国民第一党事件（こくみんだいいちとうじけん）とはインドネシア共和国カリマンタン島で1975年1月22日から計画され、同年2月9日から2月24日にかけて発生したルヒンガレ・セイナン政権、国民第一党およびインドネシア義勇軍による一連の戦争工作および小規模国境紛争。
同事件は「インドネシア・マレー戦争危機」「第一次カリマンタン島事件」とも称される。
背景
経過
四者会談
経過
ジャカルタ政府庁舎で戦略配置の完了の情報を受けたセイナン大統領、アルク国防大臣、ジョコド陸軍長官およびアルハト議長は作戦開始時間を翌日午前8時と決定し、その旨を現地のセレーヌに報告した。国家警察庁による捜査が前提の作戦であったがこれ以上の情報共有は漏洩の恐れがあるため、国家警察庁長官にはこの事実を伝達しなかった。
国家警察庁マリナウ県国家警察本部には多数の通報が寄せられており、当時の長官であるタリン長官は現地の国家警察に侵攻事態と全面的交戦許可を発令し、300名規模の武装警察部隊と150名の集団警備機動隊の派遣を命令。
タリンは同時に大統領府へこの件を連絡。セイナン大統領は警察部隊による検挙と捜査を命じた。
午後4時頃、セイナン大統領その他インドネシア外交団はマレー共和国首相と会談し、現在残っている関与した兵士を引き渡さない限り、事前に準備されていた最後通牒を突き付けた。会談後、メディアに対し当時の首相であるトゥンク・アレンザ・ノーマンは「全てはインドネシア側の仕組んだ話だというのは見え透いている。マレー共和国軍においてはそのような動向は見られない。今はだが、それをしていないとは証明できない、悪魔の証明だ。」と苦渋の反論を述べた。
午後3時、西カリマンタン州ナンガ・バダウ国境検問所周辺に国防陸軍第6歩兵連隊、第1騎兵大隊および第3装甲大隊と事前に待機している国民第一党国民行動隊200名およびインドネシア義勇軍第1義勇兵隊が合流。30分後に大統領から正式な任務開始の命令が下った。午後4時20分、攻撃が開始された。
インドネシア共和国軍の領内侵入の一報はマレー共和国政府に即座に伝えられた。ノーマン首相は急遽捜査を取りやめ、マレー共和国陸軍に対し出動を命じ、国内には非常事態宣言を発令した。
午前9時、国家警察庁による謀反を知ったセイナン大統領とアルク国防大臣は急遽、マレー共和国領内の国防陸軍を撤退させ、カリマンタン島の治安維持にあたらせた。この時、国民行動隊のセレーヌ隊長や15名の隊員は取り残され、行方不明となっている。セイナン大統領はタリン長官を更迭し、自身の政治生命を守ろうと試みた。
ナンガ・バダウ国境検問所には国防陸軍の撤退後に、一個歩兵小隊が侵入し、警備にあたっていた集団警備機動隊に包囲され大半が投降、15名を検挙した。影響
また同日中にコーマ外務大臣がマレー共和国外務省と連絡を取り、一時的な停戦を確認した。
1972年国民評議会議員総選挙で大勝した国民第一党が、今事件の失敗を受け同年10月の1975年国民評議会議員総選挙ではインドネシア国民保守立憲党に345議席を取られ敗北する。
後にカリマンタン島事件と呼ばれる軍事侵攻である。
・国民第一党事件に関与していた党員（国民行動隊を除く者）は大統領の恩赦にて無罪とする。
・義勇軍兵士はカリマンタン島において騒動を起こし、マレー共和国との戦争を工作し、インドネシア共和国の主権と独立を著しく侵害したため、国家転覆の罪とし死刑。
・マレー共和国軍兵士は外交交渉の際、当該国に強制帰国とする。
特に義勇軍兵士に対する扱いはセイナン政権による戦争工作の責任を義勇軍一身に被らせようとする狙いがあった。
同事件は「インドネシア・マレー戦争危機」「第一次カリマンタン島事件」とも称される。
国民第一党事件 | |
|---|---|
 武装した国民第一党員 | |
| 時:1975年2月9日-2月24日 | |
| 場所:カリマンタン島北カリマンタン州マリナウ県 | |
| 結果:国民第一党員、インドネシア義勇軍兵士およびマレー共和国軍兵士を逮捕 | |
| 交戦勢力 | |
