素直な女王
店員の挨拶を背に受けながら店を後にする。途端に、俺の前を歩いていた恋人の黒髪ロングストレートがふわりと舞う。
ああ、彼女が振り向いたのだ、と思った次の瞬間なにかずしりとした感覚を感じた。
「……信一先輩、持って」
さて日曜の昼下がり。つまり彩芽の買い物に付き合わされている俺の右手に新たな荷物が追加されたわけだ。
「全部彩芽の買い物なのに何故全部俺が持つのか」
「…………」
氷の眼差しが俺を射ぬく。身長差20cmの為、斜め下からえぐられる感じになる。
「女の子の上目使いは破壊力抜群だと良く聞くけど、全くその通りだなあ」
「今日は延髄切りな気分……」
いや、それ死ぬんじゃないかな、『切り』って。
「ごめんなさい」
俺がいうと彼女は絶対零度な視線を前方に向けてくれた。
「だいたい……男なんだから、自分から『持つよ』ぐらい言うべき」
「いや、紙袋の数が一桁台の時は言ってましたが?」
「……そんな昔の事は忘れた」
「おっ、カサブランカの台詞か」
カサブランカとは一昔前の名作洋画である。
「どうでもいいでしょ。もっと速く歩いて……この後はどうする?」
「そんな先の事はわからないぜ」
「……はっ!」
「ぎゃぼっ!?」
延髄蹴りが決まる。全くもって理不尽である。
「……全くもって理不尽って顔してる」
だってそう思ってるもの。
「……違うよ、信一先輩……先輩は私の、しもべ……躾をするのは当然……」
痛みにうずくまる俺を見下ろしながら女王様はニヤニヤと暗い笑みを浮かべていた。
「あ、彩芽と早瀬先輩!」
公園のベンチに座り(俺が金を出して買った)クレープに二人で食いついていると、何やら明るい声が聞こえてきた。
見ると、何やら活発そうな女の子が近づいてくる。
「君は……」
「ああ、彩芽のクラスメートで高橋って言います、はじめまして」
「はじめまして。……なんで俺の名前を?」
確かに、早瀬というのは俺の苗字なのだが。
「それはまあ……有名ですから。ねえ、彩芽?」
彩芽はモフモフとクレープをかじりながら、不機嫌そうな目をした。
「どういうこと?」
「先輩は結構人気あるんですよ?」
高橋さんが言う。座っていいですかと聞くので許可すると彩芽の隣について、続きを話し出した。
「ほら、先輩は生徒会副会長って事で良く人前に出るじゃないですか。だから顔とか知られてて。
みんな『かっこいいし、人望もあるよね〜』って」
「マジで!?みんながそんな事を!?はっはっ、そうかそう、かはぁっ!」
最後のは彩芽の水平チョップが心臓に当たったための悲鳴である。
「……高橋、あんまり先輩を……調子に乗らせないで」
「げほっげほ……し、嫉妬かい、彩芽?」
「うっ!!……か、勘違いって恐ろしい……私が先輩についてし、嫉妬とかっ、す、するわけない、のにっ」
「やーいツンデレ」
「キッ!」
口で言いなが絶対零度再び。それを見物しながら高橋さんはあははと笑った。
「大丈夫だよ、彩芽。『しかし早瀬先輩はドSな後輩の尻に敷かれている』って、みんな言ってるから」
「……私、Sなんかじゃ……それに、尻に敷くなんてこと、」
「早瀬先輩、そのありえない量の紙袋は全部彩芽の荷物ですよね」
「うん」
「なんか、全部先輩の足元に置いてありますね」
「全部俺が運んでるからな」
「……あは、あはは、敷いてるじゃん!」
「うぅ、高橋ぃぃ……!」
ポコポコとげんこつを繰り出す彩芽の頭を押さえなが爆笑する高橋さん。何だか仲間外れな気持ち、くすん。
仕方がないので近くの自販機でコーヒーを三本買う。
戻ってもまだアニメパンチ状態が続いていた。
「女王様、コーシーにございます」
「……だれが女王様か!」
アッパーをぎりぎりで避けた俺すごい。
「ごめんごめん。ほら、飲めよ」
「ぅう……」
ようやく落ち着いて缶を受け取る彩芽。俺は彩芽様の状態を確認してから、高橋さんにも一本差し出した。
「はい、どうぞ。……あ、コーヒーでよかったかなあ?」
「え?あ、はい!あり、がとうございます……」
受け取った彼女は、ぽーっとこっちを見ている。
「えと……なにか?」
「いや、早瀬先輩って女殺しだな〜って思って」
「え」
「これはモテるのも無理ないですね……私も今やばかったですもん」
「えぇ!?」
「っ!!?」
俺達の反応を見て微笑む明るい後輩は、これまた明るい声で言った。
「じゃあ、先輩に骨を抜かれる前に帰ります。コーヒーごちそうさま……あと、彩芽」
「……ぁによ?」
彩芽の耳にこそこそと喋っている彼女。最初はぶすっとしていた彩芽の顔が……なぜかどんどん青くなっていく。
表情もあわあわ、みたいな感じでなんとも頼りがない。
「じゃあ、先輩、彩芽、さよなら」
「おう」
ピラピラと手を振りかえす。高橋さんがすっかり見えなくなったので隣に目をやる。と、俺の女王はすっかり小さくなっていた。
「おいおい、なにを縮こまっているんだい?まあ、もともと彩芽は149cmしかないがな!」
「…………ごめん」
「あれ」
調子が狂う。いつもの切れが無い。彩芽は泣きたいのを必死に堪えているように見え、それが痛ましい。
「……これ飲んで早く帰ろうぜ」
「……わかってる……」
コーヒーはすっかり冷めていた。
帰り道。なぜか彩芽が紙袋を二つも引き受けてくれたので大分楽になったが、異様に空気が重いのでプラマイゼロ。
「彩芽、どうしたんだよ」
「別にどうもしない……」
ため息つく。さっき高橋さんに何か言われたんだろうけど。なんだろう……まさか、宣戦布告!?
