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1-443 かおるさとー氏 「縁の糸、ゆかりの部屋」3

義母は小さなハンドバッグを提げ、玄関から出てきた。
「私、今から買い物に行ってくるから、留守番お願いできるかしら?」
ゆかりは頷き、笑みを返した。
「うん。遅くなる?」
「少しね。七時には帰ってくるから」
「わかった。行ってらっしゃい、お母さん」
義母はなぜか驚いたように目を見開いた。しかしすぐに微笑んで、
「ええ、行ってくるわね、ゆかり」
今度はゆかりの表情が揺れたが、すぐにそれは消える。
離れていく後ろ姿を見送るゆかりは、どこか穏やかで嬉しげだった。
「仲良くやってるんだな」
「うん。でも初めてだった。お母さんって言ったの」
「……そうなのか?」
「やっぱり恥ずかしかったから……呼び捨てにされたのも初めて。ずっとちゃん付けで呼ばれてたのに」
顔がほんのり赤い。ささやかながら、それはとても大きなことだったのだろう。
よく真希にしてやるように、俺はゆかりの頭を撫でた。
「……ねえ」
「ん?」
「暑いから、早く入ろうよ」
「……ん?」
急に手を引かれて、俺はつんのめる。さっきまで全力で走っていたので、足が疲労で震えた。
「休んでいって」
「あ、でも家は近くだし──」
「……」
目に少し不満の色が見えた。慌てて口をつぐみ、俺は頷く。
表情が和らいだ。
まずい。なんだかペースを握られているような気がする。留守番を頼まれたということは、今家には誰もいないんじゃないか。
「……」
どこか昔に戻った気がする。無口で人見知りするくせに俺にだけはなついていたゆかり。でもそうやってそばにいることが俺は内心嬉しくて、ゆかりの頼みごとにはずっと弱かったと思う。
文句とともに言うことを聞いてやると、とても嬉しそうに笑ったから。
その笑顔に、俺の心はとっくの昔にとらわれていて、薄らいでいた想いも目の前に現れた顔があっという間に元に戻してくれて、
たぶんこれからも、この幼なじみには勝てないだろうと思う。
そんな自分を情けないとは思わない。負けても仕方がないことというのは、確かにあるのだ。
ゆかりは俺の手を引いてそのまま家の中に入ろうとする。
俺は疲労一杯の足を引きずり、ゆかりの後に続いた。

「……」
二階にあるゆかりの部屋で、俺は呆然となっていた。
無機質な机、簡素なベッド、何も目を引くものがない寂しい部屋。
夢の中で見たままの部屋が、現実にここにある。
依子の言を思い出す。本当にゆかりと同じ夢を見ていたのだろうか。まるで獣のように、互いをむさぼった淫夢。
ヤバい。気が変になりそうだ。頭もそうだが、下半身が。ケダモノか俺は。
「……」
ゆかりはさっきからずっと沈黙している。
時折こちらにちらちら視線を送ってくる様子は、本当に昔のゆかりみたいだ。
ひょっとして、家の外と部屋の中では態度を切り替えているのだろうか。もう五分以上口を開いてないぞ。
でも、それに対する接し方を俺は知っている。
「……」
沈黙を続けるゆかりに、俺はとりあえず話しかけた。
「やっぱり、喋るのきついのか?」
「……」
ゆかりは答えない。
その代わりに軽く首を振った。
「じゃあなんで今は喋らないんだ?」
「……」
じっと見つめてくる。
何を言いたいかはすぐにわかった。目を読めということだろう。
俺はベッドの縁に腰かけているゆかりに近付く。
いきなりゆかりが隣をポンポンと叩いた。横に座ってほしいのだろうか。
黙って隣に座る。キャラが違うとは思わない。これが彼女の素だ。俺だけに見せる素の姿。
改めて目を合わせる。黒曜石のように綺麗に澄み切った瞳は、雄弁に思いを語る。
…………。
いや、あの、ゆかりさん?
読み間違えたかな、と俺はもう一度試みる。
……………………。
変わらなかった。
ゆかりの顔に赤みが差した。
「お前、本気か?」
「……」
「いや、それ以前に質問に答えてないぞ」
「……」
嫌いじゃない、のか?
じゃあなんで今は無口なんだ?
「……」
俺専用のコミュニケーション手段ってなんだよ。
「俺ばかり労力使ってる気がするけど」
「……」
……別にいやじゃないけど、むしろ特別扱いしてくれて嬉しいけど。どんだけ弱いんだ俺。
「俺がお前を好きだってことは確信してるし、お前も俺に応えてくれたからそれはいいけど、再会して一週間ちょっとだぞ? いきなりそれは、」
「……」
「嫌なわけない。でもお前、初めてだろ?」
軽く睨まれた。
「俺? ……初めてだよ。悪いか」
夢の中ではガンガンにやったが、と内心で密かに呟く。
「……そりゃしたいよ。俺も男だからな。でも」
俺が躊躇した声を出すと、ゆかりは視線を外した。

