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ネコなカノジョの観察日記01

僕の名前は、斉藤千春。チハルだなんて女の子みたいな名前だけど、れっきとした男だ。
少なくとも、見た目で女の子に間違われた事はない。
……まぁ、男らしい外見だとは、自分でも思えないけどね。
つまり、どこにでもいる、目立たない男子高校生ってところ。
そう、目立たない男子高校生の、ありきたりな朝の登校風景、のはずなんだけど……
今僕は、めっちゃ注目を受けている。
正直言って、注目を浴びるのは苦手だ。
目立たない男子高校生って言ったけど、自分はそれで十分だと思ってる。
だからこんな注目を受ける情況は気恥ずかしくてしょうがなくて、さっきから誰とも顔を合わせないように
俯きっぱなしだ。
なんで注目されてるかって? ……うん、実は原因は、僕じゃない。
つまり、僕が注目されてるんじゃなくて、すぐそばに居る原因の、とばっちりを受けてるって所。
そう、注目の原因、僕の隣で歩く……正確には、僕の斜め上、塀の上を踊るようなステップで歩く、彼女の。

うん、いつまでも現実逃避してても仕方ないよね。
僕は意を決して顔を上げ、彼女に話しかける。
「ねぇ、綾……いい加減降りようよ。皆見てるよ?」
僕の呼びかけに、綾のステップが一瞬止まる……けど、すぐにまたステップを再開する。
僕は小さく嘆息した。
彼女の名前は篠原綾。僕と同じ高校一年生。家がお隣同士の、いわゆる幼馴染と言う奴だ。
家族を除けば、僕と一番長くいるのは彼女だし、多分彼女にとっての僕も同じだろう。
別に、何かを約束してるわけでもないけれども、なぜだか僕たちはずっと一緒にいる。
ずっと一緒にいる、のだけども……実は僕は、綾の事がよく判らない。
漫画とか小説だとかだと、「彼女の事は僕が一番知ってるんだ!」とか言えそうなシチュエーション
なんだけど……物心ついたときから一緒にいる僕でさえ、彼女の事は掴みきれていない、と言うのが本当。
まず彼女、とにかく無口。一番長く一緒にいるであろう僕とさえ、一日の会話が使われる単語は両手の指
程度で済んでしまうだろう。
一言も聞かないで一日が終わってしまう事だってザラだ。
その上、ものすごく気まぐれ。何かに興味を持つとすぐそっちに行くし、飽きるとすぐに放り出してしまう。
今そうしてるように、「塀の上を歩く」なんていう奇矯な行動に出ることもザラ。
そしてさらには無表情。何をするにしても、何を言うにしても、表情が代わる事は滅多にない。
彼女の一日の会話は両手の指程度だけど、彼女の表情が変わるときは、一週間でも10に届くかどうか。
正直、何を考えてるか判らない。
その辺を話してくれればいいんだけど、今言ったとおり彼女は無口だし。
無口な彼女でも察して上げられればいいんだけど、今言ったとおり彼女は気まぐれだし。
そんな相乗効果で、たまに交わす会話も、彼女の真意を問いただすためだけで消費し終わってしまう事も多い。
そんな彼女は、学校では「ネコみたいな子」で通っている。
なるほど、と僕は思う。
肉付きは、その、同級生の女の子たちと比べて、だからあの、ちょっと少なめだけど……その分、しなやかに
伸びてる手足といい、今こうして塀の上でステップしている軽やかさといい、無造作にショートに揃えられ
ながらあちこちに跳ねてるやや茶色がかったクセっ毛といい、吊り目気味で、ついで言うと普段はどこに
焦点があってるのか不明瞭な瞳といい、本当にネコっぽいと思う。


うん、現実逃避終了。
「ねえ綾、危ないから降りようよ」
今度の呼びかけは、綾の足を一瞬止めるだけの効果もなかった。
僕は再び嘆息する。
まぁ、この呼びかけがスルーされるのはわかっていた。危ないなんて言っても、スポーツ万能で通ってる
彼女には塀の上での平均台渡りなんてなんでもないことだろう。その気まぐれさから特定の部に所属する事は
ないものの、あらゆる運動部に助っ人として頼りにされて、そしてその期待にキッチリ応えられるだけの
運動神経の持ち主だから(……まぁ、彼女が飽きないうちは、だけど)。
僕はまた嘆息。
仕方ない。切り札を切るとしよう。本当なら、コレは言いたくなかったんだけどね……。
「綾……」
一度言葉を切って、意を決してから。
「……スカートの中見えるよ?」
……反応は、劇的だった。
ステップをぴたりと止めた綾は、すぐさま塀から飛び降りる。しゃがみこむようにして衝撃を吸収する、
危なげのまったくない、本当にネコのような見事な着地だった。
……が、綾は立ち上がらない。
「……綾?」
もしかして、どこか痛めたんだろうか? そんな風には見えなかったけど、だったら大変だ、と僕が心配
していると、綾が立ち上がる。
僕がほっと安心……しようとしたけど、上目遣いに僕を睨む視線に僕はたじろぐ。
「な、なに……?」
見ると……綾の両手は、スカートのお尻を押さえるように添えられていて、その頬はかすかに赤みが差している。
「……えっち」
「?! あ、いや、その、別に本当に見えてたわけじゃ?!」
慌てる僕をじっと見つめる綾。うううう、誤解だよ、本当に見てなんかいないから!
うう、だから言いたくなかったんだ!
と。不意に綾が笑った。かすかに目元が下がって僅かに口元が上がっただけの小さな笑みだけど……
でもそれは、僕が長年見慣れてる綾の笑顔でもある。
唐突に、綾が身を翻す。前に駆け出すようにしながらダンスのような軽やかなステップでぐるりと一回転した
綾が再びこちらを向いた時、その表情はいつもの無表情に戻っていた。
そして綾が、軽く首をかしげる。
「……行こ?」
「え、あ、うん」
僕は小走りに駆け出して、綾に追いつく。


そんないつもの、僕と綾の朝の風景。

次話
作者 5-321
2008年09月25日(木) 20:59:00 Modified by n18_168




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