俺を奪い合うための血みどろバトルがっ!?
「ああっ、彩芽!駄目だ、延髄蹴りは女の子相手だと命に関わる!!」
「……?」
「……」
「…………はあ」
ため息をつかれた。流石に放っておけないだろう。出来るだけ優しい声で聞く。
「さっき、高橋さんになに言われたのか解らないけど、あんまり気にするなよ」
「……別に気にしてない……」
「してるじゃん」
「…………」
「もう八年もずっと一緒にいるんだからさ、わかるよ」
「…………先輩には関係ないこと、ほっといて……もらえると、うれ、しい」
いや、明らかに関係あるよな、俺に。そうこうしているうちに彩芽の家に着いた。
彼女の両親は共働きで家に居ないことのほうが多い。今は二人共海外らしく、帰ってくるのは来月だそうだ。
鍵を開けた彼女の小さい背中が、何も言わずに家の中へ。慌てて後を追いかける。
荷物を置いて彩芽の隣へ腰を下ろす。彼女は肩にかけたバッグもおろしていない。帰れともなんとも言わない。
「……彩芽」
「なによ……」
「俺は彩芽の恋人だろ。なんでも話してくれていいじゃないか」
「……だから別に」
「彩芽……」
「なによ!」
ブン、とバッグが振り回される。金具が俺の左肩の辺りを上手い具合に引っ掻いた。
「いつっ……!」
「し、信一せんぱっ……!」
「あ〜、血出てるな」
まずい。まずいのは俺じゃなくて彩芽だ。
「ふ……ぐすっ……あ、あぅぅ」
もう完全に泣き出してしまった恋人を抱きしめてやる。泣いている表情を見られるのが嫌な娘だから、胸に顔を押し付けてきた。
「……ごめん、なさい…………うぅ……」
「……」
俺は八年前を思い出しはじめていた。
小学校の生徒玄関を抜けると酷い雨だった。置き傘しといてよかったな、と考えながら下校する。
といっても家までは徒歩で5分とかからない。友達ともあっという間に道が分かれる。
そして、あとはあの角を曲がれば我が家だというその時に、俺は彼女を見つけた。
とりあえず家に連行してシャワーを浴びさせる。しばらくして俺が貸してやった服を着た女の子が居間にやって来た。
「……で、なんであんな所にいたの?」
あんな所にとは雨の降りしきる屋外の事だ。さすがに、びしょ濡れになり体育座りで泣いている女の子を無視は出来なかった。
「…………ご」
「ご?」
「ごめん、なさい」
「いや……そうじゃなくてさ〜」
「…………」
俺のほうこそ泣きたくなってきた。女子ってわからないな〜。とか言ってもいられず、俺は彼女の頭を撫でてみた。
「!」
父さんにやってもらうと、なんだか嬉しい気持ちになれたから、まあこの娘も元気になるだろうと、そう思っての行動だった。
「え〜と、君何年?」
「…………2年」
「じゃあ俺の一つ下だな。俺は早瀬信一ってんだけど、君は?」
「…………林、彩芽です」
「林さん、ね」
「…………」
「ねえ、なんであんな所にいたのさ?」
同じ質問を返す。と、ぽつぽつと話し始めてくれた。
つまり、鍵をなくして、親が帰ってくるのが夜中で途方にくれていたらしい。
「それで、泣いてたのか」
「…………いや、その……」
「……悩みがあるなら言った方がいいよ」
「っ!?」
「って、父さんが言ってたんだけど」
照れ臭くなって頭をかく。彼女はしばらくポカンとして、ついにはなんと泣きはじめた。
「は、林さん!?」
「……わたじ、わたじ……口下手で……ぐず…………友達も、いないし……」
「…………」
「私が…………雨でビショビショで……すごく寒いのに、ママもパパも……いな、ぐて……
私なんて…………いらない子、なんだあぁ……ひっぐ、ああ」
「……じゃあ、俺が林さんの友達第一号な。友達だから彩芽って呼ぶぞ」
「…………え?」
彩芽は目を丸くする。俺は構わず続けた。
「彩芽は俺の友達だから、いらなくなんかないぞ」
「あ、ああ……」
「よろしくな、彩芽!」
言って手を差し出す。泣きやんではいないが、目の前の彩芽は笑顔になっていたので、俺は満足だった。
「……よろし、く……!」
あれから彩芽はだんだんと口下手なのを克服。今でも無口な方のようだが友達は沢山いるみたいだ。
家が近い事もあり、あれから俺達はいつも一緒にいた。
彩芽はだんだん明るくなり、だんだん強気になり、去年彩芽から告白され、気付けば彼女に振り回される毎日。
「…………高橋が、ね」
彩芽が不意に語りだす。顔はまだ俺の胸元に埋まっていた。
「『自分ならもっと早瀬先輩に尽くすのに』って言ってる人、沢山いるから……しっかりしないと危ないよって」
「……ふ〜ん」
「…………私、いつも素直じゃないし……いや、かなって……」
彩芽の腕に力が入る。
