撮影スタジオ |
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| 千鶴: | ここが撮影スタジオ…… わぁ、機材に、メイクブースも……すごい……! |
| (行き交うスタッフ) |
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| 千鶴: | スタッフさんもたくさん…… あ、あの人がカメラマンさんかな……。 あっちの人は……。 |
| P: | 『おはよう』 |
| P: | スタジオに来た感想は? |
| 千鶴: | あ、おはようございます! どうって、なにもかもが初めてですからっ、 すごく感ど……す……すごく、勉強になります。 |
| P: | みんな真剣に仕事してるからね、いい社会勉強にもなるよ。 |
| 千鶴: | ええ……。みなさん忙しなく動いて…… でも、笑ったりもして……楽しそう、ですね。 |
| P: | 『少し見学してみる?』 |
| 千鶴: | えっ、いいんですか?うれし……ハッ! そ、そうですね。こんな機会滅多にないですし、 初めて目にするものがたくさんあるので、そうさせてもらいます。 |
| 千鶴: | あ、コード踏まないように気をつけなきゃ……。 わぁ、衣装とかもあるんだ、キレイ……。 お菓子もたくさんある……差し入れかな……。 |
| スタッフ: | 松尾さーん! |
| 千鶴: | えっ、あっ、はいっ! |
| スタッフ: | 照明に合わせて、ちょっとお顔の色味整えさせてくださーい。 こちらにどうぞ! |
| 千鶴: | お顔……メイク!? すごい、プロのヘアメイクさんにメイクしてもらえるなんて……! |
| 千鶴: | これがアイドルの日常なんだ…… キラキラしてて、華やかな世界……うわぁ……! |
(暗転) |
| スタッフ: | はい、OKでーす!お肌キレイだから ちょっと乗せるだけで大丈夫ね。羨ましいわー。 |
| 千鶴: | え、あ、あ、ありがとうございます……! |
| 千鶴: | うわぁ、プロの人に褒められちゃった……ハッ! 落ち着いて私!あれはきっと社交辞令! 正直に受け取っちゃダメよ! |
| P: | 『撮影を始めようか』 |
| 千鶴: | は、はい!えっと、あ、あの……! き、基礎を教えてください! |
| P: | 『基礎?』 |
| 千鶴: | そうです! こんなふうに撮影されるのは初めてですし、撮られる側の 立ち振る舞いとか表情の作り方というものを……。 |
| 千鶴: | だって……なんの武器もない私なんかが、 可愛く撮ってもらえるわけないもの……。 |
| 千鶴: | どうしたらいいんですか? どうしたらあんなふうに……テレビや雑誌に出てる、 アイドルの子たちみたいに、可愛い笑顔になれるの……。 |
| P: | 『無理に笑おうとしなくていい』 |
| P: | 可愛く見せなきゃなんて、思わなくていい。 |
| 千鶴: | それって……努力しなくていいってことですか? |
| P: | 『そうじゃない』 |
| P: | 今の松尾千鶴をそのまま見せてほしい。 「アイドルは笑顔で写真に写るもの」 ……そんなルールはないんだよ。 |
| 千鶴: | あ……そ、そっか……。 私、「アイドルの型」に囚われてたんだ……。 |
| 千鶴: | これまで見てきた「アイドルの型」に自分をはめるんじゃなくて、 ただ、私っていう個のアイドルが居るのを見せる……。 そっか、それでいいんだ……。 |
| 千鶴: | ……わかりました。 |
| 千鶴: | 無理に笑わなくていいならありがたいですけど、 どんな仕上がりになっても、 苦情は受け付けませんから。 |
| 千鶴: | ……それじゃあ写真、撮ってもらってきます。 行ってきます、プロデューサー。 |
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