そのまますっくと立ち上がり、おもむろに制服のボタンに手をかける。
「ちょ、ちょっと待──」
慌てた声は少しも届かず、幼なじみは上の服を問答無用に脱ぎ捨てた。白い下着が清楚に見えるのは、男の妄想のせいか。
そしてゆかりは俺を見据えると、思い切りダイブしてきた。
支えられずに簡単に押し倒される。
「ゆ、ゆかり」
間近に顔が迫る。
その距離では抵抗する間もなくて。
あっさり唇を奪われた。
「──」
「……」
柔らかい感触はとても現実とは思えなかった。
ほんの数秒が果てしなく長かった。離れていく赤い唇を、俺は呆けたように見つめる。
「……」
ゆかりの目がからかうように光った。おとなしく押し倒されなさい、と降伏を勧告してくる。
「……わかったよ」
俺は諦め顔で呟く。ゆかりの顔が花火のように輝いた。
まるっきり夢の中と同じだな、と俺は溜め息をついた。
好きな女の子の誘いをいつまでも突っぱねるわけにはいかない。というか、正直かっこつけてただけで、頭の中は欲望一杯だったりする。
「ただし」俺は言った。「主導権は譲らない」
言うが早いか俺は体を反転させて、ゆかりの上にのしかかった。
「──!」
ゆかりは突然の事態に動転した表情だったが、俺は無視して唇をむさぼった。
「──、──!」
ゆかりが暴れそうになるのを無理やり抑えつける。俺はただひたすらに口を封じ続けた。
ゆかりの体から力が抜けていく。
俺はここぞとばかりに舌を出し、入り口をノックした。
微かな緊張が走ったようだが、ゆかりはすぐに受け入れてくれた。口の中に侵入すると、硬い歯と柔らかい肉の相反する感触が入り混じるように舌に伝わり、快感がぞくぞくと全身を駆け抜けた。
舌は体の中でも特に敏感な部位なのだという。無数の神経が通り、器用に動かせる味覚を司る大事な器官。
そんな器官を俺たちは今ぶつけ合っている。絡み、這いずり、舐め回し、これでもか、これでもかと神経を刺激し合っている。
本来の役割から離れた行為なのかもしれないが、圧倒的な興奮の前には些細なことだった。
ゆっくりと口唇を離すと、唾液が微かに糸を引いた。荒い呼吸をそれぞれ重ね、脳に酸素を送り込む。倒錯しそうなほどの高ぶりに、頭がくらくらした。
俺は酒も煙草もしたことがないが、それらがこの刺激を超えるとは到底思えない。至近で交わす情熱的な視線も、触れる肌の温もりも、いくらでも俺を酔わせてくれそうだった。
視線をやや下げる。首のすぐ下、対になった丸い膨らみを、穴が空くくらいに注視した。
すぐに我慢が出来なくなり、俺は二つの白い果実に手を伸ばした。下着をずらし、現れた頂に唾を飲み込む。ゆかりが恥ずかしさに顔を背けた。
夢の中でも見ていたが、やはり現実は全然違う。視覚だけでこんなにも『くる』ものなのか。頭がくるくる狂いそうだ。
正面から恐る恐る掴む。乳房に指が沈み、ゆかりの顔が一気に紅潮した。果物が熟れるかのようで、俺はその可愛さに酩酊した。ああもう、今日は収穫祭だ。根こそぎ奪ってやる。
ゆっくりと揉み込む。優しくしないと、という意識が頭の片隅にあったような気がするが、抑えが利かない。リズミカルに胸を揉みしだき、その柔らかさに感動する。
ゆかりが首を左右に動かした。歯を食い縛ってどこか苦しげだったので、俺は正気を取り戻し、訊いた。
「い、痛かったか?」
「……」
首を振られた。
目の奥で妖しい光がうごめく。
好きにしていい。
いくらでもむさぼっていい。
だから──もっと求めて。
「……俺にはもったいないくらいだよ、お前は」