「ごめん……なさい。私、もう、信ちゃんがいないと……駄目、なの。嫌いになんないで……信ちゃ……」
「彩芽」
あごを持ち上げ視線を合わせさせる。
「俺は彩芽のこと好きだから」
「っっっ!!」
彩芽が顔をくしゃっと崩して笑顔を作る。八年のあの日の顔によく似ていた。
「彩芽……」
「ん…………」
今日最初の口づけをした。
「……痛い?信ちゃん?」
彩芽が先程の傷をペロペロ嘗めながら聞いてきた。
「痛くないよ」
空いている方の手で頭を撫でてやると彩芽は嬉しそうに目を細める。
「可愛いな、彩芽」
「…………」
彩芽は頬をますます朱くして舌を動かす。呼び方が先輩から信ちゃんに戻った時は、昔の、今より無口だった頃の彩芽のように甘えてくる。
いつもの凛とした感じからは想像もつかないが、こっちが本来の彩芽だ。口数も、あの頃のレベルまで少なくなるのだ。
「彩芽、もういいよ、ありがとう」
「あ……」
彩芽をベッドに押し倒しキスをする。
「ふん……ふぁ、くちゅ、んむ……ちゅぱっ……じゅ……んぅ……」
歯を開かせ舌で口内を蹂躙する。彩芽は必死に応えてくれる。彼女は俺のシャツを強く掴む。
「ん……ちゅ……ぷ、ふぁ……あ、あ」
唇を離すと、彼女は虚ろな目でこちらを見ていた。
「キス、もっとしてほしい?」
彩芽が素早く首を二回縦に振った。
「…………でもな〜」
「?」
「俺は彩芽のこと大好きなのに、さっきは勝手に自己完結されて悲しかったからな〜」
「はうう……」
ちょっと可哀相に見えるけれど、これは本気で言ってるわけじゃないと彩芽もわかっている。
いうならばお互いに高めあうための儀式だ。彩芽は逡巡し、真っ赤な顔でスカートを自分から捲くり上げた。
「じゃ…………お、しおき、して……」
「なんだって?」
「あ、あやめ、悪い子だったから……お仕置きしてください……」
「……よし。まず、そのままおっぱいを揉んでごらん」
「ぅ、ん…………あ、あ、あ、あ、あ、あ……」
彩芽はスカートをズリ上げた状態で横たわったまま右手で胸を弄りだす。だらし無く開いた口からヨダレが流れ出した。
あられもない幼なじみの姿に堪えられなくなり、俺は彩芽の口へ指を突っ込む。
「むぐぅっ!」
「彩芽、ヨダレ零したらみっともないぞ。栓しといてやるからな」
「ん、ふぁい……」
指を必死にしゃぶりつつ彩芽は右手を休まず動かす。
「く、ふぁ、むぐ……んあ、あう、ちゅ、ぐちゅ……あう、ああう」
美味しそうな顔で俺の指を味わっている。舌がぬるぬると表面を撫で回してくる。そろそろか。俺は彩芽の耳元に口を寄せた。
「彩芽、お仕置きなのに随分嬉しそうだね」
Mっ気がある彩芽がこういう責めが一番好きなことは、よく知っている。
「ん、ふく……あふ……」
「お仕置きなのにパンツ見せて、胸揉んで、それで指を突っ込まれて興奮してるんだろ?」
「んんっ〜〜」
「違うの?」
ああ、俺今、意地悪な顔してるだろうな。しゃぶられていない方の手を彩芽の肩に置く。
ピクンと反応したが自らへの愛撫と指しゃぶりはとまらなかった。
「じゃあ、下がどうなってるか確かめような」
手をそのままパンツの中に滑らせる。
「!」
「あ〜あ、下もヨダレでびちゃびちゃじゃないか」
「あふ、あ、ん!かふぁ!」
彩芽は目を細めながら首をブンブン振った。一回、口から指を抜いてやる
「んあ!……あ……」
「なあ、下の口もヨダレ出ないように栓してやろうか?」
「う…………」
ごくり、と唾を飲む音が聞こえるようだった。しかし、肉欲には負けたのか、ゆっくりと頷く。
「じゃあ、自分でお願いしないと」
「……し、て……」
「…………」
「あう……指で下のお口、栓して……!」
「よく出来ました」
上下同時に指を突っ込む。
「あううううっ!!!うん!んちゅっ!あふ!あふ!あうあ!」
肉壁を引っ掻くようにして中指を曲げるたびに彩芽が身体を震わせる。
「んっ、んっ、んっ、んっ……ぅんん!」
彼女の腕はいつの間にかシーツを強く掴んでいた。激しい刺激にすっかり夢中のようだ。
「……彩芽、そろそろイくんじゃないのか?」
「う〜、ん、ふあ、あう」
首がガクガクと縦に揺れる。
「彩芽、イけっ」
「んーーーーーっ!!」
言葉が引き金になったのか、彩芽は狭いパンティの中で潮を吹いて果てた。指を抜くといやらしい糸を引いた。
「はあ、はあ、はあ……」
ああ!なんて幸せそうな表情をしているんだ!無意識でやっているであろう、俺だけが見れる顔。
「……よく出来たな。じゃあご褒美あげないと……」
「はあ、はあ、んちゅ……ちゅ、くちゅふ、ん、んう……」
