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無口で甘えん坊な彼女〜二人の出会い〜

ガタンゴトン…ガタンゴトン…
数々の電車を乗り継ぎ今の電車に乗ってから数時間。
車窓を流れる風景が町中のそれとは変化してきた。
とはいえこれでやっと全道のりの半分程だ。最低あと二時間は電車に揺られていなければならないだろう。
連休初日というにも関わらず車両内の人は少ない。座席の多くが空席だ。
まぁ行き先が行き先なんだが…
ちらりと俺の肩にこてっと頭をもたれかけて眠っている秋葉の方に目を向ける。
旅の準備で昨日は忙しかったんだろう。秋葉はスースーと可愛い寝息を立てていた。そしてその表情はとても穏やかだ。
それにしても秋葉とこうやって二人で旅行出来るなんて…あの頃からは考えられない。
そう俺と秋葉が初めて出会った六年前からは…




「おい、雪春聞いたかよ?今日転校生が来るらしいぜ」
中学に入学して二ヶ月ほど経ったある日。小学校からの友人――城ヶ崎のぞみが言い出した。
一応言っておくがのぞみは正真正銘の男。
ただその名前と傍目から見たらどう見ても女の子の顔。
今後現在に至るまで初対面で男と見抜いた人はほとんどいなかったが。
それはともかく転校生って母さんが言ってたことだな。
なんでも二件隣の家に引っ越してきた家の娘さんが転入するから仲良くするようにと。詳しくは聞いていないけど。

チャイムが鳴り担任が入ってくると続いて女の子も入ってきた。
背中まで届く黒い長髪。色白なのもあり清楚な印象だった。
正直に言って可愛い娘だと思う。
「みんなと同じクラスになることになった桐山秋葉さんだ。
彼女は家庭の事情で最近引っ越してきたそうだ。仲良くしてやれよ」
担任が紹介すると桐山さんは前に出ておじぎをした。緊張しているんだろうか?表情は堅く無言だった。
「桐山の席はと、おい結城!隣空いてるだろ構わないな」
あれ?結城って俺のことだよな。そういえば俺の隣は端数の分空席だったような…
ふと横を見ると既にそこには桐山さんが座りかけていた。
あぁやっぱり俺の隣か。
とりあえず挨拶しとかないと。そう思い桐山さんに話かける。
「あの桐山さん?」
話かけた瞬間桐山さんの体がビクッとなった気がする。桐山さんがおずおずとこっちを見てきた。
「俺、結城雪春。これから宜しくな、なんかあったら言ってくれれば力になるよ」




「………」
しかし桐山さんは無言だった。さらには睨まれた気がする。
俺は気まずくなり顔を前に戻した。
その日学校で俺たちはお互い話しかけることはなかった。

学校も終わり下駄箱で靴を履き替えているとクイクイと袖を引っ張られた。
誰だろうと振り返るとそこには桐山さんがいた。
「ど、どうしたの?」
「………」
桐山さんは僕に構うことなく靴を履き替えていた。それが終わると一人歩き出す。
「……」
少し歩いて俺がただ立ち尽くしていることに気付いたらしく桐山さんは振り返った。
『一緒に来て』
何故だろう?少なくとも俺にはそう言いたいように見えた。
「もしかして一緒に帰ろうってこと…かな?」
不安たっぷりに俺が聞くと桐山さんは小さく頷いた。


とりあえず俺達は並んで歩き出した。
「………」
「……」
お互い初対面。しかも向こうが極度の無口なため何を話せばいいのか見当がつかない。
ただ黙って歩くだけだった。
しばらくして気まずさに堪えきれず俺は口を開いた。
「桐山さんの好きな食べ物って何?」
もっとマシなことを言えば良かった…言った後で後悔する。
「………」
案の定桐山さんは俺を怪しむ視線を送っている。
とはいえここで引いたら元も子もない。桐山さんの視線に気付かないふりをして俺は話続けた。
「俺はオムライスだな。特に母さんのが美味しくてさ。母さんの作る中で一番かな」
「………」
やっぱりというか桐山さんは無言だった。それにどこか悲しそうな顔をしている。
「ごめん…もしかしてオムライス嫌いだった?」
「………」
桐山さんはただ頭を横に振っただけだった。
またもや二人に沈黙が訪れた。

