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梅寝た

「はいはい、暴れないでくださーい」
わたしは現在見知らぬ人達に両手両足を押さえつけられ、強制的に仰向けにさせられている。マスクで隠された口からは丁寧な言葉が出ているが、逆にそれが恐ろしい。
「嫌……いやぁ!離してぇ!!」
必死にもがくけれど、相手が大柄で数も多いとなると非力なわたしではどうにもならない。普段の自分からは想像もできない大声で叫ぶけれども無意味に近い。
今この場にいるのはわたしと見知らぬ男達。それと………わたしをここに連れてきた張本人。恋人の男の子。
なぜ、どうして、こんな。絶対にわたしの気持ちを理解してくれていると思ってたのに。デートなんて言ってこんなところに連れてきて、わたしを地獄に堕とすのか。
顔を横にして、恨みに満ちた視線を送る。そらされた。悔しい。
「はーい、いきますよー」
どこか気抜けした声と同時に、見るだけでも吐き気がする異物がわたしの中に侵入した。
「………っ!………!!」
もはや苦痛にのたうちまわることも、悲鳴を挙げることすら許されない。それらの行為は、全て自分に痛みとなって跳ね返ってくる。
「………〜〜!!」
地獄だった。これほどの痛み、地獄以外の何で形容しろというのだ。


その地獄はたっぷり三十分は続いた。途中で気絶したから正確な時間は判然としなかったけれど。



目が覚めたとき、最初に感じたのは温もりだった。
「………」
おんぶされている。今回の地獄の原因に。
なんとなく安心感があったけれど、ちょっと腹が立ったので首を絞めてみる。
「ちょ、痛い痛い」
痛かったのはわたしの方だ。針山地獄だってあそこまで残酷ではなかろう。
「まて、俺を恨むな。恨むなら甘いものを食い続けてなおかつ歯磨きを怠った自分をうらぐぶぅ!」
絞め付けを強化。やかましい口は喉から塞ぐに限る。
というかデートと偽って歯医者に連れていくなんて外道のすることだ。よって罰を下す。
耳に狙いを定め、はむ。
「うおっ!なにぐぅっ!」
歯を立てず舌と唇で甘噛みし、首への拘束は緩めない。アメとムチをコンマ単位の間隔で与えられている感じだと思う。いい気味。
「くっ、いつまでもやらせるか!」
叫びと共にわたしのふとももが鷲掴みにされた。
「……〜!!?」
まずい。わたしがこの人の弱点を知っているのと同じで、この人もわたしの弱点を知っている。わたしはふとももが異常に弱い。


どのくらい弱いかというと、そこをいじられただけで達して………なにを言わせてるの?
だがここで屈するわけにはいかない。わたしの歯痛を作り出した原因には、きっちり罰を与えねば。
決意を固め、わたしは耳への攻撃を再開した。




その後。
わたしたちは近所の住人の通報によりやってきた警官に交番へ連行され、まるまる二時間説教をされた。する場所を選べとか言われた。
当然デートは中止になった。というかこんな歯で甘味処巡りなどできるわけもなく、夕飯もまともに食べられなかった。
腹が立ったので耳に噛みついて泣かせてやろうと思ったら、逆にふとももに噛みつかれて鳴かされた。
本当に散々な一日だった。












………………………最後以外は。

作者 5-913
2008年09月27日(土) 01:07:54 Modified by n18_168




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