。
 ぺち、と軽い音がして、あまり痛くない。
 しかし、おまけにもう一発飛んできたので、宏樹は手を合わせて謝る。すると少女は
ひとつ頷き、自分の鞄から本を取り出した。
「あ、この前の本だね」
 気が済んだ、という風な彼女から、三冊重なった本を受け取る宏樹。自分が数日前に
貸したものが、机の脇に置かれた本棚へ戻っていく。
「また持っていく?」
 声をかけると、成佳はベッドに寄りかかっていた状態から立ち上がり、本棚の前に座
り込んだ。短めのズボンとソックスに挟まれた、ちょっと焼けた肌が目を引く。
 新書サイズが縦に七冊並ぶサイズの本棚は、机と肩を並べるほど。それを下段から探
す少女を、宏樹は隣で眺めていた。
 ときどき手にとっては、表裏をざっと見る。タイトルの書かれた表面で七割、あらす
じの書かれた裏面で三割程度の基準をとっている少年は、成佳がどんな本を選ぶかが楽
しみでしょうがない。既に開封済みだが中身を一切確認しない模様で、さながら書店に
いるような気分だった。
 上の方なんかは手が届かないので、間近で見ようと近くの踏み台を引っ張り出す。
 七段すべてに目をやった後、成佳はあわせて四冊を選びとった。
「それで全部かな」
 頷きが返ってくる。ふたりとも立ち上がって、なんだか会計待ちのような恰好。
 だが、別に実費を請求するようなことはなく、宏樹は同じ読書好きとして、自分の所
有物を読もうとする彼女を歓迎していた。
 彼は本を抱えた仲間の背に手をまわして、その体を抱き寄せた。
「大事に読んでね、ナル」
 貸し出しが始まった時から、今までずっと続いてきた『貸出料』が、数秒のハグ。
 別に彼女の両手が塞がっていたからとかではなく、最初は思わずしてしまったこと。
しかし、過去を遡っても成佳は一度も拒絶せず、二回目から交換条件に提示したところ、
それを呑んでくれたのだ。
 彼女も最初は照れ臭くしていたのに、現在の関係では少しだけ羞恥も薄まってきて、
「免疫ついたね」
 宏樹にそう言わせた。
 初めは所謂えっちな本には全く手を付けず、同じ恋愛でもキスが最上位の認識でいた。
 彼女がいつその類を読むようになったか、きっかけは宏樹も知りかねるが、少しずつ
射程距離が伸びていった印象がある。

 成佳は恥ずかしそうにそそくさと自分の鞄に借り物を入れ、棚からまたひとつ手に取
った。

 部屋の主なアクセサリと言えば、机にベッド、後は小さなテーブルや箪笥くらいしか
ない。ここは独立した宏樹の世界で、そこに少女がひとり、ベッドに寄りかかって本を
開いている。
 成佳にならって、少年も本棚から取り出した一冊に目を通す。
 快適なのは弱めに設定したエアコンのおかげだ。二人とも読書に集中して口を開くこ
とはないが、宏樹は本から目を外して、近くにいる黒髪の少女に視線を投げた。
 彼女はあまり話さないが、表情はころころ変わる。ハッと目を開き、くすりと笑い、
眉根を寄せて首を傾げ――いつしか成佳の観察にシフトしている。
 活字に戻ってしばらく、パタンと本を閉じる音が耳に入った。気付いた宏樹が顔を上
げると、少女はテーブルに読み終えたものを置き、ふうと息をついた。
「面白かった?」
 返答は頷きがひとつ。感想を聞いているわけではないので、お互いにそれ以上は何も
言わない。
 棚へ戻しに向かった成佳の背を眺めつつ、宏樹も読みかけの本を静かに閉じた。
「ナル」
 呼びかけに、少女は振り返る。大きめの瞳が瞬きして、続きを求めるように首が傾く。
「もうちょっと、読書の時間?」
 訊かずとも、彼女の目が読みたそうにしている。いちおう確認の意を込めたが、やは
り成佳は頷いて返し、本棚に視線を戻した。
 その背中に近付き、片手の持ち物を元の場所に置く。
「えっちな本を読むなんて、えっちだね」
