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幼馴染みとエプロンと
彼女は小さくて、無口で、愛想も何もないけれど、
制服の上からエプロンを着けたときだけ、ぼくだけの無敵の存在になる。
「ねえ橋本」
昼休み、急に声をかけられてぼくは席に着いたまま振り返った。
「なに?」
見るとすぐ後ろに同じクラスの女子が立っていた。出席番号2番、今口翔子(いまぐちしょうこ)。
「ちょっといいかな」
「?」
「あんたさ、甘利(あまり)と仲いいよね」
急な問いかけだが、ぼくは揺れない。何度か訊かれ続けたことがあるので、もう慣れきっていた。
「まあ、幼馴染みだし
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純情プレパラート
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満員電車に乗るとき私はドアの傍にいく。
ドアの収納口近くに取り付けられた手摺りが私のお気に入り。
都心に向かう電車は毎朝混んでいて、人見知りな私は周りの人と視線を合わせたくなく
て、ずっと窓の外を見てる。
窓から見える田圃とか通過する踏み切りの音も好き。
痴漢にあっても一駅我慢して、乗車口を変えればやり過ごせる。
でもその日はドアの傍にいけなかった。
人身事故のせいで人が多くて、ドアの傍に行こうとする私のわがままな動きは人の波に
押し流された。吊革にも掴まれない一番嫌いな場
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『彼女』の呼び声 第四話
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持ってきた食べ物を二人で仲良く分け合って――食べた量は圧倒的に彼女の方が多いが――ふと仁は喉の渇きを覚える。
そう言えば、食べ物は色々持ってきていたが飲み物を用意していなかった。
「ちょっと待っててくれ。そこの自販機で、何か買って来る」
寄せ合っていた体が離れ、彼女がちょっと不満そうな声を上げる。
宥めるようにその頭を抱き寄せ、額に優しくキス。
「すぐ戻って来るから。何か、飲みたいものはある?」
仁の問いに、少女は小さく頭を振った。
「そっか。じゃあ何か適当に買って来るよ
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『彼女』の呼び声 第三話
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「色々あるが……どれがいい?」
いつものベンチに腰掛け、仁はトートバッグを開き、少女に尋ねる。
少女はわずかに考えるような素振りの後、エビマヨネーズのおにぎりを指さした。
「ん、わかった」
手早く包装を解き、ビニールを引き抜く。
「――――♪」
少女はそれを仁から受け取ると、嬉しそうにかぶりついた。
単に菓子パンの包装ならなんとか破れるから菓子パンを選んでいただけで、おにぎりや弁当も好きらしい。
「そうだよな。片手じゃさすがにこの包装は破れないよな」
――普通に
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『彼女』の呼び声 第二話
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夜八時。今日も仁のバイト先のコンビニに、片腕の家出娘が現れる。
相変わらず周囲に認識されてない彼女に、仁は視線だけで待っているようにと合図を送る。
そして彼は店長に向かって振り返り、
「じゃ、俺はこれで上がるんで。期限切れの商品、適当に持ってきますね」
「ちゃんと廃棄伝票切っとけよ。しかし、前まで期限切れの商品に手を付けなかったお前が、一体どんな風の吹き回しだ?
まあ、外の奴と違ってちゃんと断って持ってくし、常識の範囲内で持ってくから文句は言わんが」
ゴミとして廃棄するにもコストが
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『彼女』の呼び声
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学費の足しにしようと始めたコンビニのバイトは、予想以上に退屈かつ苦痛なものだった。
ただひたすらバーコードを読み込み、金額を合計し、レジに打ち込んで行く。
売り上げを記録し、店長の指示の元機械的に商品を補充。
自己研鑽も達成感もない、ルーティンワークの繰り返し。
本当なら、もっとやりがいがある、例えば製造系のバイトがしたかった。
が、それらの仕事は総じて拘束時間が長い。
学業に支障がでない範囲でできるバイトと言えば、このコンビニのバイトくらいしか――学生の多い街ゆえ、新聞配達の
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メタな彼女
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彼女は何も言わない。
ただ、その頬は窓から差し込む夕日より赤くしている。
彼女の目の前には、SSを書き終えて、疲れたためベッドで眠っている>>534がいる。
彼女は、深呼吸して、その上に静かに乗る。
目が覚める>>534。
「ん……な、なにやってんだ。降りろよ>>537子……」
彼女は持ってきていたスケッチブックに文字を書き込む。
『駄作乙www 』
>>534は、一瞬きょとんとした。だが、悪魔のように嗤った。
「そうか」
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背中の彼女(仮題)
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ふと外を見る。
豪雨、といってもいいような勢いで雨が降っている。
そのせいか、夏――暦の上では秋だが――なのに気温は肌寒いくらいだ。
「ん……」
まぁ、そんな寒さも彼女が俺の背中に抱きついてきているおかげで、たいして感じないが。
「はぁ……いつもいつも、暇さえあれば、俺に抱きつくのはやめろよ」
「……いや?」
「別にいやではないけどな」
というか、すこし話ずれるが自分の好きな人に抱きつかれるのが嫌いな人とかいるのか?