それから黙々と歩くこと十数分、桐山さんの家の前に到着する。
「じゅあ…また明日」
「………」
桐山さんは軽く頭を下げると家の鍵を開けようとする。
「桐山さんって両親共働き?一人だと大変――」
バタンッ
俺の言葉は桐山さんがドア閉めた音でかき消された。
なんかマズいこと言ったか?ブルーになりながら俺も帰宅した。

翌日、俺達は学校で一度も会話しなかった。いや、むしろ顔すら合わせてくれない状況だった。
放課後今日は一人かと思いながら、靴を履き替えているとクイクイと袖を引っ張られる。
まさかと思い後ろを振り返る、やはり桐山さんだった。
ちなみにその日俺は『また明日』以外は喋らなかった。




学校で口を聞かない、でも帰る時だけは一緒、そんな生活がしばらく続いた。
慣れというのは恐ろしいもので俺の中に沈黙の気まずさというのはなくなっていた。
次第に俺はひとりでに話しかけるようになっていた。
一方的に俺が話かける。桐山さんが黙ってそれを聞く、ただそれだけ。
それでも時が経つと桐山さんは小さく笑ったり頷いたりと反応を見せるようになった。
その内学校でも一緒にいる時間が増えていった。
そんな桐山さんの様子にのぞみもすぐに慣れ俺達三人はつるむことが多くなっていった。
喋ることのない桐山さんが学校で不自由なく生活出来たのはこのためだろう。

二年生の三学期になると桐山さんは欠席することが多くなった。同時にどういう訳か母さんの外出も増えた。
久しぶりの一人での帰宅。家に入っても誰もいない状況。
桐山さんと同じ境遇を味わい少しは気持ちを理解出来たと一人感じた。

「なぁ雪春、桐山さん最近どうしたんだろうな」
ある日の休み時間のぞみが聞いてくる。
「さぁな桐山さんにもなんか事情あるんじゃないの」
「何も聞いてないのか」
「いや聞いたところでどうせ話しちゃくれないって」
「分かんねぇだろ、聞いてみろよ。桐山さんのこと好きなんだろ?」
穏やかな口調でのぞみが言う。
「なんでそんな話になるんだよ」
「違うのか?」
小首をかしげながらのぞみが言う。
「なぁのぞみ…」
「どうした?」
「そのポーズだと余計に女の子っぽいぞ」
「てめぇ…俺を怒らせたいのかよ」
呆れた感じでのぞみはため息をついた。
家に帰ってからのぞみとのやり取り思い出す。
確かに俺は桐山さんに好意を持っている、もしかしたらそれ以上かもしれない。
けど相手の気持ちが分からない。一体俺のことをどう思っているのか。
いや、それ以前に普段何を考えているのかさえ分からない。
「だって桐山さんが何も喋ってくれないからな…」
ベッドの上で俺は一人呟いた。


三年生になっても桐山さんの欠席は減らなかった。また俺も相変わらずその理由を聞けないでいた。
途中何度か聞こうとは思った。でもいざとなるとなかなか口が開かなかった。
心のどこかで何かを恐れていたのかもしれない。



ある日のことだった。
トゥルルルルル
夕食も終わった頃一本の電話が鳴った。
「はい、もしもし?」
こんな時間に誰だろうか?母さんの顔もどことなく険しい。
「はい…そうですか…分かりました夜遅くにお世話様です…」
力無く母さんは言うと電話を切った。
「どうしたの?」
普段見ることのない暗い母さんの表情にたまらず口を開いた。
「私の高校生の頃からの友達がね…亡くなったのよ…」
「え?それは……その…母さん大丈夫?」
「ええ、私は大丈夫よ。ありがとう」
口ではそう言うものの母さんは辛そうだった。

次の日も桐山さんは学校に来なかった。
とうとう俺はのぞみと二人で桐山さんのことを担任に聞いてみることにした。
「お前達は桐山からは何も聞いていないのか?」
その問いに対し二人して首を横に振る。
「桐山のお母さんは前々からお身体が良くなくてな」
担任は一息ついてから再び口を開いた。

『昨日の晩亡くなったそうだ…』


その場に二人を残し俺は急いで家へ帰った。
「母さん!!」
「あらあら、お帰りなさい雪春。どうしたの慌てちゃって」
「昨日亡くなった母さんの友達ってまさか!」
そこまで聞くと母さんは落ち着いた表情で言った。