もう彩芽は貪るように舌を絡めてきた。身体を抱きしめるとふるふると震えている。小動物的な可愛さに俺はすっかりやられていた。
「ん…………彩芽……入れるよ」
「ふぅ……ふぅ……」
彩芽は期待に濡れた目でこちらを見つめ、頷いた。二人で裸になり、またキスをする。
「ん…………信ちゃん……」
「なに?」
「今日は…………お仕置き、だから……信ちゃんに……おもいっきり激しく……してほしい……」
照れて言う彩芽に俺の胸が高鳴る。
「わかった。俺がどれだけ彩芽のこと好きがわからせてやるよ」
「う、ん……う、ひゃ、ああああいい!」
いきなり突かれて彩芽は叫び声をあげた。腕にぎゅっと抱きしめられる。
「……彩芽。いつもより絞まるよ……乱暴にされて嬉しいんだろ」
「う、んっ……!信ちゃんの女に、されてるって、ん、感じる……すごい!いい、の、あ、ふにゃああああ!」
快楽に蕩けた笑顔で嬉しそうに彩芽が絶叫した。膣内の上を擦るようにして剛直をピストンする。
「ふあっ、あ、あ、そこ、当たってゅ!……あそこが、おち、んちん、ゴリ、ゴリこしゅれてぇ……!」
控え目な胸も弄ってやる。彩芽がヨダレを吹き出した。
「ふうぅんああっ!んああ、おっぱいっ!らめ!らめ!」
「駄目?」
「んは、いぢわりゅ!だめじゃない……気持ち、いあ、んっ、いい〜〜!」
更なる快感を求め、自分から腰を振る彼女のクリトリスを摘んで引っ張る。
「かはあああっ!ああ!ああ!ああ!らめっ!死んじゃ、う、いい、凄いの、凄いのくるっ!」
「いいぞ、いけっ彩芽!」
「あっぐぅうううっ!信ちゃあ、信ちゃあ好きだよ!ああ、信ちゃの熱い!きもひいいの〜!」
そろそろ留めを刺さないとこちらがまずい。俺は今までで1番深くつきこんだ。
「にゃあ、いっちゃう、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ!ああぁぅうううううううううううっ!!!」
彩芽の深い所に吐き出すと、頭じんとするほどに愛しい気持ちになり、華奢な身体を抱きしめた。
「…………信ちゃん、好き」
「ああ、俺もお前にぞっこんだ」
「あ、ふう…………信ちゃん、好きぃ」
後はもうキスをするだけだった。
「じゃ……信一先輩、持って」
さて翌週の日曜。これまた昼下がり。つまり彩芽の買い物に付き合わされ以下略。
「全部彩芽の買い物なのに何故全部俺が持つのか」
「…………いや?」
「そんなふうに首を傾げるのは反則だと思います!」
「今日は…………クレープおごる」
「え?」
「…………お礼」
彩芽はニコリと笑った。
しばらくして、先週と同じベンチで奢られクレープを貪っていると、またまた高橋さんが現れた。
しかも今度は友達らしき人を数名連れている。高橋さんは明るく言った。
「こんにちは!先週もいたからもしかして、と思いましたけど、やっぱり居ましたね!」
「うん、まあ……」
とりあえず愛想笑い。日本人バンザイ。すると、取り巻きが騒ぎ立てる。
『や〜ん早瀬先輩、始めてこんな近くで見た』
『微笑が素敵ですぅ!』
「あ、ははは」
ちらりと横を伺う。俺の彼女は……意外に涼しい顔をしていた。
「早瀬先輩!どうですか?私たちの中から誰かに乗り換えるのなんて」
『私、尽くすタイプだから先輩にやな思いさせませんよ!』
『この際側室でもいいですぅ!』
「いや……俺は」
「……信一先輩は……信ちゃんは、私にぞっこん……」
「え?」
突然に彩芽が言う。と思ったら。
「むぐっ!?」
「あら」
『や〜ん』
『ですぅ!』
いきなり唇を奪われた。彩芽は俺を解放して立ち上がり、歩きだし、言った。笑顔だった。
「じゃ……いこ?」
……こんな顔見せられたら、ぞっこん度も上がるってもんだ。俺は残りのクレープを押し込むと紙袋を持ち上げる。
やるじゃん、とでも言うかのような高橋さんのサムズアップに苦笑いを返し、“しもべ”は女王様の後を追い掛けるのだった。
作者 ◆8pqpKZn956
ああ、彼女が振り向いたのだ、と思った次の瞬間なにかずしりとした感覚を感じた。
「……信一先輩、持って」
さて日曜の昼下がり。つまり彩芽の買い物に付き合わされている俺の右手に新たな荷物が追加されたわけだ。
「全部彩芽の買い物なのに何故全部俺が持つのか」
「…………」
氷の眼差しが俺を射ぬく。身長差20cmの為、斜め下からえぐられる感じになる。
「女の子の上目使いは破壊力抜群だと良く聞くけど、全くその通りだなあ」
「今日は延髄切りな気分……」
いや、それ死ぬんじゃないかな、『切り』って。
「ごめんなさい」
俺がいうと彼女は絶対零度な視線を前方に向けてくれた。
「だいたい……男なんだから、自分から『持つよ』ぐらい言うべき」
