kagemiya@ふたば - ガグンラーズ
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「儂の名はガグンラーズ。運命のもたらし手で、歩くまじない。通りすがりの旅人さ」

基本情報

【元ネタ】北欧神話
【CLASS】キャスター
【真名】ガグンラーズ
【異名・別名・表記揺れ】200を超える名を持つ。詳細はWikipediaの名前一覧スカルド詩のコーパスコーパスのヘイティ一覧、北欧神話資料サイトNew Northvegr Centerの名前一覧、またはノルウェーの言語学者Hjalmar Falk著『Odensheite』等を参照されたし。
 代表的な名としては〈大神フィムブルテュール〉、〈恐ろしき者ユッグ〉、〈両性の者ツヴェギ〉、〈変身者スヴィパル〉、〈人類の神ヴェラテュール〉、〈悪を為す者ベルヴェルク〉、〈ヴィズリル〉、〈万物の父アルファズル〉、〈亡者達の主ドラウガドロッティン〉、〈吊るされし者達の主ハンガドロッティン〉、〈焔の眼バーレイグ〉、〈高き者ハーヴィ〉、〈レグニル〉、〈最果ての智者フョルスヴィーズル〉、〈灰色髭ハルバルド〉、〈鴉神フラフナグズ〉、〈戦狼ヒルドルブ〉、〈輝かしき裁定者イートレクル〉、〈死者の神ヴァルティーヴァ〉、〈錬魔の鍛冶師ガルドラスミジル〉、〈竜骨の支配者クィアラル〉、〈轟雷スンド〉、〈仮面を被る者グリームニル〉、〈仮面グリム〉、〈嵐の夜ワイルドハント〉(独語読み:ヴィルドヤクト、オーディンスヤクト)など。
【性別】肉体は女性
【身長・体重】142cm・36kg
【肌色】白【髪色】麻【瞳色】金
【スリーサイズ】ぺったん
【外見・容姿】藍染めのマントと唾の広い帽子、眼帯を纏った少女魔術師。戦闘時にはマントから鷹の翼を展開し杖槍を持つ。マントの下は現代では学生服だが、他の時代などではhangerock(北欧のエプロン風ドレス)を着ていることが多い。
【地域】北欧
【年代】不明(少なくともAD1世紀以前-AD1100年頃までの記録あり。神話体系はBC1000年からAD1世紀までには成立していたと見られる)
【属性】秩序・中庸
【天地人属性】天
【その他属性】人型・魔術師・魔女・愛する者(ブリュンヒルデ)・性別判定特殊(対精神:男性扱い、対肉体:女性扱い、対精神か肉体か不明なもの:基本的には無効)
【ステータス】筋力:D 耐久:E 敏捷:B+(鷹の衣が使えない状況ではCまで低下) 魔力:A++ 幸運:B- 宝具:EX

【クラス別スキル】

陣地作成:_

聖杯戦争において陣地を設営する気がない。一応、Bランクの"野営地"や"酋長舎"(ロングハウス)などを設営可能だが、拒否する。
「儂、いくさしに来たわけじゃないしな。穴熊なんぞやってられぬ」

道具作成:_→大神の蔵:EX

聖杯戦争において道具を作成する気がない。
宝具級の物品も含む所持品を駆使する。詳細はItemsの項目を参照。
また、物品にルーンを刻印することでエンチャントのように強化が可能。
「今更新作創るのも面倒であるし、ここはありものでやりくりしようぞ」

対魔力(反射):A+++

「六番目を儂は知っている。もし何者かがルーンを刻んだ木片で儂を害しようとしたならば、その者はただ自らを滅ぼすことになるだけだろう」*1
原初のルーンの六。呪文返し、呪詛返し。ルーンの父であるキャスターは対魔力のルーンを無詠唱無動作かつ同時に九つまで同時起動して重ね掛けできる。
ランク相応に魔術ダメージを減少、特殊効果をレジストする。現代の魔術で傷付けることは極めて困難。神代の魔術に対しても高い抵抗力を示す。
判定結果によっては敵対的な魔術、呪術をそのまま術者に跳ね返すこともある。令呪の使い方が迂闊だと、マスターが逆に傀儡になることもあり得る。

【保有スキル】

霧氷の血:A+

「原初の巨人はどうやって生きていたんだ?」
「アウドムラと呼ばれる牛の母乳だ。彼女は4本の支流を噴出させ、ユミルに栄養を与えていた」
「ならばその牛はどこから栄養を得ていた?」
「"塩水"の氷塊だ。彼女は原初の海の氷塊を舐めていたのだ。やがて1日経つと氷塊からは髪が現れた。2日目の夕暮れには頭部が現れた。3日目にはブーリが顕現した。彼は偉大で、強大であった」
*2
原初の氷塊が神霊化した存在であるブーリ(またはその単為生殖の息子ボル)と、霧氷の巨人フリームスルスベストラの血を引くキャスターは強力な氷の性質を帯びている。
「魔力放出(霧氷)」と「属性耐性(霧氷)」の複合スキル。
霧氷の魔力を魔術に上乗せすることで魔術のランクアップ、凍結効果、減速効果の付与が可能。
氷系・炎系・雷系属性のダメージ及び炎上、感電、凍結、時間凍結系特殊効果に対して強力な耐性を持つ。

不死殺し(智):A

「槍では歯が立たぬ。剣も刃も、ヨーナクルの息子達には通用しないのだから。彼等は石をもって討つがいい」*3
知恵の力によって無敵系──無効・無敵・不死・極端なダメージ軽減・極端な再生・複数回復活──の効果を突破することができる。
この突破効果は助言によって他者に一時的に付与することも可能。
ただ単に物理的に強靭な装甲や、精神的な強さによって培われた心身の強靭性に対しての影響は低いが、神性や幻想種、魔術、天運などの超常の力に由来する無敵性はほぼ無力化する。
A+ランクを超える無敵性は無力化できないが、知力判定に成功すれば打ち破るための方法は知ることができる。
悪竜の血鎧アーマー・オブ・ファヴニールの真の所持者であった悪竜現象ファヴニールはオーディンの助言によって一撃でシグルドに殺され、グズルーンのまじないにより武器耐性と不死性を得ていた"ヨーナクルの息子達"もまた、オーディンの助言を受けた名も無き兵達の投石によって殺された。

運命変転:B++

「教えてくれファヴニール! 賢きお前なら知っているはずだ。ノルンとは何者だ? 人々を助けるものか? そしてその赤子はその母親から産まれてくるものなのか?」━━━シグルド
「非常に多様な出生をするため、ノルンは共通の親族を持たない。幾人かは神々エーシルの、幾人かは妖精アールヴの、そして幾人かは小人ドヴァリンの娘達でもある」━━━ファヴニール
*4
ノルニル・エフェクト。
北欧において、あらゆる種族の女性が生まれつき持つ可能性があると伝えられる、運命に干渉する特性。特に強力な力を持っている者はノルンと呼ばれる。
オーディンは男性でありながら例外的にノルンの力を持っているとされている。
1遭遇に3回まで、任意の判定を振り直しさせるか、クリティカルとファンブルを反転させることができる。
敵の出目が高い時、自身の出目が低い時などに使おう。
また、このスキルを持つものは運命を捻じ曲げる力を持つために"因果"、"因果逆転"、"物語の法則"、"運命力"などを利用した干渉に対するセービングスロー(ST判定)に大きなボーナスを得る。


宝具により隠蔽されたスキル


【宝具】

仮面を被る者グリームニル』Grímnir

ランク:EX 種別:対神宝具 レンジ:_ 最大捕捉:自身
「儂の名は仮面グリム。儂の名は旅路に疲れし者/放浪者ガングレリ軍勢の指揮官ヘリャン兜を運ぶ者ヒャルムベリ、(中略)儂は人界に姿を現してから、いまだかつて単一の名前で呼ばれたことはない。ここゲイルロズの館では儂は仮面を被る者グリームニルと呼ばれている。アースムンドは儂を去勢された者ィヤールクとして知っている。そりを引く時は竜骨の支配者クィアラルと、(中略)酔っているなゲイルロズ。しこたま飲んでしまったようだ。(中略)もはや女守護霊ディーシルもお前を見放したようだ。オーディンを見よ! 他ならぬこの儂を! 儂はオーディンだ。恐ろしき者ユッグと呼ばれることもある。時に人々は儂を轟雷スンドと(中略)そしてこれら全ては儂を意味する。これらの名は全て他でもない儂のことだ」*9
自己封印・変装宝具。
自己の力を封印し、完全に覆い隠すことにより世界をも騙し、その存在を誤認させる。
オーディンはこの能力によって、神代の終わった1000年代以降の欧州においても人間として姿を現すことができ、また息子トールに対しても他人のふりをしたまま罵ることができた。
封印度合いは流動的に変化させることもでき、魔術を完全に封印すれば一般人に、サーヴァントとしての戦闘力を封印すれば魔術師、マスターに成り済ますこともできる。
ただしこれ自体が宝具であるため、非サーヴァントへの変装は完璧なものではない。高ランクの気配感知や、サーヴァント探知能力でサーヴァントであることを看破することは可能。
ちなみに英訳を経由した訳語の関係で仮面となっているが、古代北欧の原義的にはフードで顔を隠すといった意味合いのほうが近い。
キャスターはこの宝具によって通常のサーヴァントとしての現界を成し得ている。

大神宣言・揺り動かすものフィムブルテュールカッラ・グングニル』Fimbultýr kalla Gungnir

ランク:_ 種別:対戦端■■ レンジ:5-99(投) 1-4(直接) 最大捕捉:?
「オーディンは人々の群れの頭上へと槍を飛ばした。それが世界で最初の戦争であった」*10
これは宝具の真名ではなく、宝具に付随する特殊効果───例えばかの円卓の盾が持つ次元歪曲スキル"時に煙る白亜の壁"や、かのコルキスの魔女の金毛の羊皮が持つ癒し効果のようなものである。
戦闘開始時、通常の戦闘ラウンドが始まる直前に追加行動を得て槍を投げることができる。
命中に関係なく、槍を投げられた対象にとって相対している敵対的勢力全体に士気、運命力、幸運判定ボーナスが付与される。
これは厳密にはグングニルの持つ特殊能力ではなく、"オーディンの投げた槍"であれば無銘の槍であろうと自動的に発動する"自然現象"である。
宝具『仮面を被る者』によって真名を隠蔽している間はこの現象は発生しないため、一般的な聖杯戦争では基本的に使用されない。

ちなみに、突き穿つ死翔の槍のオリジナルとされる追尾能力も槍のものではなく、使い手が持つノルンとしての運命変転スキルと原初のルーンを組み合わせた小技である。
槍としての"グングニル"が持つ固有の能力は、手放しても瞬間移動で手元に戻せること、ただそれだけであり、杖──魔術の焦点具──として使う時に真の力を発揮する。

大神宣言・恐ろしき者の馬フィムブルテュールカッラ・ユグドラシル』Fimbultýr kalla Yggdrasill

ランク:EX 種別:大神宝具 レンジ:_ 最大捕捉:_
「儂は覚えている。風の吹き荒ぶ樹に、吊られて過ごした九夜を。自らを槍で貫き、儂はオーディンを───儂自身を儂に捧げた。その根の奥深くに何が潜んでいるのか、誰にも知られることのない樹の上で。……角杯もローフ*11も、儂を至福で満たすことは無かった。そして地の奥深くへと落ち、儂は下を見た。儂はルーンを掴みとった。儂は産声をあげた」*12
北欧宇宙観において世界定礎とされる、世界樹の最も有名な呼称"ユグドラシル"とは、"ユッグ*13の馬"を意味する。
"馬"とはオーディンが自ら生命を捧げた"処刑台"のケニングであるとともに、世界樹の一端を自身の杖槍として制御下においたことを指している。
儀式杖としての真名解放は何らかの魔術と合わせて使用し、その魔術の出力を増大させる効果。
これ単体では何も起こらず、次項のように魔術とワンセットになったものが実際の宣言となる。
敵が本気の戦いを希望してこない限り、通常の聖杯戦争では真名解放しない。グランドオーダー案件などでは普通にぶっぱなす。

