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ネコなカノジョの観察日記03

もうすぐ予鈴がなる頃だ。そろそろ綾も起こさないと。
「ほら綾、もうお昼も終わりだよ、教室戻ろう?」
「……………」
僕に揺り起こされ、綾はゆっくりと身を起こす。
ぺたんと座り込んで眠たげな目を手でこしこしとこする仕草は、いかにもネコっぽくて綾らしい。
でもこすり終えた綾はそのままの姿勢で、まだぽーっとしてる。
まだ目が覚めきってないらしい。
「ほら綾、起きて起きて」
仕方なく僕は、綾の肩を揺すって声をかける。時間大丈夫かな。いざとなったらこのまま引っ張っていくか。
と。
綾にかけてあった僕の上着が、ぱさりとずり落ちた。
綾の視線が、緩慢にそちらに移る。
「綾?」
しばらくじーっと僕の上着を見ていた綾は、ゆっくりと手を伸ばし、上着を拾い上げて目の前に広げた。
拾ってくれた……のかな? でもなんか、広げた上着を前に小首を傾げてるし……?
と思ったら。
いきなり綾は、その上着をぎゅーっと抱きしめた。
「ちょ……綾?!」
ヤバい。
頬がかーっと熱くなってるのを感じる。
何だか判らないけど、なんとなく焦る僕。
本当にヤバい。いや何がヤバいのかさっぱりわかりませんがとにかくヤバい――!
「綾! 正気に戻れー!」
思わず乱暴に綾の肩を揺するが……綾はまだ寝ぼけてるような、とろんとした表情のままだ。
「……ハルのにおいー」
だから綾、そこでそういう台詞は反則ー!
頬擦りもダメー!!
深呼吸も禁止ー!!



なんやかやで上着も奪い返して、左手にランチボックス、右手でいまだに寝ぼけ眼な綾の手を引っ張って
教室に向かう僕。
綾はまだご覧の通りだけど、予鈴にはもう少し余裕があるし、なんとかなるだろう。
ちなみに僕の上着は当然よれよれだ。うちに戻ったらアイロンかけないと。
綾に思いっきり抱きしめられたから仕方ないけど……。
……抱きしめ……。
ううう、思い出すとまだ頬が赤くなる。
それにずっと綾のお昼寝布団代わりだった挙句に抱きしめられまでした上着には、かすかに綾のにおいも
感じられて……って何を言ってるんだ僕はーーーー?!
なにやら踏み込むには躊躇いを感じる方向に行きそうになる思考を頭を振って払うと、僕は綾の手を引いて
教室へと向かう足を早める。
と。
「……お、チハルも今戻りか?」
「あ、公平」
階段を下りたところで、公平と鉢合わせた。
こいつは杉村公平、僕たちのクラスメイトだ。知り合ったのは高校生になって同じクラスになってからだけど、
明るくて物怖じしない公平は瞬く間にクラスに溶け込んで、僕とも友人になったってワケ。
当然、同じ教室に向かってるわけだから、自然と僕らは連れ立って歩き出す。
公平は、ちらりと僕の手のランチボックスを見て、わざとらしくため息をつく。
「チハルたちは今日も愛妻弁当かぁ……いいなぁ」
「愛妻弁当って……作ってるの僕なんだけど」
「んなもんどっちでもいい! とにかく、お前等が裕福層に属してるには確かだ!」
裕福層て。
「俺なんて今日も一人寂しく購買パンだぜ? 最近マモルも付き合い悪いしよー」
「あー……護はねぇ……仕方ないよ」
わざとらしく嘆く振りをする公平に、僕は曖昧に頷く。護は僕たちの共通の友人だけど……今の話の流れでは、
護の話題は避けた方がいい。
「あーもう、俺も料理の上手なカノジョが欲しい!! いっそチハル、お前が俺のカノジョになれ!」
んな無茶な。
……と。
不意に、右手が強く引かれる。
「………………?」
「………………あの、綾?」
そちらに目を移すと……いつの間やら目を覚ましたらしい綾が、ひっしと僕の上着の裾を掴んでるところだった。
そのいつもは無表情な顔が、今は僅かに口元がきつく結ばれて、ぢーーーーっと公平を睨んでる。
「えーと……どうなさいました綾さん?」
思わず敬語。
だけど綾は、公平を睨んだまま(ついでに裾を掴んだまま)微動だにしない。
「……………………おお」
そんな綾の様子をあっけに取られた様子で見ていた公平は、不意にぽんと手を打ち。