ゆかりがおかしげに笑う。その様子もまた可愛い。
胸弄り再開。先端をついばむとゆかりの体が小さく震えた。俺は赤子のように吸い付き、その震えをもっと引き出そうとする。
ゆかりは声を上げない。
俺が下手なのかと思ったが、そうでもないらしい。いや、下手かもしれないが、それでもゆかりは両目を潰れるほどに強く閉じ、何かに耐えている。
それなりに感じてはいるらしい。それが苦痛か快感かまではわからないが、刺激はあるようだ。
しかし、声は出さない。
俺は乳首を軽く噛んでみた。
ゆかりは肩をびくりとすくめた。
いい反応だ。よすぎる。
「お前さ、感度よすぎない?」
「……」
答えない。
ちょっと意地悪をしてみる。
「自分で弄ってるな、さては」
「……」
「だんまりですか。でも、」俺はゆかりのスカートの中に右手を突っ込んだ。「確かめればすぐにわかるぞ」
「──!」
顔色が変わる。スカートの下で指を太股に這わせると、目が小さく揺れた。
「気持ちいいなら声出してもいいのに」
太股からお尻の方を撫でる。肉つきのいい、胸とは違った柔らかさがたまらなく心地いい。
「──」
ゆかりは頭を懸命に振っている。快感か、羞恥か、それともそれ以外の何かか、とにかく脳は揺れまくっているようだ。
俺は下着の中に手を突っ込む。
秘唇はすぐに見つかった。探り当てた割れ目をなぞると、粘りつく水の音がした。
「────!」
ゆかりの体が勢いよくのけ反った。陸地で跳ねる魚のように、体が暴れそうになる。俺は体を抱き寄せてそれを抑えてやる。
指を動かす。
熱い。
夏の暑さに負けないくらいの熱が、下の口にこもっている。くちゅくちゅといやらしい音が響くそこは、心の温度にやられてしまったかのようだ。
人差し指を中に侵入させる。
「へえ……こんな感じなんだ」
ゆかりの耳元でわざと声に出して言うと、ゆかりは泣きそうな顔で睨んできた。逆効果だよそんな顔は。
指はすんなり中に入った。やはり普段から弄られているのだろう。指を曲げて壁を擦ると、また体が震えた。
「ったく、ホントエロいなお前は」
「……」
弱々しい表情で見つめてくる。俺はにやりと笑み、小さな口に軽くキスをした。
「いいんだよ、エロくて。それが素のお前ならいくらでも愛してやるから」
「……」
ゆかりは目を瞑ると、首に両手を回してきた。身を寄せられて、張りのある胸が俺の胸に強く当たる。
「続き、するぞ」
「……」
頷く顎を持ち上げ、再び深い接吻を送り込む。
右手の指は依然秘所をとらえたままで、少しずつ奥を圧迫する。熱い襞々はまるでただれているみたいだ。
意地でも声を出さないつもりか、震えは痙攣といってもいいレベルに達していた。悩ましげな体のくねりが俺の嗜虐心をかきたてる。
秘部はもはや洪水で、下着も多量の水分を吸っていた。一旦指を抜き、下着を脱がす。ついでにスカートとずらされたブラジャーも、体から剥いでやった。
俺は体を離し、服を脱ぎ始める。相手を裸に剥いておいて、こちらが着衣というのもフェアじゃないだろう。
汗にまみれたシャツもジーンズも脱ぎ去り、俺は部屋の空気に裸身を晒した。