北欧宇宙観における世界樹の枝とはつまり"世界の最果てにて輝く柱"のことであり、この杖槍はロンゴミニアドのオリジナル、あるいは兄弟機に該当する。

大神宣言・嵐の夜フィムブルテュールカッラ・ユグドラシル・ヴィズリル』Fimbultýr kalla Yggdrasill Viðrir

ランク:A++ 種別:大神宝具 レンジ:3-99 最大捕捉:暴風圏内のもの全て
「戦はオーディンの嵐と呼ばれる。ヴィーガ・グルームはこう歌っている。"俺がこの地で首長のようになる以前、最初からここはヴィズリルの杖に囲まれていた。ヴィズリルの剣杖の群れに"と」*14
オーディンの名のひとつ、"嵐"を魔術として杖槍で増幅して解放する。
真エーテルの嵐により、広範囲にダメージを与える。
オーラヴ・トリュグヴァッソンのサガによれば、オーディンの嵐は紀元後千年代においても頻繁に吹き荒れ、嵐の中では神代の如く船が飛ぶことすらあったという。
また、近代において類似した現象は嵐の夜ワイルドハントとして知られている。
……かの騎士王が用いるロンゴミニアドに嵐の力が封じ込まれているのは、オーディンが槍を使って自害した際にオーディンの持つ嵐の因子も流入したためである。

「オーディン。風の神として知られる彼は、普段は8本足の馬スレイプニルに乗っている。最も古い北方のリドルでは慣習的に次のように表現される。"駆け抜ける二身で一つのものは誰だ? 3つの目、10本の足、そして1つの尻尾を持つ。彼らは国々を旅して巡る" 死者の魂が嵐の翼の上に漂っていると考えられたために、オーディンは全ての肉体無き魂たちの指導者として崇拝されることになった。この概念は、最も一般的にはワイルドハントの者ワイルドハンツマンとして知られている。人々は風の鳴動と轟音を聞くと、騎馬の鼻息と猟犬の吠え声を聞き、通り過ぎる彼と彼が引き連れる行列を幻視して、迷信深き者達は恐怖に泣き叫んだ。ワイルドハントの通過は、ヴォータンの狩猟、怒濤の軍勢レイジングホスト、ガブリエルの猟犬達、神界の騎手アスガルドレイアといった名でも知られ、疾病や戦争などの前触れを表す凶兆とも言われていた」━━━ヘレーン・アドライン・ガーバー『北方諸国の神話』(1895)より*15


【Weapon】

杖槍『大神宣言グングニル・ユグドラシル

魔術を支援する儀式杖にして、本人の験力の象徴である槍。詳細は宝具項目にて。
割と頻繁に人間に貸し出される。

『シグルドリーヴァの歌』によると穂先にはルーンが刻まれ、ワーグナーのオペラ『ニーベルングの指輪』などではオーディンがユグドラシルの枝を折って造ったとされる。また『詩語法』ではドヴェルグによって造られた、投げても手元に戻る槍グングニルがオーディンに渡されたとも、それ以前にヴァン神族に向けて槍を投げたともある。

ちなみに北欧におけるトネリコは樹木・木材全般の代名詞としても使われる不確定樹木。ユグドラシルそのものもしばしばトネリコと呼ばれる。

呪印ルーン

ルーンの印を刻むことで神秘を発現する、詠唱を必要としない魔術。
武具などに刻印することでエンチャント効果を付与することもできる。
現代魔術とは特性が大きく異なるため、同ランクの魔術とは得手不得手によりできることできないことに差がある。
原初のルーンについては後述。

呪歌ガルドル

ルーンと双璧を成す古代北欧の主要魔術。
詠唱とは似て非なる、詩歌によって神秘を操る魔術。
言葉と言葉を組み合わせる詩歌の技術は、ルーンの組み合わせのセンスとも密接な関わりがあり、同時に学ぶことが望ましい。
現代の西洋魔術と違い、詠唱の長さと魔術効果ランクは比例しない。言葉と言葉、あるいは動作や文字、状況などの組み合わせ、詩吟のセンスなどにより、例えば1語のみで現代魔術のテンカウント相当の効果を生み出すこともあれば、百語を費やしてシングルアクション相当の効果しか発揮しないこともある。
オーディンの幾多の名前はそれ自体が強力な呪言でもあり、北欧の詩人魔術師(スカルド)にとってオーディンの名前をどれだけ知っているかは実力の指標ともなっていた。

巫術セイズ

北欧において魔女や巫女の使う魔術。
シャーマンのように精神を高揚させ憑依状態となる巫術的系統と、儀式によって対象を呪う呪術的系統の二つを主軸とする。
ガルドルとルーンとは逆に、戦士や男性が使用することは恥とされるが、魔術の父オーディンは当然のように例外扱い。
オーディンはヴァン神族のグルヴェイグもしくはフレイヤにセイズを学んだとされる。
天候変化や変身術、呪的治療などもセイズに含まれる。

【Items】

道具作成の代わりに用いる便利アイテム。

格納


【解説】

真名判明前


ガグンラーズ───〈勝利の導き手〉を意味するこの名は、賢者ヴァフスルードニルの館の知恵比べにて通りすがりの旅人として名乗ったオーディンの別名である。
『ロカセナ』によるとオーディンはサムセー島で魔女の姿をとって暗躍していた。キャスターとしては幅広い魔術を使える女性形態のほうが適しているだろう。

『巫女の予言』やスノリ著『ギュルヴィたぶらかし』等では原初の霜深き神霊ユミルの生きていた創世の時代に生まれ世界を再構築したとされるが、スノリ著『ユングリンガサガ』の異説では地上で人間として生まれた後に死んでから天上に昇り神になったともされる。
また、サガ群の本編において本人が頻繁に登場し、実在を信じられていた英雄とも絡む、例外的な神格でもある。
特に『オーラヴ・トリュグヴァッソンのサガ』はキリスト教徒側の視点で書かれた内容にも関わらず、神出鬼没の神としてのオーディンの実在が前提のように書かれている。(サタン的役割と言ってしまえばそれまでだが)

民間伝承においては妖精や死霊の行列ワイルドハントを率いるリーダーとされ、地域によっては現代でも出没すると信じられている。
───神代の終わった紀元後千年代の欧州における、唯一地上に残った神霊である。

絆Lv.2で開放


絆Lv.3で開放


絆Lv.4で開放


絆Lv.5で開放


■■■■■■■をクリアすると解放


【人物・性格】

唯我独尊かつ中二病な言動を行いつつ、愉しみのための策謀を巡らす酔狂人。
聖杯戦争をゲームに見立てて盛り上げようとする。勝ち残る気は無い。
その方針から多くの場合マスターに契約を破棄されてフリーになっている。現界期間制限付きのお邪魔キャラ。

拠点に立て篭もる陣営には対陣破壊ルーンで拠点機能にダメージを与え、11回復活などの無敵系サーヴァントがいる場合はそれ以外の陣営に不死殺しで突破能力を付与し、停滞した戦場には宝具『悪を為す者の砥石』で同士討ちを加速させようとする。
このように不真面目一辺倒に見えるが、抑止力の力が必要とされる事態などでは割と真面目に危機の阻止に動く。

イメージカラー:ウォード(藍染め)*30
特技:扇動、旅、自炊、靴作り
好きなもの:テーブルゲーム、黄金、麦酒(エール、ビール)、蜜酒(ミード)、詩吟、英雄、高貴な女性、フリッグ
嫌いなもの:そぶりだけ見せかけて実際にはやらせてくれない美女(ビリングの娘)、泥酔
天敵:オーディン自身の傲慢、ロキの憤怒、フェンリルの暴食、ヘルの執念、そしてスルトの振るう『枝の破滅スヴィガライ』───またの名を『焼却剪定・神理終極スヴィガライ・ラグナロクル
願い:聖杯戦争を盛り上げて英雄の殺し合いを見物したい
【一人称】儂 【二人称】お前、貴様 【三人称】あやつ、あれ、やつ

台詞

FGO風セリフ


その他台詞


【因縁キャラ】

自身

グリームニル
「やはり男の儂は格好良いな! 特にこの角度から見る髭など惚れ惚れするぞ」
別側面、あるいは別世界軸の自分。ガグンラーズと比べて比較的真面目な側面で現界しているようなので、多分会ったらかなり嫌がられる気がする。
グリムリーパー
「んー……んん!? むむむ?」
自身(あるいは別世界軸の自身)から独立した分霊。もし敵同士として対峙したなら避けては通れぬ相手。互いに手の内を知り尽くしているため、どちらが先に相手の正体に気付くかが重要な決め手となるだろう。
フラフナグズ
分霊のひとつ。
「カラスの儂か。自分自身を相手に油断を誘おうとしても無駄なことだ。儂の言葉の信用ならなさは儂自身がよく知っている」
ヴァルティーヴァ
姪と分霊が悪魔合体した姿。
「ロキやフェンリス坊めをからかってやるがよい」
ヒルドルブ
狂戦士たちの父としての姿。
クィアラル〔水着サンタ〕
サンタのモデルとしての姿。
泥新宿のアサシン(6)
「むっ! 格好良すぎる! 儂もあれやりたい!」
ヘリアル
「機械軍団か……。ロマンだのう。羨ましいのう」
ゲイロルニル
「酔狂よのう。それもまた悪くない」
ヘルファズル
「ふむ? そんな顔をして儂のようなおなごの在り方が羨ましいとな? お前もなってみるかね」


戦乙女

スクルド
3人の強力な巨人スルスの少女の1人であり、人々の運命に関わる強力なノルンであり、オーディンに仕えるワルキューレの中では先頭に立つと言われる存在。
『巫女の予言』だけでも属性てんこもりすぎるよくわからない女神。
外様ながら強力な力を持ち助言する、アース神族にとってオブザーバー的な立場にあるようだ。
ワルキューレとして行動していない時はウルズ、ベルザンディらと3人で登場することが多い。
スクルド(盾)
「宇宙から来た巨人……さながら天の巨人ヒミンスルスといったところか。……いや、ただの独り言だ。ところでぷにぷにとやらはいつになったら終わるのだ」
サングリズル
オーディンに仕えるワルキューレの1人。
「儂のもとで学んでおきながらその短慮はいかんなサングリズル。戦士にも勉強は必要だぞ」
スケッギョルド
オーディンに仕えるワルキューレの1人。
「斧ならヴァイキング時代の遺跡に行けば山ほどあるぞ。神話に語られないのはそれだけ彼らにとって斧が身近な存在であったことの証左だ。誇るがいい」
ヘルフィヨトル
オーディンに仕えるワルキューレの1人。
「奇遇だなヘルフィヨトル。せっかくだから一杯……いや、会食でもどうだ? 儂の酒と肉でよければご馳走してやろう。遠慮するな。今は儂も一介の従者サーヴァントに過ぎぬ。話ならいくらでも聞いてやる。偽りには偽りで、本音には本音で応えよう」