「……なら、いいでしょ」
そういい、先ほどより強く抱きついてくる。
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猫な彼女(仮題)
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俺は呆然と目の前に立つ彼女を見つめていた。
彼女の顔なんて毎日見ているから今更凝視する必要なんてないのだが、
今日は別だ。
「……私の顔に…何か付いてる?」
「いや、顔には特になにも…」
確かに顔にはご飯粒が付いてるわけではない。
ただ…頭に…
「あのさぁ、何その格好?」
「………猫」
だよなぁ。
彼女の頭上に小さな三角形の耳があった。おしりには細長い茶色い
尻尾がある。
もちろんコスプレ用のパーティーグッズなんだろうけど。
「…こういうの……嫌い?」
「いや、嫌いじゃない。
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積極的な彼女(仮題)
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太陽のせいで無駄に暑い中オレ達はクーラーのおかげで涼しい部屋でごろ寝中。
「暇だねぇ」
俺の右腕を枕代わりにしている彼女に呟いた。
「……そうだね」
「かといってこのまま寝て過ごすのもなぁ。せっかくの休日だし」
「……出かける?」
「暑いから嫌だ」
俺も返答に彼女は困った表情をする。
「………じゃあどうするの?」
「何かこの有意義な休日に持って来いなものはないのかね?」
「…あるよ」
彼女は自身満々(これでも一応)に答えた。
俺としてはこの暇な時間を潰すことが出来ればそれでいい。
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機械音痴な彼女(仮題)
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兄「あー! 何やってんだよ!」
妹「……?」
兄「わからないのに勝手に人のパソコンをいじるなよ」
妹「……」
兄「待て、だからっていきなり電源落とすな! テレビ消すのとは全然違うんだ」
妹「……」
兄「いや、確かに使った後はきちんと電気を消せと親父にも言われてるけど」
妹「……」
兄「じゃあ問題ないね、って大有りだ! うおっ、コンセント引っこ抜くなっ! 壊れたらどうすんだ!」
妹「…………」
兄「あ、わ、悪い。急に大声上げて……わわっ、泣くなよ、別に怒ってるわけじゃないんだ、その、」
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有無を言わさない彼女(仮題)
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「……する」
いきなり、唐突に、彼女が言った
「待て、なにをする気だ」
俺の質問に答えず、服をするすると脱ぎはじめ
俺は彼女がなにしようとしているのか理解した
「待て待て、俺はする気ない、ってかまだ昼前だし」
「……私がしたい」
いや、だから俺の意見を聞け
「我慢しろよ、あと八時間ぐらい」
「……無理」
そんなことを言っている間に、彼女は服を脱ぎ終わり、一糸纏わぬ姿になり
「……する」
「拒否する」
「……却下」
「駄目だ」
「……やだ」
「無理」
彼女は、少し考えこみ、
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しないの?編
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「あー、文明の利器万歳」
今日、ニュースでやってたところによると、今日は熱帯夜らしいが
「……うん」
クーラー全開の部屋で過ごしている俺たちには関係なかった
彼女は俺に背を向けてぼーっとしている、で、俺はその姿を見てちょっと彼女に触れたくなった
「ちょっと寒いなぁ」
俺は白々しくそんなことを言いつつ、こちらに背中を向けている彼女に抱きつく
抱きつかれたせいか、少しずつ彼女の耳が赤くなっていく
「……暑いよ」
彼女はそんなこと言うが、特に嫌がる素振りも見せず、そのまま俺に抱きつかれたま
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やらないか?編
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「はぁ、今日も暑いね……」
シャツが汗でじっとりと張り付く、熱帯夜、そういってもいいくらいの暑さだ、それなのに彼女は
「……別に」
ほとんど汗を掻いた様子もなく、涼しげな顔をしてちょこんと座って、本を読んでいる
「毎回思うけど、本当に暑さに強いのは羨ましいね」
彼女は、こちらと目を合わせ、すこし顔を傾けながら
「……そう?」
そう返してくる
「うん、暑いのは、薄着になるとかでも対応には限界があるからね」
「……そう」
……会話が続かない。なんというか、まぁ、いつものことだけど
「……
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優(仮題)
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「もうだめだー!」
僕は絶叫しながら家の外にとび出した。母親の方針でうちはクーラーはなるべくつけないんだけど、
ここらの地域の最高気温を更新しましたってニュースをやってる今つけずにいつつけるのさ!