| インドネシア共和国 国民第一党 インドネシア義勇軍 | マレー共和国 |
| 指揮官 | |
| インドネシア共和国 ・コジャ・ウイロド ・フランコ・グレナダ ・セーヌ・ディアンレー | マハーディル・デン・モハメッド |
| 兵数 | |
| インドネシア共和国国防陸軍 ・第6歩兵連隊(2000) ・第1騎兵大隊(550) ・第3装甲大隊(600) 国民第一党軍 ・国民行動隊(200) インドネシア義勇軍 ・インドネシア第1義勇兵隊(300) | マレー共和国陸軍 ・ボルネオ警備大隊(450) ・第3歩兵大隊(620) ・第1機械化大隊(500) |
| 損害 | |
| インドネシア共和国:90 戦死33 負傷57 国民第一党:200 戦死150 負傷21 行方不明29 インドネシア義勇軍:20 射殺15 逮捕5 | 戦死620 行方不明105 逮捕15 負傷133 うち死亡112 装甲車両200両 合計:死傷者732 |
背景 
インドネシア共和国では独立以降、ナショナリズムを支持する勢力が拡大しつつあり、国民評議会(現連邦議会)では、「インドネシア拡大主義」を掲げるナショナリスト政党国民第一党が、1966年国民評議会議員総選挙、1970年元老院議員選挙においてそれぞれ単独過半数である320議席、170議席を獲得する大勝利を果たした。国民評議会における議席数敗北を受け、それまで政権を護持していた共和国改新同盟は政権の座を降り、国民第一党党首であるルヒンガレ・セイナンが大統領に就任した。
セイナンは、拡大政策の一環として「カリマンタン島の統一」を掲げ、マレー共和国に対しカリマンタン島(ボルネオ島)全域の請求権を主張した。マレー共和国政府はこの主張を受け入れず、断固拒否する構えを示した。この返答が公表されると、インドネシア共和国政府内と各報道機関では開戦すべきという意見が広まり、国民感情も開戦に傾き、国民評議会議事堂前にはデモ行進が続いた。
1975年1月22日、セイナン大統領、アルク国防大臣、国民行動隊セレーヌ隊長およびインドネシア義勇軍アルハト議長は中部カリマンタン州ラマンダウ県に位置する国民第一党支部(四者会談)に介し、開戦に向けて会談を行った。
セイナンは、拡大政策の一環として「カリマンタン島の統一」を掲げ、マレー共和国に対しカリマンタン島(ボルネオ島)全域の請求権を主張した。マレー共和国政府はこの主張を受け入れず、断固拒否する構えを示した。この返答が公表されると、インドネシア共和国政府内と各報道機関では開戦すべきという意見が広まり、国民感情も開戦に傾き、国民評議会議事堂前にはデモ行進が続いた。
1975年1月22日、セイナン大統領、アルク国防大臣、国民行動隊セレーヌ隊長およびインドネシア義勇軍アルハト議長は中部カリマンタン州ラマンダウ県に位置する国民第一党支部(四者会談)に介し、開戦に向けて会談を行った。
経過
四者会談
1月22日の四者会談の内容は次の通りだった。
(1).開戦の正当化の方法
(2).勝利条件の策定
(3).統治計画
(1)の正当化の方法は、アルク国防大臣の次の意見に決定された。
・マレー共和国軍の軍人に扮したインドネシア義勇軍の兵士を共和国国境地帯に送り、現地のインドネシア国民の住居や車両を破壊させ、国家警察庁に捜査させる。
・捜査結果をマレー共和国軍によるものと断定させ、外交交渉内に犯罪者引き渡しを明示し、引き渡さない場合は国防軍による強制捜査として領土侵入。
(2)の勝利条件はカリマンタン島からのマレー共和国軍の排除および当該地域の平定とした。
(3)の統治計画は同化政策の推進に決定した。
(1).開戦の正当化の方法
(2).勝利条件の策定
(3).統治計画
(1)の正当化の方法は、アルク国防大臣の次の意見に決定された。
・マレー共和国軍の軍人に扮したインドネシア義勇軍の兵士を共和国国境地帯に送り、現地のインドネシア国民の住居や車両を破壊させ、国家警察庁に捜査させる。
・捜査結果をマレー共和国軍によるものと断定させ、外交交渉内に犯罪者引き渡しを明示し、引き渡さない場合は国防軍による強制捜査として領土侵入。