「いや、紙袋の数が一桁台の時は言ってましたが?」
「……そんな昔の事は忘れた」
「おっ、カサブランカの台詞か」
カサブランカとは一昔前の名作洋画である。
「どうでもいいでしょ。もっと速く歩いて……この後はどうする?」
「そんな先の事はわからないぜ」
「……はっ!」
「ぎゃぼっ!?」
延髄蹴りが決まる。全くもって理不尽である。
「……全くもって理不尽って顔してる」
だってそう思ってるもの。
「……違うよ、信一先輩……先輩は私の、しもべ……躾をするのは当然……」
痛みにうずくまる俺を見下ろしながら女王様はニヤニヤと暗い笑みを浮かべていた。
「あ、彩芽と早瀬先輩!」
公園のベンチに座り(俺が金を出して買った)クレープに二人で食いついていると、何やら明るい声が聞こえてきた。
見ると、何やら活発そうな女の子が近づいてくる。
「君は……」
「ああ、彩芽のクラスメートで高橋って言います、はじめまして」
「はじめまして。……なんで俺の名前を?」
確かに、早瀬というのは俺の苗字なのだが。
「それはまあ……有名ですから。ねえ、彩芽?」
彩芽はモフモフとクレープをかじりながら、不機嫌そうな目をした。
「どういうこと?」
「先輩は結構人気あるんですよ?」
高橋さんが言う。座っていいですかと聞くので許可すると彩芽の隣について、続きを話し出した。
「ほら、先輩は生徒会副会長って事で良く人前に出るじゃないですか。だから顔とか知られてて。
みんな『かっこいいし、人望もあるよね〜』って」
「マジで!?みんながそんな事を!?はっはっ、そうかそう、かはぁっ!」
最後のは彩芽の水平チョップが心臓に当たったための悲鳴である。
「……高橋、あんまり先輩を……調子に乗らせないで」
「げほっげほ……し、嫉妬かい、彩芽?」
「うっ!!……か、勘違いって恐ろしい……私が先輩についてし、嫉妬とかっ、す、するわけない、のにっ」
「やーいツンデレ」
「キッ!」
口で言いなが絶対零度再び。それを見物しながら高橋さんはあははと笑った。
「大丈夫だよ、彩芽。『しかし早瀬先輩はドSな後輩の尻に敷かれている』って、みんな言ってるから」
「……私、Sなんかじゃ……それに、尻に敷くなんてこと、」
「早瀬先輩、そのありえない量の紙袋は全部彩芽の荷物ですよね」
「うん」
「なんか、全部先輩の足元に置いてありますね」
「全部俺が運んでるからな」
「……あは、あはは、敷いてるじゃん!」
「うぅ、高橋ぃぃ……!」
ポコポコとげんこつを繰り出す彩芽の頭を押さえなが爆笑する高橋さん。何だか仲間外れな気持ち、くすん。
仕方がないので近くの自販機でコーヒーを三本買う。
戻ってもまだアニメパンチ状態が続いていた。
「女王様、コーシーにございます」
「……だれが女王様か!」
アッパーをぎりぎりで避けた俺すごい。
「ごめんごめん。ほら、飲めよ」
「ぅう……」
ようやく落ち着いて缶を受け取る彩芽。俺は彩芽様の状態を確認してから、高橋さんにも一本差し出した。
「はい、どうぞ。……あ、コーヒーでよかったかなあ?」
「え?あ、はい!あり、がとうございます……」
受け取った彼女は、ぽーっとこっちを見ている。
「えと……なにか?」
「いや、早瀬先輩って女殺しだな〜って思って」
「え」
「これはモテるのも無理ないですね……私も今やばかったですもん」
「えぇ!?」
「っ!!?」
俺達の反応を見て微笑む明るい後輩は、これまた明るい声で言った。
「じゃあ、先輩に骨を抜かれる前に帰ります。コーヒーごちそうさま……あと、彩芽」
「……ぁによ?」
彩芽の耳にこそこそと喋っている彼女。最初はぶすっとしていた彩芽の顔が……なぜかどんどん青くなっていく。
表情もあわあわ、みたいな感じでなんとも頼りがない。
「じゃあ、先輩、彩芽、さよなら」
「おう」
ピラピラと手を振りかえす。高橋さんがすっかり見えなくなったので隣に目をやる。と、俺の女王はすっかり小さくなっていた。
「おいおい、なにを縮こまっているんだい?まあ、もともと彩芽は149cmしかないがな!」
「…………ごめん」
「あれ」
調子が狂う。いつもの切れが無い。彩芽は泣きたいのを必死に堪えているように見え、それが痛ましい。
「……これ飲んで早く帰ろうぜ」
「……わかってる……」
コーヒーはすっかり冷めていた。
帰り道。なぜか彩芽が紙袋を二つも引き受けてくれたので大分楽になったが、異様に空気が重いのでプラマイゼロ。
「彩芽、どうしたんだよ」
「別にどうもしない……」
ため息つく。さっき高橋さんに何か言われたんだろうけど。なんだろう……まさか、宣戦布告!?