 指摘に、成佳はビクッと肩を動かし固まった。しかし、既に宏樹は彼女の背中から手
をまわして軽く抱いているので、縦横に並ぶえっちな書物の前から動けない。
 否定するつもりなのか腕を何度もはたかれるが、解放はしない。
「表情が変わるから、どんな場面なのか何となくわかったよ」
 読書の最中、自分が何をしていたかをそれとなく告げる。第三者として物語を見てい
るのではなく、登場人物の誰かに感情移入している風にさえ見えた、彼女の姿勢。
「でも、えっちな所はまだ顔が赤くなってる」
 抱いている片手を使って首筋から鎖骨までを指が滑り、少女はかすかに息を漏らした。
 腕をつねっていたのが、それと同時に離れて床に落ち、コツン、と鳴る。
「ナル、キスしよう?」
 少しだけ乗りだし、彼女の顎を取る。本を読もうとしていたのはどこへやら、抵抗す
る様子もなく唇が触れた。
 薄く赤に染まったそこは、よっぽど集中していた様で乾燥していた。しかし柔らかさ
は残っていて、軽いキスでも感触が残り、もう一回したいと宏樹の裡がざわつく。
 再び、ちゅ、と音を立てて口をつけ、質感を味わった。
「前の日にメールで教えたけど……ごめんね、いきなりで」
 ちゃんと宣言したとかではなく、わずかな時間でコトに及ぼうとしている事を謝る。
 だが、成佳はこの突拍子の無さを理解している風に、小さく首を振った。
「また私服が見られて嬉しいな。髪も伸びて、ちょっと雰囲気が変わってる」
 そんな風に、宏樹は彼女の格好を褒める。
 キスの直後で赤くなっていた頬をさらに色濃くして、成佳は少し照れくさそう。
 今日は短いパンツに膝上のソックスといういでたちで、当然だが上半身に比べると布
が少ない。露出そのものは大した事ないが、細い脚とわずかに見える素肌が目を引く。
 綺麗な黒い髪は、切らずにいたために肩までの長さからさらに進んで、背中に到達す
るまでとなっていた。
「でも、そんなに可愛いと襲っちゃうよ?」
 冗談めかした言葉に、少女はぷいとそっぽを向いた。もう襲っているような状態なの
で、時期ずれなのは明らかだ。
 腿のあたりを撫でつけると、息を呑む音。
 細くやわらかい体をぎゅっと抱きしめ、宏樹は昂ぶっている気持ちを少しだけ落ち着
かせた。
「じゃ、始めるね」
 合図と同時に成佳の頭に触れ、髪を撫でる。よく手入れされていて電灯の明かりが少
し眩しく、途中から着ている黒のシャツに溶け込んでいる。

 日焼けを意識して長袖のワイシャツが肌を守っていたが、さすがに室内では袖がまく
られている。彼女の黒髪は白地に対してはとても目立った。
「んっ……」
 肩や腕をそれぞれ触ってから、いったん腹の方を経由して、少女のバストを両手で覆
う。
 途端にぴくりと体が震え、床についていた手が握られた。その反応を見ながら、宏樹
は確認できる布の上から胸を押していく。
「ナル、そこの赤い本、なんてタイトルだか言ってみて」
 推定三枚の着衣ごしに刺激を与えつつ、ふと彼女の前にそびえる本棚のから一冊を示
した。周辺のものでは一番目立つ色なので、成佳も見失わないはずだ。
「こ、『恋の形』……」
 シャツ二枚をもみくちゃにされながら、成佳はそのタイトルを捉え、口にした。わず
かに与えられる刺激に息が漏れるが、赤字に黒のそれを読み上げる。
「うん、正解」
 目印にもなる最初の問題を解き、宏樹は正解者にキスを与えた。最初にしたものとは
違って、次は舌を差出し、舐めあう。
 同時に、彼女の黒いカットソーをまくり上げ、胸より上側にしてしまう。かくして、
白が表を多く占めることとなった。
「次は、右に三つ進んだやつにしようか」
 バストを触れる手はワイシャツの上。衣擦れの音に混じって、成佳の息遣いが聞こえ
てくる。
 一問目から右方向に移動する。ふくらみの柔らかさを認識して、宏樹は彼女の耳にさ
さやいた。