(2)の勝利条件はカリマンタン島からのマレー共和国軍の排除および当該地域の平定とした。
(3)の統治計画は同化政策の推進に決定した。
経過
- 2月8日・戦略配置
ジャカルタ政府庁舎で戦略配置の完了の情報を受けたセイナン大統領、アルク国防大臣、ジョコド陸軍長官およびアルハト議長は作戦開始時間を翌日午前8時と決定し、その旨を現地のセレーヌに報告した。国家警察庁による捜査が前提の作戦であったがこれ以上の情報共有は漏洩の恐れがあるため、国家警察庁長官にはこの事実を伝達しなかった。
- 2月9日・作戦実行
国家警察庁マリナウ県国家警察本部には多数の通報が寄せられており、当時の長官であるタリン長官は現地の国家警察に侵攻事態と全面的交戦許可を発令し、300名規模の武装警察部隊と150名の集団警備機動隊の派遣を命令。
タリンは同時に大統領府へこの件を連絡。セイナン大統領は警察部隊による検挙と捜査を命じた。
- 戦闘
- 2月10日・外交交渉
午後4時頃、セイナン大統領その他インドネシア外交団はマレー共和国首相と会談し、現在残っている関与した兵士を引き渡さない限り、事前に準備されていた最後通牒を突き付けた。会談後、メディアに対し当時の首相であるトゥンク・アレンザ・ノーマンは「全てはインドネシア側の仕組んだ話だというのは見え透いている。マレー共和国軍においてはそのような動向は見られない。今はだが、それをしていないとは証明できない、悪魔の証明だ。」と苦渋の反論を述べた。
- 2月11日・マレー共和国における捜査
- インドネシア共和国による強制捜査
午後3時、西カリマンタン州ナンガ・バダウ国境検問所周辺に国防陸軍第6歩兵連隊、第1騎兵大隊および第3装甲大隊と事前に待機している国民第一党国民行動隊200名およびインドネシア義勇軍第1義勇兵隊が合流。30分後に大統領から正式な任務開始の命令が下った。午後4時20分、攻撃が開始された。
- マレー共和国に侵入
インドネシア共和国軍の領内侵入の一報はマレー共和国政府に即座に伝えられた。ノーマン首相は急遽捜査を取りやめ、マレー共和国陸軍に対し出動を命じ、国内には非常事態宣言を発令した。
- 2月19日・シブへの侵攻
- 2月22日・国家警察庁による公表
- 2月24日・カリマンタン島における民衆暴動
午前9時、国家警察庁による謀反を知ったセイナン大統領とアルク国防大臣は急遽、マレー共和国領内の国防陸軍を撤退させ、カリマンタン島の治安維持にあたらせた。この時、国民行動隊のセレーヌ隊長や15名の隊員は取り残され、行方不明となっている。セイナン大統領はタリン長官を更迭し、自身の政治生命を守ろうと試みた。
ナンガ・バダウ国境検問所には国防陸軍の撤退後に、一個歩兵小隊が侵入し、警備にあたっていた集団警備機動隊に包囲され大半が投降、15名を検挙した。
影響
- 2月26日・事件後
また同日中にコーマ外務大臣がマレー共和国外務省と連絡を取り、一時的な停戦を確認した。
- インドネシア自由民主同盟
1972年国民評議会議員総選挙で大勝した国民第一党が、今事件の失敗を受け同年10月の1975年国民評議会議員総選挙ではインドネシア国民保守立憲党に345議席を取られ敗北する。
- その後のカリマンタン島におけるインドネシア共和国とマレー共和国間における対立
後にカリマンタン島事件と呼ばれる軍事侵攻である。
- インドネシア義勇軍アルハト議長と国民第一党
- 逮捕者
・国民第一党事件に関与していた党員（国民行動隊を除く者）は大統領の恩赦にて無罪とする。
・義勇軍兵士はカリマンタン島において騒動を起こし、マレー共和国との戦争を工作し、インドネシア共和国の主権と独立を著しく侵害したため、国家転覆の罪とし死刑。
・マレー共和国軍兵士は外交交渉の際、当該国に強制帰国とする。
特に義勇軍兵士に対する扱いはセイナン政権による戦争工作の責任を義勇軍一身に被らせようとする狙いがあった。
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