ソグン
オーディンに仕えるワルキューレの1人。
「素直に驚いてくれて嬉しいぞソグン。昔からずっとこんなことばかりやっていたからな……オーラヴの時代にはまたお前かという感じで、恐れられこそすれ驚かれることは無くなって久しいな」
ヒルドル
オーディンに仕えるワルキューレの1人。
「お仕事ご苦労。しかしサーヴァントの儂に報告せんでも直に本体の方に送れんのか? 無理? まあ確かに儂に話せば本体に伝わるからよいか……。おっと、マニュアル外の事案が起こったら自己判断で行動せずスクルドか儂に相談するようにせよ。よいな?」
エルルーン
オーディンに仕えるワルキューレの1人。
「今のお前を表すような民謡がアイスランドにあったな、"おお、我が愛しきボトルよオー・ミーン・フラスカン・フリーザ"(Ó Mín Flaskan Fríða)だったか。確かに酒は北欧では重要なものだが、泥酔はいかんと儂はフィアラルの館で身をもって思い知った。儂だけではない。フレイの倅のフィヨルニルも泥酔で酒樽に落ちて溺死したのだぞ。……そんな死に方ができれば本望だと? まったく度し難い。酒造の神エーギルも嘆くことだろう。……いや、やつの場合一緒に悪ノリしかねんか」
レギンレイヴ
「娘、お前エインヘリアルかディーシルの類か? ヴァルハラへの帰り道が分からなくなったのか? うん? 戦乙女? レギンレイヴ? 親父殿? いや本物のレギンレイヴも儂の実の娘というわけではないのだが……。まあ落ち着け、セーフリームニルの肉でも食っていろ」
レギンレイヴ(罪)
「……神々の娘レギンレイヴよ。お前にとっての儂はどうだったのか知らないが、この儂はお前と似たような存在だ。ワイルドハントは、いつでもお前を見守っているだろう。そしてお前から呼ばれたなら、いつでも応えることだろう」
ランドグリーズ
「そうだろうそうだろう。好きなだけ撫でるがよい。……興味がありそうだから教えてやろう。ブリュンヒルデから聞いているやもしれんが、太陽の前には儂がルーンを刻んだ盾"冷却スヴァリン"が立っている。儂の手掛けた盾の中では最高傑作と言っていいだろう。ただし壊したら陸も海も燃えるからやめておくことだ」
ラーズグリーズ
「増えてる? むしろ全盛期の儂に比べたら減って……いやなんでもない。まあしかしアレだな、これだけいてもお前の相談に乗れそうなのは儂かグリームニルくらいか?」
スルーズル
「ふふ、トールの箱入り娘か。わんぱくに育ったものよ」
ヘルヴォル・アルヴィト
「文武両道にして質実剛健。実に優秀よな。いつも助かる」
エイル
「よき癒し手だ。人の顔を見るとすぐ診断しようとするのはどうかと思うが、熱心さのあらわれよな」
ロタ(青楊(偽))
「ほほう、よい勇士を見つけたものだな。やるではないか」
ゲイロムル
「少年趣味か。まあ勇士が若い頃から導くのも大事なことだが、勢い余って未熟なうちに刈り取っていないだろうな?」
ミスト
「これは御することができるものか、思うままにさせるべきか。さて、みものだな」
グリムゲルデ(オルタ)
「舞台か。詩吟や演技になら自信があるぞ。そういう発声には馴染みがないので、ひとつ教えてもらうとするか」
オルトリンデ
「どうも召喚された連中は一癖も二癖もあるやつばかりでな。お前の安定感を見ると安心するな」
シュベルトライテ
「若々しく、才気に溢れる逸材よな。座に刻まれし英雄の影ならざればこそ、成長も期待できようもの」
ブリュンヒルデ(原作)
オーディンに仕えるワルキューレの1人。
サーヴァントとしては特攻もとられて非常に相性が悪い。
ちなみに原典でブリュンヒルデとかブリュンヒルドルとかの名前で登場する伝承では基本的にワルキューレではなく人間の女戦士(スキャルドメール/シールドメイデン/盾の乙女)という設定であり、ワルキューレとして登場する描写は『シグルドリーヴァの歌』のシグルドリーヴァの名前を置き換えて引用したもの。(和訳ではワルキューレもスキャルドメールもどちらも戦乙女と訳される)
また、オーディンの血を引く長姉というのは作家ワーグナーの独自設定。神話ではオーディンとワルキューレの間に血縁関係は示唆されない。
スルーズ、ヒルド、オルトリンデ(原作)
オーディンが作ったというワルキューレ。なお原典ではワルキューレはオーディンの娘ではなく、その素性は巨人、女神、元人間、ノルン、フィルギヤ……と幅広い者で構成されている。
「戦乙女を製造しようだなどと、馬鹿げた試みだ。うちのように志願・スカウト制にしたほうがよほど無駄がないというもの。元から強い魂のほうが底力と意地がある」

息子

バルドル(ラテン語表記:バルデルス)
光の神。オーディンとフリッグの息子とされる。
死亡パターンは語り手によって差異があるが、いずれも兄弟のヘズに殺される点は共通している。あらゆるものに傷付けられない肉体を持っていたが、若草の枝?ミストルテインと呼ばれる射撃(投擲?)武器*43か、ミーミング(ミーミル)の剣で致命傷を受けたとされる。*44
『巫女の予言』によれば滅びの時代を越えた後に復活し新世代の神々の長になるらしい。*45
オーディンはバルドルの遺体を弔う際に黄金の腕輪を捧げ、耳元に何事かささやいたという。
バルデルス
サーヴァントとして現界した最愛の息子。
「よりにもよってその船を持ってくるとはな。冥府のお前への手向けに、お前の身体とともに火葬した船を。……さて、二度も焼かせてくれるなよ?」
ヘズ(ホズ、ホズル、Höðr)(ラテン語表記:ホテルス Hotherus)
盲目の神。名前は"戦"を意味する。オーディンとフリッグ*46の息子とされる。『デンマーク人の事績』や『Chronicon Lethrense』などではホテルHother(ホテルスHotherus)はヘズブロット*47の息子とされる。
盲目とは言うが、オーディンにも盲目を意味する名前が多数存在するため、父の片目の特徴と、それが象徴する知恵者の側面を引き継いだともとれる。
『巫女の予言』では兄弟のバルドルを夜に射殺したとされ、スノリの『ギュルヴィたぶらかし』では盲目を利用されてロキに騙されて兄弟のバルドルを射殺したとされ、スノリと同時代の人物サクソの『デンマーク人の事績』では共通の女性に恋慕し、ミーミルから奪った剣を使い戦争でバルドルを殺した(このテキストでは兄弟かどうかは触れられない)とされる。
ホテルス
「辛気臭い顔をしおって……。お前はもう精算を済ませたのだから胸を張っておけ。儂は二度も仇討ちをするつもりはないからな。ゲーム以外でお前と戦うつもりはないぞ。なんなら無抵抗で殺されてやろう」
トール
義理の息子の1人。オーディンとヨルズの間に生まれた実子とも。
おそらく本来は別の独立した信仰からオーディン傘下に加入した存在。農民人気ナンバーワンらしい。
オーディンはトールをアース神族最強の戦力として重宝しているが、反面その脳筋っぷりと民衆人気の高さを疎んじているらしく、"灰色髭"という老人に変装してトールを正面から罵ったり、ギュルヴィという旅人からの質問に対してトールの恥ずかしい話傑作選を何編か語ったりしている。
「うむ、特にこの絵は傑作だな」
テュール
義理の息子の1人。おそらく本来は別の独立した信仰からオーディン傘下に加入した存在。現存する物語では出番が少ないが、信仰の人気は高かった。
その名は"力"や"神"などを意味し、戦争と調停の両面を司っていたが、スノリによるとフェンリルに右手を喰われてから調停の役目を果たせなくなったらしい。現存する神話では武器は不明だが、剣のイメージと強く結び付いていた痕跡がある。
『ヒュミルの歌』によると父は海の巨人、賢者ヒュミル。母は美しい巨人。祖母は900の頭部を持つ。ヒュミルは巨大な鍋を所持する。
ゼウスやデウスの起源とされるDyeusまたはインドの神Dyaus Pitaと共通の語源から来ている天空の主神だとか言われることもあるようだが、この手のインド・ヨーロッパ語族というくくりを根拠にした話には疑わしいものが多いため注意。
ヘイムダル
義理の息子の1人。九人の母から産まれ、不眠不休で見張り番をしているイケメン。
人間の別名が"ヘイムダルの子"であったり、人類に身分制度を与えたりと、この神も本来は独自信仰だった気配をプンプンさせているが、決め手には欠けるようだ。
ちなみにトールを女装させようと言い出したのはこの神。女装させれば解決すると千里眼で視たらしい。おそらくヘイムダル本人は至極真面目で、ふざけているつもりはない。
ブラギ
詩神。義理の息子の1人。オーディンと巨人グンレズの間に生まれた実子とも。
オーディンの別名の1つともされるが、名前と権能の一部をオーディンから譲り受けたのかもしれない。
『詩語法』の作中では作者スノリの代弁者のような役割を持ち、エーギルと酒を飲みながら詩の歴史や技術について講釈する。
ヴィーザル
オーディンとグリーズの間に生まれた子供。フェンリルを殺すと予言されている。とても無口。靴が硬い。
ヴァーリ
オーディンとリンドの息子。ヘズへの仇討ちを行うと予言されたために産み出され、ヘズを殺す。
『巫女の予言』によると腸の手枷ヘーフトール・セールムン(höft ór þörmum)なる拘束具を持ち、ヘズ以外のバルドル殺害の関係者は捕縛したとされる。
ユングヴィ・フレイ
別の神族から人質交換でアース神族に加入した、ヴァン神族の神。
おそらく本来は別の独立した神話体系でフレイヤと共に主神を務めていた存在。スウェーデンでは主神として信仰されていたようだ。
ヴァン神族のニョルズの息子だが、『名の諳誦』ではオーディンの息子の1人として数えられるので、義理の息子としてアース神族入りしたのかもしれない。
ユングリング王家の開祖ともされる。
シギ Sigi
シグルドの祖先。シグルドの祖父ヴォルスングの祖父とされる。
セーミング Sæmingr
オーディンとスカジの息子とされる。ハーコン・シグルザルソンの祖先。
ヒルドルブ
助言の島に住む賢者。『名の諳誦』ではオーディンの息子の1人として数えられる。
ヘルモーズ
ヘルの領域にバルドル返還の交渉に向かった部下。
多くの写本でオーディンの息子と呼ばれるが、『王の写本』ではオーディンのボーイ(sveinn Óðins)……つまり召使いとなっており、どうも息子ではなさそうだ。実際、物語中の役割はスキールニルに酷似している。
『名の諳誦』ではオーディンの息子の1人としてカウントされる。
メイリ Meili
トールの兄弟ということ以外不明。『名の諳誦』ではオーディンの息子の1人として数えられる。
ネプ Nepr
ナンナ*48の父ということ以外不明。『名の諳誦』ではオーディンの息子の1人として数えられる。
アーリ(オネラ) Áli(Onela)
詳細不明。『名の諳誦』ではオーディンの息子の1人として数えられる。古英詩『ベオウルフ』に登場するスウェーデン王家の人物と同名らしい。
スキョールズル(スキョルド) Skjöldr
『ユングリンガサガ』ではオーディンの息子でゲフィオンの夫。伝説上の初期デンマーク王の1人らしい。
『デンマーク人の事績』ではダン王の息子であったり、出典によって父親はバラバラなようだ。
イートレクショーズ(イトレクショド) Ítreksjóð
詳細不明。『名の諳誦』でオーディンの息子の1人として数えられる。
シグルラーミ Sigrlami
『ヘルヴォルとヘイズレク王のサガ』の写本のバージョンによって登場したりしなかったりする人物。H写本とU写本ではスウァフルラーメ(ティルフィングを造らせた王)の父親でオーディンの息子。R写本では、スウァフルラーメにあたるはずの人物がシグルラーミと呼ばれ、親については言及されない。
ガウト Gaut
『ボーシとヘラルドのサガ』にてエステルイェートランド王フリングの父でオーディンの息子とされる人物。その名前はゴート族やオーディンの別名"ガウト"(Gautr)、そして伝説上の国ガウトランドなどと関わりがあるかもしれない。
ベルデグ Beldeg
スノリの『散文のエッダ』(Prose Edda) の『序文』部分にてオーディンの息子の1人、そしてバルドルの別名として説明される人物。ヴェストファーレンの建国者でフランクランドの起源となったという。
ただしこの『序文』部分は、当時の歴史観に整合するように無理矢理北欧神話の内容を解釈している箇所で、「神話の元ネタとなった歴史的出来事はこういうものだったのではないか」というような推測が大部分を占める。どこまでがスノリが拾ってきた話でどこからがスノリの解釈かも曖昧で、アース神族はトロイア民族の生き残りであるとか、アース神族とはアジア人という意味であるとか、全体的にかなり与太話臭が強い。
ヴェグダグ/ウェクタ Vegdagr/Wægdæg/Wecta
『アングロサクソン年代記』などによるとサクソンの古い王。スノリの『散文のエッダ』(Prose Edda) の『序文』では上記ベルデグと並ぶオーディンの息子の1人とされる。