「……っ、『花に、恋する、三姉妹』……」
 少年の手が動くたび、ガサ、とワイシャツが鳴る。ときどき指がニップルを探して移
動し、思わぬところで声が出ていく。衣擦れとどちらが大きいか不安だったが、成佳は
途切れとぎれで答えを導いた。
「正解だよ」
 次第に宏樹の声にも嬉しさが滲む。つぎつぎと正解した少女の耳たぶを甘噛みし、複
雑な形状をした器官に舌を当てた。
「ひゃ……! あっ!」
 そこではじめて、成佳は高い声になった。生温かくてザラザラしたものが耳を這い、
寒気で身体が強張る。
 唾液を塗り付け、てっぺんを唇で挟まれる。ちゅ、ぴちゃ、ずるる……と、間近で粘
っこい音をたてられ、聴覚を犯されている気分になった。
 宏樹は手探りでボタンを見つけ、一個ずつ外していく。シャツに隠れた分と合わせて
三個ほどを取り、やがて左右に分けた。
「ナル、これで最後にしようか。一段上のは、なんて名前かな」
 素肌を覆う薄い布を触れながら、次の問題は意地悪になった。それまで視線が下がっ
たままでも確認できたところを、今度はひとつ上の場所を示したからだ。
 キャミソール越しにふくらみの頂点を探し、宏樹の指は胸を滑った。
「んぁっ、ぁ……し、た……!」
 突起を擦られ、成佳は特定の言葉を口にしにくい。指の動きがちょっと乱暴でも、乳
首にかけられた布が痛みをなくし、ほぼ快感だけになっている。
 その刺激は既に両側から送られて、腰が引けるのと同時に対象から視線が外れてしま
う。いくら近い場所だからと言っても、集中していなければ表題すら頭に残らない。
「は、あんっ……て、のっ」
 甘い声を出しながら体を震わせる、小柄な少女がひどく可愛らしかった。もう答えて
くれなくてもいいから、とにかく彼女の声を聞きたくて、宏樹は二つの突起を摘まみあ
げた。
「あぁっ! ん、ふ、あっ!」
 とたんに、成佳の体がビクンとはねた。しかし、ニップルを布地ごとつまんでいる指
はそのまま、先端をくりくりと捏ねるように動く。
「もう少しだよ、言ってごらん?」
 実際、残すはカタカナ数文字だけだ。問題自体はどうでもよくて、しかし彼女が上ず
った声で答えを紡ぐのが可愛くて楽しい。
 からかうような言葉に対して成佳は少し唸ったが、またすぐ息を漏らして小さくあえ
いだ。

「ん……ぅ、んあっ、らんっ、じぇ……っ!」
 流されまいと必死になっていても、強弱のある責めには耐えられない。捏ねくった後
は指の腹が押しつぶしにかかって、幼いふくらみに埋まってしまった。
 それでも、成佳が何とか言い切ったのを確認して、宏樹は指を止めた。
「『明日明後日のフランジェ』……すごいね、よく言えた」
 背後から手をまわして抱くようにしているが、少女からは肘で小突かれている。意地
悪の応酬なので、宏樹は特にやめさせない。
 気持ちが昂って心臓が高鳴り、それを押し付けている成佳の背中を通じて聞こえてし
まいそう。その体を抱きしめても治まらず、むしろ加速させるだけだった。
「本当は図書室でしたかったんだ」
 場所によっては本当に長いタイトルの書物が置かれているはず。そう思うと、この部
屋よりも楽しめそうではある。だが、そもそも誰もいない図書室に入るのは容易なこと
ではなく、もし上手くいっても時間を気にしないと大変な事になってしまう。
 口にしてすぐ、宏樹は自身の考えを否定してしまった。
「これで許してくれないかな」
 言って、少女の顎を取る。
 音の立つような軽いキスを一回するが、それでも成佳の視線は複雑な感情を送ってい
て。
「んむ……っ!」
 彼女からの反撃は猛烈で、口が合わさったと同時に舌がねじ込まれ、暴れまわった。
対応する暇もくれずに動き続ける様子に、宏樹は言外に感じ取る。
 分泌する唾液をさらい、歯の上を擦って、軟体どうしがぶつかる。ゆっくり舐めあっ
ている時よりも激しい粘着音が響き、耳を刺激する。
