電波第二波
市街と雨粒の雑音の中、二人の男女は道路越しに傘も差さず立っていた。
そして女は口を動かす。しかし、周りの音に掻き消されて男には届かない
ほどなくして信号が青に変わる。二人は駆け出し、横断歩道の真ん中で抱擁して泣きあった。
互いにごめんと言う言葉を胸に抱きながら
雨も上がり、雲も晴れた。二人は手を繋ぎ夕暮れの住宅街を歩いていた。
男が右に寄り添う女に目を向けると、女の顔はにこにことして夕日に照らされていた。
女は視線に気づき男の方を見て不思議そうな顔をした。
男はふと思い出して女に問うた。
−あの時なんて言ってたの?
と。女は立ち止まる。自然と男も立ち止まる。そして女は男の耳に口を近づけこう言った。
−くちぱく
それだけを言った女は顔を離して、二人は向かい合った。
ひとときの時間、二人はその場で笑い合ったのであった。
以上
2011年08月24日(水) 10:12:57 Modified by ID:uSfNTvF4uw