「……」
ゆかりの目が俺の下半身を凝視している。潤んだ瞳の奥には妙な好奇心が映っていた。
「……」
「……そんなに見つめるなよ。恥ずかしくなる」
「……」
「触りたいのか?」
「……」
「怒るなよ。今から入れるからさ」
既に下半身はそそり立ち、しっかりとした硬度を保っている。
「どうする? もう入れるか、まだ前戯するか」
ゆかりは行動で返事をした。
「……うわ」
物憂げな瞳がはっきりと俺の肉棒を捉え、右手で優しく握り込んでくる。
すべすべの手の平がたどたどしく上下に動く。ゆかりに触られているというだけで興奮ものだが、目に映る光景と、直に伝わる感触の両方が重なり、今すぐ果ててしまいそうになる。
「お……もっ、ゆっく、り」
腹から骨盤辺りに力を入れ、こらえる。ここで出したら本番が、
そんな我慢思考を、生温かい感触がぶった切った。
ゆかりの小さな口が、亀頭を包み込んだのだ。
「っ!!」
刺激が強すぎた。
限界を一足飛びで越え、俺は欲望の体液をゆかりの口の中に放出した。
「!」
さすがに不意打ち過ぎたか、ゆかりは口を閉じたまま激しく咳き込んだ。
だが、口内に出された異物をゆかりは吐き出さない。
「お、おい」
涙目になりながら必死でこらえると、ゆかりは精液を少しずつ、咀嚼するように嚥下した。
「……」
「だ、大丈夫か」
慌てて声をかけると、ゆかりは潤んだ目で微笑む。
その笑みは本当に可愛かった。涙で濡れた顔自体は崩れてひどかったが、こんな無茶をしても心配させないように笑みを向けてくるその様子が、あまりに健気で。
瞳の奥で、ゆかりが声なき声を囁く。
まさくん、愛してるよ……。
俺は駆け出したいくらいの愛しさに襲われた。衝動的に抱き締め、頬に、額に、口にキスを送る。唇の端に精液の残りがついていたが、まったく気にならなかった。
「ゆかり、俺も愛してる。誰にも渡したくない」
「……」
ゆかりの頭がこくんと頷かれた。

ベッドの上で、俺はゆかりを見下ろす。
「じゃあ、行くぞ」
「……」
確認を取ると、俺は逸物を秘裂にあてがった。
緊張で手が震えたが、早く中に入れたいという思いが俺を動かす。
ゴムは、着けていない。
でももう、抑えられない。
腰をゆっくりと沈め、逸物を挿入する。
ゆかりの顔が大きく歪んだ。
俺は動きを止める。そうだ。夢の中では何度も体を重ねていたが、現実の彼女は初めてなのだ。決して乱暴に扱ってはいけない。
ゆっくり、ゆっくりと自分に言い聞かせながら、俺はかたつむりのように奥へと進む。襞々が強烈に締め上げて、中への侵入を阻んだ。
それでも徐々に最奥部へと迫っていく。童貞と処女を同時になくすために、二つの性器が荒い摩擦を起こす。
そして長い時間をかけて、肉茎が一番奥に到達した。
「────!!!!」
破瓜の痛みにゆかりの体が固まる。全身に力を入れ、懸命に痛みに耐えようとしている。
叫び声を上げるのかと一瞬思ったが、ゆかりは声を漏らさない。奥歯を噛み締めて、絶叫すら耐えている。
叫んだ方がまだいくらかマシだろう。だがゆかりはそれをしない。
なぜそこまで頑なに声を出すことを拒むのか。
俺にはわかる気がした。たぶん本当の自分を、俺に愛してほしいのだ。無口、というのが彼女の本来の姿だから。
俺はゆかりの髪を軽く撫でてやった。
「無口もいいけど……喋っているときのお前も、お前であることには変わりないんだからさ、もうちょっと自然でいいんじゃないか?」
ゆかりは答えない。
俺は上体を前に倒した。ゆかりを包み込むように抱き締め、耳元で囁く。
「動くぞ」
「……」
首の動きで許可をもらうと、慎重に腰を動かし始めた。
緩やかな抽挿。じれったいくらいに緩慢な腰遣い。
だが、十分だった。狭い膣の中はお湯のように熱く、僅かに身じろぐだけで苦痛にも近い快感が生じる。
ゆかりは乱れた呼吸とともに胸を上下させている。形のいい双丘が俺の体に押し潰されて、弾力を返してくれる。たまらない感触だ。
しばらくのろのろとしたペースで往復を続けていると、ゆかりの腕に妙な力がこもり始めた。
俺の背中を強くかき抱くのだが、その力の入り具合に無理がない。痛みをこらえるときとは明らかに違う、どこかこちらの動きに合わせるような反応。
「ひょっとして……感じてるのか?」
ゆかりの顔が真っ赤になった。恥ずかしそうだが、苦痛の色はない。
自慰の経験も結構あるようだし、普通より感度はいいのかもしれない。ならば、遠慮はいらない。
俺はペースを一気に速めた。さっきまでの気遣いを隅に追いやり、空洞の中を力一杯に往復する。
ゆかりの顔に快楽の笑みが浮かんだ。
初めてだから、決して俺の腰遣いは巧くないと思う。ただ押して引いてを繰り返すだけの、雑で拙い動きだ。
なのにゆかりは、ゆかりの体は歓喜に震えていた。開きっぱなしの口元からは涎が溢れているし、締め付ける膣は愛液でとろとろだった。

