| | 事務所 |
| 裕美: | (今日は、プロデューサーさん……と、事務所のことの打ち合わせの日だけど) |
| 裕美: | (新しいお仕事の話かな。ちょっと緊張するなぁ……。早く着きすぎちゃったかも。……あ、) |
| 千鶴: | お疲れ様です、早いですね。 |
| 裕美: | 千鶴さんこそ……あ、えっと、今日はよろしくお願いします。 |
| 千鶴: | よろしくお願いします。 |
| 裕美・千鶴: | ……。 |
| 裕美: | (千鶴さんとは、この前一緒にお仕事したけど……それっきりっていうか……) |
| 裕美: | (でも、やっぱりここは、その話題に触れるのが自然だよね。たぶん、次のお仕事も一緒だろうし……よし!) |
| 裕美: | えっと、この前のお仕事、楽しかったよね。あの、メイド服の……。 |
| 千鶴: | あれは……楽しかったというよりも、恥ずかしすぎ1たでしょ……! |
| 千鶴: | ……だいたい、私にあんなフリフリの可愛い衣装は似合わないっていうのに、プロデューサーが…… |
| 千鶴: | ま、まあ、別に嫌だったワケじゃないですけど……その、むしろ…… |
| 裕美: | あの、千鶴さん……? |
| 千鶴: | …………ハッ!な、なんでもないです! 次から、ああいうのは勘弁してほしいですよね! |
| 裕美: | う、うん。そうだね……。 |
| 裕美: | (そっか……千鶴さん的には、この前のお仕事、イマイチだったんだ……。じゃあ、この話題はなし) |
| 裕美: | (他の話題、話題、話題……う〜ん。探そうとすると、全然見つからない……!) |
| ちひろ: | 裕美ちゃん、千鶴ちゃん。もういらしてたんですね。二人とも、お疲れ様です♪ |
| 裕美・千鶴: | ちひろさん! |
| ちひろ: | プロデューサーさんを待っているんですよね? |
| ちひろ: | 先ほど、プロデューサーさんから連絡があったんですが、事務所への到着が、少し遅れてしまうそうです。 |
| 千鶴: | え、何かあったんですか? |
| ちひろ: | どうやら、前の現場でトラブルがあったみたいで……二人には謝っておいてほしい、とのことでした。 |
| 千鶴: | 別に、謝ってもらわなくてもいいですけど……大変なのは、プロデューサーですし。 |
| 裕美: | う、うんっ。私たち、プロデューサーさんが来るまで、ここで待ってます! |
| ちひろ: | どれくらい遅れるかわからないそうなので、一度、外に出てもらっても大丈夫ですよ♪ |
| ちひろ: | こちらに到着する前に一度、二人に連絡を入れると言っていたので。 |
| 裕美・千鶴: | 外に……。 |
| 裕美: | (外に出て、何をすればいいんだろう? お茶、とか? でも、千鶴さんも困ってるみたいだし……) |
| 千鶴: | ・・・・・ど、どうしよっか。 |
| 裕美: | あっ、ど、どうしようね。 |
| 千鶴: | うん、どうしようか……。 |
| 裕美: | (ほんと、どうしよう……!) |
| 比奈: | お疲れ様でース。あれ、この雰囲気、どうしたんでスか? |
| 裕美・千鶴: | 比奈さんっ! |
| 比奈: | え? あ、ハイ。比奈っス。 |
| 比奈: | 二人とも、付き合ってくれてどうもっス。レッスン終わりに、冷たい一杯飲みたい気分だったんスよ〜。 |
| 裕美: | いえいえ、こちらこそっ! |
| 比奈: | そういえば、お二人さんは、最近一緒に仕事をしたんですっけ? |
| 千鶴: | そうなんです…… |
| 裕美: | あ、それは……! |
| 千鶴: | フリフリのメイド服を着て、全然落ち着かなくって……! お仕事自体は、賑やかで楽しかったんですけどね。 |
| 裕美: | え……? |
| 千鶴: | え? |
| 裕美: | 私、てっきり、あのお仕事、楽しくなかったのかなって思って……! |
| 千鶴: | えっ!?ご、ごめんなさい。あれですよね、私が誤解されるような態度をとったから……! |
| 裕美: | ううん! 全然全然! 楽しかったんだってわかって、ほっとした……! |
| 裕美: | さっきは言えなかったけど、本当は私も、楽しかったって思ってたから。 |
| 千鶴: | 裕美ちゃん……。 |