 結局、成佳が離れるまで宏樹はろくに動けず、一方的に口を塞がれた反動で息が荒く
なった。
「ごめんね。でも、可愛かった」
 背後をとっていた所から移動し、気持ち横側から成佳の顔を覗きこむ。溜飲が下がっ
たのか、直前までのむっとした表情は無くなっていた。
 もう一度、こちらからキスする。下唇に吸いつき、音を立てて、楽しげな口付けを数
回続けた。
「ナル、ここに座って」
 指示して、宏樹は自分の膝を示した。成佳は左右に曲げていた足を放って後ろに下が
り、やがて臀部を乗せて落ち着いた。
 その背に手をやって支え、宏樹は彼女の唇に近付き、ちゅ、と触れた。それと同時に
自由なもう片方を使って、膝上のソックスに覆われた脚を撫でていく。
 成佳と舌を擦り合いながら、靴下から素肌へと指を移した。途端に隙間のあった太腿
がぴたりと閉じて、柔らかな感触に挟まれる。
「あっ」
 拘束する気の全くない、すべすべの肌から抜け出た手でワイシャツをはらう。バスト
にかぶさった黒のヴェールは、彼女の敏感な部分をうっすらと透かして、わずかに盛り
上がっていた。
「は、ふ……」
 ふくらみに触れて、成佳からは艶っぽい吐息が漏れる。足は床を踏んでいるが、あま
り安定しない姿勢なので、宏樹も使う手は片方だけに絞っている。
 布越しに突き返している部分を確認して、責める役目を手のひらから指にバトンタッ
チ。
「ふぁっ」
 ひと突きだけで、成佳は声と共に体を震わせた。もちろん一回だけでは終わらず、指
の腹で押し込み、乳房にうずめてから、円を描くような動きに巻き込む。
「あ、ん……っ、んぁ、あっ!」
 少年は随分と手馴れている。キャミソール越しでも突起を責める動きは的確で、胸か
ら刺激が伝わってくる。
 ちっとも滑らずに押しつぶして、振動に成佳は喘いだ。
「ナル、おっぱい気持ちいい?」
 先端を撫でながら、そんな事を訊いた。キスした直後の体勢でいるので、顔がとても
近い。とうぜん少女の反応を間近で見る訳で、うっすら開いている瞳が視線だけで抗議
している。

「ん、あっ、あん、はぁ……」
 宏樹のワイシャツを強く掴み、爪先を擦り合わせて、反応で分からないかと言ってい
るよう。
 しかし、細かい動きで何度も触れ、言葉での反撃をさせない。ぴく、ぴく、と揺れて
愉悦に崩れた表情に萌え、宏樹はくすりと笑んだ。
 それに気づいたのか唇を尖らせ、むっとした表情を向けられる。だが、頬が赤くて怒
っている風には捉えられず、可愛いと思ってしまう。
 成佳にシャツをくいと引かれたので、それに応じて宏樹は彼女と唇を合わせた。
「んくっ、ん……うんっ」
 意図を汲み取ってくれる少年と触れて、成佳は相手の熱を感じ取った。胸からの弱電
流を伴ったキスの最中、空いている手を使って彼の体をタッチする。
 背中にまわした手で少女を抱き寄せ、密着したまま離さない。宏樹は一緒に乳首を転
がして、要求された以上に愉しみを与えた。
「じゃ、こっちもしようね」
 長い口付けを終えて、胸から手を下ろし、成佳の太腿を撫でつける。クーラーが冷や
した素肌に触れて、きめ細かさにうっとりとしてしまう。
「ひゃ……!」
 内腿をくすぐって、その手がパンツに触れた。じわじわと送られていた電流がとつぜ
ん強くなり、驚いて少年のシャツを思い切り引いた。
 足を閉じられるが、もう遅い。股に張り付いた宏樹の手は、それ自体が動かずとも指
を使って、成佳の秘肉を探っていく。
「ナル、もっと触りたいな」
 腿に挟まれたまま、宏樹はお願いする。少女は一瞬きょとんとした顔になったが、
「ベルトを外して、ジッパーを下ろしてほしい」
 途端に真っ赤になった。効果音を添えるなら、ボン!と爆発めいたものが似合う。
 成佳は小声で唸り、微妙な表情をくれる。だが、宏樹はその間も指先で生地を押し、