俺を奪い合うための血みどろバトルがっ!?
「ああっ、彩芽!駄目だ、延髄蹴りは女の子相手だと命に関わる!!」
「……?」
「……」
「…………はあ」
ため息をつかれた。流石に放っておけないだろう。出来るだけ優しい声で聞く。
「さっき、高橋さんになに言われたのか解らないけど、あんまり気にするなよ」
「……別に気にしてない……」
「してるじゃん」
「…………」
「もう八年もずっと一緒にいるんだからさ、わかるよ」
「…………先輩には関係ないこと、ほっといて……もらえると、うれ、しい」
いや、明らかに関係あるよな、俺に。そうこうしているうちに彩芽の家に着いた。
彼女の両親は共働きで家に居ないことのほうが多い。今は二人共海外らしく、帰ってくるのは来月だそうだ。
鍵を開けた彼女の小さい背中が、何も言わずに家の中へ。慌てて後を追いかける。
荷物を置いて彩芽の隣へ腰を下ろす。彼女は肩にかけたバッグもおろしていない。帰れともなんとも言わない。
「……彩芽」
「なによ……」
「俺は彩芽の恋人だろ。なんでも話してくれていいじゃないか」
「……だから別に」
「彩芽……」
「なによ!」
ブン、とバッグが振り回される。金具が俺の左肩の辺りを上手い具合に引っ掻いた。
「いつっ……!」
「し、信一せんぱっ……!」
「あ〜、血出てるな」
まずい。まずいのは俺じゃなくて彩芽だ。
「ふ……ぐすっ……あ、あぅぅ」
もう完全に泣き出してしまった恋人を抱きしめてやる。泣いている表情を見られるのが嫌な娘だから、胸に顔を押し付けてきた。
「……ごめん、なさい…………うぅ……」
「……」
俺は八年前を思い出しはじめていた。
小学校の生徒玄関を抜けると酷い雨だった。置き傘しといてよかったな、と考えながら下校する。
といっても家までは徒歩で5分とかからない。友達ともあっという間に道が分かれる。
そして、あとはあの角を曲がれば我が家だというその時に、俺は彼女を見つけた。
とりあえず家に連行してシャワーを浴びさせる。しばらくして俺が貸してやった服を着た女の子が居間にやって来た。
「……で、なんであんな所にいたの?」
あんな所にとは雨の降りしきる屋外の事だ。さすがに、びしょ濡れになり体育座りで泣いている女の子を無視は出来なかった。
「…………ご」
「ご?」
「ごめん、なさい」
「いや……そうじゃなくてさ〜」
「…………」
俺のほうこそ泣きたくなってきた。女子ってわからないな〜。とか言ってもいられず、俺は彼女の頭を撫でてみた。
「!」
父さんにやってもらうと、なんだか嬉しい気持ちになれたから、まあこの娘も元気になるだろうと、そう思っての行動だった。
「え〜と、君何年?」
「…………2年」
「じゃあ俺の一つ下だな。俺は早瀬信一ってんだけど、君は?」
「…………林、彩芽です」
「林さん、ね」
「…………」
「ねえ、なんであんな所にいたのさ?」
同じ質問を返す。と、ぽつぽつと話し始めてくれた。
つまり、鍵をなくして、親が帰ってくるのが夜中で途方にくれていたらしい。
「それで、泣いてたのか」
「…………いや、その……」
「……悩みがあるなら言った方がいいよ」
「っ!?」
「って、父さんが言ってたんだけど」
照れ臭くなって頭をかく。彼女はしばらくポカンとして、ついにはなんと泣きはじめた。
「は、林さん!?」
「……わたじ、わたじ……口下手で……ぐず…………友達も、いないし……」
「…………」
「私が…………雨でビショビショで……すごく寒いのに、ママもパパも……いな、ぐて……
私なんて…………いらない子、なんだあぁ……ひっぐ、ああ」
「……じゃあ、俺が林さんの友達第一号な。友達だから彩芽って呼ぶぞ」
「…………え?」
彩芽は目を丸くする。俺は構わず続けた。
「彩芽は俺の友達だから、いらなくなんかないぞ」
「あ、ああ……」
「よろしくな、彩芽!」
言って手を差し出す。泣きやんではいないが、目の前の彩芽は笑顔になっていたので、俺は満足だった。
「……よろし、く……!」
あれから彩芽はだんだんと口下手なのを克服。今でも無口な方のようだが友達は沢山いるみたいだ。
家が近い事もあり、あれから俺達はいつも一緒にいた。
彩芽はだんだん明るくなり、だんだん強気になり、去年彩芽から告白され、気付けば彼女に振り回される毎日。
「…………高橋が、ね」
彩芽が不意に語りだす。顔はまだ俺の胸元に埋まっていた。