「チハル、お前のこと前から好きだったんだわ。俺と付き合ってくれ」
いきなりナニ言い出すかなコイツわー?!
と、僕がツッコミを入れるより早く、僕の右手が一層強く引かれる。
その目は、いつになく真剣に、敵意すらこもった様子で公平を睨んでいる。
睨まれた公平はといえば……にたあり、と不気味な笑みを浮かべた。
まずい……公平のあの笑い方は、何か面白いものを見つけてそれでもて遊ぶ時の笑い方!
「君の瞳は百万ボルト。その瞳で俺を痺れさせてくれマイハニー」
いつの時代の人間だよ公平。
「…………!(ぐい)」
また強く引かれる裾。
「チハル、俺のために毎朝味噌汁をつくってくれ」
これまた古典的な。
「…………!(ぐいぐい)」
またまた強く引かれる裾。
「わたし達のあの熱い夜を忘れたというの? ひどいわ、アレは遊びだったのね?!」
スマブラを徹夜で対戦したことを言ってるなら、アレは間違いなく遊びだってば。
「…………!(ぐぐぐいっ)」
さらに強く引かれる裾。
公平が妄言を流すたびに、綾はいっそう僕の手を強く引く。
そしてその目は、射殺さんばかりに公平から片時も離れない。
「あのね、綾……いくらなんでも、あんな妄言を真に受けなくっても……」
「ほほー。なるほどなるほどねー」
しかし公平はそんな視線もどこ吹く風で、しきりにおかしそうに感心している。
「いやどーするのこの情況!」
綾の手は、僕を公平に渡すまいと言わんばかりに(と、言うつもりなんだろうね……)裾をきつく掴んで離さない。
それどころか、いまも公平から一歩でも僕を遠ざけようと引っ張り続けている。
「わりぃわりぃ。篠原が表情変えるのはじめて見たもんだから、つい」
「つい、で綾を刺激しないで欲しいかなっ!」
ついでに、どんだけレアなんだよ綾の表情!
「すまんすまん、でも大丈夫だって」
ぜんぜん済まなそうに笑う公平は、視線を綾に向ける。
「ウソウソ、わるいな篠原、今の全部ジョーダンだよ、ジョーダン」
「………………………」
一応、フォローはしてくれるみたい。でも、綾はまだ警戒を解かない。
本当に綾がネコだったら毛を逆立ててるんじゃないかと言うくらいに、僕の上着の裾をきつく掴んだままで
ぢーーーーーーっと公平を睨みつけている。
しかし公平は、そんな視線もどこ吹く風、笑顔のままで言葉を続ける。
「大丈夫だって、チハルは篠原が一番大事に決まってるんだから」
だからいきなりナニ言い出すかなこの男わー?!
綾の僕の手を引く力が、僅かに緩む。
恐る恐る、そちらの方に目を向けると……。
「………………………(わくわく)」
「う………」
こころなしか、何かの期待に輝く瞳でこちらをぢーーーーーーっと見つめる綾と目が合った。



思わず、額に汗が浮かぶ。
これはアレですか。
言えと。
なにかこう、恥ずかしい台詞を言わないとダメだと。
そういう情況なんでしょうかー?!
「ほれチハル。ここは男を見せるべき時ぞ!」
このいざこざの原因が何を言うかなっ?!
「………………………(わくわくわく)」
だから綾さん無言のままそんなキラキラ輝く瞳で見つめないで下さい。
我知らず、頬がまたまた赤くなっていく。
あー………やっぱり言わなきゃダメ?
ダメですかそうですか……。
僕は嘆息一つ。
「あー、あのね、綾……」
「………………………(わくわくわく)」
「………………………(わくわくわく)」
公平までなんか期待に満ちた目で見てるし
「僕はね、公平なんかより綾の方が大切だし、公平のあんな妄言になんて乗りっこないからね」
ヘタレですいません。僕にはこれが精一杯です。
「ぶーぶー、ひどいぞチハルー。俺超傷ついたー」
うるさい黙れ。
それよりも綾だ綾。
「………………………」
綾は、ぢーーーーーーっと僕のことをしばらく見つめてから……ゆっくり、裾を手放した。
ほ、やれやれ……判ってくれたか……あー、でも、裾がもうしわくちゃ……まぁどうせアイロンかけるし……。
とか考えてたら、綾はういつものうっすらスマイルを浮かべると。
「♪」
両手でもって、僕の右手に抱きついてきた!
「ちょ、綾?!」
僕は思わず慌てて、おもわず一歩後ずさりしちゃったけど、綾はしっかりと僕の腕に絡み付いて離れない。
それどころか、ほお擦りとか始めるし!
「ほほー、そう来ましたか」
「のんきに感心してるな元凶! どーするの情況! さっきより泥沼ってるよ?!」
その時非情に響き渡る、予鈴のチャイム。
「お、予鈴か。俺先に教室行ってるわー、じゃあなー!」
逃げやがったー!
後に取り残されたのは、呆然とする僕と、いつまでもいつまでも僕の腕に抱きついてほお擦りしてる綾だった……。
えと……ホントどーすんのよコレ?


追記。
この情況で教室に入ったら確実に冷やかされる、綾は離れるつもりはさっぱりなさそう、
でも授業をボイコットする度胸もない……そんな八方塞りの情況で、僕は授業開始ギリギリまで悩んだ末に、
当分は冷やかされる覚悟を決めて綾を片手にぶら下げたまま教室に入ると。

クラス中、「斉藤と篠原が腕組んでる? ふーん、それが今更なに?」みたいな超スルーな空気だったのが、
とてもとても複雑な心境だったとです……。

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作者 5-321
2008年09月07日(日) 21:35:19 Modified by n18_168




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