絶えず性感を刺激した。
「うー……っ」
 見つめあったまま、相手に送る視線には何通りかの意味がある。脱がすのは宏樹のす
ることではとか、自分からはすごく恥ずかしいとか。
 だが、宏樹の言葉はそれ以外に、この体勢だから片手しか使えない事を暗にアピール
している。
 遠くから恥丘を触れているのに身体の奥が反応して、さらなる刺激を求めているのは
自分が一番わかっていた。
「……それだけ、だから」
 かなりの時間を要した後、小さくつぶやいて。成佳はおずおずと自身のベルトに手を
かけた。金具が穴から出て、帯が抜ける。続いてズボンの留め具を外し、ジッパーを下
ろして、隙間からショーツが垣間見えた。
 少しだけのぞく彼女の耳も赤く染まり、ちらりと目を向けたところで、かなり恥じら
っているのが理解できた。
「うん、ありがとう」
 両手が拳になって固まっているその体を緩く抱き、緊張を解く。強張っていたのが柔
らかくなり、成佳の手がぺたぺたと腕を触れてきた。
「んあっ」
 ズボンの内側に入り込み、熱を含んだ肌を滑る。冷房の効いた部屋とはいえ、ずっと
着衣の下にあった部分はやはりあつい。
「あ、すごく熱い」
 それを口に出して、羞恥を煽る。ショーツの付近は太腿より熱を帯びて、手に汗をに
じませた。
「は、ん……あっ」
 乙女の秘密をゆっくりとなぞっていく。成佳の嬌声を聞きながら、どこからか発され
る熱気で手首から先を蒸されそう。
 指が何か濡れたものを触れていて、往復の最中に彼女の状態をなんとなく察する。
「や、はぁっ!」
 下着をくぐって、ついに生の恥丘にたどり着いた。強い痺れが襲いかかり、成佳は姿
勢を崩しそうになった。
 弾力のある肉は、表面がわずかに湿っていた。おかげでショーツに押さえられている
状態でもよく滑り、動くのは容易だった。

「ナル、汗っかきなんだ」
 そこにあるのはもちろん別のものだが、他の場所が汗をかいているので指摘する。
「あ、あんっ! ……ん、いじ、わる……っ!」
 顔がかっと熱くなるのを覚えながら、成佳は喘ぎあえぎで口にした。
 しかし、宏樹の手はもぞもぞと蠢いて、足を閉じても止めることができない。上下の
動きはかわらず、愉悦にじわりと滲むものがあった。
 スリットを擦る指には、湧き出た愛液がまとわりつく。往復によって恥丘へ広がり、
ほとんど摩擦のない滑らかな移動を可能にした。
 やがて粘ついた音を奏で、指を操る宏樹も興奮を隠しきれない。だが慎重に、滑る動
作から切り替わる。
「ん、あ……んん……っ!」
 突き立てられた細い棒が入り口を探り当て、ゆっくりとした挿入に成佳は呻いた。し
かし、ざわめき続けていた体は差し出された餌を喜び、既に喰いついている。
 先端が蓋を割ってすぐ、宏樹は引きずられるような感覚になった。まるで壺の中に何
かが潜んでいて、噛まれたような痛みと共に奥へと導かれる。指を包んでいる壁も手伝
って、関節の二つ分までは簡単に入ってしまった。
「入っちゃった」
 言うと、成佳はショーツに潜り込んだ腕の先を眺め、あさっての方向をむいた。
 少しの余裕を持たせながら、来た道を引き返す。それだけでも襞が絡みつき、簡単に
は逆らえない。
 そのくせ、再び奥を目指すときは助けてくれる。くちゅり、と体内の分泌液が音を立
て、まるで歓迎しているようだった。
「あ、あっ、んぁっ」
 下着も含めて三方向以上から押さえられているため、往復はそれほど速くできない。
だが、少女は甘い声を上げ、シャツを掴んで刺激と闘っている。
 ふと向けられた潤んだ瞳に、宏樹の心臓は高鳴るばかり。蜜壺をかき回す指をその中
で曲げて、砂利を敷いたような粒々を引っ掻く。
「く、あぁっ! ん……っ!」
 成佳は襲い掛かる愉悦に耐えかね、両手でしがみついている。背を支えている宏樹の