「そう、秋葉ちゃんのお母さんのことよ」
俺の最悪の予想は的中した。
「なんで…なんで今まで教えてくれなかったんだよ!!」
感情が溢れ俺は母さんを怒鳴りつける。とはいえその怒りはむしろ自分自身へと向けたものだった。
「雪春には余計な感情を持たないで接してもらいたかったの」
やや間を空けてから母さんはなだめるように言う。
「雪春は優しい子だから意識しちゃうんじゃないかと思ってね…」
俺は黙って母さんの話を聞いていた。
「でもね雪春、あなたからも分かってあげないと…」
この母さんの一言が心に響いた。
そうだ今まで桐山さんが話してくれなかったんじゃない。俺が分かろうとしなかったんだ。
彼女が何も言わなくとも…いや、だからこそ俺が聞いてあげなきゃいけなかったんだ。
「俺…これからどうすればいい?」
気付けば涙が流れていた。久しぶりの涙だった。
フワッ
母さんが近づいてきたと思うと抱きしめられていた。
「しっかりお話ししてきなさい。雪春の素直な気持ちを伝えればいいわ」
俺を抱き締めながら母さんは穏やかな口調で諭すように言った。
「それに二人は若いんだしまだまだこれからよ」
優しく微笑みながら母さんは言った。





「母さん、少し出かけてくる」
涙を拭いながら俺は言った。
「はいはい、いってらっしゃい。あ、それと秋葉ちゃん連れてきてね。家で一緒にご飯にしましょ」

家を出て桐山さんの家の前に立つ。
意を決してインターホンを押した。
向こうからは何も聞こえてこない。が構わず俺は言った。
「あの、桐山さん?結城だけど…話があるんだ。開けてもらえないかな?」
少しするとそっとドアが開いた。どうやら聞こえていたらしい。

俺は二階の桐山さんの部屋へと案内された。
思えば女の子の部屋へ入るのは初めてだったがこの時はそれ所ではなかった。
「あの、桐山さん…本当にゴメン」
ベッドに座っていた桐山さんに対して俺は立ったまま深々と頭を下げた。
「俺…桐山さんのこと何も知らなかった…知ろうともしてなかった、どれだけ辛い思いをしてたか気付けなかった…」
桐山さんはただ黙って話を聞いていた。
「これからは俺がちゃんと気付いてあげるから…たがら俺と…」
一息ついて俺は桐山さんの目を真っ直ぐ見ながら続けた。
「桐山さん、これからも俺と一緒にいて貰えないかな…?」

しばしの沈黙
やっぱり駄目かと思い再び口を開こうとした時だった。
「……秋葉」
桐山さんが呟いた。
「え?」
「………一緒にいたいなら秋葉って呼んで…『雪春』」
初めて聞く桐山さんのはっきりとした声。それはとても澄んだ綺麗な声だった。
「……ねぇ雪春」
「分かったよ、あ、秋葉」
名前で呼び会うのがこんな恥ずかしいとは思っていなかった。
顔が熱くなるのを感じる。
「……ありがとう…これからもよろしくね…」
桐山さ――いや秋葉はそう言うとにっこり笑った。とはいえその目は赤く腫れていた。
「大丈夫か?他になんかして欲しいことある」
秋葉は少し考えてから口を開いた。
「……髪結んで」
「髪?」
机の引き出しを開けると少し古びたリボンを渡してきた。
「でも俺やったことないんだけど…どんな風に結べばいいんだ?」
「……任せる」
任せると言われても…
しょうがないからポニーテールに結ぶことにする。
女の子の髪型なんてお団子がポニーテールか二つ結びくらいしか知らないのだから必然ではあった。
「……ありがと」
秋葉は嬉しそうに言う。
「……まだお願いあるんだけど」
秋葉が続ける。
「……学校行く時も一緒がいい」
「分かった。明日からな」
「…あと高校も一緒がいい」
「俺でよかったら」




「……あと…」
そこまで言って秋葉が口ごもった。
「ん?なんだよ」
「………ギュッてして」
そう言うと秋葉は顔を真っ赤にして俯く。
「い、いいのか」
思わず声がうわずった。
「………」
秋葉はただコクリと頷く。
意を決して俺は秋葉を抱き締めた。身長も大して違わないはずなのに秋葉は小さく感じた。
「…へへ……ありがとう」
照れを隠すかのように秋葉がはにかんだ。
「………目つぶって…」
俺の腕の中で秋葉が言う。
「なんでさ?」
「……いいから」
秋葉ってこんなに喋る人だったんだなと思いながら言われた通りにする。