| 千鶴: | 私、可愛いものを前にすると、どうしても「うわっ」ってなっちゃって、 |
| 千鶴: | さっきみたいに……思ってもないことを、つい言っちゃったり……。 |
| 千鶴: | でも、本当はそんなこと思ってなくて……いや、自分には似合わないとは、わかってるんだけど、なんていうか……! |
| 裕美: | 憧れ、みたいな? |
| 千鶴: | そっ! そんないいものじゃないと思うけど……! だけど……そういうのも、少しは、あるのかな。 |
| 裕美: | ……ふふっ。そっかぁ。私もね、ひらひらで可愛いお洋服とか……ずっと、遠くで見てるだけだったんだよね。 |
| 裕美: | 私みたいな目つきの子じゃ似合わないだろうし…… |
| 裕美: | 「カッコイイ服のほうが似合いそう」とか言われると、私も「そうなのかな」って、思ったりして。 |
| 裕美: | いろいろ、わかんなくなっちゃったりしたこともあったけど……でも、やっぱり好きだから。 |
| 裕美: | 可愛いお洋服を、たくさん着られる“今”が、すっごく幸せだなぁって思うんだ。 |
| 千鶴: | ひ……裕美ちゃんは、とっても可愛いですよ! メイド服だって、ふわふわの髪によく似合ってたし! |
| 千鶴: | まさか、そんな……目つきとか気にしてたなんて全然感じさせないくらい、笑顔も素敵で……! |
| 裕美: | そ、そんなことないよ……! 千鶴さんの方が可愛いし、努力家だし、見習わなきゃって思ってて……! |
| 千鶴: | わ、私!? いやいや、私なんて……裕美ちゃんの方が……! |
| 比奈: | ストーップ! |
| 裕美・千鶴: | あっ。 ハッ! |
| 比奈: | 大丈夫っス。二人とも、最高に可愛いっスよ! |
| 比奈: | それに……自分が「イイ!」と思ったものを、真っ向から否定されたら悲しいものっス。 |
| 比奈: | しかも、作者本人から否定されたらなおさらっスよ……。 |
| 裕美・千鶴: | 作者? 何の話……? |
| 比奈: | 否定が生むのは、悲しみだけってことっス。自分を否定するなんて、もってのほかっスよ! |
| 比奈: | オッケーっスか? |
| 裕美・千鶴: | は、はい! オッケーです! |
| | ブブブ…… |
| 裕美: | ……あ、プロデューサーさんから電話だ。出るね。 |
| 裕美: | はい、もしもし? |
| 比奈: | いや〜、けっこう盛り上がったっスね。最初はどうなることかと……あ、言っちゃったっス。 |
| 千鶴: | いえ、比奈さんがいなかったら、事務所のソファで、座り続けてたと思いますから……感謝してます。 |
| 比奈: | おー、ならよかったっス。 |
| 千鶴: | ……仲間って、鏡みたいですよね。向き合うと、知らなかった自分が見えてくるみたいで…… |
| 千鶴: | ちゃんと大事にしたいなって思いました。仲間のことは、もちろん……できれば、自分のことも。 |
| | ……ピッ |
| 裕美: | プロデューサーさん、もうすぐこっちに来るって。なんかもう一人、事務所の子を連れてくるらしくて…… |
| 裕美: | あ、来た。 |
| 千鶴: | え、早っ! |
| 裕美・千鶴: | ……って、ほたるちゃん!? |
| ほたる: | こ、こんにちは……。すみません、本番まで近いのに……私のせいで近いのに……私のせいで、遅れてしまって……。 |
| 千鶴: | 本番……? って、なんのこと? |
| ほたる: | えっ……? 私たち、LIVEでユニットデビューするんですよね……? 今日は、その打ち合わせで…… |
| 裕美・千鶴: | えっ!? |
| ほたる: | えっ……!? |
| 裕美: | たしかに、曲をもらって個人練習はしてたし、ユニット組むとは聞いてたけど……。 |
| 裕美: | そっか。千鶴さんとほたるちゃんと、私のユニットを……。 |
| 千鶴: | というか、プロデューサーは……あっ! 隅で小さくなってないで、どういうことかちゃんと説明してください! |
| | アイドルは楽しくて……毎日、素敵な刺激と新しい感動を与えてくれる。 |
| | これからも、仲間と一緒に……私らしく笑って。前へ、歩いていけたらいいな。 |
コメントをかく