元ネタ関係

フリッグ
妻。仲良し故によく喧嘩もする。強力なノルンでもある。地母神ホルダとしても知られ、一説には聖母マリア信仰やクリスマスの祭祀の起源ともされる、現代でも中央ヨーロッパの広い範囲で別名で信仰されている女神。
フラウ・ゴード
"オーディンの妻"を意味する、ワイルドハントに付き添う女性。おそらくフリッグ。別名が5種ほどあり、それぞれ合わせると中央ヨーロッパの広い範囲をカバーする。*49
願いを叶えるという逸話があり、あるいは願望機の──
ヴィリとヴェー
初期に同行していた兄弟。ろくにエピソードもないままいつのまにかメンバー交代してロキやヘーニルなどに取って代わられる。
多分オーディンが世界樹に吊られて自害して長期間不在の時に滅んだのではないか。*50
ロキ(1)(2)
義兄弟の1人。オーディンとはかなり仲の良い悪友で女神達からも人気があったようだが、『ロカセナ』によると口が悪すぎて幽閉された。『巫女の予言』ではバルドル殺害に関与していたためにヴァーリに捕縛されたとも読める。
信仰された形跡がないとする研究者もいるが、ロカタトゥル*51という民話では子供を助けるなどしており、平民からは人気があったのかもしれない。
ローズル=ロキ説を採るなら、オーディン、ヘーニルと共同で人類を創造し、ロキは活力と美を与えたとされる。
よく巨人との血縁を強調して解説されるが、実際のところはオーディンも含めて大半の神族は巨人との血縁があるので特別なことではなかったりする。神話の作中でも特に掘り下げられる点ではない。
予言ではヘイムダルと相討ちするとされる。
フェンリル(術)
義兄弟ロキの息子。つまり甥にあたる。
アスガルドの黄金の草原で放し飼いにしてテュールに餌を与えさせるなど可愛がっていたが、あまりに大きく成長するので神々が怖がり、やむなく拘束具について助言したらスキールニルが用意してきたりして拘束された。(ちなみに殺害ではなく拘束で済ませたのは、スノリによると神々が神域を血で汚すのを問題視したため)
予言ではオーディンを喰らうとされる。
ガグンラーズは彼をフェンリス坊と呼んで可愛がるが、多分向こうからは嫌がられるような気がする。
ヘル
義兄弟ロキの娘。つまり姪にあたる。
下半分が生気がなく青白く、上半身は血色がよいという独特の風貌が神々に不気味がられたため、やむなくオーディンはヘルをニヴルヘイムに送り、病死者を管理する権能を分け与えて死者の領域の女王とした。
予言では死者の爪で造った巨大な船ナグルファルでスルトやロキを連れてくるとされる。
ヨルムンガンド(世界蛇ミドガルズオルム)
義兄弟ロキの息子。つまり甥にあたる。
神々が不気味がるし巨大化するのは見え見えだったのでやむなく人界の海に放し飼いにした。後にトールが釣り上げそうになったりする。
予言ではトールを喰らうとされる。
甥っ子ではあるが会話が通じるのか疑わしく思っているのでガグンラーズのスキンシップは控えめ。

ミーミル
知と水(と樹?)の神。それ以外の立ち位置などの要素はエピソードによって幅がある。
一般的にはオーディンの母方の親戚で、その泉あるいは生首の持つ予言の力は最終的にオーディンのものとなる。オーディンの息子ヘズからも剣とか鎧とかのアイテムを奪われるなどしているらしい。
光を滴らせるものヘイズドラウプニス財宝を開陳するものホッドロフニス、ホッドミーミル、ミーミングなどの名で呼ばれることがある。
ヘーニル
義兄弟の1人。見た目と言動だけ威厳があるが無能らしい。
オーディン、ロキと共同で人類を創造した際、人類に心を与えた。
スカジ
スリュムヘイムの女王で、スキーと冬の女神。巨人。『ユングリンガサガ』ではオーディン(人間時代)と結婚して子供を何人か産んだとされている。うち1人はセーミングという名前でノルウェーの王族の祖先となった。
父のスィアチを殺されて完全武装で仇討ちに来て賠償金としてバルドルを夫にすることを要求したが、オーディンに言葉巧みに騙されてニョルズ(フレイフレイヤ兄妹の父親)と結婚することになった。(もっとも、趣味が合わなくてすぐに別居することになる。ユングリンガサガではその後オーディンと再婚したともされる)
笑いのセンスがかなりアレで、ロキの金玉がヤギに引っ張られるのを見せられて大爆笑した。
スカンジナビアの地名と関わりがあるとも言われ、もしかしたらオーディン信仰が流布する以前のスカンジナビアでは主神のようなものだったのかもしれない。
グリーズ
オーディンの子供を産んだ女巨人の1人。ヴィーザルの母とされる。
『詩語法』や『トール讃歌』などで語られる物語では、丸腰のトールに鉄の籠手(ヤールングレイプル)と力帯(メギンギョルズ)と折れない杖"グリーザルヴォル(Gríðarvölr)"(グリーザルヴォルはトール讃歌の方には登場しない)*52を貸与して助力した。そんなものを持っている以上彼女自身も只者ではないと思われるが、現存する神話にはあまり情報はない。
ケニング表現において頻出し、例えばグリーズの乗騎ソータグリーザル(sóta Gríðar)、グリーズの馬グリーザルグラズ(Gríðar glað)は"狼"を意味する。グリーズの甘い喜びの風ブリーズル・グラウムヴィンドル・グリーザル(blíðr glaumvindr Gríðar)は"思考"を意味する。グリーズの兜グリーザルフョルニス(Gríðar fjǫrnis)は"斧"。
フレイヤ
別の神族から人質交換でアース神族に加入した、ヴァン神族の女神。
おそらく本来は別の独立した神話体系でフレイと共に主神を務めていた存在。ヴァン神族の重要神格なだけあってオーディンと役割被りが多く(戦争・魔術・王権・王統・死者管理・供儀・財宝など)、戦死者の分配などの話もある。
ヴァン神族は近親婚に抵抗がないという話もあり、おそらくフレイと結婚していたのではないかと推測される。アース神族に加入してからはオーズと結婚した。
オーディンにセイズ魔術を教えたともされる。
スキールニル
フレイの従者にして親友。
こちらのガグンラーズの設定ではスキールニルの設定と違い、ラグナロクルは"実現しなかった予言"であるため、認識に少し齟齬がある。
「フレイの従者か? 安らかに眠っていないと知ったらあやつも悲しむぞ。剣? あやつは友の墓に埋めた剣を取り返そうなどとは思わぬだろう。それはお前が持っているべきものだ。まあ、そう言って聞くような覚悟なら最初からここにはいないのだろうな。好きにするがいい」
グルヴェイグ
アース神族とヴァン神族の戦争のきっかけとなった魔女。結局これ以外のエピソードに登場しないため、フレイヤと同一人物であるとか、もしくはフレイヤ達ヴァン神族の長であるとか言われている。
エーギル
海の神。海の巨人。溺死者の管理者。酒造の神。鍋をいっぱい持っている。アース神族とは友好関係にあるらしく、よく合同で飲み会している。
九人の娘達は"波"の別名としても用いられる。
ノルウェーの一部では主神に近い立場にあったらしく、『ノルウェーはいかに住まわれしか』などでは兄弟の火の支配者ロギ、風の支配者カーリと世界を三つに分けて支配し、それぞれ王族の祖先となったとされる。
オレルス
ウルはトールの妻シフ(シヴ)の連れ子。オーディンにとっては義理の孫にあたる。
「ん? トールの息子……娘か。ちょうどお前の養父も来ているぞ。その姿ならバレんだろうし一緒に他人のふりをしながら笑いに行こうぞ」
シグルド
北欧最大の竜殺しの英雄。『ヴォルスンガサガ』ではシグルドの父の代から転機に度々オーディンが現れて介入する。
シグルドに対しては馬グラニの入手、及びファヴニール殺害方法の助言などで助けた。
ジークフリート(原作)、(槍)(弓)
Fateにおいてシグルドと同一起源の別人とされながら、ジークフリート名義の伝承には存在しないファヴニール殺しを行ったとされる英雄。別人なのか混ざってるのか結局はっきりしないのでオーディンとの関係も確定できない。
敬虔なキリスト教徒であるワーグナーのオペラの作中ではグングニルを破壊する。謝ってすまないさん。
シグムンド/ジークムント/シゲムンド
シグルドあるいはジークフリートの父。多分Fateではシグルドの父。オーディンが樹に刺した剣を引き抜き英雄として名を馳せた。
古英詩『ベオウルフ』では竜を殺した英雄とされる。
『ヴォルスンガサガ』などでは戦場でオーディンに遭遇し剣を振るが折れ、オーディンに失望されたことに絶望(北欧のオーディン信者の戦士にとっては、オーディンやワルキューレの槍で殺されてヴァルハラに迎えられることは最高の栄誉とされる。その資格がないと判断されたことにショックを受けたようだ)し、妻の胎内の息子に後を託して死ぬ。
グンヒルドが作詞したという『エイリーク血斧王の歌』では、シグムンドはヴァルハラでエイリークをお出迎えしている。
フンディング殺しのヘルギ
複数のサガで語られる北欧の大英雄。
シグルーン*53と結婚するが、シグルーンの弟ダグ・ヘグナソンにオーディンの槍で殺される。
死後オーディンにエインヘリアルの管理を頼まれる。
後にハディンギャルの君主ヘルギへと転生し、失われたサガ『Káruljóð』の主人公ともなったとされる。
ダグ・ヘグナソン(フンディング殺しのヘルギの歌 第2巻)
シグルーンの弟。オーディンを召喚し、槍を借りてヘルギを殺す。
北欧の神ダグ(Dagr)と同名だが特に関係ないようだ。
フォルカー
ハーゲンと互角の強さを持つ、ブルグントの楽師兼戦士。ディートリヒに討たれたという。
召喚された彼によるとフォルカーの名前が登場しない『ヴォルスンガ・サガ』は、彼が自身の痕跡を隠蔽して歌った物語を元にしているらしいが、その『ヴォルスンガ・サガ』は他のニーベルンゲン伝説群に比べてオーディンの出番が妙に多いという特徴もある。
「貴様、見ておるな!」
ディートリヒ・フォン・ベルン
「かの大英雄シズレクか。素晴らしい熱量だ。儂の炎をよく練り上げている。……しかし火は口から吐くと聞いていたのだが」
レイヴニルの炎の由来はオーディンがハディングに授けた飲料にあると言われる。
ファヴニール
オーディンはロキ、ヘーニルと散歩中、ファヴニールの弟のオッタルを(ロキが)殺害したためにフレイズマル一家に捕縛され、(ロキが)賠償金を呪われた黄金で支払った。
オーディンは後にシグルドにファヴニール殺害方法を助言した。
ニーズホッグ
死者の領域にて世界樹の根をかじっているとされるオルム。
『巫女の予言』の最後を締め括る謎の存在でもある。
予言によれば下層世界から闇と共に浮上し、翼に屍を纏って閃光を放ち光り輝いて新世代神々のバルドルらと最終決戦を始めそうな雰囲気を醸し出した所で巫女が予言を打ち切る。
イグドラシル
「儂の知るそれとは違うが、見事な樹だ。ただしこの樹は神霊のためでも精霊のためでもなく、他ならぬ人類のための樹なのだろう。儂のような非人類ではその価値を理解しきることはできぬ」
オーラヴ・トリュグヴァッソン
キリスト教化されたノルウェー王。オーディンは来客ゲストゥルと名乗って木材や肉などを差し入れした。
「せっかくいい肉を贈ったのに食わんかったのか? もったいない」
ハーコン・シグルザルソン
オーディンとスカジの息子セーミングの子孫だと伝承されているノルウェーの統治者。
ヘグニ
彼の宿命に間接的に関わっている。
「今は眠るがいいエインヘリアル。次の戦いまでな」
アンガンチュール
「ヘイズレクの後継者か。お前の父はなぞなぞが好きだったが、お前もやれる口か? いや、シューティング対決は勘弁してくれ。このポリゴンは目が痛くなる」
アルボイーノ
「フリッグのお気に入りの髭長族か。加護の調子はどうだ?」
ベルセルク
信者の戦士。
「我が加護を受けしベルセルクよ、血と闘争を捧げ続けるがいい。人類史が続く限り貴様の戦いも終わりはしない」
ロッドファーヴニル
「聞いているのかロッドファーヴニル! 聞けばお前のためになろう」
ゲイルロズ王
「聞いているのかゲイルロズ! 随分と酔っているようだな! 儂が誰かもわからぬほどに!」
アルテラ(原作)
「見覚えがあるな。ふたつの意味で。フン族の王としても、それ以外でも。まあ、どちらにせよ儂の関わることではないか」
ユミル
「粘土遊びには儂も若い頃夢中になったものだ」
チャイルド・ワインド
「儂の血を引く王族は数多いからな。 中にはこういうものもいるのだろう。元々はサガの物語であったようであるし」
ヒルダ
元ネタではアールヴヘイムの女王とされている。アールヴヘイムはオーディンが自分の氏族に迎え入れたヴァン神族のフレイの管轄とされ、そこの王族ということはフレイの血族であり、オーディンにとってはフレイを介した親戚となる。
彼女の場合は生まれは王族ではないが、それをいったらフレイだって血族ではないのでそこは別にどうでもいい。
イエス()()
1000年前後を中心に北欧への布教が活発化した宗教の開祖。
改宗は進んだものの、スノリやサクソの時代には伝統として共存両立させる方向に向かっていたことが伺える。
ちなみに北欧版新約聖書にあたる『ヘーリアント』などではイエスは救世主ヘーリアントと呼ばれるのだが、フギンとムニンの如く両肩に鳩がとまっていたり、十二使徒がイエスからルーンを学ぶ戦士になっていたり、他に訳語が見つからなかったのか天国がそのままヴァルハラになっていたりと、またオーディン様が変装してこられましたぞーな状態になっている。*54


オーディンの息子、子孫に関してはWikipediaにも項目があるので参照されたし。
また、Wikipediaの戦乙女一覧のほうは日本語版も充実している。


その他信者

グンヒルド
夫の死後、夫エイリークがヴァルハラに迎えられる『エイリーク血斧王の歌』を作詞した、あるいは作らせたとされる。
エイリーク・ブラッドアクス(原作)
妻によって、死後ヴァルハラに行くよう祈られた。
ベオウルフ(原作)
本来なら文化圏こそ同じものの信仰が明らかではない英雄だが、Fateではベルセルクであるとされる。──ベルセルクは基本的にオーディン信者であり、その眷属である。

ルーン関係?