『チュッ』

柔らかい何かが唇に触れたのを感じたと同時にそういう音がした。
「……大好き」
「な、な、なな?」
ダメだ、人生史上初のキスと告白に頭の中がオーバーヒートしている。
どう反応すればいいのか分からないし頭が正常に働いているのかもよく分かっていなかった。
「お、俺だって好きだから。」
パニック状態の中で言えたのはそれだけだった。
「…ありがとう…でも…ちょっと苦しい」
ハッとして秋葉を見る。どうやら気付かない内に強く抱き締めすぎていたらしい。
俺は慌てて秋葉から離れた。
秋葉から離れてようやく俺も落ち着きを取り戻す。
「なぁ秋葉、俺からも一つお願いしていいか?」
「…?」
「俺と付き合ってもらえないかな?」
今更という気もするがケジメはケジメ。今度は俺が生まれて初めての告白をした。
「…………い…いよ」
小さな声でそれだけ言うと秋葉は泣き出してしまった。
俺は自然と秋葉の体を再び抱き締めていた。そして優しく頭を撫でる。
「……本、当は…お、お母さんに…会わせたかった…」
今まで我慢していたのだろう。泣きじゃくりながら秋葉は途切れ途切れに言った。
「本当にごめんな…これからはずっと一緒にいてやるから」
嗚咽を漏らす秋葉の背中をトントンと叩きながら耳元で囁いた。

「……今のプロポーズみたい」
しばしの時が過ぎ泣き止んだ秋葉は顔をあげて口を開いた。
「い、いや別に深い意味は無かったんだけど」
「……違うのか」
そう呟く秋葉は少しがっかりしていた。


秋葉が涙を拭き終わってから俺達は我が家へと行った。
「あらあら、お帰り雪春、いらっしゃい秋葉ちゃん」
玄関で母さんが笑顔で出迎えてくれる。
「どうやらちゃんと話し合えたみたいね」
俺達の顔を交互に見比べながら母さんが言った。




「秋葉ちゃん、雪春のことお願いね。多分この子女の子の扱い方知らないから」
夕食の席で母さんが急に言い出す。本人の前で何てことを言い出すんだか…
「……わかった」
秋葉も普通に答えてるし…
「雪春も優しくしなさいよ。特に女の子にとって初エッチは大切なんだから」
「…………」
「…………」
この母さんの言葉に俺達は凍り付いた。
当の本人は気にすることもなくただ微笑んでいた。
「あのさ母さん、そういうことって普通子供の前で言わないと思うけど…」
「あら、そう?でも二人は付き合うことにしたんだしいいじゃない」
少しも気にかけることなく母さんはのほほんと穏やかな口調で言った。
「なんで付き合うこと知ってるのさ?」
「それくらい二人を見れば分かるわよ」
表情を変えずに母さんは言う。
横では秋葉が顔を真っ赤にして俯いていた。

「じゃあまた明日の朝な」
夕食も終わり秋葉を家の前まで見送る。
「一人で大丈夫か?」
「………うん、明日になれば会えるから」
母さんは家に泊まっていくことを提案したけど、家はすぐ近くということで秋葉は断った。
「………」
ちょいちょい秋葉が手招きする。
なんだろう思い近づくとそっと耳打ちされた。
「………雪春は私とエッチしたいの?」
秋葉まで一体どうしたんだ?早くも母さんに影響されているようだ。
「したくないって言ったら嘘になるけど、焦らなくても秋葉に任せるから」
「……雪春だったらいつでもいいよ」
涼しい顔で答える秋葉に俺の方が恥ずかしくなった。
「…………おやすみ」
「ああ、おやすみ」
最後にそれだけ言葉を交わすと秋葉は家の中へと入っていった。





「あれから色々あったな…」
あの時から三年。とにかく濃い三年間だった。
「……ん…ふぁぁあ」
眠っていた秋葉が可愛くあくびをして起き出した。
「………どこ?」
「どこって言われてもな…あと三十分くらいの所だよ」
「………ずっと起きてたの?」
自分だけが寝ていて悪いと思ったのか、申し訳なさそうに聞いてくる。
「まぁな、秋葉と出会った時のこと思い出してた」
「…変態……」
「は、何でだよ?」
秋葉の言う変態はいつもタイミングがおかしい気がする。
「……へへ…何となく」
笑いながら秋葉は言った。

『――間もなく……霊園前……霊園前お出口は左側に――』

車内アナウンスがかかる。
いよいよか…
二人の長い列車の旅が終わろうとしていた。

前話 次話
作者 こたみかん ◆8rF3W6POd6
2008年09月25日(木) 20:50:32 Modified by n18_168




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