「『自分ならもっと早瀬先輩に尽くすのに』って言ってる人、沢山いるから……しっかりしないと危ないよって」
「……ふ〜ん」
「…………私、いつも素直じゃないし……いや、かなって……」
彩芽の腕に力が入る。
「ごめん……なさい。私、もう、信ちゃんがいないと……駄目、なの。嫌いになんないで……信ちゃ……」
「彩芽」
あごを持ち上げ視線を合わせさせる。
「俺は彩芽のこと好きだから」
「っっっ!!」
彩芽が顔をくしゃっと崩して笑顔を作る。八年のあの日の顔によく似ていた。
「彩芽……」
「ん…………」
今日最初の口づけをした。
「……痛い?信ちゃん?」
彩芽が先程の傷をペロペロ嘗めながら聞いてきた。
「痛くないよ」
空いている方の手で頭を撫でてやると彩芽は嬉しそうに目を細める。
「可愛いな、彩芽」
「…………」
彩芽は頬をますます朱くして舌を動かす。呼び方が先輩から信ちゃんに戻った時は、昔の、今より無口だった頃の彩芽のように甘えてくる。
いつもの凛とした感じからは想像もつかないが、こっちが本来の彩芽だ。口数も、あの頃のレベルまで少なくなるのだ。
「彩芽、もういいよ、ありがとう」
「あ……」
彩芽をベッドに押し倒しキスをする。
「ふん……ふぁ、くちゅ、んむ……ちゅぱっ……じゅ……んぅ……」
歯を開かせ舌で口内を蹂躙する。彩芽は必死に応えてくれる。彼女は俺のシャツを強く掴む。
「ん……ちゅ……ぷ、ふぁ……あ、あ」
唇を離すと、彼女は虚ろな目でこちらを見ていた。
「キス、もっとしてほしい?」
彩芽が素早く首を二回縦に振った。
「…………でもな〜」
「?」
「俺は彩芽のこと大好きなのに、さっきは勝手に自己完結されて悲しかったからな〜」
「はうう……」
ちょっと可哀相に見えるけれど、これは本気で言ってるわけじゃないと彩芽もわかっている。
いうならばお互いに高めあうための儀式だ。彩芽は逡巡し、真っ赤な顔でスカートを自分から捲くり上げた。
「じゃ…………お、しおき、して……」
「なんだって?」
「あ、あやめ、悪い子だったから……お仕置きしてください……」
「……よし。まず、そのままおっぱいを揉んでごらん」
「ぅ、ん…………あ、あ、あ、あ、あ、あ……」
彩芽はスカートをズリ上げた状態で横たわったまま右手で胸を弄りだす。だらし無く開いた口からヨダレが流れ出した。
あられもない幼なじみの姿に堪えられなくなり、俺は彩芽の口へ指を突っ込む。
「むぐぅっ!」
「彩芽、ヨダレ零したらみっともないぞ。栓しといてやるからな」
「ん、ふぁい……」
指を必死にしゃぶりつつ彩芽は右手を休まず動かす。
「く、ふぁ、むぐ……んあ、あう、ちゅ、ぐちゅ……あう、ああう」
美味しそうな顔で俺の指を味わっている。舌がぬるぬると表面を撫で回してくる。そろそろか。俺は彩芽の耳元に口を寄せた。
「彩芽、お仕置きなのに随分嬉しそうだね」
Mっ気がある彩芽がこういう責めが一番好きなことは、よく知っている。
「ん、ふく……あふ……」
「お仕置きなのにパンツ見せて、胸揉んで、それで指を突っ込まれて興奮してるんだろ?」
「んんっ〜〜」
「違うの?」
ああ、俺今、意地悪な顔してるだろうな。しゃぶられていない方の手を彩芽の肩に置く。
ピクンと反応したが自らへの愛撫と指しゃぶりはとまらなかった。
「じゃあ、下がどうなってるか確かめような」
手をそのままパンツの中に滑らせる。
「!」
「あ〜あ、下もヨダレでびちゃびちゃじゃないか」
「あふ、あ、ん!かふぁ!」
彩芽は目を細めながら首をブンブン振った。一回、口から指を抜いてやる
「んあ!……あ……」
「なあ、下の口もヨダレ出ないように栓してやろうか?」
「う…………」
ごくり、と唾を飲む音が聞こえるようだった。しかし、肉欲には負けたのか、ゆっくりと頷く。
「じゃあ、自分でお願いしないと」
「……し、て……」
「…………」
「あう……指で下のお口、栓して……!」
「よく出来ました」
上下同時に指を突っ込む。
「あううううっ!!!うん!んちゅっ!あふ!あふ!あうあ!」
肉壁を引っ掻くようにして中指を曲げるたびに彩芽が身体を震わせる。
「んっ、んっ、んっ、んっ……ぅんん!」
彼女の腕はいつの間にかシーツを強く掴んでいた。激しい刺激にすっかり夢中のようだ。
「……彩芽、そろそろイくんじゃないのか?」
「う〜、ん、ふあ、あう」
首がガクガクと縦に揺れる。
「彩芽、イけっ」
「んーーーーーっ!!」