手もすっかり汗ばんで、体温の上昇を伝えた。
 黒のソックスに包まれた爪先は重なって、指先が丸まっていた。曲げては移動する指
によって、快感を導いているのは紛れもない。
「あ――っ!」
 すがる少女を片手で抱き寄せる。聞こえた声は途中で途切れ、瞼をきゅっと閉じて、
彼女の身体は何度か揺れた。
 振動が伝わって、それまで以上の締め付けを味わう。やがて痙攣が治まっても拘束は
強いまま、宏樹はなんとか蜜壺から指を引き抜いた。中に入れていた一本以外も、あふ
れ出た液を塗り付けて鈍く光っている。
 襞を引っ掻いたものを口に含んで、舌で拭った。それから、オーガズムの余韻で息を
荒くしている成佳の膝裏に腕を入れる。
「楽にしていいよ」
 横抱きの状態で、すぐ近くのベッドに成佳を寝かせた。小柄な彼女は宏樹でも抱えら
れる程度には軽く、それでいて可愛らしい。
 ワイシャツ以外、成佳の着衣は黒い。そこに挟まれている少し焼けた肌が特徴的で、
髪を広げた背景のシーツが、そのスタイルを目立たせていた。
 両膝をついて彼女の体を跨ぎ、手をついて顔を近づける。ようやく安定した姿勢をと
れて、絶頂を迎えた少女の息遣いも整ってきた。
「じゃあ、最後は指より大きいので、ナルを犯してあげる」
 すごい台詞だな……と、宏樹は口にしておきながら裡でつぶやいた。
 それに対する成佳の反応はというと、
「ぐっ」
 頭突きだった。
 至近距離なのはもちろんだが、動作が少ない割に痛みがひどい。額どうしがぶつかり、
鈍痛が襲い掛かった。
「……でも、それだけの環境は整ってる」
 宏樹は額をさすりながら、
「今日、ここにいるのは僕とナルだけ。泣いても喚いても助けは来ないよ」
 仰向けにしている少女の不安を煽った。

 しかし、途中から笑みがこぼれて、言葉の現実性が失われてしまう。そのせいか二度
目の頭突きはなく、代わりに平手が頬にぶつかり、ぺち、と軽く鳴った。
「……いじわるだ」
 視線を外したまま、成佳は小声で呟いた。
 頬に触れた手を剥がして、宏樹は彼女の顎を動かす。目を合わせてから言葉に対して
頷きを返し、薄桃色の唇に迫って、一瞬だけ重ねた。
「大丈夫、ひどいことはしないから」
 今度は成佳のほっぺたを指でつついて、ぷにぷにとした感触の中に埋める。
 いじめると言っても、苦痛を伴う様な真似はしない。ふたりだけの空間で、身体を触
って、口にして刺激するだけ。愛でるとか可愛がるの方が、ニュアンスとしては近しい。
 だが、乱暴な単語ほどかわいらしい少女に使いたいものはない。覆いかぶさって最初
の言葉で、成佳は片手で自分の肩を抱いたのだ。そんな反応を見せてくれるから、宏樹
は彼女をいじめたくなってしまう。
「気持ちいいことはするけど、ね」
 前髪を持ち上げ、おでこにキス。立て続けに唇で触れたからか、成佳の表情が緩んで
いる気がした。
「キス、しようか」
 頭を撫でて、安心した様子で目を細めていた少女に、宏樹は合図を送る。瞬きをした
ところに、成佳の唇と接触した。
 触れるだけの口付けをして、それから舌を突き出す。まるで思考を読んでいるみたい
に、成佳も全く同じタイミングで舌先をつついた。
 ザラザラの表面を擦り、唾液が伝って口唇をぬめらせる。軟体が踊ると粘着音が聞こ
えて、性的なこと以外は陸に考えられなくなってしまう。
「んっ、く……」
 最中、成佳をくすぐっていく。耳、首、だんだんと下降していく指が胸元に置かれて
いた手を払いのけ、薄い布に覆われたボタンを押した。
 とたんに彼女の舌が引っ込む。いきなりの刺激に対応できなかったのか、動きにあわ
せて息を漏らした。
 閉じてしまった瞼を開けて、非常にゆっくりと舌があらわれ、宏樹は再びキスを要求
した口を塞いだ。
「ふぅ、んっ、んんっ!」
 ぐぐもった悲鳴が口腔で響く。
