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サンタ無口


 とんとんとんのとん。
 寒さも際立つ夜に、ドアを叩く音。
 こんな時間に誰だろう、と白崎右一は玄関に出る。
「はい」
 がちゃ。
「!?」
 三太は目を丸くして、訪ねてきた人物を見つめた。
 意外な顔と装い。そして、両手にリボンで包装された、小さな箱を持って。
「……これ」
「えと、誰?」
 目の前に立っているのは、見知らぬ女性だった。
 赤と白が目立つサンタクロースのコスチュームは、膝上のミニスカート。
 そこから覗く細い足は、思わず視線を釘付けにするような肌色。
 その先に鮮やかなソックス、そしてブーツ。全体で見ると、身長は結構低め。
 しかし、可愛らしさが全面に窺える。
「…」
 見惚れて立ち尽くす右一に、彼女は照れながらも困った顔をする。
「あ…あの、人違いじゃ、ないですか?」
 右一は我に返り、そう尋ねた。
「……私は、サンタ、だから…これ、あげる」
 彼女は言うなり、小さな箱を差し出してきた。
「サンタ?」
「…」
「――やっぱり、人違いだと思うよ?」
「……違う。あなたへの、プレゼント」
 人見知りしながらも、何故か食い下がる。
「何で俺なんかに?」
「……一年間、良い人にしていたから」
 サンタさんの常套文句。しかし”子”ではなく、”人”。
「別にそんなことないよ。可もなく不可もなく。嬉しいけど、本当に貰って良いの?」
 こくり。
 純粋に、温かくなる心。
「ありがとう」
 そう言って見つめると、彼女が若干、震えているのが分かった。
「あ、とりあえず中に入って。そんな寒そうな格好…」
 本当は寒さからではなく、緊張から。
 しかし彼女は少し動揺するも、もう一度、こくりと頷いた。

 温かい部屋に、少し体の冷たいサンタの少女。
 右一は彼女を労わるようにこたつに入れて、貰ったプレゼントを開けてみる。
 しゅるる、かぱ。
「!」
 そこには、小さなムースケーキがあった。
 スポンジの土台に、上は苺のムースと生クリームで赤と白のコントラスト。
 中央に楕円のチョコプレートが飾られ、白字で”メリークリスマス”と書かれている。
「夢…みたいだ」
 右一にとって、クリスマスケーキなんてここ何年も無縁の物だった。
 予期せぬ粋な計らいに、感動してしまう。
「ありがとう。…君、名前は?」
「……サンタ」
 それ以上は分からなかった。
 しかし、こんな良いムードの中、変に問い詰めるのも野暮というものだろう。
「サンタさん、もし良かったら…一緒に食べよう」
「…?」
 彼女は意外な顔をして、右一を見た。
「……それは、あなたの物」
「俺独り占めじゃ、勿体無い。それに折角だから紅茶でも煎れるよ」
 そんな親切に、ぼうっと心を奪われるサンタ少女。
「…」
 不思議な彼女のそんな表情に、右一もまた、惹かれてしまう。

 二人で割って口にする、甘いプレゼント。
 独りで買って食べる物よりも格段に美味しい――そんな風に思う右一。
 目の前には、ぎこちない表情からやっと僅かながら、笑顔を見せ始めたサンタ少女がいるからだ。
 充実感のある一時はゆっくりと、そして温かく過ぎた。
「ごちそうさま」
 そして紅茶を飲む。
 と、何故だか彼女は少し悲しそうな顔をした。
「……私は、これで」
「行くのか」
 黙って頷くと、こたつから体を出す。
 しかし、その場で見つめられると、彼女は動かなくなった。
「…」
「……」
 互いに、相手を意識する。
「――楽しかった。ありがとうな」
 止まりかけていた時間が、再び動き出す。
 彼女は軽い足音を立てて、部屋を横切る。そして玄関の方へ。
「本当のことは聞かない。サンタなんだから、多分ソリに乗って、別の所に行くんだろ?」
「…」
 後姿に話しかけても、返事はない。
 遠ざかるような、感覚。
「…」
 最後にブーツまで履いた彼女は、振り返って礼をした。
「サンタさん…」
「……プレゼント、これで良かった?」
 その表情に、何故だか胸が切なくなる。
「ああ。けど…良い人にしてるから――また、来てほしいな。来年なら、来年でも」
 そう言いながらも、引っ込みも送り出しも出来ず、立ちっ放しの右一。
 彼女は、無言のまま背を向けた。ドアノブを握り、開ける。
「!」
 外は雪だった。
 天からゆっくり、風に揺られて舞い落ちる、白。
 この地方では珍しくなった、ホワイトクリスマスだ。
「寒くないか?」
「……大丈夫、ありがと」
 そして、玄関から出て行く。剥き出しの足で、躊躇いもせず。

 目の前から彼女が姿を消して、少しの間。
 ぼんやりとしていた右一は、我に返る。
「サンタさん!?」
 慌てて外に飛び出してみたが、彼女の姿はなかった。
「……」
 右一は一旦部屋に戻り、コートを羽織る。
 そして、彼女を追いかけて寒空の下に繰り出す。
 あの格好で何処に行くと言うのだろうか。
 現実的に考えれば、サンタなんてものは存在しないはず。
 近くで見かける子でもなく、そもそも面識がないのに、プレゼントとは?
「…はぁ…」
 右一はそんなことを考えながら辺りを探してみたが、彼女の姿は見つからなかった。
 まるで、雪のように溶けて消えてしまったように。
「もっと、言えることあったはずだよな」
 誰も歩いていない、雪の降る道の真ん中で、そんなことを呟く。
 空を見上げる。薄暗い上から、雪が無数に降り注いでくる。
 幻想的で、思わず見入ってしまう。
 息が、白い。
 冷気に煽られ、心は冷静に、澄んでいく。
「……」
 今日はもう、会えない。それを右一は空気で感じ、理解した。
 しかし、信じたくなった――サンタの存在と、そして再会を。
「だから、サンタさん。また、会おうな」
2011年08月23日(火) 10:15:44 Modified by ID:uSfNTvF4uw




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