言葉が引き金になったのか、彩芽は狭いパンティの中で潮を吹いて果てた。指を抜くといやらしい糸を引いた。
「はあ、はあ、はあ……」
ああ!なんて幸せそうな表情をしているんだ!無意識でやっているであろう、俺だけが見れる顔。
「……よく出来たな。じゃあご褒美あげないと……」
「はあ、はあ、んちゅ……ちゅ、くちゅふ、ん、んう……」
もう彩芽は貪るように舌を絡めてきた。身体を抱きしめるとふるふると震えている。小動物的な可愛さに俺はすっかりやられていた。
「ん…………彩芽……入れるよ」
「ふぅ……ふぅ……」
彩芽は期待に濡れた目でこちらを見つめ、頷いた。二人で裸になり、またキスをする。
「ん…………信ちゃん……」
「なに?」
「今日は…………お仕置き、だから……信ちゃんに……おもいっきり激しく……してほしい……」
照れて言う彩芽に俺の胸が高鳴る。
「わかった。俺がどれだけ彩芽のこと好きがわからせてやるよ」
「う、ん……う、ひゃ、ああああいい!」
いきなり突かれて彩芽は叫び声をあげた。腕にぎゅっと抱きしめられる。
「……彩芽。いつもより絞まるよ……乱暴にされて嬉しいんだろ」
「う、んっ……!信ちゃんの女に、されてるって、ん、感じる……すごい!いい、の、あ、ふにゃああああ!」
快楽に蕩けた笑顔で嬉しそうに彩芽が絶叫した。膣内の上を擦るようにして剛直をピストンする。
「ふあっ、あ、あ、そこ、当たってゅ!……あそこが、おち、んちん、ゴリ、ゴリこしゅれてぇ……!」
控え目な胸も弄ってやる。彩芽がヨダレを吹き出した。
「ふうぅんああっ!んああ、おっぱいっ!らめ!らめ!」
「駄目?」
「んは、いぢわりゅ!だめじゃない……気持ち、いあ、んっ、いい〜〜!」
更なる快感を求め、自分から腰を振る彼女のクリトリスを摘んで引っ張る。
「かはあああっ!ああ!ああ!ああ!らめっ!死んじゃ、う、いい、凄いの、凄いのくるっ!」
「いいぞ、いけっ彩芽!」
「あっぐぅうううっ!信ちゃあ、信ちゃあ好きだよ!ああ、信ちゃの熱い!きもひいいの〜!」
そろそろ留めを刺さないとこちらがまずい。俺は今までで1番深くつきこんだ。
「にゃあ、いっちゃう、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ!ああぁぅうううううううううううっ!!!」
彩芽の深い所に吐き出すと、頭じんとするほどに愛しい気持ちになり、華奢な身体を抱きしめた。
「…………信ちゃん、好き」
「ああ、俺もお前にぞっこんだ」
「あ、ふう…………信ちゃん、好きぃ」
後はもうキスをするだけだった。
「じゃ……信一先輩、持って」
さて翌週の日曜。これまた昼下がり。つまり彩芽の買い物に付き合わされ以下略。
「全部彩芽の買い物なのに何故全部俺が持つのか」
「…………いや?」
「そんなふうに首を傾げるのは反則だと思います!」
「今日は…………クレープおごる」
「え?」
「…………お礼」
彩芽はニコリと笑った。
しばらくして、先週と同じベンチで奢られクレープを貪っていると、またまた高橋さんが現れた。
しかも今度は友達らしき人を数名連れている。高橋さんは明るく言った。
「こんにちは!先週もいたからもしかして、と思いましたけど、やっぱり居ましたね!」
「うん、まあ……」
とりあえず愛想笑い。日本人バンザイ。すると、取り巻きが騒ぎ立てる。
『や〜ん早瀬先輩、始めてこんな近くで見た』
『微笑が素敵ですぅ!』
「あ、ははは」
ちらりと横を伺う。俺の彼女は……意外に涼しい顔をしていた。
「早瀬先輩!どうですか?私たちの中から誰かに乗り換えるのなんて」
『私、尽くすタイプだから先輩にやな思いさせませんよ!』
『この際側室でもいいですぅ!』
「いや……俺は」
「……信一先輩は……信ちゃんは、私にぞっこん……」
「え?」
突然に彩芽が言う。と思ったら。
「むぐっ!?」
「あら」
『や〜ん』
『ですぅ!』
いきなり唇を奪われた。彩芽は俺を解放して立ち上がり、歩きだし、言った。笑顔だった。
「じゃ……いこ?」
……こんな顔見せられたら、ぞっこん度も上がるってもんだ。俺は残りのクレープを押し込むと紙袋を持ち上げる。
やるじゃん、とでも言うかのような高橋さんのサムズアップに苦笑いを返し、“しもべ”は女王様の後を追い掛けるのだった。
作者 ◆8pqpKZn956
2009年01月05日(月) 22:47:25 Modified by ID:z0ZlJTbkWw