僕はチャリで坂を登る。もうちょっと上に、川のいい感じの浅瀬があって、ほんとは泳いじゃダメだけど、
もちろんムシですよ。いけばたぶん友達も誰かいるし。とか言ってると、前を誰かが歩いてた。あれ、相馬?
相馬優(そうまゆう)は、今年転校してきた子で、少し体を悪くして静養に、みたいな。とにかく、細くて、
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美夏(仮題・続)
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「………」
「………」
ここは、とある高校の、とある教室で
「………」
「………」
現在3時間目の授業中、
「………」
「………」
授業内容は自習で
「………」
「………」
いつもならにぎやかな会話が交わされるのだが、
「……本当にだれもいないな」
「……だね」
その教室には、4人しか生徒がいなかった。
「やっぱり、自由参加の夏休み講習に律儀に来てるやつはまずいないか…」
「そうだね…」
「…当たり前」
「………」
ちなみに、現在教室に居るメンバーは、お察しの通り
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美夏(仮題)
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俺は佐藤 悠っていう一般高校生だ
家に帰ってきて自分の部屋に戻るとそこには
「なんでここに美夏がいるんだ?」
美夏、フルネームは大城 美夏
俺の彼女でかなり可愛い
けど極度の無口
さて話を戻して
「…?」
美夏が首をかしげて聞いてくる
その仕草は反則だろう
「まずどっから入ってきた?」
色々聞きたいが自分の一つ目の疑問から消化する
「…まど」
そういって俺の部屋の窓を指す
たしかにそこはかぎ掛けてないが…
「ここは二階だぞ?」
「…屋根」
まぁ彼女の家は屋根伝いでこちらに
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無口なミュウマ(2)
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何か……向かってくる。
あれは……なんだ……!
巨大な、トカゲみたいな生き物。
赤い眼。
鋭いツノ。
怖い、怖い、怖い!
でも、ぼくは動けない。
なす術なく、ぼくはその鋭いツノに……!
「うわぁあぁあっ?!」
ぼくは驚いて目を覚ました。
「はぁっ、はぁっ……」
ぼくは体を確認した。生きてる。よかった。
周りを見ると、そこはぼくの部屋だった。
時間は深夜。ほの明るい月明かりがカーテンの向こうから入ってきている。
汗のしずくが、ぼくの太ももに落ちた。
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無口なミュウマ
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ぼくは、いつもの保健室で目を覚ました。
小さい頃から体が弱くて、よく保健室にお世話になっている。
今日も朝礼で気分が悪くなり、ここに来てそのまま眠っていた。
天井が仄明るい。
グラウンドに反射している初夏の日射しを、窓から受け入れてるんだろう。
ぼくのいるベッドは、つい立てに囲われている。外は見えない。
隣のつい立ての向こうにはベッドがもう一つあるけど、いつも誰もいない。
足元のほうにいるはずの、保健の先生も気配がない。
「静かだな……」
ただ、わずかに体育の授業を
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文字当てゲームの彼女(仮題)
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ポンポン
弱々しいながらも気付ける範囲に叩かれて振り向くと
「・・・・・・」
無口な幼なじみがひとり。
といってもこの場には俺を含めて二人しかいないわけだが。
「ん?どうした?」
「・・・背中・・・向けて・・・」
最低限聞き取れる声の言われるがままに背中を向けたのち、
「んで?」
と問えば、
「・・・文字・・・当てて・・・」
と人差し指を出しながら答えた。
なるほど、よくわからんが文字当てゲームをやろうとしてるらしい。
さして断る理由もないので
「よし、来い!」
と威勢よく言
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