 狙いをつけてから、宏樹の指はニップルを撫でまわした。キャミソール越しとはいえ、
ほとんど直接触れているようなもので、硬くなっているのはすぐに分かった。
 いつしか両手が肩を掴んで、ぐっと引き寄せてくる。それだけに強く密着して、宏樹
は懸命に鼻で息を続ける。
 苦しかったのは少女も同じ模様で、口が離れたときにはお互いの呼吸が重なっていた。
唾液を塗った唇はもとより、頬や額も汗を滲ませて、冷房の効き目を疑ってしまいそう。
「んぁっ」
 乳首を軽く摘まんで終わりにし、宏樹は体ごと後退して成佳の恥部に迫る。革製の重
たそうなベルトと留め具が外れ、ジッパーも下りている彼女のパンツは、体操着のズボ
ンよりも短い。生足でないから肌の露出は少ないものの、少年にはちょっぴり刺激的だ
った。ワイシャツがはだけているこの姿を、デジカメで撮影して残しておきたいくらい。
 思考が逸れかかったが、ヒップを持ち上げて片足ずつ抜いていき、ショーツを残して
ベッドの片隅に置く。同じ手順を踏むのがもどかしくなって、宏樹はクロッチの部分を
ずらし、そこから入り口を探って指を立てた。
「あっ、ん、あぁっ!」
 恥丘の表面は少しべたつく程度だったが、その奥は相変わらずの熱量を持っていた。
すぐに襞が絡みついて指を締め付け、二本分の関節をひとつ、ふたつと飲みこんでいく。
「は、あん……っ!」
 視線の先で、成佳はシーツを握りしめている。もう片方の手が口元にあるが、嬌声は
留まることなく発されていた。
 外に漏れださないだけで、中には多量の液体が含まれているようだった。喰われたも
のを一度抜き、また差し込んで、彼女の具合を確かめる。
「ナル、お邪魔するね」
 さらってきた愛液を蓋に塗り付け、宏樹は既に露出していた屹立を手で支えながら、
指が出入りした場所に近づける。
 下着をどけて、先端につけられた肉の実を膣口に差し出し、ゆっくりと咥えさせた。

「く、ぁ……」
 押し込まれるような挿入感に、成佳は体を強張らせた。直前の言葉通りで、指よりも
大きなものが入り込んでくる。
 少女の腰を支えて、確実な動作で身体を合わせる。入口をくぐってすぐ、強烈な電撃
が背筋を走っていった。うねる様な動きでいる膣肉は、彼女とひとつになることを助け
ているのか妨げているのか分からない。下手にすればこの刺激だけで達してしまいそう
で、宏樹は額から汗を垂らしていた。
「よ、しっ」
 この言葉を出すまで、どれほどの時間が経ったのかを知りたくはなかった。
 ぴく、と震えた成佳に軽くキスして、襞が絡まっている肉棒を後退させる。
 引き抜くときから、鈍い音が立てられた。最後まで残っている先端から愉悦が伝達さ
れ、宏樹はちっとも気がぬけない。
 二度目はスムーズに奥を目指すが、それで締め付けがなくなる訳ではない。奥を叩い
てから引き返すまでの時間が短くなり、自然とテンポの良い往復へと変わっていく。
「あ、っ……はっ!」
 ズン、と衝撃が抜けて、成佳の身体は本人の意思とは無関係に反り返る。下腹部を何
度もノックし、体内をかき混ぜて水音をかき鳴らす。
 しっかりと繋がった状態で一時停止し、宏樹は少女の体を起こした。
「ふぁっ……! ん、んっ……」
 勃起の上に座る様な姿勢にして、成佳を下から突き上げる。ふたり分の体重が集中し
て、金属のばねが同じ数だけ軋む。
 動作に加えてキスまでするので、あらゆることに集中していなければならない。読書
のそれとは異なるが、宏樹はただ応じて軟体を舐めあった。
「や、ん……あんっ!」
 嬌声がすれ違って聞こえる。しがみついている少女の背と腰を支えてバランスを崩さ
ないようにし、尚もいきりを上下させる。
 吐息の熱も体温もなかなかだが、接合部はその何倍も熱いと印象付ける。宏樹の分身
は先端から根元まで、これでもかと言う程に絡み、締め付ける膣肉に包まれていた。
