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膝の上の彼女(仮題)

 二人でベンチに腰を下ろし、私は彼を見た。
「………………」
 彼の所望はきっと膝枕。きっとそうだ。
「……?」
 ぽんぽんと膝をたたきながら首をかしげてみる。
 が、どうやら違うらしい。
「……」
 ふるふると首を振り、彼はじっと私を見る。
「…………」
 前からハグ?
「……ん?」
 両手を伸ばし、また首を傾げてみる。
 が、どうやらこれもまた違うらしい。
「…………」
 ふるふると首を振り、彼はまたじっと私を見る。
 ええい、どうしたいって言うのよっ――と、聞けたらどれだけ楽だろう。
 そんな勇気は、私たちには無い。
 私には、彼に聞く勇気が。
 彼には、私に告げる勇気が。
 お互いにこういう人間だと知っていて、それでも付き合い始めた私たち。
「…………」
 じっと彼の目を見つめる。
 わからない。けど、わからないから知りたくなる。
 もっともっと、彼の事を。
 だから、こうやって彼の求めるものを考えてるのは、楽しい。
「…………」
 わかった。きっとこうだ。
 私は立ち上がり、彼の膝を指差し、首を傾げた。
「……ん」
 彼の頷きに、私の顔には自然と笑みが浮かぶ。
 やった、当たった! この瞬間は、とても嬉しい。
 彼の望むことをやってあげられる事が。
 そして、彼の考える事を一つまた知れたという事が。
「……うん」
 か……考えてみると、ちょっと恥ずかしいけど……。
 私は彼の膝の上に、腰を下ろした。
 彼は私の背中を包み込むように、私の身体を抱きしめる。
「ん……」
 彼の体温を背中に感じた。
「……あったかい、な」
「……ん」
 だんだん冷たくなってきた風。でも、二人でいたらそんな事は関係なさそうだ。

作者 3-151
2008年01月20日(日) 19:32:25 Modified by n18_168




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