蒼崎橙子(原作)
現代の西洋魔術において衰退したルーン魔術を再構築した。
彼女のルーン魔術は現代の魔術師用に最適化して再構築したものであり、古代北欧のオリジナルのそれとは多少差異がある。
バゼット・フラガ・マクレミッツ(原作)
フラガ家はアイルランドのルーンの大家。
冷静に考えたらアイルランドでルーンの大家ってかなりのパワーワードだが、気にしないようにしよう。
スカサハ(原作)
多分スカジからスリュムヘイムを引き継いだ末裔。もしかしたら子孫かもしれない。
型月世界においては彼女にルーン魔術を指南された戦士達がアイルランドに供給されたことによって、アイルランド方面にルーン魔術が広まったようだ。彼女の住まう影の国スカイは異界であるが、地理的にはスコットランド(ゲール)西岸のスカイ島(古代ではスカンジナビアからの移住者が多く住んでいたとされる)とも同一視されることもある。
クー・フーリン[術](原作)
「原初のルーンはそうやって豪快にまとめて吹き飛ばすためのものではないぞ」
マナナン・マク・リール
「マン島のか。飴はありがたく貰っておこう」

エミヤ(原作)
槍を見知っている守護者。
割と軽々しく人間たちに貸し出される槍なので、実は守護者業界で見る機会はそれなりに多い。
特にオーディンが仲介して世界と契約した北欧の名も無き守護者たちはこれをメインウェポンとする場合がある。
セラフィーネ・スカルズガルド
「戦乙女だと? 見覚えがないが……」

【原初のルーン】

オーディンがルーンを手に入れた際に身につけたと言われる18の秘術。型月世界においてスカサハがクーフーリンに伝授したもの。
以下は十八の原初のルーンの宝具風解説。名前はちゃんとしたものではなく仮のもの。一応クーフーリン(キャスター)の未使用宝具のネーミングに合わせて大神刻印としている。
主に『高き者の言葉』からの推察を交えた解説。

大神刻印・一フィムブルテュールルーニル・フィルスティ』Fimbultýr rúnir fyrsti

ランク:? 種別:対患ルーン レンジ:? 最大捕捉:?
「その歌を儂は知っている。それは王の妻達も人の子らも知らぬであろう。一番目は助けヒャルプと呼ばれ、悲しみと痛み、そして病から汝を救うだろう」*55
おそらく災禍避けとか精神治癒とかだと思われる。
困ったことがあったらまず周りに助けを呼びなさいという意味に読めなくもない。

大神刻印・二フィムブルテュールルーニル・アンナル』Fimbultýr rúnir annar

ランク:? 種別:対傷病ルーン レンジ:? 最大捕捉:?
「二番目を儂は知っている。癒し手læknirにならんとする者らには必要となろう」*56
おそらく薬草や応急処置などの知識、技術などを指していると思われるが、バイキングのヒーラーや医術については資料不足でよくわからない。
治癒のルーンとしては、シグルドリーヴァの伝授する"枝のルーン"が有名。

大神刻印・三フィムブルテュールルーニル・スリジ』Fimbultýr rúnir þriðji

ランク:? 種別:対攻ルーン レンジ:? 最大捕捉:?
「三番目を儂は知っている。敵の妨害を前にもし大きな助けが必要となったなら、儂は敵の刃を鈍くする。剣も杖も喰らいつけはしない」*57
おそらくデバフ的な秘術だと思われる。

大神刻印・四フィムブルテュールルーニル・フョルジ』Fimbultýr rúnir fjórði

ランク:? 種別:対縛ルーン レンジ:? 最大捕捉:?
「四番目を儂は知っている。もし我が手足を縛められたのならば、大いなるそれを唱えよう。足枷は弾け飛び、手枷は砕け散り、儂は動けるようになる」*58
解放、拘束解除の秘術。

大神刻印・五フィムブルテュールルーニル・フィムティ』Fimbultýr rúnir fimmti

ランク:? 種別:対飛翔体ルーン レンジ:? 最大捕捉:?
「五番目を儂は知っている。もし敵軍が矢を飛ばしたならば、儂がこの目で見つめるだけで飛ぶのをやめるのだから、防ぐ必要すらもない」*59
矢止めの秘術。極めれば飛び道具には無敵になるだろう。

大神刻印・六フィムブルテュールルーニル・スィヨティ』Fimbultýr rúnir sjötti

ランク:? 種別:対魔ルーン レンジ:? 最大捕捉:?
「六番目を儂は知っている。もし何者かがルーンを刻んだ木片で儂を害しようとしたならば、その者はただ自らを滅ぼすことになるだけだろう」*60
呪文返し、呪詛返しの秘術。

ヘンリー・アダムズ・ベロウズは注釈で、ルーンを刻んだ木による呪殺の例としてグレティルの死を挙げている。
トルビエルンの乳母kerling(古ノルド語で老婆の意。アイスランド語では老婆あるいは少女の意。英訳版ではcarline)が木の根に短刀でルーンを刻み血を塗り呪言を唱えて海に流すと、グレティルの島に漂着する。グレティルは呪いに気付き海に流すがそれはすぐ戻り、ある日気付かずに木材に加工しようと振り上げた斧で脚を負傷する。

大神刻印・七フィムブルテュールルーニル・スィヨウンディ』Fimbultýr rúnir sjöundi

ランク:? 種別:対城ルーン レンジ:? 最大捕捉:?
「七番目を儂は知っている。もし会食場にて我が親愛なるものたちの頭上に火の手が上がったのなら、儂はその呪歌ガルドルを唱えればよい。燃え広がることは無く、もはや消火するまでもない」*61
災害の沈静化、あるいは拠点への破壊工作を妨害する秘術と思われる。

大神刻印・八フィムブルテュールルーニル・アーテュンディ』Fimbultýr rúnir áttundi

ランク:? 種別:対心ルーン レンジ:? 最大捕捉:?
「八番目を儂は知っている。それは学びし者全てにとって役立つものだ。もし勇士の息子達に憎悪の種が育ったならば、儂はそれをすぐさま正すことができる」*62
調和の秘術といったところか? 陣営内の不和を解消できるようだ。
"勇士の息子達"を"英雄の卵"みたいな意味に解釈すると、悪堕ち回避の秘術と読めなくもない。

大神刻印・九フィムブルテュールルーニル・ニーウンディ』Fimbultýr rúnir níundi

ランク:? 種別:対災ルーン レンジ:? 最大捕捉:?
「九番目を儂は知っている。もし船を転覆から守ることになったなら、風も波も穏やかになり、全ての海を眠りにつかせよう」*63
嵐避けの秘術。
ちなみに嵐の沈静化は、北欧の聖人の奇蹟としてもよく登場する。

大神刻印・十フィムブルテュールルーニル・ティーウンディ』Fimbultýr rúnir tíundi

ランク:? 種別:対遠見ルーン レンジ:? 最大捕捉:?
「十番目を儂は知っている。境界の乗り手トゥーンリズルが空中で舞っているのを見かけたならば、元の形態へも、元の精神へも還れぬように迷わせてやろう」*64 *65
一般的には、境界の乗り手とは魔女が生き霊のようなものを飛ばして監視する魔術を指しているとされる。つまり遠見の妨害。極めれば千里眼すら妨害できるかもしれない。
獣に変身した魔女が屋根を飛び越えている様子だという話もある。その場合は変化を妨害して元の姿にも一時的に戻れなくする秘術と読める。

大神刻印・十一フィムブルテュールルーニル・エレフティ』Fimbultýr rúnir ellefti

ランク:? 種別:対軍ルーン レンジ:? 最大捕捉:?
「十一番目を儂は知っている。長く過ごした友を戦に引き連れる時は、強力なそれを盾の下で唱えよう。彼らは勝利と共にあり、あらゆる所から無事に生還する」*66
味方全体バフ的な秘術と思われる。

大神刻印・十二フィムブルテュールルーニル・トールフティ』Fimbultýr rúnir tólfti

ランク:? 種別:対記録ルーン レンジ:? 最大捕捉:?
「十二番目を儂は知っている。吊られた死体が揺れる樹を見かけたなら、儂は刻印し、ルーンを彩ろう。その者は歩きだし、儂と話をする」*67
死霊術か降霊術?
文脈だと死体が歩いているのか霊体的なものかは判然としないが、少なくとも話をするのが主題なら単なる死体操作などではなく死者本人の魂、あるいは残留思念などを呼び出しているのだろう。

『デンマーク人の事績(ゲスタ・ダノールム)』のハディングの物語(グレンベックは『ハディング王』という題名でまとめている)に使用例があり、ハディングの育ての母で付添の愛人でもある大きさ自在の女巨人ハルドグレイプが空き家の死体と話すために使用している。木片にルーンを刻み死体の口に差し込む……という手順であった。
もっとも、彼女は蘇生を拒む死者から恨み言による呪詛を受け、後に偶然襲撃してきた巨人からハディングを庇って死ぬこととなる。取り扱い注意。

大神刻印・十三フィムブルテュールルーニル・スレッタンディ』Fimbultýr rúnir þrettándi

ランク:? 種別:対人ルーン レンジ:? 最大捕捉:?
「十三番目を儂は知っている。儂が若き従士に水を振りかけたなら、軍勢に加わっても倒れ臥すことはない。その戦士は剣を前に曲がりはしない」*68
キリスト教の洗礼が広まる以前から、北欧では生まれてから9日後以降の赤子に水を振りかけて名前を授ける慣習があったことが知られている。(Verpa vatniと呼ばれるらしい。『エイルの人々のサガ』やKjalnesinga Sagaなどに実例があるとか )
つまりこれは北欧における名付けの儀式の起源がオーディンにあるという一文なのだろう。
秘術としては"命名"や"祝福"、"洗礼"といったところか。

大神刻印・十四フィムブルテュールルーニル・フィヨルタンディ』Fimbultýr rúnir fjórtándi

ランク:? 種別:対識ルーン レンジ:? 最大捕捉:?
「十四番目を儂は知っている。聴衆を前に神々ティーヴァを列挙する時は、儂は神々エーシル霊性アールヴァの子細を全て知っている。知恵なくしては多くは語れない」*69 *70
つまり知識そのものが14番目の秘術ということだろう。勉強しなさいと。

大神刻印・十五フィムブルテュールルーニル・フィムタンディ』Fimbultýr rúnir fimmtándi

ランク:? 種別:対種ルーン レンジ:? 最大捕捉:?
「十五番目を儂は知っている。デリングの扉夜明けの前にてその小人ドヴェルグが、国家の攪拌者スョーズレーリルが詠んだ。神々エーシルには力を、妖精アールヴァには繁栄を、賢神フロプタテュール*71には洞察を詠った」*72 *73 *74
おそらく読者がデリングやスョーズレーリルについて知っていることを前提に書かれたものなのだろう。両者の伝承が失われた現在では意味がよくわからない。
意味のわかる箇所だけ拾えば、部族単位で何代にも渡る長期間の加護を授かる秘術と解釈できる。オーディンだけ1人で部族単位のバフを受けているが、特別扱いはいつものことである。

大神刻印・十六フィムブルテュールルーニル・セクスタンディ』Fimbultýr rúnir sextándi

ランク:? 種別:対心ルーン レンジ:? 最大捕捉:?
「十六番目を儂は知っている。もし賢き乙女の心と喜びを欲するなら、彼女の想いの指向を変えてやろう。白き腕の女の心は儂に振り向く」*75
魅了か精神操作の秘術と思われる。

大神刻印・十七フィムブルテュールルーニル・サウテュヤンディ』Fimbultýr rúnir sautjándi

ランク:? 種別:対倦ルーン レンジ:? 最大捕捉:?
「十七番目を儂は知っている。若々しき乙女が儂から去るのを遅らせることができる。ロッドファーヴニルよ、お前はこれらの歌が無くとも長く生きられるだろう。だが得られればお前のためになる。使えば有用となる。身につければ必要となる」*76 *77
パートナーの心変わりを防ぐ秘術? さっきの魅了の秘術を使えばいいだろうという気もするが、もしかしたら16番目は魔術的なものではなく"異性を口説く秘訣"みたいなもので、口説くのと維持には違う努力が必要になるよという人生訓なのかもしれない。
貞節さを身につけさせる秘術とも解釈できなくもない。