「んあぁ……」
 ひとしきり揺さぶった末、宏樹は再び成佳を寝かせた。いきりは蓄えた熱を放出した
そうに彼女の体内で脈打ち、妙な寒気を寄越してくる。ここまで来てしまうと、抱き合
っても口付けしても、昂った気持ちを落ち着かせられない。
「きゃっ! ん、あっ!」
 片手で乳首をこねくると、いきなり締め付けが強くなった。真っ赤に染まった顔は快
楽に喘いで、シーツをくしゃくしゃにしている様子が愛らしい。
 抽送に追いすがる襞の動きは、ここに蓄えを置いて行けと言わんばかりで、もみくち
ゃにされている勃起がいよいよ限界を訴えている。
「んあっ! あ、あっ! ふあぁっ!」
 脱がさずに残したままのショーツは、顫動する襞から出てきた部分をさりげなく擦っ
ていた。愛液でぬるついたとはいえ刺激に敏感ないきりは、絶えずどこかから快楽をも
たらされて、それが宏樹の加速につながる。
 腰を打ち付ける音と成佳の蜜壺をかき回す水音、ついでにベッドの軋む音が耳に入っ
て、少女の声と合わさった四重奏に聴覚が麻痺してしまいそう。
「んっ、ヒロ……っ!」
 ぽつんと名前を呼ばれた気がしたのと、屹立が彼女の身体から抜け出たのは同時だっ
た。宏樹は言葉を発する余裕すら失って、脈動と共に出来上がった熱の塊を放出した。
勢いのいい一発が成佳の腹に、続いてショーツや腿に降り注ぎ、最後の方はシーツを汚
した。
 収まりがついてから、息を荒げている少女の横に寝転がった。とろけた顔がのんびり
と動き、やがて視線がぶつかる。
「僕ばっかり、だったかな」
 宏樹は自分ばかりが快楽を求めていたのではと不安になったが、成佳は首を左右に振
って否定した。
「そっか。よかった……」
「……ん、あっ」
 ふうと安堵の息をつき、手近にあった彼女の突起を触れて、最後にキスを添えた。

 後始末を済ませたころには、時計がレの字を描いていた。短針が縦棒なので少し形が
悪いが、ちょうど昼時だ。
 成佳には休んでいてと伝えて部屋に残し、宏樹は台所に立っていた。
 窓から細い道路が見えるが、それだけ。空はすっきりと青いが、こんな日にも本の虫
は外に出たりしない。
 交換したワイシャツの袖をまくって、表面を水で流した野菜と向き合う。野菜を生の
まま使うか、火にかけるかでしばし一考。
 と、背後に足音を認めて宏樹は振り返った。
「あれ、降りてきたの?」
 成佳だった。家には二人しかいないので当然といえばとうぜんだ。一番上に着ていた
黒いカットソーがなく、彼女のワイシャツは裾が出っぱなしで、それ一枚で歩いている
ように見えてしまう。
「手伝ってくれるのは嬉しいよ」
 少女はこく、と頷くが、宏樹は「でも……」と続ける。
「そんな恰好じゃ、火加減よりナルの方に意識がいっちゃいそう」
 言われて、成佳はハッとした顔で慌てて着衣の裾をパンツに押し込んだ。下着でない
ことに安心はしたが、穿き直したそれは長さとしては少ししか変わっておらず、どうし
ても目が引かれてしまう。
 宏樹は手招きして彼女を呼び、その体を緩く抱いた。
「シャワー浴びておいで。下着も汚しちゃったし、洗濯機も使っていいから」
 耳元で囁き、さらに「ね?」と確認をとると、黒髪の少女は小さく頭を縦に振った。
「さっぱりしたら、冷たいものもおいしいよ」
 昼食は素麺にするつもりだ。その前に、誤って成佳を料理しないように、宏樹は彼女
への気持ちを押しとどめる。
 ややあって、成佳はゆっくりと離れていった。
 少女の背中を見送って、宏樹はあらためて包丁を手に、視線をまな板に戻す。

 この玉葱は、サラダにしよう。
2011年10月22日(土) 19:04:00 Modified by ID:yaigDm7HYA




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