更に一段階ギアを上げる。
腰と腰のぶつかり合う音がはっきりと響き渡る。中で擦れながら愛液と先走り液が混ざり、いやらしい水音を立てる。二人分の体重の激しい運動にベッドがぎしぎしと軋む。
抱き締める力を強めた。そのまま互いに飲み込むようなキスを交す。深く深く繋がろうと体を密着させ、口の中で舌を縦横にかき回した。それはまるで、上下同時にセックスを行っているみたいだ。
たまらない。
止まらない。
一度出しているにもかかわらず、勃起が収まる様子はまるでなくて、むしろ行為の気持ちよさに硬度も感度も上がりっぱなしで、いつまでも続けていたいと高まる意識の中で思った。
しかし、臨界点はすぐそこまで来ていた。
「ぬ、抜くぞ……」
「……!」
ゆかりの目が訴えかけてきた。
このまま、来て。
俺はひどく驚き、それはいくらなんでも、と少ない理性で返そうとして、逆に返された。生でヤっていて何を今更、と。
正常な判断を下せる理性は欲望に削り捨てられていて、それもそうか、なんて俺は流されてしまう。
許可が出た以上、もう歯止めをかけるものは何もない。俺はぐちゃぐちゃの膣の一番奥へ向けて、猛然と腰を奮った。
ゆかりが失神しそうなほどに身震いする中、限界をあっさり越えた逸物は、子宮に向かって大量の白濁液を吐き出した。
「うくっ」
「──っ!」
同時に迎えた絶頂を、俺たちは下半身で盛大に感じ合う。
男根は無数の子種を容赦なく処女の子宮に送り込み、膣肉は蠕動しながら欲望の汁を無限に飲み込もうとする。
圧倒的な快感に体が震え、頭が真っ白になる。このまま快楽の波に流されながら眠りたいと思った。
ゆかりがぎゅっと目を瞑り、行為の余韻に浸っている。
俺はその様子を愛しく感じ、優しく抱き締めてやった。
ゆかりは疲れの見える顔をぎこちなく動かし、とても幸福そうに笑った。


「気持ちよかったね」
リビングでゆかりは嬉しそうに呟いた。
「なんで今は普通に喋ってるんだよ」
「無口はあの部屋限定。それ以外は今の私」
「あの部屋に何かあるのか?」
ゆかりは麦茶をグラスに注ぎながら、懐かしげに言った。
「……あの部屋が、一番思い入れあるの」
「え?」
「小さい頃、まさくんと一番一緒に過ごしたところだもの。だからあそこの中だけは特別」
俺は眉を寄せる。
「……でも、昔とは全然違う部屋だぞ」
「それでも私には重要だった。ここでの思い出はかけがえのないものだし、ずっと私を支えてくれたから」「……」
麦茶の入ったグラスを俺と自分の前にそれぞれ置くと、ゆかりは明るい口調で言う。
「でもね、別に昔ばかり大切にするわけじゃないんだよ。今も昔も同じくらい大切で、だからこそあの部屋は特別で、」
わかる気がする。ものごとを捉えるときは、一つの価値観に縛られてはいけないのだろう。どっちか選ぶじゃなくて、どっちも選んでいいはずなのだ。そうしないと、俺たちの目はどんどん狭くなって、仲違いや衝突を起こしてしまう。
昨日までの俺たちは正にそんな状態だった。
だが、
「難しい話はなしだ」
ゆかりがきょとんとする。
「今、ちゃんと目の前に大切な人がいて、幸せなんだからそれでいいだろ?」
「……そうだね。うん、それで十分」
俺たちは所詮高校生なのだ。世の中の真理なんてわからないし、わかる必要もない。
俺にとって大事なのは、ゆかりとまた同じ時間を過ごせるという、本当にささやかなことだった。
「ねえ」
ゆかりの声に顔を上げる。
「ん?」
「次はいつエッチしよっか」
思わず飲んでいた麦茶を噴き出した。
困惑する俺の顔を見つめながら、幼なじみは楽しそうに微笑んだ。



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作者 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
2007年12月13日(木) 10:25:49 Modified by ID:Lz95Wvy+ew




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