大神刻印・十八フィムブルテュールルーニル・アーテュヤンディ』Fimbultýr rúnir átjándi

ランク:? 種別:? レンジ:? 最大捕捉:?
「十八番目を儂は知っている。乙女にも人妻にも決して知られることはない。1人だけで知っていることが最も良いことだ。これにて歌集の結びとしよう。儂を腕で抱いた者か、我が姉妹を除いて」*78 *79
秘匿の秘術。誰も知らない秘密を持つことが最後の秘術である。
ルーンとして見るなら、オリジナルのルーン文字を作成して誰にも見せず秘匿しておけ、ということになるだろう。聞いてますか18の原初のルーンを全て展開して吹き飛ばすクーフーリン[術]さん
ちなみにオーディンしか知らない秘密の一つは、"息子バルドルの遺体に囁いた言葉"である。ヴァフスルードニルとの知恵比べの際に切り札となった。


【遊興のルーン】gamanrúna

戦の樹英雄よ、あなたに酒杯知識振る舞い聞かせましょう。其れに混ぜられしは強大な力と大いなる名声。其れに満たされしは彼の詩歌と治癒術。其れこそは素晴らしき魔術ガルドラ、"遊興のルーンガマンルーナ"」━━━シグルドリーヴァ*80
シグルドリーヴァがシグルドに教授する、戦士が覚えるべき7つのルーン。オーディンの槍にも刻まれているものだという。
「gaman(喜び/楽しみ)のルーン」というネーミングと戦士が覚えるべきという内容にミスマッチを感じるが、gamanがgameの古い形ということと合わせると、オーディンが戦争をゲームと認識しているということではないだろうか。

ヴォルスンガ・サガにもほぼ同じシーンがあり、ブリュンヒルド(ブリュンヒルデ)がルーンを伝える……が、あまりにもそのまんまなので後付けでシグルドリーヴァの歌から人名だけ変えて"挿入"された形なのかもしれない。(『シグルドリーヴァの歌』はシグルドが7つのルーンと11の助言を貰うだけの短い詩で、別にシグルドがシグルドリーヴァとロマンスしたりする話ではない)

勝利のルーン Sigrúnar

「勝利を得たいのなら、勝利のルーンシグルーナルを知っていなければなりません。剣の柄に刻みなさい。柄元ヴェートリマム柄頭ヴァルベストゥムに。そして二度テュールを唱えるのです」*81 *82*83
武器へのエンチャント。
戦闘への効用があると信じられており、テュール(↑)の印が刻まれた武器は多く残っている。

麦酒のルーン Ölrúnar

「信ずる者に忠誠されていないのなら、麦酒のルーンエルルーナルを知っていなければなりません。角杯の外殻に刻みなさい。手の裏に隠し、爪でナウズを印すのです」*84 *85
毒探知の術。
シグルドリーヴァは続けて、飲物にリーキ(ネギ)を入れるのも酒に混ぜられた術対策になると付言している。ネギも術の一部と解釈されていることが多いが、ルーンを扱えない者用の代替策ではないだろうか。

エギルのサガにて使用例(ネギは入れていない)があり、毒を盛られた杯は砕け散ったという。
エギルの場合は刻むだけではなく、血で角杯に刻んだルーンを彩色している。(ルーンの工程に彩色が含まれることはオーディンも高き者の言葉で言及している)
これを使うことができればシグルドは忘れ薬を飲むことにはならなかっただろう。

岩のルーン Bjargrúnar

「妊婦の出産を保護したいのなら、岩のルーンビャルグルーナルを知っていなければなりません。掌に刻みなさい。緊張をほぐし、女守護霊ディーシルに無事を祈るのです」*86
安産の術。
でも最後はやはり神頼みである。確実に安全とはそう言い切れることではない。
戦士が習得すべき術か疑問に思うかもしれないが、妻の出産に際して旦那(戦士)ができることはまじないと神頼みしかないということではないだろうか。
ちなみにこの"岩"という古ノルドの単語は保護といった意味でも使われる。岩壁で守られるイメージなのだろうか?

海のルーン Brimrúnar

帆ある馬船舶の運行にて守護されたいのなら、海のルーンブリムルーナルを知っていなければなりません。船体に刻みなさい。制御刃と櫂に焼き入れるのです」*87
航海安全の術。原初のルーンの九に含まれると思われる。
いつもと違い刻印ではなく焼き記すのは、水流で削り落ちやすいからだろうか。

枝のルーン Limrúnar

「癒し手となって傷を上手く治療したいのなら、枝のルーンリムルーナルを知っていなければなりません。樹皮に刻みなさい。東向きに枝を垂らす樹を用いるのです」*88
治癒の術。原初のルーンの二つ目に含まれていると思われる。
エギルのサガには鯨骨を用いた治癒のルーンが登場しており、枝以外にも様々な治癒術があるようだ。
間違ったルーンを刻まれた鯨骨を枕の裏に置かれた娘はむしろ病が重くなり、エギルが彫り直すことによって快癒した。

会話のルーン Málrúnar

「怒りや悲しみに惑わされずに答弁したいのなら、会話のルーンマールルーナルを知っていなければなりません。風の如く素早く網の如く精緻に、全てを準備し、民会の法廷にて正義を為すのです」*89
弁舌の術。
身内の死には復讐しなければならない慣習を持つバイキングだが、こと法廷の場においては私情を抑えなくてはならないようだ。

思考のルーン Hugrúnar

「全ての者より賢明になりたいのなら、思考のルーンフグルーナルを知っていなければなりません。支配者レーズの、旅人レイストの、即ち賢者フロプトル*90の思考を。神々レギに其れを漏れもたらせしは光を滴らせるものヘイズドラウプニス*91の頭蓋と、財宝を開陳するものホッドロフニス*92の角杯でした」*93
頭脳を研ぎ澄ます術。原初のルーンの十四の一端と思われる。
ミーミルの首とミーミルの泉からオーディンが得た知恵を比喩表現として挙げている。

締め

「彼はブリミル*94の卵*95の上にて兜を携えていました。ミーミルの頭からは様々な知恵が、原初の言葉が、そして真なる文字が告げられたのです。まず盾*96にルーンが記されました。それらは光輝きし酋長スキーナディ・ゴジ*97によって成立しています。アルヴァク*98の耳にも、アルスヴィズ*99の蹄にも、回転する車輪*100にも、フルングニルの騎乗した下側*101にも、スレイプニル*102の歯にも、そりの足枷*103にも、熊の足にも、ブラギ*104の舌にも、狼の爪にも、鷲の嘴にも、血に濡れた翼にも、橋の果てにも、開かれた手のひらにも、死体の足跡にも、硝子にも、黄金にも、人間の健康にも、果実酒にも、麦酒にも、予言の座*105にも、グングニルの穂先にも、グラニ*106の胸にも、ノルンの爪にも、梟の嘴にも、それら全てにはルーンが刻まれているのです。時には聖なる蜜酒に混ぜられ、広い方法で伝えられました。それは神々エーシルと共にあり、それは妖精アールヴと共にあり、幾許かは賢明なヴァン神族ヴァニールと共にあり、そして幾許かは定命の人類も保持しているのです」━━━シグルドリーヴァ *107

シグルドリーヴァの11の助言

訳し疲れたので要約。意味のよくわからなかった項目はヴォルスンガサガ22章から要約しているので一部違うかもしれない。
  1. 「親族や友人には親切に」
  2. 「人妻を愛するべからず」
  3. 「愚衆と過度に関わると、無法者と呼ばれるようになる」
  4. 「広い道のすぐ近くで無警戒に休むべからず」
  5. 「美しい女との出会いには静かな心で臨み、迂闊に眠ることなかれ」
  6. 「泥酔者に愚言を聞かされてもムキになることなかれ」
  7. 「敵との戦いは野外で行うべし。さもなくば汝の家が焼かれる」
  8. 「間違った宣誓を誓うべからず。誓いを破れば強力な報いが降りかかる」
  9. 「死者や遺体には敬意をもって接するべし」
  10. 「父親や兄弟など近い親族を汝に殺された者を近付けるべからず。どれだけ若くとも幼くとも彼は狼だ」
  11. 「汝の友の企みに気を付けよ。しかし私は汝の人生を予見できているから、小技を教えることができる。汝の妻の一族が汝を憎むことがないようにすれば良いだろう」

その他のルーン魔術

サガなどに使用例を確認できるルーン魔術。

忘却

「グリムヒルドが私に飲物を飲ませてくれた。苦く冷たく、私は私の不安を忘れ去った。その中に混ぜられているのは魔法の土、凍りついた海、豚の血。杯にはあらゆる種類のルーンが血のように赤く記されていた──それらは私には読めなかった──。ハディングの地の荒野の魚、切られていない耳、獣の腑。麦酒の中には多くの呪いが醸されていた。木々の花、焼かれたどんぐり、炉辺の露、神聖なる腑、豚の肝。──全ての悲しみを和らげる」━━━グズルーン *108
ルーンというかルーンも含めた様々な術を施された飲物。
グズルーンの母、魔女グリムヒルドが作成し、シグルド、グズルーンに飲ませた。
Truth In Fantasyの『魔法・魔術』(著:山北 篤)では「忘却のルーン」という項目を立ててこれが紹介されており、魔法使いの夜で名前だけ登場した忘却のルーンはこれが元ネタと思われる。(魔法使いの夜の、大神が戦乙女に使ったという説明からはオーディンがシグルドリーヴァを眠らせた荊のほうが近いが……)
元ネタを見る限りでは大量のルーンと呪術をブレンドしたグリムヒルド独自の高等秘術のようなので、現代の魔術師に伝わるのは劣化版なのだろう。

呪詛

「今ここに呪忌の棒ニーズステングを打ち立てた! エイリーク王とグンヒルドに呪いあれ! 土地霊ランドヴァエティルどもにも呪いあれ! やつら全員、エイリーク王とグンヒルドを土地から放逐しない限り、迷い続けて安住の地を見つけられぬ!」彼は岩の裂け目に棒を据え付けて馬の頭を国に向けたまま固定すると、棒の上にルーンを刻み、全ての呪いを発現した。━━━エギル・スカラグリームスソン *109 *110
対象に厄を招く、あるいは単純に死亡させるルーン呪術。
前述のグレティルの死因の他、エギルのサガではエギルが血斧のエイリークとグンヒルドを呪っている。
木にルーンを刻み、血を塗り、呪詩を唱えて行うことが多いようだ。
エギルはルーンを刻んだ棒に馬の頭を乗せたものを用いた。

「ルーンを学んで7年。今夜いけそうだから試してみよう」━━━騎士スティグ *111
惚れさせるルーン。
デンマークのバラッド、『騎士スティグのルーンと結婚式』(Ridder Stigs Runer og Bryllup)では、騎士スティグは右手に杯、左手にルーンを持ち、1杯飲みながらさりげなく机の下で目当ての女性目掛けてルーンを投げ込んだが、外れて別の女性──王の娘に当ててしまった。大変なことになってしまったとスティグはパニくるが、なんやかんやで王に認められて結婚して話は終わる。
*112

その他北欧神話用語解説

注:属性巨人の分類はわりと適当なのであまり真に受けないでください。(特に粘土と風は用例が見つからなかったため真偽不明)

神族(エーシル、ヴァニール)

北欧神話における神格は主にアース神族(エーシル)、ヴァン神族(ヴァニール)などに分類されるが、これらの区分は種族というよりは所属勢力や氏族に近い。
アース神族の祖オーディンは氷塊から生まれた存在ブーリの息子ボルと霧氷の女巨人の息子であるし、自身も幾人かの女巨人に子を産ませている。
ヴァン神族の代表者であるニョルズとフレイも女巨人と婚姻している。
神族は種族的には巨人と同じである……と書くと訳語の関係で誤解を生じさせる。詳しくは次項参照。巨人だからといって必ずしも巨大なわけではない。
こういった神族と巨人の関係性は、ギリシャ神話における神と巨人(ティタン)と巨人(ギガス)、アルスターサイクルにおける神と巨人(フォモール)の関係性にも通じるものがある。(これらの単語が現代語で巨人の意味を持つように変化したのも混乱の一因のように思う。ヨトゥン→エティンとか、ギガス→ジャイアントとか……)

余談

巨人(ヨトゥン)(スルス)(リシ)jǫtun,þurs,risi

複数形:ヨトゥナル(jǫtnar)、スルサル(þursar)、リサル(risar)
ヨトゥン、スルス、リシの使い分け基準は定かではない。*113
巨人(giant)が定番の訳語だが、必ずしも身体が大きいわけでも、必ずしも人型なわけでもない。
"霜の巨人"(frost giant)も定番の訳語だが、ユミルが"氷のように冷たいヨトゥン"(hinn hrímkalda Jötun)と呼ばれている所を見ると、"霜の巨人"はヨトゥン全体というよりはユミル固有の特徴、あるいは後述のフリームスルスの訳語と考えた方がいいだろう。
"怪物"と訳されることもある。

前述のように、北欧神話における"巨人"は必ずしも身体が大きいわけでも人型なわけでもない。信仰対象ではないものも含む神と同格の存在全般に使われるようである。用例から意訳すると"よそものの神族"や"荒ぶる自然の霊"といった所か。
神として数えられるうちエーギルやスカジなどはヨトゥンとも呼ばれるし、鷲型のフレースヴェルグもヨトゥンである。ヴァフスルードニルによると6つの頭を持つヨトゥンもいるという。また、ヴァン神族をヨトゥンと呼ぶことも稀にあるようだ。
『巫女の予言』においてウルド、ベルザンディ、スクルドの三人のノルンが登場する前振りと思われる節では"それもヨトゥンヘイムから三人の女が来るまでのこと" "彼女らはスルスの少女でとても強力だった"*114とあり、彼女らも巨人のようだ。
"巨人の国"(ヨトゥンヘイム)も誤解しやすい概念である。特定の1国というよりは"よその(神族の)国"程度のゆるい概念と思って読まないと混乱するだろう。
また、『ノルウェーはいかに住まわれしか』などの記述に見えるように、北欧には王統の起源を巨人とする思想もあるようだ。例えば花嫁に変装したトールに倒された巨人スリュムは『ノルウェーはいかに住まわれしか』ではヴェルムランドの王祖とされている。……というか巨人というより、ヨトゥン、スルス、リシはやはり神格を指す呼称の一種であったのだろう。

Fate的には、北欧における神霊(や精霊など)全般の総称と考えるのが妥当だろうか。*115
自然現象の化身としても考えられていたようで、以下のように属性を表す語と合成した派生語も多く存在する。
*116

霧氷の巨人(フリームスルス)hrímþurs

複数形:フリームスルサル(hrímþursar)
英語ではライム・ジャイアントなどと訳される。
特にユミルが生きていた時代のユミルの子孫たちがこう呼ばれる。
ヴァン神のフレイが一目惚れした美しい女巨人ゲルズの父ギュミルも霧氷の巨人と呼ばれる。

この泥では、巨人の中でも特にユミルの霜、氷の力を強く受け継いでいる者を霧氷の巨人と呼ぶ、ということにしている。

……その出生から、オーディン、ヴィリ、ヴェーの兄弟も種族的には霧氷の巨人ではないかと思われる。(ただし、純粋な(外様ではない)アース神族である彼らが巨人と呼ばれることはない)オーディンの息子ヴァーリの異名に"氷冷の息子"があることはこの説を補強する。
Fateではフェンリルは凍てつく息吹を吐くとされるため、父ロキか母アングルボダのどちらかは霧氷の巨人の血を引いているかもしれない。*117
また、スカジは冬の化身でもあるとも考えられている。(スキーの女神であることと、ニョルズとの結婚のエピソードで住処を期間ごとに交代するくだりが季節を連想させることなどから)
*118

山の巨人(ベルグリシ)bergrisi

複数形:ベルグリサル(bergrisar)
英語ではヒル・ジャイアントなどと訳される。
代表格はフルングニル。
フルングニルは頭と心臓が石という、いかにも山の巨人といった特徴を持つが、山の巨人の中で最強と言われるフルングニルのみが持つ特別なものかもしれない。山の巨人全員が身体の一部が岩石と考えるのは早計だろう。
ヴァン神のフレイが一目惚れした美しい女巨人ゲルズの母アウルボザも山の巨人と呼ばれる。

……トールはフルングニル殺しの結果、頭に砥石が刺さったままとなり、奇しくもフルングニルと同じような石の頭の特徴を得ることになる。
*119

女巨人(イーヴィジャ)íviðja

複数形:イーヴィジュル(íviðjur)
語の原義的には"木中の女"を意味するらしいが、女巨人を意味する語として知られている。
仮に樹を世界樹だと捉えれば、必ずしも樹と関係するものとは限らない(北欧神話では世界樹の中に世界があるのだから、全ては木中にあるとも言えるだろう)が、用例が少なくはっきりしたことはわからない。
『巫女の予言』の語り手の巫女は彼女達に育てられたらしい。(世界そのものを巨人に擬人化した表現と解釈されることが多い)
*120

女巨人(ギーグル)gýgr

複数形:ギーギャル(gýgjar)
女性の巨人の呼び名。しかし『巫女の予言』には"スルス(巨人)の少女"という言い回しがあり、女性巨人なら必ず呼び分けるというわけではないらしい。
北欧神話の用例からは少し外れるが、マルギーグル(margýgr)は人魚を意味する。このように巨大というニュアンスは無い単語なので、女巨人というよりは女鬼、女怪、女精などと訳したほうが適切かもしれない。
*121

粘土の巨人(レイリョトゥン)leirjötun

複数形:レイリョトナル(leirjötnar)
この単語自体の用例は見つからなかったが、フルングニルの護衛のために建造されたモックルカールヴィは粘土と馬の心臓で造られたという。
また、フョルスヴィーズルは粘土の巨人レイルブリーミル("粘土のブリミル")の四肢からガストロープニルという館を建造したと語っている。*122(このエピソードにおいてフョルスヴィーズルはヨトゥンヘイムのヨトゥンだが、オーディンの別名でもあるため、これはユミル(別名の一つがブリミル)の身体を使った天地創造のことではないかとも考えられている)

炎の巨人(エルドヨトゥン)(エルドスルス)eldjötun,eldþurs

複数形:エルドヨトナル(eldjötnar)、エルドスルサル(eldþursar)
ムスペルヘイムのスルトと、"ムスペルの子ら"(ムスペルスシニル、あるいはムスペルスメギル)(他に"スルトの親族"(スルタルサンセフィ)とも)がこう呼ばれることがある。(ただし、巫女の予言やスノリの記述では巨人とは明言されていない。巨人とするのは後世の類推と思われる)
スルトについての詳細はスルト〔リリィ〕の解説にて。

ロギもこう呼ばれるらしい?(有名なエピソードではウトガルド・ロキの幻術で人に見せかけた火がロギであるからややこしいが、『ノルウェーはいかに住まわれしか』にエーギルの兄弟として同名の王族だか神だかが登場する)
ワーグナーはロキを火の神として扱ったが、これは古い研究、あるいはロギとの混同によるもので、現代では根拠のない見解と見なされている。(実際にオペラに登場するのは「ローゲ」で、作中で明確にロキっぽい要素があるわけでもないので、これは実質オリキャラなのかもしれない)

海の巨人(スョーリシ)sjórisi

複数形:スョーリサル(sjórisar)
海の神エーギル、その妻ラーンがこう呼ばれる。
9人の娘がいるとされ、"エーギルの娘達"は波を意味するケニングでもある。
テュールの父ヒュミルも海の巨人であるらしい。

風の巨人(ヴィンドスルス)vindþurs

複数形:ヴィンドスルサル(vindþursar)
鷲型の巨人フレースヴェルグ、風の神カーリが該当するらしいが、用例は見つからなかった。
ヴァフスルードニルによれば世界の風はフレースヴェルグの羽ばたきから生まれるという。

風の巨人と呼ばれたことはないが、ロキは魔法の靴によって空を駆けることができるという。

戦乙女(ワルキューレ)(ヴァルキュリア)(ヴァルキリー)

複数形:ワルキリョル(valkyrjur)
"戦死者の選び手"の意。
戦死者をヴァルハラに送ることやヴァルハラのエインヘリアルへの給仕、オーディンの私兵などを主な役割とする。
勝敗を左右する超常的存在として、後述のディーシルと同一視されることもある。
訳語の関係で特に日本では次項のスキャルドメールと混ざっていることがある。日本以外でもワーグナーの影響などであえて同一視している場合もある。
基本的には神話及びサガにおいて神と呼ばれることはなく、人間でもなく、ワルキューレという固有の1ジャンルである。(半神的存在ではあるし、構成員に女神が含まれる可能性はある)

巨人/怪物スルスでノルンであるスクルドを除いては、現存する神話からは素性が定かではないが、一般的には王族の娘などがオーディンに仕えて変生することがあると見なされているらしい。

乗騎は狼、あるいは天駆ける馬とされており、"ワルキューレの馬"*123は"狼"を表すケニング(言い換え)であるという。
サガ等において戦乙女達は白鳥の衣アールヴタルハミル(álftarhamir)*124で飛行する*125、あるいは白鳥に変身する*126とされることもある。
同じくオーディンの使いである大鴉フラフン(英訳:レイヴン)を伴うこともある。*127

ワーグナーのオペラを除くワルキューレの名前一覧→ https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%97%E6%AC%A7%E...
ワーグナーのオペラに登場するワルキューレ→https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%83%AB%E...

オペラ戦乙女の補足資料


*128

盾の乙女(スキャルドメール)skjaldmær (英訳:シールドメイデン)

女戦士の意。「盾」というのは「武装」を象徴する詩的表現としても使われるため、そのまま「武装した女性」とも読める。
和訳では戦乙女なのでよくワルキューレとごっちゃになるが、サガでは明確に使い分けられている。……基本的に超常的存在であるワルキューレとは違い、人間の女戦士を指す。
代表例としては『ヴォルスンガサガ』のブリュンヒルデとシグルーン、『ボーシとヘラルドのサガ』のブリュンヒルデ(別人)、『ヘルヴォールとヘイズレク王のサガ』のヘルヴォール、『Hrólfs saga Gautrekssonar(フロールフ・ガウトレクスソンのサガ)』のスウェーデン王女ソーンビョルグ、『デンマーク人の事績(ゲスタ・ダノールム)』のVisnaとVeborgなど。
*129

ノルン

複数形:ノルニル
運命の女神と訳される。この訳自体は的確に特徴を捉えているが、ノルン自体に神という意味があるわけではなく、ノルンはノルンという固有のカテゴリーである。女貧乏神や座敷童も北欧に出現したらノルンと呼ばれるだろう。
ハールやファヴニールが語る通り、種族に関係無く運命に干渉する能力を持つ女性のことである。
「非常に多様な出生をするため、ノルンは共通の親族を持たない。幾人かは神々エーシルの、幾人かは妖精アールヴの、そして幾人かは小人ドヴァリンの娘達でもある」━━━ファーヴニルの歌 スタンザ13
最も有名な例の3人はアース神族に匹敵する強大な力を持つ巨人(スルス)の少女であり*130、末のスクルド(3人が血縁かは定かではないが)はワルキューレも兼業する。*131
オーディンの妻フリッグもアース神であると同時に強力なノルンであり、語りはしなくともほとんどの運命を知り尽くしているとされる。
ハールによれば世界には様々なノルンがおり、出会ったノルンの性質によって運命は良くも悪くもなるという。(実例:ノルナゲスト)
*132

補足
この泥設定ではオーディンにもノルンの能力があるとしているが、独自解釈によるものなので注意。
オーディンやワルキューレ、フィルギエ、ディーシルらは戦の勝敗の運命に左右する存在とされる。当泥ではそれらをノルンの能力として解釈しているわけである。

ディーシル

単数形:ディース
女守護霊、あるいは女神、時には英訳でもノルンと訳されてしまう、またもや紛らわしい存在。
基本的には土地や一族、または個々人を守護する霊的な存在とされる。
物語では運命や勝敗を左右する存在として名前だけ呼ばれることが多く、やはりノルンやワルキューレとごっちゃになりやすい。運命に干渉する以上ノルンの一種ではあるかもしれないが。
*133

フィルギエ

複数形:フィルギュル
女守護霊、あるいは運命の女神などと訳される、またもや紛らわしい女神シリーズ第6弾。(女エーシル、女ヴァニール、ワルキューレ、ノルン、ディーシル、フィルギエはどれも女神と訳せる。ただしいわゆるgod、goddessに該当するのは先頭2つのみであり、残りは半神的存在や精霊っぽい何かである)
一族の守護霊。際立った特徴としては、動物などの非人型を形どることもあることだろうか。
基本的には特定の一族専任のディーシルのことだと認識していいと思うが自信はない。
*134

巫女(ヴォルヴァ)(ウォルワ)

セイズやルーンを扱う予言者、巫女、呪術師。
基本的にはトランスして予言したり、儀式的な舞踏をしたり、産婆の仕事をしたりするよくあるシャーマン的イメージであるが、実のところ詳細ははっきりしないところがある。

妖精(アールヴ)

エルフの語源となった存在だが、現存する神話からはどういう存在かはっきりしない。
スノリはドヴェルグが闇妖精デックアールヴで、天上には光アールヴがいると説明しているが、じゃあ光アールヴはどういうやつなのかというと情報は特にない。
ドヴェルグやヴァニールなども含む超常的種族を指す大雑把な分類の一種なのではないかと個人的には思う。(ドヴェルグには名前に"〜アールヴ"と付いている者が多い。一方で、アールヴはヴァン神族フレイヤの管轄とされることもある。『高き者の言葉』では神々(ティーヴァ)を列挙する際にアース神族とアールヴについて知っている必要があるとされている。)

小人(ドヴェルグ)

ドワーフの語源、元ネタとなった存在。
鍛冶、酒、地下生活などドワーフの特徴はこの時点でほとんど兼ね備えているが、名有りのドヴェルグにはしばしば魔術の達人も登場する。
種族の始まりはスノリの説明と巫女の予言で多少食い違う。
スノリによるとユミルの肉に巣食う蛆から、巫女の予言によるとブリミル(ユミル)の血とブラーイン(ユミル)の脚から、アース神族が創る。
巫女の予言では大地から神々が作った人型のもの、ともされる。(ユミルの脚=大地でもあるので、どちらにせよ矛盾するわけではない)*135

竜(オルム)

古代北欧における蛇や竜みたいな怪物全般。ワームの語源。
昔は翼が生えていてもオルムだったようだが、ラテン語由来の単語drakiが入ってからは翼が生えたタイプはdrakiと呼び変えていたのではないかとも言われる。
ヨルムンガンド、ニーズホッグ、ファヴニール、そしてベオウルフに登場する竜などが代表例。

トロール

現代のそれと違い、古代北欧ではまじない師程度の意味らしい。
ただ、後世のサガなどでは怪物的な意味合いで使われていたかもしれない。
(確認した範囲だとどちらの意味で解釈しても一応意味は通る感じではあった)
両方を取り入れるなら、身体を怪物的に変化させて長くした爪などで戦う魔術師、という解釈も面白いかもしれない。サガには半トロールの変身者なども登場するらしい。(エギル・スカラグリームスソンやケティルなどの祖先ハルビョルン)
また、『フロームンド・グリプスソンのサガ』 で自らの墓所を守る王の亡者/亡霊ドラウグが文中でトロールとも呼ばれる。
グレンベックが『ラフニスタの人々』という題でまとめた中のひとつ、『グリム・ロディンキンのサガ(Saga om Grim Lodinkin)』では美女ロフトホーナが呪いのようなものでトロールに変身(?)させられている。

地域によって特徴や性別が違ったりもするらしい。(参考:北欧文化圏に伝承される超自然的存在“トロル"像の変遷―ノルウェーとアイスランドの民間説話を中心に―)
サガや民話によっては単に魔女や怪物への呼称としても使われる、幅の広い言葉のようだ。

ドラウグ(draugr)

複数形:ドラウガ(draugar)
亡者、亡霊など。
『ユングリンガサガ』ではオーディンが立ち上がらせたり話させたりする死体に、『フロームンド・グリプスソンのサガ』では自らの墓所を守る王にこの呼称が使われている。どちらの用例も歩く死体と解釈しても幽霊と解釈しても割と意味は通ってしまうので、古代北欧人がこの単語にどちらのイメージを抱いていたかはいまいちわかりかねる。
ちなみにバイキングには土葬の習慣があることが多いが、現代ではほとんどの場合遺体は原形をとどめず土に還っている。某skyrimのドラウグルの元ネタではあるが、ゲームのノルドと違ってミイラ加工するような習慣はおそらくないと思われる。
遺体を確認できなくても、訃報を聞くとルーン石碑を建てる習慣もあったそうなので、墓地でも最初から遺体がないこともある。
ドラウグの扱いや死生観については個人ブログの記事ではあるがここが参考になるだろう。

スノリの記述にあるバルドルの葬儀は船に乗せて海に流して燃やすというユニークなものである。実際に北欧で行われていた葬儀形式かどうかはちょっとよくわからない。(流して燃やしたら遺物が現代まで残りにくいため、実証は難しい)
北欧の船葬の遺物と思われるものとしてはオーセベリ船の他、ヴェンデルとヴァルスイェーデの船葬墓群などがある。船の土葬というこれまた珍しい形式。
このバルドルの葬儀形態は北欧モチーフの架空世界を舞台にしたインディーズゲーム『バナーサーガ』1作目ラストシーンの重要人物の葬にも取り入れられている。映像化としては珍しい例だろう。

世界樹(ユグドラシル)

9つの世界に根を下ろす樹。恐ろしき者(ユッグ=オーディン)の馬(処刑台)の意。
別名にミーミルの樹ミーマメイズル大地の樹モルドシヌル調和の樹ミョトゥズル調和の樹ミュトヴィズル風荒ぶ樹ヴィンドガメイジトネリコアスクなどがある。

ラグナロク(神々の偉業/運命/黄昏)

何箇所かに出てくる単語。
ragna rök(ラグナロク)は巫女の予言とヴァフスルードニルの歌などに出てくる語。rökの意味は幅広いが、文脈に合わせると神々の偉業、神々の起源、神々の驚異などと訳せる。スノリの解釈に寄せるなら神々の運命と訳せなくもない。

ragna rökr(ラグナロクル)はスノリの著作の他にはロカセナにのみ出てくる単語。rökrは夕焼けなので神々の黄昏の意。
スノリは神々の終末の一連をラグナロクルと呼ぶと解釈したが、前述の綴りミス疑惑からあまり説得力はない。本来の形と思われるragna rökの綴りで記された古エッダの文脈だけを読むと神々の終末と解釈するのは困難なのだ。(巫女もヴァフスルードニルも、終末をピックアップしたというよりは神々の事績全般を指して呼んでいるように見える)
ただし、ragna rökrをラグナロクとカナ表記すること自体は間違いというわけではない。スルトやヘズなど、カナ表記の際に語尾のrを省略することはよくあることだからだ。
*136

輪の誓い

輪に賭けて誓うことで偽証がないことを示す慣習。
高き者の言葉の中でオーディンが誓い、信じられるものかと自分でコメントする。
なにせオーディンには200を超える真名がありそれぞれが別人扱いなのだから、名前1つだけで誓っても他の名前で何してたかわかったもんではない。

オーディンの真似して偽名を使えばいいかというとそうでもないらしく(そもそもオーディンは偽名ではなく全て真の名なのだが)、ファヴニールの死に際の誰何に対して呪いを避けようとしたシグルドはギリギリ嘘ではないこじつけで名乗りを逃れようとして、続くファヴニールの追及に観念して本名を名乗っている。
ファヴニールの例に見られるように、輪に限らず呪的、儀式的な場面での偽証、誓約破りは運命へのペナルティがあると認識されていたらしく、サガではそれで死ぬこともある。
例えばヘイズレクは、知恵比べに勝利したものは傷付けないと誓いながら勝利した盲目の来客ゲストゥムブリンディ*137を斬りつけたことにより不吉な運命に導かれ死亡する。

知恵比べ

神話やサガに度々登場する命を賭けた知恵比べ対決。
といってもどうやら命を賭けるのは片方のみのようだ。命を賭けた側は勝利するとその相手から一生敵対行為をされない権利を手に入れる。
ヘイズレクは自らに答えられない謎掛けをしたものを無罪放免とする誓約を立てているため、これを断れない。
作品名挑戦者命を賭ける側勝者敗者結果
ヴァフスルードニルの歌ガグンラーズ
(オーディン)
ガグンラーズガグンラーズヴァフスルードニルオーディンの正体を見抜けないまま回答不可能な問題を出され、最強の巨人と呼ばれるヴァフスルードニルはアース神族と敵対行為をとれなくなった。
アルヴィースの歌トールアルヴィース?トールアルヴィースアルヴィースはトールの質問に全て答えられたが、それはトールの罠だった。長時間の問答に時間を忘れていたアルヴィースは日光で石化する。
ギュルヴィたぶらかしガングレリ
(ギュルヴィ王)
アース神族全員
(代表者はハール)
ハール
(オーディン)
ギュルヴィ王ギュルヴィ王は最初から原っぱで幻術で惑わされていたことに気付けず、問いかけにも全て回答されて負ける。国に帰ったギュルヴィはアース神族を布教する。
ヘルヴォルとヘイズレク王のサガヘイズレクゲストゥムブリンディゲストゥムブリンディ
(オーディン)
ヘイズレク終盤のクイズでオーディンが大ヒントを出したにも関わらず正体に気付けないまま最後に回答不可能の問題を出されヘイズレク敗北。誓約を破り攻撃したため破滅する。
どうも問答そのものより、ネタばらし前に騙されていることに気付けるかどうかが鍵になっていることが多いようだ。

おまけ

ビースト版&泥特異点

別クラス


FGO風ステータス

FGO風ステータス




【コメント】

カナ表記について

古ノルド語やアイスランド語のカタカナ表記法は色々ありまして、例えば完全には発音は判然としない古ノルド語ではなく現代アイスランド語(文体上は古ノルド語に非常に近い形を残している言語とされ、口語はともかく文章はほぼ同じと言われることもある)に準拠するかどうかとか、末尾のrを省略するか(スルトル→スルト、ブリュンヒルドル→ブリュンヒルドなど)とか、ðをダ行にするかザ行にするかとか、vをヴァ行にするかワ行にするかとかあるんですが、この記事では統一できていませんのでご注意ください。

翻訳について

引用文の私訳の正しさは保証できかねます。中には反対の文脈に読み違えてたりするものもあるかもしれません。
訳語は型月寄りにチョイスしておりますのでご注意ください。

参考

引用風の台詞や神話の解説などは主に以下の解説、翻訳、再話などを参考にしつつも独自にそれっぽく作文している。

『北欧神話物語』(青土社)著・キーヴィン クロスリイ・ホランド、翻訳・山室 静、米原 まり子 (再話)

Extend Everything 巫女の予言(Völuspá/ウォルスパー) 詳註付き →(巫女の予言/ヴォルスパー、シグルドリーヴァの歌/シグルドリヴマール、その他)
https://torisugari.wordpress.com/archives/voluspa-...

堺 京太郎の雑記帳 →(オーディンの箴言/高き者の言葉/ハヴァマール、ヴァフスルーズニルの譚詩/ヴァフスルーズニスマール)
http://sakaikyoutarou.com/edda/

無限∞空間 →(オーディンの箴言/高き者の言葉/ハヴァマール、シグルドリーヴァの歌/シグルドリヴマール、その他)
http://www.moonover.jp

jinns mediaevalia →(巫女の予言/ヴォルスパー、ハムジルの言葉/ハムジスマール、ギュルヴィたぶらかし/ギュルヴァギニング、その他)
http://www.asahi-net.or.jp/~aw2t-itu/index.htm

詩のエッダ(古エッダ) Henry Adams Bellows訳
http://www.sacred-texts.com/neu/poe/index.htm
シグルドリーヴァの歌/シグルドリヴマール(英訳)
http://www.sacred-texts.com/neu/poe/poe25.htm

散文のエッダ(新エッダ) Arthur Gilchrist Brodeur訳
http://www.sacred-texts.com/neu/pre/index.htm
ギュルヴィたぶらかし/ギュルヴァギニング(英訳)
http://www.sacred-texts.com/neu/pre/pre04.htm
http://www.germanicmythology.com/ProseEdda/Anderso... Translated (Rasmus Björn Anderson訳)

古ノルド語表記参考・英訳参考
http://heimskringla.no/wiki/Forside
https://northvegr.org/index.html(http://web.archive.org/web/20170312154523/http://w... )
http://www.germanicmythology.com/index.html
http://www.voluspa.org


ユングリンガサガ(ヘイムスクリングラ冒頭)については主に以下の2つを参考にしている。

英訳版
http://omacl.org/Heimskringla/ynglinga.html

ルーン文字とヴァイキング
http://www.runsten.info/index.html

ゲスタ・ダノールム(デンマーク人の事績)は以下の2つを参考にしている。
英訳版
http://omacl.org/DanishHistory/

『デーン人の事蹟』第3巻 英訳版からのきよ氏の要約
http://www.moonover.jp/bbs/log/log51.htm